2003年3月20日、中央教育審議会は、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(答申)」を遠山文部科学大臣に提出した。また、2004年6月16日、自民党、公明党の与党教育基本法改正に関する協議会は、「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告)」を発表した。
しかし、教育基本法は、憲法の保障する教育にかかわる権利を実現するために定められた教育法規の根本法であり、準憲法的な性格を持つ法であると考える。戦後、さまざまな問題を抱えながらも、義務教育の保障、僻地教育や定時制・通信制教育、障害児教育の改善等がなされたのは、同法の理念を実現すべく努力が積み重ねられてきたからであり、改正には慎重であるべきである。
しかるに、与党の中間報告は、前文の「憲法の精神に則り」という文言を削除する方向を示し、教育の目的から「平和的な国家及び社会の形成者」という文言を意識的に削除し、教育の目標に新しく「公共」及び「郷土と国を愛し」あるいは「大切にし」という文言を盛り込むなど、愛国主義・国家主義を盛り込もうとするものであり、憲法の理念とは相入れないものである。このような改正がなされれば、教育のなされる過程において、、憲法第19条の保障する内心の自由に抵触するおそれは大きい。また、教育の中立性を教育行政の中立性に改正することは、国家及び地方自治体権力の教育への介入を許容するものであって、到底認めることはできない。
本来の教育の目標は、子どもたち一人一人の人格の全面的な発展を実現することにあり、そのためには、子どもたちの学習権と人権を学校内で尊重すること、一人一人の子どもの自律性と人格が大切にされることが最も大切である。このような視点は、まさに教育基本法の理念・視点であって、ここからも教育基本法の正当性は明らかであり、そのためには、教育の中立性確保が不可欠である。
今求められているのは、拙速な教育基本法の改正ではなく、教育基 本法の理念や精神を十分に生かした教育を実施すること、すなわち子どもの権利を基本に据えて、少人数学級の実現、教育施設の充実、財政的援助の拡充等の諸条件の整備を行うことである。
ついては、貴議会が次の事項を内容とする意見書を政府、国会及び関係行政庁に提出されるようお願いする。
- 教育基本法の見直し・改正を拙速に行わないこと。
- 教育基本法を学校や社会に生かす施策を進めること。
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