名古屋港管理組合議会 一般質問(3月27日) 山口きよあき議員

飛島ふ頭南側コンテナターミナルの整備について/アメリカ海軍の軍艦入港について/港の環境問題について

飛島ふ頭南側コンテナターミナルの整備について

第1バース供用開始までに要した費用はいくらか

【山口議員】
まず、飛島ふ頭南側コンテナターミナルの整備について、3バースあわせての総工費は約860億円となっていますが、いままでに、つまり第1バース供用開始までに要した費用はそのうちいくらですか。また事業の進捗状況は何%になっているのか。

約345億円を使い、40%の進捗(部長)

【建設部長】
第1バース供用開始までに要した費用は、約345億円となり、進捗状況は、事業費ベースで、約40%だ。

いくら借金し、償還のための利払いは年間いくらか

【山口議員】
この建設事業は、国の直轄事業ですがよく見ると、直轄事業費は全体の経費の65%であり、しかもその半分は管理組合負担です。管理組合はその他に起債事業や埠頭公社への貸付事業など多くの負担をしています。管理組合の組合債残高はいま約1300億円余り、公債費は毎年100億円以上です。これは一般会計344億円という規模を考えれば大きな借金です。

そこでお聞きしますが、飛島ふ頭南側の整備にかかる費用のうち、本組合の起債によるものはいったいいくらなのか。その償還のための利払いは年間どのくらいなのか。

全体で360億円を借金し、年4億円の利子を払う予定(部長)

【建設部長】
3バース全体の起債額は、約360億円を見込んでいる。償還利払いは、年平均、約4億円である。

飛島ふ頭南側の岸壁は誰のものか

【山口議員】
かなりの負担をして完成させた大水深バースですが、この岸壁の性格について、次にうかがいます。飛島南側ふ頭は、公共岸壁なのか、それとも特定の船社しか使用できない専用岸壁なのでしょうか。また船舶の岸壁使用を許可する権限はいったいどこのあるのか。管理組合か、管理を委託されている埠頭公社なのか、それとも飛島コンテナ埠頭株式会社なのか、お答えください。

飛島コンテナ埠頭株式会社が許可権限者(部長)

【港営部長】
この岸壁は、新しい形態として、公共コンテナ岸壁を国が直接特定め事業者に貸し付ける予定であり、その借受者である飛島コンテナ埠頭株式会社が、船舶に対する岸壁使用の許可権限者になる。

これ以上の大水深バースは再検討を(要望)

【山口議員】
大水深バースの整備は管理組合にとって大きな負担です。第1バースだけで4割の支出です。第3バースまでつくると事業費は860億円では足りない可能性が高い、しかも事業費の4割は、管理組合の起債、借金でまかなわれている。国の直轄事業とは呼べないような負担だと思います。

新ターミナルの稼動状況と既存のターミナルの関係については、いましばらく動向を注視する必要があると思います。ただはっきりしているのは、16mもの水深を要する船舶の需要が急激に伸びているわけではなく、主にアジア航路で使われている中規模の船舶に対応できる機能強化が求められていることです。

またスーパー中枢港湾として、同じ伊勢湾の四日市港の15mバースの活用状況もよく見ておく必要があります。貨物と船舶の動向を慎重に見極めて、過大な公共投資とならぬよう飛島ふ頭南側の第2、第3バースについては、建設の規模や必要性そのものをふくめ、再検討するように要望しておきます。

アメリカ海軍の軍艦入港について

友好・親善と言いながら米軍艦の入港予定を秘密にしたのは何故か

【山口議員】
第二に、アメリカ海軍の軍艦入港についてうかがいます。

1月30日、アメリカ第7艦隊旗艦ブルーリッジが水深10メートルの金城埠頭83号岸壁に入港しました。今回の入港目的は、管理組合からの説明では「友好・親善」となっています。しかし係留された岸壁は、ガーデン埠頭ではなく、一般の方の人通りもない、荷役が忙しく行われているところでした。一般公開もなかった。それどころか、船のまわりにはコンテナを積み上げたバリケードまでつくられていました。

昨年に万博関連で入港したオーストラリアやニュージーランドの軍艦も友好・親善が目的だったと記憶していますが、ガーデン埠頭に接岸したこの二国の軍艦とはまったくちがう入港スタイルです。またこの米軍艦の入港は直前まで公表すらされませんでした。

そこでお聞きします。今回ブルーリッジの入港中、友好・親善を目的にして行われた活動とは何だったのか。具体的にお答えください。また軍事行動でなく有効・親善の訪問と言いながら、寄港日程すら直前まで公表せず秘密扱いしたのはなぜか。お答えください。

名古屋米国領事館からの要請(部長)

【港営部長】
友好・親善を目的にして行われた活動は、「艦内レセプション」、「老人施設慰問」、「第7艦隊音楽隊による演奏会」があった。寄港日程を直前まで公表しなかったのは、名古屋米国領事館から「入港24時間前まで一般に対して非公開とする」旨の要請があったからだ。

何らの抗議も要請もしないままなぜ入港を許可したのか

【山口議員】
横須賀を母港とする米第7艦隊では乗組員の不祥事があいついでいます。東京では小学生のひき逃げ事件、横須賀では女性への強盗殺人事件を起こし、大問題になりました。その第7艦隊の旗艦の入港は、市民の歓迎するところではありません。

ブルーリッジの艦長は、名古屋に来る前の寄港地である佐世保での記者会見で「強盗殺人という残念な事件があったが、雨降って地固まるとの諺もある。これを契機にいっそうの日米友好をはかりたい」と述べ「加害者側が言うセリフか」と強い批判を浴びました。ブルーリッジが名古屋の次に向かった北海道・室蘭市では、「事件があった直後でもあり市民の間には歓迎ムードがない」として、市民の安全確保や市民感情の観点から入港打診を一度は断りました。外務省の圧力に屈して、最後は入港を許可してしまいましたが、札幌のアメリカ領事館に、入港中の乗組員の行動について配慮するよう、北海道と共に申し入れを行い「上陸中の単独行動の禁止」などの措置をとると回答させるなど、十分ではないにしても、市民の不安に応える姿勢を見せました。

そこでまず確認します。入港の許可、港湾の使用許可権限はあくまで自治体にあります。相手が米軍艦でも同じですね。今回、港湾管理者はなぜ、何らの抗議も要請もしないまま入港を許可したのか。米兵の犯罪多発に対する市民の不安と懸念を、なぜ防衛庁や外務省、米軍に伝えなかったのか。港湾の安全管理と市民の安全に責任を持つ港湾管理者である市長の姿勢が問われます。お答えください。

安全性が確保されるものと判断した(管理者)

【管理者】
横須賀での事件について、在日米軍司令官が遺憾の意を表明し、再発防止のためにあらゆる措置を講じる旨の発言があり、今回の入港に際しても十分な安全性が確保されるものと判断し、改めて申入れはしなかった。

入港を断るときの判断基準は何か

【山口議員】
米軍から入港打診があった場合、入港を許可しないとの判断も可能だと私は考えます。今回でも、通常の港湾業務に支障のない限りで使用する岸壁を許可したのだと思います。

入港を断るときや、希望する岸壁の使用を断るときの判断基準は何か、お答えください。

一般船舶と同一の扱いをしている(部長)

【港営部長】
入港の許可権限は、米国艦船といえども一般船舶と同一の扱いになる。在日米軍司令部から第四管区海上保安本部を通じて連絡があり、施設の能力の適否、一般船舶への入港の支障の有無について検討し、入港を許可した。

米軍艦が飛島ふ頭南側の岸壁を使用したいといったらどうなるか〈再質問〉

【山口議員】
飛島南側ふ頭とアメリカ軍艦の入港問題について、まず一点再質問します。

飛島南側ふ頭は、大規模な公共投資でつくられた大水深バースです。公共コンテナ岸壁と言いながら、公共なのか企業の専用ふ頭なのか、単純にわりきれない新しい形態のようです。ただそこへの船舶の接岸利用の許可権限は、国が貸し付けた特定の会社、すなわち「飛島コンテナ埠頭株式会社」にすべて委ねられているとの答弁でした。

アメリカ軍艦の入港許可は、管理組合としては、一般の船舶と同様に扱うとの答弁がありました。そこでうかがいます。

アメリカの軍艦が、こんどはもっと大きな軍艦が、この大水深バースを使用して入港したいと希望してきた場合は、管理組合はどう対応するのでしょうか、すべて会社の判断に委ね、管理組合はまったく関与しないのかどうか、お答えください。

管理組合は関与しない(部長)

【港営部長】
米軍艦が飛島ふ頭南側の岸壁の使用を希望した場合、飛島コンテナ埠頭株式会社が許可権限者であり、直接、管理組合としては関与しません。

港の環境問題について

港湾区域全体のCO2発生総量の把握と削減目標を明らかにせよ

【山口議員】
第三に、港の環境問題について地球温暖化防止の観点にしぼってうかがいます。

名古屋市はCO2の排出量を90年比マイナス10%という国よりも積極的な目標を設定しています。しかし現状はその目標達成からは程遠く2002年度段階では逆に、90年比プラス8%という状況です。

さて産業と物流の拠点といわれる名古屋港ではどうでしょうか。コンテナをはじめとした取り扱い貨物高の増加により、港湾区域内への流入車両、とりわけ大型トレーラーが増えてきていると思います。そこで、港湾区域内の流入自動車台数とそこからのCO2排出量の推移はどのような状況なのか、まずうかがいます。

名古屋港管理組合が一事業所として地球温暖化防止の取り組みを行っていることは承知していますが、問題は名古屋港全体を視野に入れた取り組みです。そこで、港湾区域内全体からのCO2発生総量を管理組合としてどう把握し、どんな削減目標を持っているのでしょうか。自動車からの排出に加え、港湾区域内の工場や発電所などからのCO2排出量、ビルのオフイスなどからの排出量はどうか。あわせてお答えください。

自動車、工場、発電所などからのCO2排出量はつかんでいない(部長)

【企画調整室長】
名古屋港内の温室効果ガスは、本組合の事務事業から排出した温室効果ガスの総排出量は平成16年度、CO2換算量で6,456トンで、削減目標は平成12年度比10%削減としている。

名古屋港全体からのCO2排出量は、県域・市域のCO2排出量を把握することはできるが、名古屋港に限定して自動車、工場、発電所などからのCO2排出量の推移については把握していない。従って、削減目標の設定もしていない。

総量規制を各方面に働きかけ、船の活用も検討を

【山口議員】
さて削減目標を達成するために何が必要か。二点うかがいます。

まず車対策です。トレーラーからの排出ガス、CO2量について車個々の規制とともに、総量規制が必要です。管理組合からも必要な働きかけを各方面にすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

あわせて観光客の車での来港を抑えて公共交通へ誘導する手だてを、船の活用もふくめ、具体的に検討するよう求めますがいかがですか。

自動車公害等に関する協議会で検討。小型船発着場も整備(室長)

【企画調整室長】
トレーラーからの排出ガスは、県・市・物流企業等からなる自動車公害等に関する協議会で、排出ガスやCO2量の削減に向けて検討を行っている。

また、名古屋港では、スーパー中枢港湾の取組として、西部地区において高規格コンテナターミナルの整備やロジスティックスハブの形成を目指すことで、コンテナ物流の円滑化、交通混雑の緩和が図られ、トラック輸送からのCO2排出量削減に寄与するものと考えている。

観光客の公共交通機関利用への誘導は、水族館などの集客施設やイベントの開催時には、公共交通機関を利用するよう広報に努めている。金城ふ頭への交通アクセスとして、平成16年10月に「あおなみ線」が開業し、特にイベント時における道路混雑の解消に役立っている。

金城ふ頭及びガーデンふ頭に小型船発着場を整備し、ふ頭間の交通手段として小型船舶による交通の需要にも対応できるよう施設整備を図っている。

緑化目標の達成見通と現状はどうか

【山口議員】
もうひとつは緑を増やすことです。ところが管理組合のかかげる緑化率の目標は8%ですが現状はわずか6%にしかすぎません。国からは、港湾の環境に関する指針として、長期的には緑化率20%をめざすとの指針も出されています。名古屋都市センターの研究などでも「港の森づくり」が提唱されています。

そこで緑化目標の現状と達成見通し、また緑化率8%、20%を達成した場合のCO2削減効果をどのくらい見込んでいるのでしょうか。

効果はある(室長)

【企画調整室長】
名古屋港では、325haの港湾緑地を計画し、平成18年3月現在、257haの緑地を整備した。緑地によるCO2削減効果は、緑地の形態によって変動し、効果の把握は困難だが、緑地の整備は名古屋港でのCO2削減に寄与すると考える。

港における環境負荷の軽減に向けた取組みを(再質問)

【山口議員】
次に環境問題です。地球温暖化防止は待ったなしの課題であり、目標も比較的明確です。ところがいまの答弁では、管理組合という一事業所としてのCO2削減目標はあっても、名古屋港全体がどんな現状にあるのか、港湾区域内のトータルなCO2 排出状況は把握していないということですが、これは問題です。納得できません。

名古屋港を物流拠点として発展させようというのなら、それに見合った環境対策を立てるべきです。緑化計画もそれに見合うもっと積極的なものに変えましょうよ。私は、港湾区域全体でのCO2内削減の目標と計画を持つべきだと思います。

この仕事は管理組合の業務の範疇を超えますか。もし超えるとしても県市や関連企業、関連業界としっかり連携をとり、目標と計画を持つべきです。市も県もこの問題には力を入れているはずです。とくに自動車からの排出ガスの問題は、事業者任せでは解決しません、行政の総合的な取り組みが不可欠です。

管理組合がイニシアチブを発揮し、まず港湾区域内全体の現状把握とCO2排出量の削減目標を定め、その達成のために具体的な計画を持つべきではありませんか。これはぜひ選任副管理者に答えていただいたい。

港湾環境計画の見直しの中で検討(副管理者)

【副管理者】
本組合では、国土交通省の港湾環境政策を踏まえ、港湾環境計画の見直し作業に取り組んでいる。名古屋港全体の拡充する物流機能に見合った環境負荷の軽減策は、愛知県、名古屋市、港湾利用者等と調整を重ね、学識経験者のご意見をうかがいながら、港湾環境計画の見直しの中で検討を進めていく。

平和な名古屋港こそ市民の願い(要望)

【山口議員】
副管理者からは、「名古屋港全体の環境負荷の軽減策を、港湾環境計画の見直しのなかで検討する」と答えていただきました。いまの港湾環境計画には、理念や視点や様々な施策の例は書かれていますが、現状の数値も、肝心の目標がありません。地球温暖化防止にしぼってうかがいましたが、ぜひ明確な期限と目標をもった港湾環境計画に改訂するように強く要望しておきます。

飛島ふ頭南側については、米軍艦の使用許可も会社の権限で、管理組合は関与しない、との答弁でした。一般船舶の入港に支障があれば、管理組合は入港を許可しないとも答弁しています。何のための誰のためにつくった岸壁なのか、目的外の利用を許してはならないと思います。

その一方で、管理組合の港湾管理権限は、ターミナルの運営をふくめて民間委託が進むなかで、いったいどうなるのか、会社がOKすれば、どんな危険な船も入港できるのですか、と不安も感じる答弁でもあります。

有事法制との関係でも注目したい答弁ですが、この点では今後さらに議論を詰めていきたいと思います。

友好・親善といいますが、老人施設の慰問や音楽隊の演奏のためになぜ、1万8千トンもの軍艦が名古屋港に来なければならないのか、誰も納得しませんよ。

米軍とではなくアジア地域との友好・親善の発展こそ、名古屋港を発展させる道です。自治体の姿勢が問われます。室蘭市はレセプションへの出席も遠慮したと報道されています。県営名古屋空港周辺の自治体も基地の強化はやめてくれと国に要望しています。港の軍事利用を許さない毅然とした態度をとるよう、管理者に要望して質問をおわります。