名古屋港管理組合 みつなか美由紀議員(6月4日)名古屋港の10号地<灯台>の歴史的遺産としての保存と陸上見学会について

1. 空襲による被弾跡が生々しく残る

【みつなか議員】10号地灯台は1939年、当時は名古屋港の最南端でありました、現在の潮凪ふ頭南端に建設されました。当時から物流拠点であった名古屋港にふさわしく、多くの船舶の安全な航行に役立つものでした。ところがまもなく第二次世界大戦が起きました。戦火が激しくなり、名古屋は大規模な空襲に遭い、名古屋港も、戦闘機を製造する軍需工場が多数あったことから、激しい攻撃を受けることとなりました。被弾した跡が生々しく残るこの灯台は、2基のうち1基は撤去されましたが、1基は残されました。悲惨な戦争を後世に伝える役割を持つ施設です。認定地域建造物資産の認定も受けています。このような施設を間近に見学することは、戦争の悲惨さを知り、平和について考えるきっかけを作る上でも重要です。せっかくあえて残した歴史の資産ですから、できるだけ多くの人に見学してもらい活用されることが望ましいと思います。そこで、企画調整室長にまずお聞きします。 この灯台の歴史価値をどう認識しておられますか。また残した意義についても合わせてお答えください。

【企画調整室長】10号地灯台の陸上からの見学会についてお答えいたします。まず、1点目の「灯台の歴史的価値の認識と保存した意義」についてでございます。名古屋港の最南端に位置していた当時の10号地、現在の潮凪ふ頭に、昭和14年に建設された10号地灯台は、戦前から残存する本港の貴重な建造物であると認識しており、ふ頭の再編整備に併せて、その歴史を今に伝える施設として現在の場所に保存いたしました。なお、この灯台は、本組合が平成21年に策定した「名古屋港景観基本計画」において、名古屋港の歴史を物語る「歴史資源」として位置付けており、また、平成23年には名古屋市都市景観条例に基づき、地域の歴史的景観を特徴付けている建造物として「認定地域建造物資産」に認定されております。

2.点検と補修で適切な管理を

【みつなか議員】次に現在の状態についてです。攻撃により弾痕があり、穴が開いていたりコンクリートが崩れて破損している箇所があります。今後も雨や海風で年々傷んでいきます。近年は台風も大型化しスーパー台風が襲い、今後の劣化や倒壊なども心配されます。6年前、わが会派の山口議員が質問をした際には「保存状態の点検は目視によって確認をしている」とのことでした。そして、山口議員の「目視だけでは不十分だと思う。専門家による診断と必要な修繕をすぐに行うべきではないか」との指摘に、管理組合からは「名古屋市の歴史的建造物保存活用アドバイザー制度を活用して専門家の助言を受け、歴史的な資産を適切に管理できるよう努める」との答弁をいただきました。そして2022年に行われた試行的見学会に参加された方から、「かなりの保存改修工事をされたようで、きれいになっていた」との声を聞きました。そこで、2点目港営部長にお聞きします。点検はどのように行っているのか。この補修はいつどのように行われたのか、費用はどれくらいかかったのかお聞きします。 また、補修からしばらくたち、現在はどのような状態であると把握されていますか。

【港営部長】次に、2点目の「点検と補修、現在の様子」についてお答えいたします。点検につきましては、現在年2回の「日常点検」及び台風通過後などに実施する「臨時検」で損傷や父損等がないかを目視で確認しております。また、補修につきましては、令和2年度に、名古屋市の「歴史的建造物保存活用アドバイザー制度」を活用して、被災痕跡を残した状態を維持し、「歴史資源」として管理していけるよう、約1,000万円費用で鉄筋の錆を防ぐ処理やコンクリートのひび割れ修繕等を行いました。現在は、この状態を保ち、適切に管理しております。

3.立ち入り制限で陸上から見学できず

【みつなか議員】認定地域建造物資産に認定されている歴史的施設を、身近に見学できる場所というのは限られています。非常に貴重な場になっています。しかし、現在は海上から、しかも離れたところから見ることしかできず、砲弾の跡まで確認することはできません。なぜ陸上からの見学がされないのか、6年前の山口議員の質問に、管理組合は「国際船舶・港湾保安法に定める国際埠頭施設として立ち入りの制限を行っている。石炭の荷役作業が常時行われていること」を理由に見学のための立ち入りについては困難であるとの答弁をされました。その後、先ほども少し触れましたが、2022年に「試行的開催」ということで一般に知らせ、見学会が開催されました。そこで3点目企画調整室長にお聞きします。 2022年に見学会が行われることになった、その経緯を教えてください。

【企画調整室長】次に、3点目の「試行的に開催された見学会の経緯」についてお答えいたします。潮凪ふ頭は「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に定める重要国際埠頭施設であり、立入りが制限されている区域でございます。また、現場においては、石炭などの荷役作業が常時行われております。そのため、10号地灯台につきましては、海上から見える立地条件を生かし、毎年十数回実施している本組合の港務艇による「みなと体験ツアー」で紹介しております。しかしながら、近年、陸上からの見学の要望もいただいたことから、荷役作業に支障なく、安全に見学できる方策の検討するため、令和3年度及び令和4年度に、それぞれ1回ずつ試行的に陸上見学会を実施いたしました。

4.安全性確保のうえ、見学会実施の検討を

【みつなか議員】2022年の試行的開催への経緯は分かりました。 安全面では万が一ということがあってはいけませんので、より慎重にということは分かりますし、必要なことだと思いますが、やはり潮風にあたりながら、岸壁に建つ灯台を現地で見て、砲弾の跡も生で見るということは、肌で感じるところで大きな違いがあります。そこで、企画調整室長にお聞きします。「試行的開催」をして、どのような課題が見つかったのか。その課題への対応としてどのような方法をお考えか。また今後の見学会の開催についてはどうお考えか教えてください。

【企画調整室長】再質問の「陸上見学会の課題と今後の見学会の開催」についてお答えいたします。試行的に実施した陸上見学会では、荷役作業が予定されない日に見学を計画したものの、急な荷役作業のスケジュール変更により、実施していた荷役作業を、見学中は中断せざるを得ない状況が発生いたしました。また、参加者が写真撮影夢中となり、水際に近づくといった危険な行動が見受けられました。従いまして、荷役作業に支障なく、安全に見学できる対処方策を検討する必要が生じております。こしうたなか、新たな取組として、灯台全体の外観のみならず内部もご覧いただける360動画を作成し、本組合の YouTubeチャンネルにおいて、令和6年2月に公開いたしました。これにより、灯台の詳細な様子を多くの方々がいつでも気軽にご覧いただけるようになっております。さらに、「みなと体験ツアー」に参加された皆様にも、灯台の前の海域において、この動画を紹介させていただいております。

【みつなか議員】安全性の確保や、業者への影響など、様々な課題があることがわかりました。 荷役作業が日常的に行われている中であることや、ソーラス条約によって、ふ頭への立ち入りが禁止されていることなど、いろいろ制約があるということでしたが、このまま「中止」とは決めず、見学会の検討をしていただきたいと思います。Youtubeで配信している動画を私も見たことがあります。動画では内部も見られることや、身体的やそのほかの理由で現地へは行くことができない方にとっては、動画で結構間近で撮影をされているので、大いに活用されることは望ましいと思います。しかし、やはり現地で本物を見るのとでは随分違いを感じます。

 施設の保存に関してですが、歴史的建造物保存活用アドバイザーの制度を活用して、専門家の助言を受けながら、適切な補修されたということもわかりました。今後も定期的に点検して随時必要な補修はしていただくこと、必要があればまた専門家の助言も受けて修復にあたるなど、適切に管理していただきたいと思います。

 このふ頭は今も石炭ふ頭で、荷役作業が常時行われている現状ということで、改めて大量に石炭が輸入されている現実も痛感しました。カーボンニュートラルな港を目指す、そういう計画も立てられたことに鑑みても、石炭輸入依存からの脱却を視野に、日常的に灯台の見学ができる名古屋港を目指していきたいと思います。

 せっかく残したのですから、誰からも見られることなく置いておくのは灯台にとっても不本意だと思います。来年は戦後80年という節目を迎えます。今も軍需産業がいくつも立地する名古屋港にある、歴史的資産として、適切に保存し後世に残していただくことと、ぜひ見学会を開催していただくことを要望して、質問を終わります。

 

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