個人質問 さとう典生議員 建築行政について/「民間建築確認」の問題と行政責任について建築行政について保育園への日照被害の問題について保育園の日照被害が後を絶たない。協議が形骸化されているのではないか 【さとう議員】 保育園の日照被害と民間建築確認2つのテーマにわけて質問します。 まず保育園への日照被害の問題です。本市には「中高層建築物の建築にかかる紛争の防止及び調整などに関する条例」の第7条で(教育施設等の日照)として、中高層建築物の建築主は、冬至日の午前8時から午後4時までの間に、保育所又は幼稚園、小学校、中学校などに日影を生じさせる場合には、日影の影響について特に配慮し、施設の設置者と協議しなければならない。とあります。 これを素直に読めば保育園や学校などは「日陰にならないよう」に配慮する。そのために話し合う(「協議」)と言うわけですから、安心だと思うのですが、現実は全然別なのです。昨年11月に市内の4保育園が集まって、「おひさまネット」を結成し、新聞などで報道されました。保育園が日陰になり困っている。しかもあちこちで日陰になっているので何とかしようというものです。 あらためて、保育園などの日照被害が広がっていることに驚きました。条例ができた99年以降の教育施設などへの被害と紛争件数は6年間で15件、そのうち建築を取りやめたのはわずか2件、中にはこの6年間で2回日照被害が発生している保育園もありました。 条例があっても、どうも役に立っていないという現実なのであります。 二つの保育園で話を聞いてきました。ある保育園では建築主の代理と称する業者が突然園を訪問し、玄関先で15階建ての計画を説明しました。「夏の暑いなかで大変だなー」と思いながら園長が玄関先で立ち話をしたそうです。この玄関先の立ち話を「協議した」ものとして翌々日に業者が報告書を提出して、市が受け取りました。その後、日影図を持ってきて、保育園が日陰になることを知ったそうです。本来、協議をすることになっているのに気が付き、協議を求めたところ、3ヶ月して、工事を開始してから、協議が初めて開かれました。しかし、建築計画は変更しないとの一点張りだそうです。 もう一つの保育園では、設計者と建築主の社員が訪ねてきて、計画を説明したそうです。対応した園長はあいさつだと思い「工事中に園児が事故に合わないように注意してほしい」と応答しました。そのことが「協議したもの」として報告されているのです。 この二つの事例をみると問題は「あいさつにきた」と思っていたり、一般的な工事説明に対し安全対策などの話をしたら、協議済みということにされていることです。ふつうに考えれば「協議」とは話し合いのことで、そこにはなにがしかの合意が形成されるのだと思います。あいさつとか通告とは違うと思います。それなのになぜこのような形で市は「協議」と認め、報告を受け取ってしまうのか理解できません。しかも、市が協議報告を受理することによって、建築確認を申請することができるようになるので、業者は民間会社に申請して確認を受け、工事に着工してしまいます。 そこでお尋ねします。このように「挨拶に来て会話」したり、一般的な説明を「協議」として、市当局が報告を受理をすることは条例に違反しているのではないのでしょうか。 この二つの事例は協議がないのに偽って報告者を提出したものであるので、手続きに瑕疵があります。建築確認そのものの正当性が疑われます。一度、工事を止めて、改めて協議を行うよう指導すべきではないでしょうか。 以上、住宅都市局長の答弁を求めます。
教育施設周辺には特別な規制が必要ではないか【さとう議員】 先に紹介した二つの業者は「協議」のやり直しには応じるという姿勢ですが、工事は止めない、階数は減らさない、日陰はそのままという態度だそうです。そこには、何ら「日陰に配慮する」という姿勢はありません。そこで、条例で午前8時から午後4時まで日照被害を与える場合に「配慮し、協議する」としたことの意味は何だったのか、あらためて、考えていただきたいのです。お日さまにあたることは「子供たちの成長にとって大変重要で欠かせないものである」ということが社会通念として認識されているからこの規定が設けられているのだと思います。子供たちの発達段階における日照の重要性について 日本小児保健協会は平成13年11月「子供の睡眠に関する提言」をだして、「規則正しい睡眠覚醒リズムを築くためには朝起きて光を浴びることが大切である」と指摘しています。先ほど紹介した一方の保育園は冬の約5ヶ月間、朝の9時30分まで朝日が入らなくなってしまいます。 マンション業者にとっては、建設して販売して利益をあげるのはそのとき1回限りですが、日陰は永久に残り、子供たちにとっては卒園まで寒い思いをして、しかも発達段階の影響は一生残るものです。条例があるのに保育園に対して日照被害が発生していることをどう受け止るのかが問われているのではないでしょうか。いまの条例では日照被害を食い止めることができなければ、他の手段を考えなければなりません。 そこで 住宅都市局長にお聞きします。教育施設などに日照の被害を及ぼさないように、施設の周囲を第一種低層住宅専用地域に指定する、または、地区計画でもって高さを制限するなど、高い建物が建てられないように具体的に手だてを考えて規制すべきではないでしょうか。
玄関先の立ち話で「協議」とはなにごとか(再質問)【さとう議員】 先ほども、紹介したように、玄関先での立ち話や一般的な工事の話をしたことがなぜ「協議」になるのですか。一方の当事者の保育園側は「協議」ではない、と役所に言ってきているわけです。当事者の一方が協議をしていないといっているのにいまの答弁では「協議」があったと正当化をしているわけです。これは当局が条例の趣旨をきちんと守ってないことではないですか。業者の側の報告書を鵜呑みにして受け取っていることが問題なのです。 たとえば、他の保育園では建築主が話し合いの場で「パートナーが計画から離脱したので、説明も協議もできない」と具体的な話を話し合わなかった。しかも当局もそれを知っていたのに、「協議」したと報告が受理されていたと指摘されています。 さて、少し戻りますが、先に紹介した二つの保育園は役所に抗議をして協議のやり直しを求めました。そして、業者が改めて協議に応じているのです。しかし、先ほどの答弁のように、当局が報告書を受理したことで、建築確認が住んで工事をどんどん進めているわけです。じゃ、「いまやっている協議は何なの」ということになります。条例では、日照に配慮することのために協議をすることになっているのです。 だから私が質問で建築確認そのものの正当性が疑われるから、一度工事を止めて改めて協議をと求めたのではないですか。それには全然答えず、あれは正当だったと誤りを認めず、業者側に建っているのがいまの当局ではないですか。 そういう態度だから、業者に足下を見られて、この条例が形骸化していくのであり当局の責任は重い、早急に態度・立場を改めるべきです。 そこで改めて、住宅都市局長にお聞きします。協議が整ってから、たとえば両者の連名の協議書を提出してからしか、建築確認を申請できないような制度にすべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
業者にいいなり(意見)【さとう議員】 「法令に適合しているから」子供は日陰を我慢せよというのなら、わざわざ、条例を作った意味は何だったのかがとわれることになります。この条例第7条をよく読んでみますと、最初に保育所と書いてあり次が幼稚園、小学校、中学校などに日陰を生じさせる場合には・・・特に配慮し、と書いてあります。このような順番で例示したと言うことは、行政も日陰は乳幼児の発達にとって悪影響があると認識していることが前提になっているわけでしょう。だったら、きちんと協議をすることを担保するために、協議報告は連名で提出するようにするのは当然ではないですか。改めるべきです。 最初に述べたように、業者は一時の利益確保です。子供たちにとって、日陰は永続的です。しかも、マンション業者は日陰を与えておいて販売の際には、近くに保育園がありますと、パンフレットに書いてセールスポイントにするのです。保育園に写真を撮らせてほしいと頼みに来たそうです。「いくらなんでも、それはないでしょう」と断ったとのことでした。高額なお金を用意して、ようやく、マンションを買い子供ができたら、保育園へ、近くの保育園に入れたと思ったら、自分の住んでいるマンションの日陰で、自分の子供が日陰の被害者になる、というどうにもやりきれない状況が発生するのです。業者は販売してしまえばそれまで、後のことは関知しない。残るのは日陰で苦しむ子供たちです。 子ども青少年局という新しい局を作って子育て支援をしていこうという名古屋市で子供たちがお日様を奪われているという状況に心が痛みませんか?私は許せません。 少なくとも協議報告書は連名で提出するように規則を改正すべきことをもとめます。 「民間建築確認」の問題と行政責任について民間がやった結果でも市の責任が問われる【さとう議員】 私が前回10月の質問で「民間確認になってからのマンションの耐震診断を行ってはどうか」という問いかけを当局にしました。その1ヶ月後に、マンション建築で耐震構造計算の偽造が発覚し、民間建築確認制度の欠陥があらわになりました。事件は起こるべくして起きたと言っても過言ではありません。「官から民」といいますが、民間企業の「利益追求」の姿勢が公務に入ればどうなるのか、いま政府が行おうとしている「市場化テスト」の将来をまさに暗示している出来事であると思います。さて、姉歯事件に次いで、九州でも構造計算に偽装があったと報道され、建築確認における市民の信頼は低下しっぱなしであります。そもそも、民間建築確認会社の多くは大手建築会社が出資しています。また、社員を派遣しているケースもあるようです。このような状態で親会社の確認申請に対して、中立性が保てるのかどうか根本的な疑問があります。 ところで、愛知県が最近、民間会社へ建築確認申請する場合にだけ、「敷地調査票」の添付を要求するように指導を行っています。これは何を意味するのでしょうか。民間確認機関に申請するときだけに「建ぺい率」や「用途地域」など建築規制について確認したものを提出を求めたということは民間機関では建築規制関係についてチェックできないということを県が認めたと言うことです。いままでは建ぺい率や容積率などをごまかして申請しても、分からなかった可能性があると言うことです。 建築確認を民間に任せたことは、大失敗だったということであります。何でもかんでも民間に任せればよいという考えがいかに市民の安全・安心にとって無責任となるかを実証したと思います。さて、このような事態になった責任は政府にあるわけですが、自治体としてどうするのか、いま問われています。 最高裁では「民間が行った処分」でも地方事務である以上「自治体の責任は免れない」という判断がでています。先日、姉歯事件で被害を受けた半田のホテルのオーナーが愛知県に損害賠償を求める裁判を起こしました。本市においても、今回のような事件(「姉歯事件」)が発生した場合の責任について、当然問われることになりますが、その覚悟はできているのでしょうか。政府が規制緩和を行って、被害がでたら自治体は責任だけをとらされる。こんな馬鹿な話はない、と思います。 そこで、市長におたずねします。このように、たとえ民間確認機関が行った行為であっても公的責任が問われるわけですが、自治体の公的責任を果たすためにどのようにすればよいと考えているのでしょうか。私は基本的には、民間確認をやめて、自治体の事務に戻してもらえば責任もきちんととれると思います。
パブリックレポート制度を導入せよ【さとう議員】 私は前回の質問で、耐震性の調査や判定にまさに第三者の目として「パブリックレポート制度」導入してはどうかと提案しました。その際に、当局は「耐震性の証明は、建築物の性能評価制度があり活用を」と答弁しましたが、その制度も欠陥があることが判明しています。姉歯事件に関わって、ビューローベリタスジャパンという確認会社は姉歯元建築士の耐震偽装を見抜けなかっただけでなく、建物について「耐震等級1」という性能評価を行っていたことが明らかになっています。これは「建築基準法レベル」すなわち阪神大震災級でも壊れないという評価ですが、現実は建築中止、解体へとなりました。このように性能評価についてもその信頼性を揺るがす事態がおきました。 そこで改めて「パブリックレポート」すなわち、建築主の協力を求めて構造計算書などを公開、第三者がコメントを公表する、という制度の導入を求めます。
職員の専門家の確保と育成を【さとう議員】 たとえば、「熊本県には構造専門家がいなかった」と新聞で報道されましたが、本市においては幸い今のところ、昨日の質問での答弁にもありましたように構造担当の係があり、職員もきちんと配置されています。しかし、今後はどうなるのかはなはだ疑問です。 そこで、今後、職員の専門家をどのように養成し確保していくつもりなのか、お尋ねします。
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