2020年2月議会

さいとう愛子議員の個人質問 ②学校統廃合(2020年3月6日)

小規模校だから統廃合という理屈は住民の思いに反する
さいとう愛子議員

住民のなかの疑問や不安の声に答えてほしい
【さいとう議員】いま市内では、3つの地域で、「ナゴヤ子どもいきいき学校づくり計画」による、小中学校の統廃合が進められようとしています。天白区では高坂小を廃止し、しまだ小に統合する。港区では、野跡小を廃止して稲永小に統合する。守山区では、本地丘小・森孝東小・森孝西小の3小学校を廃止し、森孝中学校との小中併設校として再編する、という計画です。
 この間7学区で12回、保護者と地域住民に対して、それぞれの学校統廃合に関する説明会が開催されました。私も各会場で直接、保護者と地域住民の声を聴かせていただきましたが、どこでも突然の計画に戸惑いや疑問、特に、保護者から困惑の声があがり、保護者や住民の納得と合意を得るには程遠いと感じました。同時に、地元の学校が地域のみなさんにどれだけ愛されているかも実感することができました。地域の合意抜きに強引に学校統廃合を進めることは、名古屋市の教育行政が長年育んできた地域との信頼関係を壊しかねません。
 そこで教育長にお尋ねします。3つの統廃合計画の問題点について、私が聴いた住民の疑問や不安の声にそれぞれ具体的に答えていただきたいと思います。

地域と一体となった高坂小の教育実践
【さいとう議員】まず、天白区の高坂小学校の廃止についてです。高坂小は、約10年前にも、相生小との統合計画が出されましたが、地元住民などの猛反対でとん挫した経緯があります。ところが、今回は、相生小とではなく、しまだ小と統合先が変更になり、保護者や住民からは、「また高坂小を無くすというのか」「教育委員会は、統合先はどこでもよく、ともかく高坂小をつぶしたいということか」と怒りの声が上がっています。
 高坂小での説明会では、「学校が小さいから、兄弟もみんな先生は知っている。先生たちは、子どもを表面的なことだけで見ない」「小学校がなくなれば、若い世帯が増えないし、地域はどんどんすたれていく」などの意見が出され、小規模校が悪いというけど、大きな学校ではきめ細かい教育はできないと言われ、わざわざ実家のある高坂学区に引っ越してきたという人もいると聞きました。
 学校の子どもたちの様子は、連合自治会が毎月発行する「広報高坂」に町内のみなさんに生き生きと伝えられています。昨年の11月号は稲刈りのことが書いてあります。高坂小には校庭の一部に水田があるのです。「今年の高坂水田は大豊作。4年生と5年生が地域の方にお力添えをいただいて、たくさんの餅米を収穫することができました。」とあります。隔週金曜日の朝行われている「たかさかタイム」など、地域と学校、住民と子どもたちの温かい交流が育まれている学校です。
 高坂小の地域と一体となった教育実践を素晴らしいとは思われませんでしたか。クラス替えができるかどうかだけで判断するのではなく、小規模校ならではの地域に溶け込み、愛されている学校を存続させ励ましていくことこそみなさんの仕事ではないでしょうか。

高坂小の取り組みは意義ある事(教育長)
【教育長】高坂小学校で行われている水田を活用した取り組みなどは、意義のあることだと捉えており、統合にあたっては、こうした特色のある教育活動を始めとした学校のよさを継承・発展させていきたい。

参加者の少なかった野跡小説明会 小規模校でこそ、きめ細かい配慮ができ信頼関係が築ける
【さいとう議員】港区の野跡小は、もともと稲永小の分校だったこともあり、それなりに地域の一体感はあります。しかし、両校で昼・夜2回ずつ開かれた説明会に参加した保護者は両校合わせて58人にとどまりました。配布された資料には特別支援学級の在籍児童が野跡小は6名とありました。統合先の稲永小は2名です。特別な支援が必要な子どもたちも多いのです。通学距離が長くなる不安もより大きいと思うのですが、保護者の意見は説明会にはありませんでした。
 一方で、外国籍の保護者の姿が数人あり、学校が遠くなる、大きくなる、日本語指導などへの不安な声が出されていました。宗教的理由で豚肉が食べられない子どもたちも少なくありません。学区にある保育園では、15%の子どもさんがハラール食対応となっており配慮した給食となっています。小規模の学校でこそ、きめ細かい配慮が必要な子どもたちに寄り添い、保護者との信頼関係が築けているのではないでしょうか。野跡学区は、9割を超える世帯が市営住宅に暮らしており、ひとり親世帯や障害者世帯も多く、経済的にもたいへんな世帯も少なくありません。説明会にもなかなか参加できない保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 野跡小の説明会だけでは保護者の思いを十分にくみ取れなかったのではありませんか。野跡小では、学校の統合ではなく、一人ひとりの児童にきめ細かい指導がしやすい、小規模校の良さを存分に発揮すべきではありませんか。

回覧版などで周知し、意見を伺う(教育長)
【教育長】野跡小学校など、関係校で開催した説明・意見交換会における、様々な意見や質問、教育委員会の考え方をおたよりという形でまとめた。内容を学校から保護者への配布や地域での回覧などで周知を図り、引き続き意見を伺っていく。

狭い運動場、通学路の不安が解決できていない森孝中学校での統廃合
【さいとう議員】中学校の場所に3小学校と1中学校が併設される森孝中学校区の統廃合計画にも厳しい声が上がっています。「今でも運動場が広いとは言えないのに、必要な面積などが不足しないのか?そもそも非現実的ではないか?」との指摘がありました。森孝中学校は、南は香流川に面し、三方を戸建て住宅やマンションに囲まれており校地を広げる余裕はありません。説明会では、こうした保護者の疑問に明快な答えはありませんでした。
 また、通学面では、本地丘小学校の保護者から、通学距離は2㎞以内とされていますが、坂の上り下りがあり、交通量の多い、出来町通りを渡って重いランドセルを背負って往復するのは、特に低学年の児童にとってはかなり負担が大きいという声がでました。途中は、名古屋市ではなく尾張旭市を通って通学することにもなるのですが、通学路の安全面は誰が責任を持つのでしょうか。
 森孝中学校ブロックにおいて、施設整備の見通しも通学路の不安解消の見通しもないまま4つの学校を一つにしてしまう今回の計画はあまりに乱暴ではありませんか。

今後検討する(教育長)
【教育長】森孝中学校ブロックの統合に関する施設整備や通学の安全対策は、いただいた意見なども参考にしながら、今後、具体的な取り組みを進める中でしっかり検討していきます。
 小規模校にはよさもあるが課題もある。このような課題を解決するため、望ましい学校規模を確保することで、子どもたちにとってよりよい教育環境の実現に努めたい。

子どもの声を聞く機会を設けるべき
【さいとう議員】高坂小の説明会では、参加していた児童から「子どもの意見を聞いてほしい」との発言がありましたが、答えはありませんでした。野跡小の説明会では保護者から「子どもたちの意見は聞かないのですか?」との質問が出されましたが、答えは「保護者を通して意見を聞く」というものでした。この姿勢でよいのですか。
 今度の学校統廃合計画の最大の問題点の1つは、住民の合意抜きに教育委員会が主体的に判断し、統廃合を強引に進めている点にあります。そして、何よりも、大切にしなければならない、子どもの権利、意見表明権をないがしろにしているのは、二重三重に問題です。
 子どもの意見をきちんと聴く機会を設けるべきではありませんか。

子どもたちからは統合後の学校の アイデアを聞く
【教育長】子どもたちの発達段階に応じた適切な心のケアに努め、まず保護者や地域の意見を伺って、具体的に検討が進む中で、新しい学校づくりに関するアイデアを子どもたちから募集する。

「個別プラン」は作る段階でない
【さいとう議員】また、学校統廃合には、地域住民や保護者の合意と協力が不可欠ですが、説明会では、反対や疑問の声が多く、統合計画を前に進められるような実感はありません。今回の説明会だけで、対象校ごとの「個別プラン」を作る段階にないと考えますがいかがでしょうか。お答えください。

意見を聞きながら個別プランを作る(教育長)
【教育長】「知らない子どもたちが同じ学校になることが不安である」、「跡地はどうなるのか」などの心配がある一方で、「統合すれば友達が増えるから良い」、「クラス替えは必要だと思う」などの意見もあった。様々な意見を受け止めながら、今後個別プラン案を作成し、審議会の諮問・答申を経て、保護者や地域へ丁寧に説明し、着実に進めたい。

個別プランに高坂水田の取り組みを盛り込むか(再質問)
【さいとう議員】高坂小での「高坂水田」の取り組みを意義あることととらえておられます。統合にあたってこうした特色ある取り組みを継承・発展させるといわれましたが、個別プランに「高坂水田」の取り組みを、盛り込むということなんですね。

盛り込まない(教育長)
【教育長】高坂水田のような教育活動は、個別プランに盛り込む事項ではないが、取り組みの継承は、統合決定後の新しい学校づくりの中で、関係者の意見も聞きしながら検討していきたい。

特色ある取り組みが継承される保証がない(意見)
【さいとう議員】「高坂水田」の取り組みは盛り込まないということですが、地域と共同して取り組んでいる、特色ある取り組みが継承される保証はないと考えます。

施設が狭さや通学路の安全性について、具体的な解決策を森高中での統合の 個別プランに盛り込むか(再質問)
【さいとう議員】森孝中ブロックの統合について、施設が狭いことや通学路の安全対策について「今後、具体的な取り組みを進める中でしっかり検討する」と答えられましたが、個別プランに具体的な解決策を盛り込むということですか。

施設規模については個別プランで、通学路の安全性については統合決定後に対応する(教育長)
【教育長】森孝中学校ブロックの個別プランでは、統合後の学校規模等を考慮した施設整備を示したい。通学路の安全対策は統合決定後に対応します。

具体的な安全策もないまま個別プランに進むのはずさん(意見)
【さいとう議員】今の説明では、最も大事な子どもの通学路の具体的な安全対策もないまま、個別プランに進むということですね。それは、あまりにずさんな進め方です。

「なごや子ども条例」にもとづき、小学校の存続をのぞむ児童の声を尊重すべき(再質問)
【さいとう議員】教育長は、「学校の統廃合は子どもたちにとっても重大な関心事」と認められましたが、子どもたちには「新しい学校づくりに関するアイデア」を募集すると答弁されました。しかし児童からでている声は、今の学校を無くさないでほしいというものです。
 先日、「高坂小をなくさないで」と集会が行われ、地域の方と子どもたちが集まりました。その中で高坂小の高学年の児童が「1クラスで、別になんにも困ってないんです。1年からずっといっしょだし、兄弟みたいに家のこともわかる。久方中に行った先輩が行き帰りに会ったら声をかけてくれる」と話してくれました。
「なごや子ども条例」第7条は、子どもが主体的に参加する権利を保障し、子どもの意見が尊重されるとしています。
 高坂小をこのまま残してほしいと言うこの児童の声は、尊重されますか?教育長にお尋ねします。

統合で子どもによりよい環境を実現する(教育長)
【教育長】統合で望ましい学校規模を確保し、子どもたちにとってよりよい教育環境を実現したい。

子どもの声を無視し、教育委員会が主体で統廃合を進める姿勢(意見)
【さいとう議員】なごや子ども条例に反する答弁で驚きました。クラス替えができなくても、何にも困らないという子どもの声を無視して、教育委員会が主体で統廃合を進める姿勢でよいのでしょうか。現状はどの学区も、対象校ごとの「個別プラン」をつくる段階にありません。子どもたちや地域・保護者の意見が重要と再度申し上げ、終わります。

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