個人質問(3月3日) 黒田二郎議員 大型店の身勝手が激増
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議場で質問する黒田二郎議員 |
【黒田議員】
千種区のサッポロビール工場跡地に大型店イオンが出店することになり、昨年11月、大店立地法にもとづく届出が名古屋市に対して行なわれました。
商圏は5キロメートルと広く、北は上飯田から南は国道1号線あたりまで、東は星ヶ丘から西は中村区役所あたりまでとなっています。この商圏の中に、2003年7月に開店したばかりの駐車場3200台を擁し店舗面積4万6,000平方メートルのイオン熱田ショッピングセンターがあり、近く東区にも駐車場3000台を擁するイオンショッピングセンターが出店されようとしています。これだけどんどん大型店ができれば、市内の商店街がますます衰退していくであろうことは誰にでも容易に想像できることです。商店街がなくなれば人と人とのつながりが薄くなり、コミュニティが保てなくなっていきます。今でさえ、シャッター通りと呼ばれるようなさびれた商店街が増え続けている中、このような大型店の出店ラッシュは問題です。最近、千種区にオープンした別の大型店周辺に住む高齢者は、「もうあそこへは買い物に行きたくない」と言います。なぜかと聞くと、「店が広すぎてくたびれる」と言うのです。広すぎる店は、高齢者向けではありません。このようにして、資本の力に物を言わせどんどん出店する大型店は、まちのコミュニティを破壊し、高齢社会が進む中、高齢者が住みにくいまちへと、まちそのものを変えていきます。
ところで、旧都市基盤整備公団は、サッポロビール工場跡地を買い取り、開発計画をつくりました。そして、この地域は、「都市再生」緊急整備地域に指定されました。旧都市基盤整備公団=現在の都市再生機構は、いまや賃貸住宅の建設事業から撤退し、その主な仕事は「都市再生」事業が中心です。都市再生機構は、全国の工場跡地を次々に買い取り、基盤整備をした後、民間企業による分譲住宅などの開発をすすめていますが、そこにはほぼ例外なく大型店を誘致しています。サッポロビール工場跡地の開発は、まさにその典型とも言えるものであります。
また、現在、大型店の出店計画は、東区、南区、緑区というように、市の中心部にも周辺部にもありますが、いったいこの名古屋をどうしようというのか、大型店出店者には、住民の立場にたったまちづくりの観点などはまったくないと言わなければなりません。
【黒田議員】
ところで、イオン千種ショッピングセンターは、24時間営業ということですが、2000年に廃止された大規模小売店舗法いわゆる大店法には、閉店時刻についても商業者との調整を必要とする規制がありました。この大店法が廃止されて以降、今日までの5年間に、閉店時刻を午後11時以降とする深夜営業の届け出は、私が調べたところ、36件あります。年度別にみると、2000年すなわち12年度と13年度はそれぞれ1件ずつだったものが、14年度には6件、15年度17件、そして今年度は今日までに11件と、とりわけ、この2年間に急増しています。今、深夜営業や24時間営業が増えてきたことによって、深夜まで車が行きかい、住民の平穏な生活が脅かされ、青少年への影響が心配されています。
このような大型店の無秩序な出店や深夜営業には、どうしても歯止めをかける必要があります。そこで、松原市長にお聞きします。
【黒田議員】
大型店の新たな出店や撤退、深夜営業などにかかる届出があった場合、行政としてまちづくりや生活環境にどういう影響を与えるか調査し、出店者に意見を述べるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
【市長】
「大規模小売店舗立地法」にもとづき、設置者は周辺の状況や地域づくり街づくりに関する計画や事業等について情報収集し、特に交通・騒音・廃棄物などの生活環境への影響については、十分な調査・予測を行ったうえで適切な対応を行うこととされている。したがって大型店の届出は、このことをふまえてなされるものと考えている。
【黒田議員】
全国には、まちづくりの観点から、深夜営業を規制する条例の制定や指針づくりをすすめている自治体がありますが、市長は、どのようにお考えでしょうか。
また、大型店の無秩序な出店や撤退、深夜営業を規制する法整備を、国に対して強力に働きかけるべきだと思いますが、いかがでしょうか?
【市長】
大型店の出店や深夜営業の規制については、「法」の趣旨に反するため出来ないとされている。法律を適正に運用することが重要。施設者自らによる適切な対応と地域住民に理解されるための十分な説明が必要・重要と考えている。特に深夜営業を実施する大型店に対しては、心配や不安の声があることもあり、地域における安心・安全に関する活動への協力を今後とも働きかけていきたい。
【黒田議員】
大規模小売店舗立地法第5条4項は、「当該届出の日から八月を経過した後でなければ、当該届出に係る大規模小売店舗の新設をしてはならない」と規定しています。ところが、イオン千種ショッピングセンターの届出日は、昨年11月5日であるのに、開店予定日が今年5月10日となっています。これは、明らかに大店立地法違反です。そもそも法に違反する届出を受理すること自体、問題ではありませんか。法で認められていない日を開店予定日として記載した届出書は、書類の不備と解釈し、受け取るべきではないと考えますが、いかがでしょうか。
【市民経済局長】
イオン千種は、昨年11月5日にイオン株式会社から当市に新設の届出がされ、届出書には新設日が平成17年5月10日と記載されている。これまで本市に出された新設の届出の中には、届出の日から8ヶ月未満の日にちを新設日として記載された事例もある。このような日付が記載された届出については、受け付けて良いことを国に確認したうえ受け付けている。現在、千種ショッピングセンターの新設の届出については手続き中であり、記載された新設日にかかわらず届出の日から8ヶ月以内に周辺地域の生活環境の保持の見地から本市の意見の有無を判断し、設置者に通知していきたい。
【黒田議員】
昨年6月14日、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」いわゆる国民保護法が国会において可決、成立しました。同日、日本弁護士連合会は、次のような声明を発表しています。「今後の国民生活、人権保障、統治機構を大きく変容させる可能性を秘めたものであり、広く国民的議論を行なう必要があったが、衆参両院とも十分な論点整理や審議が行なわれず、法案の必要性や問題性が国民の前に明らかにされてこなかった。」国民に、法案の内容が充分知らされず、国会の審議も不十分なまま可決されてしまったのが、国民保護法だったのであります。
国民保護法は、わが国を「戦争しない国」から「戦争できる国」へと変えていこうとする有事法制の一環であり、「有事」の際の住民避難計画や訓練を自治体に義務づけ、米軍や自衛隊の戦争遂行に疎開や避難の名目で国民を強制動員するものであります。国民保護法は、都道府県と市町村に、それぞれ「国民保護計画」の作成を義務づけており、名古屋市の新年度予算案には、その準備として、調査費が計上されました。地方自治体は、国が決めた方針に無条件に従い、政府に言われるままに計画をつくらなければならないのでしょうか。戦争は、自治体の仕事ではありません。
【黒田議員】
さて、政府は、昨年12月14日、「国民保護計画」の基準となる「国民保護に関する基本指針」の要旨を公表しました。そこでは、日本への武力攻撃を現実の脅威のように描いていますが、政府がこの「指針」をつくった同じ12月に閣議決定した新「防衛計画の大綱」では、「わが国にたいする本格的な侵略事態が起きる可能性は低下している」と書いています。それでいて、一方で、住民避難のための「国民保護計画」をつくるというのは、まったく、矛盾しています。
また、国民保護法における自治体の中心的役割は、「住民保護」とされていますが、その場合、自治体の自主的判断によるのではなく、すべて対策本部長=内閣総理大臣の指示のもとに、実施することになっています。自然災害のときの「住民保護」は、現場に近い自治体の自主的判断のもとに行われますが、戦争の場合には、軍事作戦が優先されるためであります。
昨年の国会で、「住民避難」について、鳥取県の「国民保護担当市町村職員教育訓練」の場において、自衛隊幹部が語った言葉が取り上げられています。それは、「基本的には戦場にいては邪魔になるものを立ち去らせることが目的」であるというものでありますが、このことについて、当時の防衛庁長官は「認識として誤っているところがあるとは思っておりません。」と答弁しています。このように、「住民避難」とは、戦争災害から住民を守るのではなく、軍事行動を円滑にすすめるために住民を排除することにほかなりません。
また、自治体に、自衛隊と「平素から連携体制を構築」し「共同の訓練の実施」を求めていることも重大です。これは平時からの戦時訓練といえるもので、戦争放棄を定めた日本国憲法の立場とは相容れないものであります。さらに、また、「自主防災組織、自治会等の自発的な協力を」求めていますが、消防局発行の「名古屋の防火&防災」では、自主防災組織について「昭和56年に震災対策事業として、町内会、自治会単位に自主防災組織が結成され」たと説明しています。震災対策として結成された自主防災組織が、戦争を前提とした国からの指示にもとづいて行動することは、到底、市民に理解が得られるとは思えません。すべて国・内閣総理大臣の指示のもとに動き、団体自治そのものを否定する内容を伴ったこの法律にしたがって、粛々とその準備を進めるというのでは、自治体としての使命と役割を放棄するものといわざるをえません。そこで、市長にお聞きします。
【黒田議員】
地震対策として組織された自主防災組織が、戦時に国の指示に協力して活動することはその目的ではなく、役割でもないと考えますが、いかがでしょうか?
【松原市長】
自主防災組織は、災害対策基本法にもとづくもので、地震や豪雨などの災害に対して、被害を最小限にするための活動を行う、住民の隣保協同の精神にもとづいた自発的な防災組織だ。「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」においても、国民の協力の一つとして、自主防災組織が自発的に行う活動である非難住民の誘導、消化、負傷者の搬送などが期待されている。
【黒田議員】
町内会、自治会を単位に組織されている自主防災組織は、すべての住民を対象としています。すべての市民が、訓練を含めた平時からの戦争体制に協力させられることについて、市長は、市民に対し、どのように説明するお考えでしょうか? お答えください。
【松原市長】
自主防災組織を構成している市民一人ひとりの自発的な活動は、国民の保護のための措置の的確かつ円滑な実施のためには大変重要な要素であり、十分な理解を得る必要がある。市民に対しては、国や県と協力して、広報誌やパンフレット等により、国民の保護のための措置の重要性について説明し、十分な理解と協力を求めていく。
【黒田議員】
政府に対し、戦争を前提とした有事体制の一環としての「国民保護法」の凍結・撤廃を求めることこそが、安全・安心なまちづくりを標榜する市長の務めではありませんか。今、必要なことは、非現実的な戦争を前提とした「住民保護」ではなく、より現実的な震災対策としての「住民保護」に万全な対策をとることだと思いますが、市長の答弁を求めます。
【松原市長】国民保護法にもとづき本市が行う事務については、法定受託事務として位置づけらており、国の定める方針にもとづいて実施するものだが、武力攻撃事態などの緊急時において、市民の生命・身体・財産を守ることは自治体の責務だ。防災対策と同様に、国や県と連携し、市民の理解と協力を得ながら、国民の保護のための措置を適切に実施するため、「名古屋市国民保護計画」の策定に向けて全庁的にとりくんでいきたい。
【黒田議員】
大型店の問題で、市長に再質問します。市長の答弁は、一言で言えば、「法で縛られているから何もできない」と、いうことです。それならお聞きしますが、あなたは、大型店の出店が商店街の衰退に影響を与えたということを、どう思っておられるのか、そうは思っていないのか、思っているのか、端的にお答えください。
【松原市長】
現状としては大規模小売店舗が増加する一方で、中小小売店舗が減少傾向にあるという認識はある。
【黒田議員】
認識しているということですが、だったら、「何もできない」という答弁ではなく、「難しいかもしれないが、なんとか研究してみよう。検討させてくれ」と、なぜ、言えないのですか。福島県、京都市、大阪の堺市、東京の杉並区等々、まちづくりや様々な角度から少しでも歯止めにならないかと、条例や指針をつくっているじゃないですか。他都市でやっていることが、名古屋市でできないはずがありません。
もう一つ、反論しておきたいと思います。大型店の設置者が、十分な調査・予測を行なうこととされているのは、「生活環境への影響について」だけです。まちがどう変わっていくかなどというアセスメントみたいなことは、求められていないのです。住民説明会でも、そんなことは説明されませんよ。
そして、もう一つ。私は、根本的には、法改正がなければ解決しないと、思っています。無秩序な出店や深夜営業を規制する法律が必要です。だからこそ、市長に、国に法改正を強く求めるべきだということを申し上げたのでありますが、一言の言及もありませんでした。いったい、あなたは、ほんとうに市民の代表と思っておられるのですか。
私は、今回、二つのテーマで質問しましたが、いずれの答弁も「国が決めたことだから、そのままやるしかない」ということです。市民の暮らしと平和という、どちらも市政の根幹に関わる問題であり、市長の姿勢が問われる問題です。市民の立場に立って仕事をするのであれば、その立場から、国に物をいうべきではありませんか。
【黒田議員】
国民保護法の問題では、埼玉県は、政府に対して、基本指針について23項目の意見書をあげています。埼玉県の意見書は、たとえば、「都道府県知事が避難経路を決定できないとした場合、住民の避難が遅れてしまうことが危惧されるが、それでよいのか」とか、「要避難地域における自主防犯組織等の活動は、要避難地域に自主防犯組織等の住民を残すこととなり、法の趣旨から逸脱している」とか、「武力攻撃等が現に行われている状況において、都道府県職員、消防職員が捜索救出活動を実施するのか」とか、基本的な疑問や意見が列挙されています。それだけ矛盾に満ちた法律だということです。それをただそうという姿勢なくして、ただ、平素から自衛隊との共同訓練が重要だなどというのは、私は、到底、市民の理解を得ることはできないだろうと思います。今、憲法九条を守ろうという動きは、広範に広がっていますが、あなたの姿勢は、平和を守りたいとする市民の気持ちに真っ向から挑戦するものだということを、厳しく指摘をしておきたい。この問題について、私を含め、日本共産党市議団は、今後の市政の根幹にかかわる問題として、ひきつづき追及し続けていくことを表明して、質問を終わります。