議案外質議(10月6日) 田口かずと議員 戦争資料館の整備を急げ戦後60年のいまこそ、早期の整備を【田口議員】さる8月15日、わが国は終戦60周年を迎えました。あの戦争は、日本がアジア諸国の領土と資源を支配する目的で遂行した侵略戦争であり、2,000万人のアジアの人びとの命を奪い、310万人の日本人が犠牲になりました。名古屋市も、昭和19年12月から終戦までのたび重なる空襲によって、死者7千8百人余、負傷者約1万人、家屋の焼失等約13万5千戸に達する甚大な被害を受けました。 この戦争の犠牲と反省のうえに、わが国はこの60年間、外国と直接、戦火を交えることなく過ごし、戦争を体験していない人が多数になりました。これは、すばらしいことです。一方で、「あの戦争」といっても通じない人が増え、戦争の記憶の継承が十分でないことにつけこんで、侵略戦争を正当化する動きもあります。また、イラクへの自衛隊派兵も続けられています。こうした時だけに、戦争体験を次の世代に引き継ぎ、戦争の残した教訓や平和の尊さを学ぶことができる資料館が、必要ではないでしょうか。 戦争資料館の整備をめぐって、名古屋市会で請願が全会一致で採択されてから、すでに10年が経過しましたが、建設計画は宙に浮いたままになっています。 今年7月、県と市でつくる「戦争に関する資料館調査会」が、「平和のための戦争資料展」を開催し、県民・市民から寄贈された6千6百点余りにものぼる戦争に関する資料の一部を展示されました。5日間で約5千7百人の来場者があり、私も訪れましたが、戦時中の資料を直接目にし、戦争の悲惨さやおろかさを実感することができました。貴重な戦争資料だけに、その一部がわずか5日間、陽の目を見ただけで、あとは倉庫に眠らせておくのはたいへん残念であります。 そこで市長にお尋ねします。戦後60年にあたって、戦争に関する資料館の整備の必要性と緊急性についてどのように認識しておられるのか。また、早期整備に向けた市長の決意をお聞かせください。
既存施設の活用も含めた具体的な整備策を【田口議員】資料館の建設が困難な理由として「財政難」があげられています。しかし、「財政が厳しい」といいながら、新世紀計画2010に登載されていなかった産業技術未来博物館など新たな事業に乗り出そうとされているわけですから、「財政難」を理由にしてはなりません。もちろん立派な箱物を造ればいいというものでもありません。整備の手法としては、既存施設をリニューアルして活用する、建て替えの際に合築で建設する、NPOをはじめとする市民の協力を得て運営するなど、財政負担を軽くすることは可能です。 既存施設の利活用なども含めて、資料館の整備手法について愛知県とも協議されていると思いますが、その検討状況と整備に向けた今後の具体的な方針についてお尋ねします。
《アスベスト(石綿)対策について》被害実態の把握と救済を【田口議員】健康被害が大きな問題になっているアスベスト、石綿対策について質問します。 この問題では、安全対策も不十分なまま大量にアスベストの製造や使用を続けてきた企業と、危険性がわかっていながら長期に使用を認め、被害を放置してきた政府の責任が厳しく問われます。同時に、市としても市民の不安に応える対策をすすめなければなりません。 アスベストが原因で発症するとされている悪性中皮腫による市内の死亡者は、1995年から2003年までで95人にのぼっています。ところが、市内のアスベスト関連企業での労災認定は10人にすぎません。このことは、相当数のアスベスト被害者が、補償もされずに埋もれたままになっていることを示しているのではないでしょうか。 一つの事例を紹介したいと思います。火力発電所内で設備の保守管理に長年従事されてきた南区在住のAさんが、最近のアスベスト被害情報に接し、あらためて精密検査を受けたところ、石綿肺との診断がくだされたそうです。火力発電所内の設備にはかつて、保温材などでアスベストがふんだんに使用されており、分解点検の作業時にはアスベストの粉じんが飛散していたといいます。Aさんは、「アスベストが人体にとって危険であることを教育してもらえなかったため、危険を知らないまま一生懸命働いてきたかと思うと、本当に残念でくやしい思いです」と語っています。こうした埋もれてきた被害者の実態把握と救済が求められています。 そこで、環境局長にお尋ねします。アスベスト関連事業所の従業員、退職者とその家族、「一人親方」、および周辺住民の被害実態の把握について、国などの関係機関とともに取り組むべきではありませんか。また、健康福祉局長にお尋ねしますが、市民の健康被害や不安に対応するために、市立病院にアスベスト専門外来を設置する考えはありませんか、お答えください。
市有施設での実態と対策を【田口議員】名古屋市が有する学校などの施設におけるアスベストの使用実態について、現在、各局が国の依頼にもとづいて調査を実施されています。かつて1987年に実施されたアスベスト調査にもとづく改修では、封じ込めや囲い込みで済ませて、アスベストが除去されないままになっているケースも少なくないようです。 アスベスト使用実態調査の対象となる市有施設の種類と総数、調査方法、および、現在までにアスベスト使用が判明した施設について伺います。また、市有施設のアスベストについては、可能な限り除去すべきだと考えますが、どのような対策を実施されるのか、塚本助役の答弁を求めます。
解体工事への立ち入り調査の徹底を【田口議員】アスベストを吹き付けたり、アスベストを含む建築資材を使った建物の解体や改修の際に、アスベストの飛散によって、建設労働者や業者が危険にさらされ、周辺住民への影響も心配されます。大気汚染防止法にもとづく自治体への届け出義務がある解体作業などは、延べ床面積が500平方メートル以上で、吹き付け石綿の使用面積が50平方メートル以上の建物に限られています。横浜市や札幌市ではすでに、市の条例で吹き付け石綿の面積要件を撤廃しており、国でも規模要件などの撤廃に向けて検討が進んでいると聞いています。 国にたいして大気汚染防止法の規模要件などの撤廃を求めつつ、市としても、吹き付け石綿などが使用されている建築物の解体・改修については、例外なく届け出を義務づけるとともに、こうした小規模な建築物の解体などの際にも立ち入り指導を実施すべきではないでしょうか。また、立ち入り指導を徹底するための体制強化も求められていると考えますが、環境局長の答弁を求めます。
《名食(名古屋食肉市場株式会社)とフジチク事件について》名食をフジチクの不正の舞台にさせてきた市長の監督責任は【田口議員】名古屋市の出資する第三セクターである名古屋食肉市場株式会社、いわゆる名食の社長だった藤村勲氏が、フジチクグループの資産隠しと豚肉輸入をめぐる差額関税脱税事件で逮捕・起訴され、名食とフジチクグループとの関係、および名食にたいする名古屋市の指導監督責任が問われています。私は、8月23日の公社対策特別委員会で、この問題について名食と懇談しましたが、そこでは次の点が明らかになりました。 名食の輸入豚肉の取扱高は、名食全体の取扱高の4割前後という大きなウエイトを占めてきたこと、名食が愛知食肉卸売市場協同組合、すなわち愛食から食肉卸売営業権を譲り受けた2001年5月以前には、名食は輸入豚肉を取り扱っていなかったこと、名食が輸入豚肉を取り扱っているのは、愛食がある熱田市場であること、名食の輸入豚肉の仕入先は、郷澤(ごーたく)という台湾の貿易会社からのものが多くを占め、その卸し先は、フジチクグループが多くを占めてきたこと、郷澤から輸入した豚肉の仕入れやフジチクグループへの販売手続きを行っていたのは、社長だった藤村勲被告や愛食から名食に移ってきた社員だったこと、などであります。 これらの事実は、フジチクグループが行なっていた豚肉輸入をめぐる関税脱税の舞台が、営業権の譲渡にともなって、愛食から名食に移ったということを示しているのではないでしょうか。 そこで市長にお尋ねします。名食が、輸入豚肉関税脱税というフジチクグループによる不正の舞台となっていた事実を認めますか。また、名食の主力事業である輸入豚肉の取り扱いが、フジチクグループによって私物化されていたという認識を持っていますか。さらに、こうした事態を招いたことにたいして、名食にたいする市長の指導監督責任は問われないのか、お答えください。
愛食の譲渡価格59億円は不正な取扱量に基づくものだ【田口議員】愛食から名食への食肉卸売営業権の譲渡問題についてわが党は、本会議や関係委員会でくり返し追及してきました。その主な論点は、59億円という譲渡価額については、適切な評価だったとはいえず、名食にとって高すぎる買い物だったのではないのかという点、名食は愛食から食肉卸売り業務を引き継いだことにより、フジチクグループの事実上の傘下に組み込まれたのではないのかという点であります。 そこで、営業権譲渡価額の妥当性について改めてお尋ねします。譲渡価額について市長は、本会議の答弁で、「公認会計士や学識経験者を含めた卸売市場整備問題検討委員会において評価方法等が示されており、具体的な譲渡価額はその評価方法にのっとって専門家が算定した」と、譲渡価額の算定に至る経過しか答えておられません。 譲渡価額の算定に際して、愛食の取扱高が算定根拠の一つとなっていたことは間違いありません。ところが、当時、愛食の取扱高の中では、差額関税を逃れた不正な輸入豚肉の取扱高が大きなウエイトを占めていました。輸入豚肉脱税は、譲渡価額の評価方法を決めた卸売市場整備問題検討委員会のメンバーだった藤村芳治被告や藤村勲被告らが実行していたわけですから、まさに不正にまみれた愛食の取扱高を前提にして算定されたのが、59億円という譲渡価額だったのではありませんか。 そこでお尋ねしますが、59億円という営業権譲渡価額は、現在でも適切な価額だったと評価されているのですか。
フジチクの不正に市の外郭団体が利用されたとは思わないのか(再質問)【田口議員】名食が、フジチクグループによる輸入豚肉関税脱税の舞台となっていたことは、この事件の公判における検察側の冒頭陳述からも明らかであります。冒頭陳述の一節を紹介します。 「郷澤日本営業所名義で輸入された豚肉は、名食に売却され、名食は、当該豚肉を直ちにフジチク・インターナショナルまたはフジチク・インターナショナルが指示する取引先に売却していたが、その売値は、すべてフジチク・インターナショナルが郷澤日本営業所および名食の担当者に指示したものであり、郷澤日本営業所、名食、および取引先間の売買価格に関係なく、名食は1キログラム当たり一律2円の口銭(こうせん)を得ていた」。 つまり、名食の輸入豚肉の取り扱いはフジチクグループのいいなり、しかも、名食の儲けまで決まっていたというのです。 そこで市長に伺いたい。名食が、フジチクグループの不正に利用されていたことは明らかではありませんか。フジチクの藤村芳治被告は、部落解放同盟、いわゆる「解同」の役員を務めていました。「解同」系列の団体に、名古屋市の外郭団体がいいように利用されていた。事態はきわめて深刻ではありませんか。この事実に目をつぶるのですか。市長、はっきりとお答えください。
59億円は明らかに高すぎる【田口議員】もう一つ、営業権の譲渡価額についてですが、市長は、59億円の評価についてお答えになりませんでした。 統合前の愛食の取扱高は、約1,200億円でした。ところが、その後、市当局は、「採算性を精査し、約1,200億円のうち約500億円を見込んでいた」と答弁するようになりました。実際には、統合後の2001年度の名食の取扱高は450億円です。そのうち、問題の輸入豚肉は168億円、37%を占めていた。譲渡価額の算定根拠となったであろう愛食の取扱高というのは、見せ掛けよりも実態は少なく、しかも、関税脱税という不正にまみれた輸入豚肉が多くを占めていたのです。 59億円という評価が高すぎたことは明らかではありませんか。しかし、市長は、適切だったとも、高すぎたともおっしゃらなかった。譲渡価額の評価については、答弁不能ということで私は受け止めさせていただきましたが、そうではないというのなら、答弁して下さい。
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