2012年6月定例会

岡田ゆき子議員の議案外質問② お泊りディサービスの実態と改善(2012年6月25日)

お泊りディ(保険外宿泊事業)の現状と課題について

お泊まりデイサービスの問題点はどこか
【岡田議員】デイサービス事業所が行っている保険外の宿泊事業についてお聞きします。これは、通称「お泊まりデイサービス」と呼ばれており、デイサービスに通う高齢者が日中のサービス利用後、帰宅しないで施設に宿泊できるサービスです。緊急な用事で家族が介護できない事態に、慣れたデイサービスに預かってもらえるという便利さがあります。またショートステイの予約がなかなか取れない、或いは特別養護老人ホームに空きがないなどの背景もあり、ここ数年で増加しています。
 宿泊を伴うサービスであり、利用者の安全や人間としての尊厳が守られる必要がありますが、実情はどうでしょうか。当初は、デイサービスに通っているお年寄りを一人二人一時的に預かっていたようですが、要望に応えているうちに宿泊者が増えてきました。
 こうした経過から、事業所と利用の実態について、民間の介護事業所団体が、さらに市がアンケート調査しました。そこから、安全面や処遇についての問題点が明らかになりました。
 回答のあった370カ所の2割近い67事業所が「お泊まりデイサービス」を実施しています。宿泊料金は一泊500円という格安料金から最高28,666円と大きな差があります。夜間の職員体制は一人だけが62%。また宿泊場所は静養室が多く、中には食堂も。防火設備の設置は、最低必要な消火器や火災報知機すらないところがありました。多くのケアマネージャーは「夜間の職員体制」「職員の労働条件」「宿泊スペースや環境」に問題ありと回答しています。これで宿泊者の安全が守れるのか、非常に危惧されます。
 

そこで健康福祉局長に伺います。いわゆる「お泊まりデイサービス」の現状と課題をどのように認識しておられますか。

小規模多機能型居宅介護事業を進めるが、ニーズがあることも事実(局長)
【局長】デイサービス事業者が介護保険の制度外で宿泊サービスを行う、いわゆる「お泊りデイサービス」の利用は増加傾向にある。実態を把握するため、昨年12月から今年1月にかけ、市内の通所介護事業所に対するアンケート調査を実施し、本年5月にその概要を取りまとめ、本市の介護保険のホームページ「NAGOYAかいごネット」で公表した。
 アンケート調査の回答では、67の事業所が「お泊りデイサービス」を実施し、人員・設備や運営の水準に開きがある事業所も多いという結果で、現在、実地での調査を行っている。
 このサービスは介護保険の小規模多機能型居宅介護事業と類似のサービスであり、一つの事業所で「通い」のサービスを中心に、ご利用者の状態や希望により「宿泊」や「訪問」のサービスも組み合わせて利用できる。この小規模多機能型居宅介護事業所の整備を積極的に進め、平成30年度までに100か所を整備する目標で、現在66か所まで整備を進めた。今後も早く広めていく。
 しかし、アンケート調査の結果から「お泊りデイサービス」には一定のニーズがあり、現段階でこのサ⊥ビスを否定することはできない。国も、介護保険制度の改正を議論する中で、デイサービスでの宿泊事業の制度化を検討した経過があるが、宿泊環境や夜間の職員体制などに様々な意見があり、結果として見送られた。

安全基準を示し、事業所の登録制や情報公開などを
【岡田議員】昨年3月に東京都はいち早く保険外のお泊まりデイサービスに対して独自の運営基準を決め、事業所の届出・公表制度を設けました。介護保険法の指定事業ではないため、あくまでも推奨基準ではありますが、受け入れ人数の制限、7.43㎡の居室床面積、消防設備の設置、従業員の資格などを定めています。事故などに至る前に、高齢者の安全と尊厳を守れるよう、少なくとも施設、職員体制など安全基準を示す必要があります。また利用者が事業所を選べるように、事業所の登録制や情報公開なども必要と考えます。
 健康福祉局長に伺います。今回の結果に基づき、市としてどう対処されるご予定ですか。

最低限の設備、運営の水準は必要だが、東京なども参考に検討する(局長)
【局長】要介護者が宿泊するという性格上、最低限の設備、運営の水準を整える必要はある。しかし、介護保険外のサービスであり、市の独自基準をあてはめ、規制することは大変難しいという側面もある。
 東京都は、「お泊りデイサービス」の人員、設備及び運営に関する基準を定め、届出を行うよう指導し、届出内容は公表している。基準に合致していないところを排除するのでなく、利用する際の参考情報として広く公表することを目的にしている。
 国の動向や東京部の考え方、さらには現在行っている実地調査の状況を勘案しながら、今後の対応について検討を進めたい。

高齢者の処遇や安全性の立場から早急な検討を(意見)
【岡田議員】お泊まりデイサービスについて。保険外サービスのため、規制することは難しいということですが、名古屋市民である高齢者の処遇や安全性にかかわることです。事業所の最低限の設備や運営の水準を整えてもらう必要があると考えておられるのですから、今後、検討を進めていただきたいと思います。

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