2007年9月定例会 議案外質問 さとう典生議員(2007年9月21日)

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大規模集客施設の立地規制について

規制直前の建て替えは本来の法の趣旨に反する

【さとう議員】
大店立地法になってから、大型店の出店で周辺への交通渋滞や、既存中心市街地の商店街がシャッター通りになるなどの大問題を引き起こし、全国で見直しを求める声が拡がり、都市計画法が改正されました。この11月30日から準住居地域、第2種住居地域、工業地域について、1万平方メートル以上の大規模集客施設すなわちスーパーなどの立地が制限されることになりました。

この法律施行を前にして、西区の工業地域にある「ワンダーシティー」の建て替え換えが行われようとしています。延べ床23万平方メートル、中部地区で最大になるといわれ、8月27日に営業を停止し、解体作業にとりかかる計画です。その建築計画をめぐって、近隣マンションからクレームがつきました。これまでは平地の駐車場だったのに目の前に立体駐車場が建築されるので困る、「位置をずらして」ということです。説明会で業者側は「今から設計変更しては間に合わない」「今建て替えないと未来永劫建てられない」と法制度では特例があるのに、それを隠した説明で住民を説得しようとしたと聞いています。どうしても11月30日の法施行前に着工するという、いわゆる駆け込み建築です。

規制が開始される前の移行期間中にこうした行為を行うのは本来の法の趣旨に反すると考えますが、どう認識しているのでしょうか。住宅都市局長にお尋ねします。

「駆け込み」も法律上は適法となる(局長)

【局長】
いわゆる「駆け込み」については、法律上は、法施行までの間は、従前の規定への適合で適法となる。

準工業地域でも駆け込み建設が

【さとう議員】
法律では規制されなかった準工業地域について、市独自に規制するために現在手続きが進められています。今後、条例改正などの手続きが行われ、来年8月頃から規制対象になると聞いています。

その準工業地域でも、規制前に大規模集客施設を建てようという動きがあります。南区の「住友電工の跡地」です。ここは「ダイヤモンドシティー」と豊田ホームの100mを超える超高層マンション計画が5年ほど前に発表されましたが、土壌汚染問題や住民の反対などで現在まで延びていました。最近、店舗部分の面積を2万4千平方メートルに縮小し、マンションも当初の計画を横にした14階建て、横100mに変更し、住民説明会を開いています。

このような駆け込みに対して本市がどのような対応をとるのかが問われています。名古屋市が制度導入を前に行ったアンケートでも、名古屋市民の半分は「大規模集客施設は不要だ」と答えています。私はこの市民の声に答えて、名古屋市は新たな設置を認めるべきではないと考えます。準工業地域への立地が規制された後は、開発促進区と定め、地区計画を作れば、進出ができる特例があります。その取り扱い基準では「周辺住民の理解を得ること」などが定められます。「住友電工の跡地」は立地規制前であっても、この基準に沿って、「住民の理解を得ての地区計画」にすべきであり、本市として、開発者に指導なり、協力を求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。住宅都市局長にお尋ねします。

指導できる根拠が弱い(局長)

【局長】
準工業地域における規制は審議会の答申にも至っていない状況であり、指導等を行う根拠は弱いと考える。しかし、事業者において、法施行前でも、法改正の趣旨を理解し、計画内容をできるかぎり都市構造や周辺環境に影響の少ないものとし、かつ地元住民の理解も得て進めるよう、市としても協力を求める。

高度地区の拡充について

規制の周知徹底で不適格建築物の根絶を

【さとう議員】
近年、市内ではマンション建築をめぐる紛争が増えています。当局資料でも平成16年度30件、平成17年度29件となっています。階数をめぐるものが平成17年では26件にもなりました。昨年10月末に当局は中心部をのぞき高度地区を全市に拡充する方針を明らかにして、この3月にはパブリックコメントを実施しました。そろそろ都市計画案が発表される時期です。都市計画審議会での承認を得て来年6月頃には施行されると聞いています。建築紛争を一定防止したり、都市景観上からも、積極的意味はあると評価するものです。

ところで、規制されるまでの一年あまりの間に建設されるマンションの高さはどうなのでしょうか。調べましたら、4月から8月までの調査では12棟が来年からの高さ制限に違反して既存不適格建築物になります。今後も、このような、いわゆる「駆け込み建築」が行われるのは間違いありません。

私が相談を受けた建築紛争があります。守山区の本地住宅の南に14階建てのマンションが建つというので、日影になるみなさんが業者に階数を下げてと要求しています。この地域は来年6月以降は10階までしか建てられません。このマンションは建築中に6月を迎え、建築途中から違法な建物になるわけです。そして、分譲時には買い手に「高さ制限に違反した建物である」と説明しなければなりません。話し合いの場でそのことを指摘されると業者は「知らなかった。知っていれば土地は買わない。役所が不親切だ」と答えました。

緑区でも15階建てマンションをめぐり紛争になっていて、相談を受けましたがが、ここも規制後は違法状態になります。

これらの例では、高層マンション建築で周辺住民に日照被害を与え、その一方でマンションの購入者は違法建築物に住むことになり、こちらも被害者になるわけです。マンション業者は利益を得て、「さようなら、後は知りません」と言うわけで、こういうことが許されるのかと憤りでいっぱいです。

高度地区の導入をめぐっても、駆け込み建築が横行しているといわざるを得ません。そこで、住宅都市局長にお尋ねします。本市として「高度地区の拡充について」不動産業界や建築士会などにきちんと説明、周知して、今後導入しようとしている規制にあわせて、建築するよう指導し、協力を求めるべきではないのでしょうか。

周知に努めてきた(局長)

【局長】
素案を本年1月に公表し、広報なごや特集号の配布、6回の一般説明会、2回の関係業界への明会の開催などを通じてその周知をはかってきた。1月末から2か月間のパブリックコメントを実施、3月には公聴会を開催し、これらの中でいただいた意見に対する見解書を8月に公表した。

規制が明らかになってからの建設にはペナルティを課せ

【さとう議員】
一定の期間を定め、たとえばパブリックコメントが終わった、4月以降に建築された既存不適格建物については「次の立て替え時に既存建物の特例を認めない」というペナルティーを課すべきと考えますがいかがでしょうか。

法的に難しい(局長)

【局長】
現在は、都市計画案の作成前の段階であり、素案での指導や都市計画決定前のペナルティは法的に難しい。今回の案は市民、事業者へ大きな影響を与えることから、今までも周知を図ってきたが、高度地区拡充の趣旨を理解してもらえるよう、なお一層の周知に努めたい。

地域に影響がないように努力を(要望)

【さとう議員】
法施行前は適法だというのはそのとおりです。しかし「目の前ですぐに違法状態になるのを見過ごしてよいのか」というのが命題で、できるなら、法が予定する姿になるように行政が努力することと、開発事業者も協力する中で、よりよいまちづくりが行われるのだと思います。

答弁では「計画内容をできるかぎり都市構造や周辺環境に影響の少ないものとし、かつ地元住民の理解も得て進めていただけるよう、市としても積極的に協力を求めていきたい」とのことでした。是非その立場でがんばって欲しいと思います。

準工業地域について、「審議会答申前で、指導など行う根拠は弱い」とのことでしたが、11月5日に都市計画審議会が予定されています。その場で答申がでれば、指導する根拠ができるわけで、その場合にはおなじように協力を求めてがんばっていただくよう強く要望しておきます。

高度地区についても、都市計画案になれば、それ以降は「指導やペナルティーの対象にするのは可能」と考えておられるようなので、是非努力していただきたいと思います。

木曽川水系連絡導水路について

導水路事業によって水道料金へ影響がでないのか

【さとう議員】
先般、徳山ダムから木曽川までの導水路の事業計画が発表されました。その説明を聞いて、まず、思ったのは「とにかく徳山ダムを造った以上、水を引いてきて、その水を使う」ことを至上命令にした計画なのだ、ということです。しかも、長良川を経由して、一部の水を持ってくると言うことで、今まで何かと批判の的であった「長良川河口堰の水利権」を使うことまで展望に入れた計画で、「転んでもただでは起きない」とはこのことです。

その結果、上下二本の水路を作ることになり、本市の負担金も当初は82億円が120億円にふくらむことになったわけです。さらに、工業用水の取水施設として4億5千万円が必要です。

問題は果たしてこの施設をこれだけのお金を使って作る必要があるのかということです。もう一度振り返って、徳山ダム事業への参加について検証する必要があると思います。名古屋市の水源はどうなっているのかということです。一言でいって、実は名古屋市の水源にはずいぶん余裕があります。

平成17年7月の経済水道委員会で上下水道局は業務指標の試算と評価を発表しました。その中で水源利用率をみると、本市は47.3%、東京都の70.8%など他都市と比べて大変低い数値になっています。全国と比較すると名古屋の水は「余裕たっぷり」ということが数値としてハッキリ現れたと思います。

徳山ダム本体で本市は539億円を負担しなければなりません。また、減価償却費は55年間経費を押し上げ、水道事業の収支が悪化します。そして、今度はその水を引いてくるという導水路事業です。ムダの上にムダを重ね借金を増やし、経営悪化で料金値上げという形で市民生活に影響を及ぼすのではないかと心配せざるを得ません。

そこで上下水道局長にお聞きします。徳山ダム本体事業および今度の導水事業参加によって、将来、水道料金が値上げされるのではないかと危惧をしていますが、いかがでしょうか。

経営努力によって対応する(局長)

【局長】
木曽川水系連絡導水路につきましては、平成16年10月に「徳山ダムに係る導水路検討会」を設立し、国土交通省中部地方整備局、岐阜県、愛知県、三重県及び名古屋市で協議をしてきた。8月22日の検討会で、導水路事業計画の概要が中部地方整備局より提示された。現在、総事業費や本市負担額が適切であるかを精査している段階であり、事業経営に与える影響は、この精査の結果をもとに検討する。いずれにしても、徳山ダムおよび導水路事業によって発生する費用は、様々な経営努力によって対応すべきものだ。

導水路事業から撤退を

【さとう議員】
いまからでも、この導水路事業から撤退するべきであります。いかがでしょうか。

水道の安定供給を図るためにぜひとも必要(局長)

【局長】
近年木曽川においては少雨化に伴ってたびたび渇水が発生し、一昨年夏にも市民に節水をお願いした。このような事態を回避し、都市活動や市民生活を支える水を安定的に確保するため、徳山ダムおよび導水路事業に参加している。さらに、導水路事業を契機に長良川河口堰で開発した水も合理的に利用できるよう働きかけている。

導水路事業は、名古屋の将来を見据えた上で、水道の安定供給を図るためにぜひとも必要なものだ。

水は有り余っている。中止を(意見)

【さとう議員】
答弁では「一昨年夏にも市民に節水をお願いした」とのことですが、水圧を少し下げて対応でき、市民にはほとんど影響がなかったと思います。とにかく名古屋の水は一度も断水したことがありません。

渇水に備えて莫大な費用をかけてダムを造らなくても、市民の協力で節水すれば済むことです。

ところで、これまで水需要予測の件で当局は、渇水になっても1日あたり過去最大給水量124万トンを確保するため、徳山ダムをふくめて193万トンの水利権が必要と説明してきたと思います。

しかし、実際には「渇水の時は、その直近の最大給水量を基準にして」取水制限を行うことになっているそうです。最近では110万トンが最大ですからそこから取水制限をされるのであれば、水利権の量そのものはあまり関係なくなるのではないでしょうか。

そうであるならば、借金をしてダムを作ったとしても、何の役にも立たない、そもそも話の前提が全部崩れることになるわけです。

だったら、なおのこと導水路を作る必要性は全くないといわざるを得ません。いまからでも中止すべきだと改めて指摘して私の質問を終わります。

 

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