意見書・決議

 日本共産党をはじめ各会派から提案された12件の意見書・決議案について、議会運営委員会理事会で協議が行われ、7案件は適切な修正を行って合意し、成立しました。

  日本共産党の提案した2案件のうち、介護保険の制度見直しに関する意見書(案)は合意が得られ本会議で可決しましたが、他は他党派が反対し議案として本会議に上程することはできませんでした。

意見書案に対する各会派の態度
(議会運営委員会に提出された意見書・決議案)
意見書案 原案提出 各会派の態度
共産 自ク 民主 公明
介護保険制度改正に関する意見書(案) 民主 共産案と一本化で○
障害者施設整備の財源確保に関する意見書(案) 民主
地方競馬に対する支援に関する意見書(案) 民主 検討
簡易生命保険料の団体払込制度の改善に関する意見書(案) 自民
性犯罪者の再犯防止に関する意見書(案) 自民 修正 修正
指定都市議員の公設秘書設置に関する意見書(案) 自民 取り下げ
自然災害対策の推進に関する意見書(案) 公明 修正 修正
少子化対策に関する意見書(案) 公明 修正
発達障害者に対する支援促進を求める意見書(案) 公明 修正 修正
定率減税の縮小・廃止に関する意見書(案) 共産
介護保険の制度見直しに関する意見書(案) 共産 民主案と一本化で○
住民基本台帳の閲覧制度に関する意見書(案) 委員会
発議

セルの背景が黄色いものは可決された意見書
議運に提案された段階での態度 ○=賛成 ●=反対
 ●が1つでもあれば議案として本会議に上程されません。
 共産:日本共産党 民主:民主党 自民:自民党 公明:公明党

《採択された意見書》

介護保険制度改正に関する意見書

 平成12年から導入された介護保険制度は、介護保険法施行後5年を目途とした見直しが進められており、制度改善に向けた取り組みが期待されている。
  高齢社会となった我が国を豊かな社会とするには、介護保険制度を安心して利用できるものとすることが必要不可欠であるが、特別養護老人ホーム等の整備が需要に追いつかないために多くの入所待機者が存在することなどから、介護サービス基盤の充実を図る必要があるほか、保険料を負担する被保険者の範囲拡大や障害者施策との統合に関する問題など、保険者である地方公共団体に共通する多くの課題が残されている。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、介護保険の制度改正に当たっては、以下の事項に特段の配慮をするよう強く要望する。

  1. 平成17年度から創設を予定している地域介護・福祉空間整備等交付金(仮称)により地域の介護サービス基盤の整備を円滑に行うことのできるよう十 分な財源を確保すること。
  2. 保険料を負担する被保険者の範囲拡大(対象年齢引き下げ)や障害者施策と の統合については強行せず、地方公共団体や関係者の意見に基づき慎重に検討すること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

障害者施設整備の財源確保に関する意見書

 障害者施設の整備に努めることは、国及び地方公共団体の責務である。
  これまで国は、地方公共団体との国庫補助協議による障害者施設の整備補助を原則としてすべて認めてきたが、今年度においては、障害者施設整備の国庫補助に閲し、地方公共団体からの協議数を大幅に下回る採択数となり、かつ、単年度事業ではなく2カ年事業とならざるを得なくなった。
  このことは、今年度を初年度とする本市の障害者基本計画等の遂行にも大きな支障を来し、障害者福祉行政に重大な影響を及ぼすものである。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、障害者施策を積極的に推進するため、平成17年度以降については地方公共団体が計画する障害者施設整備に係る財源を確実に確保するよう強く要望する。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

性犯罪者の再犯防止に関する意見書

 昨年の奈良市における女児誘拐殺人事件を受け、政府は性犯罪者の再犯防止に向け、受刑者に対する矯正教育を義務づける方針を示すとともに、性犯罪前歴者の出所直後の居住予定地等について、警察への情報提供を行うことが報じられている。
  受刑者への矯正教育については早期の実施が望まれるが、性犯罪前歴者の再犯率の高さを考えると、その所在を確実に把握することが必要である。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、性犯罪前歴者の定期的な住所の届け出を義務づけるなど、性犯罪者の再犯防止策をより一層充実するよう強く要望する。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

自然災害対策の推進に関する意見書

 昨年、我が国では大規模な自然災害に相次いで見舞われ、甚大な被害が発生した。被災地では全国各地から多くの災害ボランティアが参集し、災害復旧や被災者支援活動に大きく寄与しており、今やボランティア活動なくして災害復旧等はあり得ないと言われているが、資金面での制約から災害ボランティアの活動に必要となる資機材の調達等に苦慮しているのが現実である。
  当地域では、東海及び東南海・南海地震の発生による被害が懸念されており、地震発生後の復旧支援を行う災害ボランティアが広域的かつ円滑に活動できる仕組みを整備しておくことが喫緊の課題となっている。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、大規模自然災害対策の推進に向け、災害ボランティアの活動資金として災害ボランティア基金を創設するよう強く要望する。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

少子化対策に関する意見書

 我が国においては近年急速に少子化が進んでおり、若年労働者の減少による社会活力の低下や社会保障制度の不安定化など、社会全般にわたって大きな影響を与える問題となっている。
  こうした少子化の流れを変えるため、平成15年度には、地方公共団体等に子育て支援のための行動計画の策定を義務づけた「次世代育成支援対策推進法」が制定され、昨年末には新エンゼルプランにかわる新たな少子化対策として「子ども・子育て応援プラン」が決定されている。
  しかしながら、夫婦の出生力の低下という新しい傾向も指摘されており、その要因として、出産・子育てに対する経済的な負担の重さや仕事と子育てが両立できる環境の整備のおくれ等が挙げられていることから、さらに積極的に少子化対策に取り組んでいく必要がある。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、少子化対策をこれまで以上に強力に推進するため、次の事項について実現を図るよう強く要望する。

  1. 児童手当の拡充を初めとした経済的支援を一層充実すること。
  2. 出産等を機に退職した女性の再就職支援を充実すること。
  3. 妊産婦健診及び出産にかかる費用を健康保険の適用対象とすること。
  4. 男性の育児休業取得を促進するための対策を講じること。
  5. 長時間労働の解消や出産後も働き続けられる労働環境の一層の改善を進めること。
  6. 待機児童の抜本的解消など保育制度の充実を図ること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

発達障害者に対する支援促進を求める意見書

 昨年、発達障害者支援法が制定され、国及び地方公共団体の責務として、発達障害の早期発見や発達障害者に対する支援等について必要な措置を講じることが定められた。
  自閉症を初めとした発達障害は、低年齢で症状があらわれるため、幼児期から学齢期、就労まで一貫した支援が必要であり、関係機関や市町村が連携して、発達障害者一人一人の状況に応じた支援を行うことが欠かせない。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、発達障害者に対する支援をより促進するため、次の事項について早急に実施するよう強く要望する。

  1. 市町村による支援施策への財政支援を拡充すること。
  2. 新たに5歳児健診を行うなど、発達障害の早期発見に向けて健診制度を充実させること。
  3. 発達障害者の雇用を支援する相談員等を法的に位置づけるとともに、その配 置に必要な財政支援を行うこと。
  4. 発達障害の診断等の専門的な知識を持つ医師の確保を図ること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

住民基本台帳の閲覧制度に関する意見書

 先般、本市において、住民基本台帳の閲覧制度を悪用して母子家庭を探し出し、留守番中の女子中学生を襲うという強制わいせつ事件が発生した。
  本市においては、今回の事件の発生を受け、閲覧申請時の本人確認を開始したところであるが、現行の住民基本台帳法の規定に基づく閲覧制度のもとでは制度の悪用を完全に防ぐことは難しい。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、閲覧制度の悪用を未然に防ぐ観点から、住民基本台帳の閲覧は、その利用目的として公共性・公益性が客観的に確認できる場合のみ認めるとする法改正を行うなど、住民基本台帳の閲覧制度の抜本的な見直しを早急に行うよう強く要望する。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

《日本共産党が提案したが、採択されなかった意見書》

定率減税の縮小・廃止に関する意見書(案)

  政府は、税制調査会の「個人所得税の定率減税を2006年度までに段階的に縮小・廃止」という答申を受け、所得税・住民税の定率減税を縮小・廃止しようとしている。
  この定率減税は、1999年度から「著しく停滞した経済活動の回復に資する」ことを目的として、所得税の最高税率の引き下げ、法人税の基本税率の引き下げとともに「恒久的減税」の一つとして実施されたもので、合わせて約7兆円の大型減税として、景気の落ち込みが深刻化する経済情勢の下支えとして大きな役割を担ってきた。所得税は一律20%、最高25万円まで、個人住民税も15%最高4万円まで減額され、就業者の7割が減税されている。これが全廃されれば、総額年3.3兆円、1人当たり年最大29万円の増税となる。
  −方、内閣府が作成した報告書「日本経済2004−持続的成長の可能性とリスクー」では「企業の利益が伸びても給与は下がる、1995年以降逆相関が強まっている」と分析し、「今後、消費が持続的に向復していくためには、所得の回復がかぎ」と述べている。また、民間のシンクタンク「日本総合研究所」は、定率減税が半減された場合、個人消費を1.3兆円押し下げるとの試算を公表し、2005年度からの減税縮小は景気減速のタイミングと重なり、景気後退をもたらしかねないと警告している。このような状況のもとでの定率減税の縮小・廃止が、景気回復の芽を摘み取るものであることは明らかである。
  よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、定率減税の縮小・廃止を行わないよう強く要望する。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。