2024年6月定例会

田口一登議員の議案外質問(6月24日)無駄に無駄を重ねる木曽川水系連絡導水路事業から撤退を

【田口議員】次に、木曽川水系連絡導水路、いわゆる徳山ダム導水路事業について質問します。

 本市は、徳山ダムで開発した水道水毎秒1㎥と工業用水0.7㎥を導水するという利水目的で事業に参画しましたが、2009年5月に河村市長が水余りを理由に事業計画からの撤退を表明したことから、事業への参画の意思表明を留保してきました。それが昨年2月、河村市長が建設容認へと方針転換したことを受け、今年5月に名古屋市として参画の継続を表明しました。

 徳山ダムの水を揖斐川から長良川と木曽川に流す導水路事業をめぐり、本市など関係自治体でつくる「検討の場」が5月17日に開かれ、導水路の建設を「最も有利な案」とする報告書の素案が了承されました。2009年度に凍結された導水路事業は着工に向けて動き出そうとしています。

 しかし、市長の建設容認という方針転換に対しては、市民から批判の声があがりました。「導水路はいらない!愛知の会」など市民団体が河村市長に提出した抗議文では、「要らないものを造ってしまった失敗を、失敗としてきちんと認め、過ちを繰り返さない。……いつまでも高度成長期の政策にしがみつき、無駄に無駄を重ねて、社会全体を疲弊させることにしかならない。……次世代に大きな負担をかぶせることは許されない」と厳しく批判していますが、私も同感であります。

徳山ダムの水道水1㎥/秒が平常時に必要か

 そもそも徳山ダム導水路は名古屋市民の水の確保にとって必要なのか。本市の水道は木曽川の水で十分足りていて水は余っています。この点については、方針転換した河村市長も認めていると思うのです。昨年5月に上下水道局が開催した木曽川水系連絡導水路意見交換会で市長は、次のようにコメントしています。

 「結局やっぱり水の需要については、行政が間違えたことに間違いないと思います。……秒速(毎秒ということだと思いますが)10㎥しか大体今使ってないのに、3倍ですから、30㎥。……見積と3倍の違いですからね。メチャクチャやないかと言ったんですが。……木曽川水系の水需要の予測が多すぎるんじゃないのかと、そもそも。ということがスタートだったけど」。

 ところが、上下水道局は「水余り」を認めていません。本市が昨年2月28日に国土交通省中部地方整備局に提出した提案では、導水路の新たな使い道、新用途として3つの提案がされましたが、この提案は、当初の利水目的を全面的に変更するものではありません。提案文書では、新用途は「当初目的である量的確保に加え」た提案だと明示されています。

 そこで上下水道局長にお尋ねします。当局は、徳山ダムで開発した毎秒1㎥の水道水が、平常時においても量的確保のために必要という立場ですか。

局長「非常時の備えとして必要不可欠」

【上下水道局長】水道は最も基本的なライフラインであり、将来にわたり安定給水の確保に努めることは水道事業者の責務であると考えております。

 本市は、長期的視点に立ち、渇水や水質事故時などの非常時にも出水不良などにより市民生活や都市活動に大きな影響が生じないよう、水源の多系統化を進めてまいりました。

 徳山ダムの水についても、こうした考えに基づき確保してきたものであり、非常時の備えとして必要不可欠であると考えております。

 また、令和5年2月に本市から国に提案した連絡導水路事業の新用途では、安心・安全でおいしい水道水の安定供給として、本市の水源に揖斐川を追加することで平常時における水道水の質的確保を図るとともに、新用途の導水からの直接取水などによりリスク対応力を向上させることを提案しております。

高位の予測が的中したら導水路があっても対応できない

【田口議員】上下水道局が今年4月23日の経済水道委員会で示した水需要予測の試算では、「平成6年のような深刻な渇水が発生した場合には、木曽川のみでは対応することができない」とされています。

 パネルをご覧ください。

お手元にも配布させていただきました。「木曽川のみでは対応することができない」とする根拠は、10年後の2034年度の一日最大給水量が、高位の予測では日量89万㎥が見込まれるが、平成6年のような大渇水が発生した場合、木曽川の給水可能量は81.6万㎥であるため、木曽川だけでは賄うことができないというものです。

 それでは導水路があれば対応できるのか。平成6年渇水相当の揖斐川の給水可能量は3万㎥ですので、木曽川と揖斐川を合わせても給水可能量は84.6万㎥にしかなりません。平成6年のような大渇水が発生した場合、一日最大給水量が89万㎥になるという予測が的中したら、導水路があっても対応できないのではないですか。4.4万㎥足りないのですから。上下水道局長の答弁を求めます。

【上下水道局長】本年4月に本市が試算した和16年度の1日あたりに必要となる最大の水量は、高位の値で89万㎥であり、平成6年規模の渇水時における木曽川からの給水可能量である81.6万㎥では、これを充足させることはできません。

 一方、連絡導水路を活用した場合、一日あたりに必要となる最大の水量を充足させることはできませんが、揖斐川から3万㎥を増量することが可能となりますので、一定の被害軽減効果が期待できるものと考えております。

堀川への導水―局長「導水する水の位置づけの整理・検討が必要」

【田口議員】本市が提案した導水路の3つの新用途については、その有効性や実現可能性に大いなる疑問があります。パネル(下)をご覧ください。

 3つの新用途とは、第一に、安心・安全でおいしい水道水の安定供給と称して、揖斐川の水を水源に追加するとともに、専用の施設で直接取水することにより、事故などで木曽川から取水できない場合に対応する。第二に、流域治水の推進と称して、大雨の予測時に木曽川のダムにて積極的な事前放流を行い、その後に雨が降らずダムの水位が回復しない場合に導水によって河川の流量を確保する。第三に、堀川の再生と称して、堀川への恒久的な導水を行うというものです。

 このうち、第三の「堀川の再生」については、実施しようとすれば、導水路事業で本市が目的としている利水から、目的を変更しなければならないと思うのです。現状の法体系のもとで、目的変更は可能なのですか。可能だとお考えなら、目的変更を行うためにどのような手続きが必要となるのか、上下水道局長にお尋ねします。

【上下水道局長】堀川への導水については、連絡導水路に係る検証の会議において、国をはじめ関係自治体へ説明し、国からは「大変重要である」との見解が示されているところです。

 堀川への導水の実現に向けては、導水する水の位置づけ、具体的な導水方法、関係者との合意形成などについて整理、検討する必要があり、今後も国等と連携して進めてまいりたいと考えております。

導水路からの直接取水―リスク対応万全ではない

【田口議員】新用途の第一についてもお尋ねします。事故などで木曽川から取水できない場合として想定されているリスクの一つは、令和4年台風15号によって静岡市の興津川(おきつがわ)で洪水が発生し、承元寺取水口が被災して断水が起きたケースです。本市は、犬山の2か所の取水口と朝日取水口から木曽川の水を取水しています。これらの取水口が洪水で被害を受けて取水できなくなった場合でも、導水路から直接取水する専用の施設を設けることで、揖斐川の水で対応できるという理屈です。

 しかし、仮に犬山の第一取水口が被害を受けて取水できなくなると、毎秒3.6㎥の取水ができなくなります。専用施設で導水路から直接取水できる量は毎秒1㎥ですから、とても足りません。

 上下水道局長、洪水被害などで取水口から取水できなくなると、導水路から直接取水ができたとしても、水が足らなくなり、市民生活に大きな影響を与えるのではないですか。お答えください。

【上下水道局長】取水口から取水ができなくなることは、水源リスクの中でも非常に影響の大きなリスクであると考えております。

 そのため本市としては、犬山市に2か所、一宮市に1か所と複数の取水口を設置してまいりましたが、いずれの取水口も木曽川の水を取水していることから、リスク分散という点では必ずしも十分とは言えません。

 一方、連絡導水路により、揖斐川の水を直接取水することができれば、木曽川以外の水を取水することとなり、大変効果的に水源リスクを低減させることができると考えております。

約188億円の費用負担が水道料金に

【田口議員】徳山ダム導水路の事業費の増大が、本市の水道経営にもたらす影響も軽視できないと考えます。

 導水路の事業費は当初計画の890億円の2.5倍にのぼる2270億円に増大するという試算が示されました。本市の費用負担も、水道事業では当初の約121億円から約207億円に増大すると想定されています。その3分の1は国庫補助で賄うとしても、水道事業での負担は約138億円です。導水路からの直接取水に要する施設の建設費は約50億円と想定されていますので、合わせて約188億円にのぼります。

 導水路建設の費用負担が水道事業経営に与える影響について上下水道局は、4月23日の経済水道委員会において、「経営収支にただちに大きな影響を与えることはない」と説明していますが、本当にそうなのか。

 水道料金の収入は、新型コロナ感染の拡大以前から減少傾向にあり、その一方で、労務単価や資材単価の高騰、電気料金の高止まりなどの影響で支出が増大しています。そのため、今年度予算は支出が収入を上回り、2年連続で純損失を計上しています。純損失が生じている現状では、施設の老朽化対策や地震対策などの建設投資の財源不足については企業債を発行して賄うことになることから、今後、企業債の返済や利払いが経営を圧迫することになるでしょう。

 水道事業の厳しい経営状況のもとで導水路事業に参画すれば、約188億円の費用負担が水道料金の値上げを招く要因の一つになるのではありませんか。

【上下水道局長】連絡導水路の総事業費については、内容の精査やコスト縮減について国へ申し入れをしており、事業に参画する三県と連携して引き続き要望してまいります。

 経営に与える影響については、国から示された工期、総事業費を踏まえると、連絡導水路と直接取水施設をあわせた減価償却費が計上されるのは20 39年度以降であり、その額は毎年約3. 2億円が見込まれます。この金額の規模は、直近の水道経営費の予算全体に占める割合で申しますと、0.6%程度となります。

 連絡導水路は、本市にとって水源の多系統化を実現する必要な施設であることから、水道事業を将来にわたり安定的に継続していくためにも、引き続き経営改善に取り組んでまいりたいと考えております。

量的確保の目的はそのままで事業参画するのか

【田口議員】木曽川水系連絡導水路事業について再質問します。

 上下水道局長は、徳山ダムの水が、非常時に必要不可欠というだけで、平常時における量的確保の必要性については答弁されませんでした。

 平常時においては、木曽川の給水可能量は160万㎥あるわけですから、量的確保の必要性はまったくありません。揖斐川の水がおいしいとしても、導水路から直接取水で取り込んだ揖斐川の水は、家庭の蛇口から出てくるときには木曽川の水と混ざってしまっています。結局、揖斐川の水を取水した分だけ木曽川の水をさらに余らせるだけじゃないですか。

 

 市長にお尋ねします。本市の新用途の提案では「当初目的である量的確保に加え」てと、量的確保が前提とされています。市長はかねがね水需要予測と現実との乖離を指摘されてきました。「3倍も違う」と言って。水は余っている。それなのに、どうして量的確保という当初の目的はそのままにして、導水路事業への参画を継続されるのですか。

【河村市長】

 これ1年以上前に御党に答えとりますけど。

 これ皆さんに何のこっちゃ、わからんけど、今大体名古屋で使ってる水は秒速10トンだけど、当時、木曽川導水路がはなしに出た、徳山ダムが出た、昭和46年ぐらいだったと思うけど、秒速30t使うようになるだろうと、名古屋はですね。だからあれ3倍の見積もりだったわけですよ、これ。30%多いんじゃないかね、3倍の見積もりをして、そのために徳山ダムという日本最大のダムを作った。

 ということなんで、これはとんでもないよと言うんだけど、わしが決めたんじゃないでね、これ、本当に。僕の前ですから、決められたのは。

 わしは反対しとったんです。そんなもん なられへんということで、市民の方も。なかなかその水需要予測については、国交省並びに名古屋市の水道局より正確に予測しとったということで、立派なもんですよ、これ。

 だけど作ってまった場合、どうするかですわ、問題は。造ってまって、大体700億円ぐらいかかると言われておりまして、名古屋市だけでですよ。700億円、皆さん払ってくんだけど。何も水も一滴も何もない、700億円と。これはちょっとね、そういうちょっと無責任なことはわしもできんと。

 ただ、いろいろ使い方を考えながら、無駄なダムを造ってまったんだけど、これ。

 繰り返しますが、ワシが決めたんじゃないですよ、これ言っておきますけど。私の前の方ですけど。前の前か前かどうか知りませんけど。

 やっぱり、それは名古屋市民が、そんだけ700億円、使っていくわけだけど。だったらこうやってきゃ良かったなと思えるような使い方を考えてこうということで、この間、提案申し上げた。他の用途のないか、ということでいろいろ学者と毎年のように話しとったんだけど、伊勢湾を浄化するって言われたのがありましたけど、それもなかなか具体的な案というのはそうなくてですね、そういうことになりましたので、いろいろちょっと知恵を絞って、せっかく作ってまったもんで、これ、名古屋市民の生かせるように、それぞれ水だもんでこれ水はやっぱりあった方がいいですよ。

 それと決定的に木曽川よりどうかということは、なかなかいいにくいですけど、揖斐川のあれは、いや、徳山ダム超えるともう福井県ですからね、すぐ向こうが。だから非常に上流のええ水であろうと、新しく生まれてくる赤ちゃんたちが飲む水とすると、大変ええじゃないかということで、生かして使ってこうという気持ちで考えたということでございます。

河村市長は答弁不能

量的確保の目的は成り立たなくなっている

【田口議員】去年の2月、うちの江上議員(当時)の質問に対する答弁と全く一緒なんですけど。

 本市が導水路事業に参画した当初の目的である量的確保、すなわち毎秒1㎥の水道水の確保という目的は、新用途の提案でも変わっていないんです。

 なぜそれなのに参画をされたんですかという質問をしたんですけれどもお答えになりませんでした。答弁不能というふうに受け止めさせていただきます。結局しょうがないというだけ。

 パネルをご覧ください(下)。

 一日最大給水量も一日平均給水量も、この間、減少傾向にあります。それがⅤ字回復するという高位の予測は、信ぴょう性に欠けると言わざるをえません。Ⅴ字回復しても、一日平均給水量は、平成6年渇水相当の木曽川の給水可能量を下回っています。大渇水になっても、節水は必要ですけれども、木曽川だけで対応できるのではないですか。量的確保のためという当初の目的は、明らかに成り立たなくなっています。

堀川に導水しても徳山ダムの水は余ったまま

 次に、新用途ですけれども、上下水道局長は、導水路による直接取水は「大変効果的に水源リスクを低減させる」と言われましたが、実際に木曽川から取水できない事態が生じたら、揖斐川の水を直接取水できても、市民生活に多大な影響を与えることは明らかです。揖斐川から取水できる量は、木曽川から取水している量の10分の1しかないのですから。リスクに対しては導水路があれば万全というわけではありません。

 堀川への導水については、「導水する水の位置づけ」の整理、検討が必要と答弁されました。これは、本市が確保している利水分を堀川導水に転用するのではなく、導水路のもう一つの目的である長良川と木曽川の河川環境を改善するための水の活用も検討するということです。環境目的の水の活用では、本市が確保している毎秒1㎥の水は余ったままになるじゃないですか。

 このように新用途については、その有効性が問われています。そのうえで、実現の見通しについて伺います。本市の提案にたいして中部地方整備局は、「専用施設による直接取水」も「流域治水の推進」も「堀川の再生」も、「検証結果を踏まえ」て検討等を行っていくとの意向を示しています。果たして導水路の着工までに間に合うのでしょうか。

 上下水道局長にお尋ねします。導水路の着工までに、本市が提案した3つの新用途が具現化される見通しはありますか。

【上下水道局長】本市が提案した新用途については、国から、検証結果を踏まえ、技術的支援や関係者との調整、検討等に協力するとの意向が示されているところです。

 今後、国、県、関係機関と連携し、新用途の早期実現に向け、精力的に取り組んでまいりたいと考えております。

新用途が具現化されなくても参画し続けるのか

【田口議員】はっきりとした見通しをお答えになりませんでした。

 河村市長は、「徳山ダムを造ってしまった以上は用途を工夫して、市民のみなさんのためになるようにするのが市長の仕事だ」といって建設容認に方針転換されました。しかし、市長が「市民のため」と言っている新用途は、導水路の着工までに具現化される見通しは立っていません。

 市長、新用途が導水路の着工までに具現化されなくても、導水路事業に参画し続けるお考えですか。

河村市長「田口さんに聞きたい。造ってしまったダム、どうするんだね」

【河村市長】ほんならちょっとよう、田口さん聞きたいけど、これどうするんだね。

 それを聞ききたいですね、つくってまったやつ。700億円、払い続けるんだけど。水の一滴も来んのに、ほんで払い続けるんですか。聞きたい、ちょっと逆質問させてください。

【田口議員】結局答弁できないということですね。

 新用途なるものは、河村市長が導水路の建設容認へと舵を切るための方便にすぎないと思うのです。昨年5月に開かれた木曽川水系連絡導水路意見交換会で、徳山ダム建設中止を求める会の近藤ゆり子さんが、次のように発言されています。

 「徳山ダムは要らなかった。要るという議論にするために、新しい用途がどうだこうだという理屈をつけてはならない。やはり要らないものは 要らないんです。……『無駄にしないために』とさらに無駄を重ねることは、未来世代により大きなツケを回すことになります。これこそやってはならない『無駄づかい』だと思っています」。

 水道水の水余りが明白であるにもかかわらず、有効性も実現可能性も乏しい新用途なるものを持ち出して導水路事業に参画することは、無駄に無駄を重ねるものであり、水道料金の負担増となって、未来世代により大きなツケを回すことになるでしょう。徳山ダム導水路事業からの撤退を求めて、質問を終わります。

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