代表質問(3月3日) 田口かずと議員 代表質問1 格差社会と貧困の広がりについて90億円の市民負担増が格差と貧困の広がりに拍車をかけているのではないか【田口議員】 いま、格差社会と貧困の広がりが大きな問題になっています。その根源には、小泉内閣が進めてきた弱肉強食の「構造改革」路線があります。市長は、「元気な名古屋」と繰り返されていますが、それでは名古屋市民は、格差や貧困の広がりと無縁かといえば、そうではありません。 生活保護世帯は、97年度の1万776世帯から04年度には2万60世帯に急増し、名古屋市内では、いまや50世帯に1世帯が生活保護世帯です。本市の保護率は12.1‰(パーミル)に上昇し、全国平均の11.1‰を上回っています。経済的な理由により、就学援助を受けている児童・生徒の割合も、今年2月現在では15.1%と、この10年間で2倍近く増えました。 「構造改革」と愛知万博で「元気」になったのは、空前の利益を上げている一部の大企業に過ぎません。格差と貧困が、この地域でも広がっていることは明らかです。 ところが、松原市長が提出した予算は、暮らしが大変な市民に重い負担を押しつけるものとなっています。生活保護では、高校入学支度金や夏季・歳末の見舞金など本市独自の援護措置を廃止する。高齢者にたいしては、介護保険料の4割もの大幅値上げ、税制改悪にともなう国民健康保険料や敬老パスの引き上げ、市民利用施設の高齢者料金の有料化。子育て・教育の分野では、就学援助の所得基準額の引き下げ、保育料や延長保育料の値上げ。障害者福祉の分野でも、「自立支援」の名のもとに、サービス利用料が原則1割負担となりますが、何らの減免措置も独自には講じようとしていません。さらに、水道・下水道料金の飲食店や中小企業などへの軽減措置の廃止など、新年度の市民負担増は、総額で90億円を超えます。これでは、ますます格差と貧困が広がるのではないでしょうか。 市長、「元気」といわれる名古屋でも、格差と貧困が広がっているという認識を持っていますか。また、新年度予算に盛り込まれた90億円を超える市民への負担増が、格差と貧困の広がりに拍車をかけるのではありませんか。答弁を求めます。
2.市民への負担増について(1)就学援助の所得基準額の引き下げ中止を子育て世帯の収入が減ったから就学援助を減らすのは本末転倒 【田口議員】 第1に、就学援助の所得基準額の見直しについてです。 これまでは、おおむね生活保護基準額の1.3倍までだった所得基準額を、生活保護基準額並に引き下げるという見直しによって、就学援助の予算が1億2千万円削減され、就学援助を受けられなくなる小・中学生が約1500人も生まれます。給食費が払えない、修学旅行の費用が出せずに参加できない子どもが増えるでしょう。元教師だった松原市長、子どもたちにつらい思いをさせてもよいとお考えですか。わが党は、就学援助の所得基準額の引き下げを中止することを求めるものです。 見直しの理由の一つに当局は、就学援助の所得基準額が子育て世代の平均所得額を上回っていることをあげています。しかし、格差社会が広がるもとで、勤労者の所得が減り続けていることが問題なのです。それを理由に就学援助の所得基準額の方を引き下げるというのは本末転倒ではないでしょうか。市長の見解を求めます。
(2)介護保険料の大幅値上げ介護保険の4割もの値上げで胸が痛まないのか 【田口議員】 この4月からの高齢者の介護保険料の改定は、基準額を現行の月額3153円から4398円へと約4割も値上げするというものです。年間で約1万5千円の負担増になります。しかも、税制改悪によって約6万人の高齢者が、市民税非課税世帯から課税世帯となり、介護保険料の段階も上がります。たとえば、夫が年金260万円、妻が年金60万円の高齢者世帯の場合、夫の介護保険料段階は第2段階から新しい区分では第5段階に上がり、妻は第2段階から第4段階に上がります。その結果、保険料は、夫婦合わせて年間118760円へと62000円もの引き上げになるのです。夫婦で年金320万円の世帯にとっては、耐え難い負担増ではないでしょうか。 税制改悪にともなう保険料段階の上昇にたいしては、国が激変緩和措置を講じていますが、この世帯の場合では、3年間にわたって毎年2万円前後の保険料値上げが繰り返されるわけですから、きわめて不十分なものです。 市長、介護保険料の大幅値上げが、年金暮らしの高齢者にもたらす負担増についてどのようにお考えですか。負担増を押しつけることに胸が痛みませんか。お答えください。 わが党は、介護保険料の大幅値上げを撤回するとともに、低所得者にたいする保険料の減免制度を拡充することを求めるものです。
(3)庶民増税の市民への影響―敬老パスの場合庶民増税に連動し6万人が5倍の値上げは緩和措置を 【田口議員】 小泉内閣の庶民増税による負担増が、新年度から市民税の分野で本格化します。とりわけ高齢者の場合は、公的年金等控除の引き下げ、老年者控除の廃止、住民税非課税措置の廃止によって、合わせて23億円の市民税増税となります。さらに、定率減税の半減によって52億円もの負担増が名古屋市民にもたらされます。 庶民への増税は、増税にとどまらず、介護保険料、国保料、保育料などの「雪だるま式」の負担増をもたらすことは、先に介護保険料で見たとおりです。 ここでは、敬老パスの自己負担金の値上げについてお尋ねします。敬老パスの負担金は、市民税非課税世帯から新たに課税世帯となる約6万人の高齢者が、自動的に1000円から5000円へ4000円の値上げになります。介護保険料ではきわめて不十分ながらも激変緩和措置がありますが、敬老パスの場合は緩和措置がありません。税制改悪によって高齢者から吸い上げる市民税の増収分は、敬老パス負担金など高齢者の負担増を軽減するために使うべきです。 税制改悪にともなう敬老パス負担金の値上げを避けるためには、無料に戻すことが根本的な解決になると考えますが、少なくとも敬老パスについても、何らかの激変緩和措置を講じるべきではありませんか。市長の答弁を求めます。
(4)「受益者負担」論の破綻―トワイライトスクールの時間延長モデル事業延長保育や高齢者使用料の値上げをやめよ 【田口議員】 ところが、トワイライトスクールの時間延長モデル事業については、当初検討されていた月4千円程度の保護者負担、すなわち有料化は、不思議なことに予算からはずされました。昨年12月22日の財政教育委員会に提出された当局資料では、有料化の理由として、「時間延長を希望する特定の児童を対象としたプログラムを実施するためのもの」だから、「受益者負担を求める」と明記されていたのに、どうしてでしょうか。 午後7時までトワイライトスクールに残る子どもというのは、両親が共働きの場合など、ごく限られた特定の子どもたちです。時間延長のために専任の地域協力員も配置し、人件費もかさむのに応分の負担を求めない。それなら、保育園の延長保育についても保育料値上げをやめるべきではないでしょうか。「多くの子どもたちが利用できるように」というのが理由なら、多くの高齢者に利用してもらうために市民利用施設の高齢者料金の有料化もやめるべきではないでしょうか。トワイライトスクールの時間延長には受益者負担を求めないことによって、市長がとなえる「受益者負担」論は、筋の通らないものになったと考えますが、市長の見解を求めます。
3.「行財政改革」について行革を口実に営利企業へまる投げしていいのか【田口議員】 本市が策定中の「行財政集中改革計画」は、政府・総務省の「地方行革推進のための指針」にもとづくものであり、「小さな市役所」「民間でできるものは民間で」のかけ声で、職員の大幅な削減、業務の民間委託と民営化などを進めるものとなっています。しかし、公務員をどんどん減らし、営利企業に丸投げしていけば、公共サービスが切り捨てられることは、耐震強度の偽装事件などからも明らかです。 (1)市立則武保育園の廃園・民営化保護者の声も聞くことができないのか 【田口議員】 老朽化している則武保育園を廃園して、旧亀島小学校跡地に社会福祉法人の運営による保育園を開設する――このことを当局が則武保育園の保護者に明らかにしたのは昨年末。それから一か月後には社会福祉法人の募集を開始するという突然で一方的な進め方が保護者の怒りをかっています。2月10日には勤労会館小ホールを超満員にして廃園・民営化に反対する集会が開かれ、保護者の方が呼びかけた「廃園反対」の要望署名は5万人を超えたと聞いています。 則武保育園の保護者のみなさんの思いは、「現在の3歳児は転園を強いられ、保育士が変わることにより、不安定になる。子どもたちの心を大切にしてほしい」「名古屋市の保育園だったからこそ安心して預けることができた」などであります。 こうした保護者の声に応えて、公立保育園のままで建て替えればいいのではないですか。どうして公立保育園を廃園して民営化するのか。ねらいは、「行革」の名で市職員の削減を進めるためです。「コスト論」優先で子どもたちのことを考えない――だから、保護者たちは納得していないのです。 市長、則武保育園の廃園・民営化は撤回し、再検討する考えはありませんか。則武保育園の保護者たちが市長への面会を求めているに、市長は、どうして保護者の声を直接聞き、市長の考えを説明しようとしないのですか。答弁を求めます。
(2)名古屋ボストン美術館への財政支援いかなる支援も、財政支援しないとした「覚書」に反する 【田口議員】 赤字つづきの名古屋ボストン美術館を運営する名古屋国際芸術文化交流財団と名古屋商工会議所が、運営資金不足を補うため、県と市が出した基金のうち10億円づつの取り崩しを要請している問題で、市長は先ほど、「本市としても支援していく」が、「覚書の存在に苦慮している」と答弁されました。基金については、96年に財団と本市との間で締結された覚書において、「基金は取り崩さない」「名古屋ボストン美術館の運営において赤字が生じても、これを補填するよう要請しない」「契約終了時には県と市に寄付する」と明記されています。 基金の取り崩しを認めれば、わざわざ覚書を取り交わした意味がありません。将来、市に戻ってくるハズの10億円も戻ってきません。一方で、基金に手をつけないで新たに10億円も支出することは、財政状況が許しません。 もともとこの名古屋ボストン美術館は、名商が企業による文化支援活動として始めた事業です。ところが、バブルが崩壊して、名商が自分のプロジェクトとしては事業を進捗できなくなり、自治体に財政援助を求めてきた。これに応えて本市などが赤字を肩代わりしたという経過があります。当時、わが党が懸念していたように、今また同じことが繰り返されようとしているのです。 財界の事業失敗の穴埋めに、基金の取り崩しであれ、新たな支援措置であれ、いずれにしても市民の税金を投入する――こうしたやり方に、市民の理解は得られません。行財政改革にも逆行するではありませんか。 市長、名古屋ボストン美術館への財政支援については、いかなる形であれ応じないという毅然とした立場に立つべきです。市長の見解を求めます。
4.市長の「ポスト万博」4大プロジェクトについて(1)産業技術未来博物館構想―「市民と先端科学技術のふれあいの場」との整合性2つの技術分野の箱物づくりの区別は 【田口議員】 まず、産業技術未来博物館構想についてです。 これは市長が、昨年の市長選挙の際のマニフェストで打ち上げたものですが、本市とその周辺には、「ノリタケの森」や「でんきの科学館」など主なものでも14にのぼる産業観光施設があります。産業観光の分野は民間が力を入れており、民間でできる分野ですから、本市が関わって新たな箱物をつくる必要性はないと考えるものです。 さて、ここで問題になってくるのは、サイエンスパーク事業の一環である「市民と先端科学技術のふれあいの場」構想との整合性です。「市民と先端科学技術のふれあいの場」の整備のために、本市は98億円も出して広大な工場跡地を購入していますが、構想の具体化は10年以上も宙に浮いたままになっています。一方で、産業技術未来博物館について当局がイメージしている内容の中には、「先端的産業技術の世界的中枢」の中心都市としての展示や専門家・熟練者とのモノづくり体験など、「市民と先端科学技術のふれあいの場」でもイメージされる内容が含まれています。 そこで市長に伺います。産業技術未来博物館と「市民と先端科学技術のふれあいの場」、この類似した二つの技術分野の箱物づくりについて、市長は、どのように区別されているのでしょうか。もともと目的があいまいだった「市民と先端科学技術のふれあいの場」構想は、市長が突如として産業技術未来博物館構想を打ち上げたために、ますます見通しのないものになったのではありませんか、お答えください。
(2)名古屋城本丸御殿の復元急いでやる必要があるのか 【田口議員】 名古屋城本丸御殿は、城郭内に建てられた書院造りの建物として、京都の二条城二の丸御殿と並ぶと言われ、焼失するまでは国宝にも指定されていました。本丸御殿を復元することの意義は、文化的価値や匠のワザの伝承という点から語られています。 問題は、復元に要する多大な財政負担が懸念されることです。本丸御殿の復元のための事業費は、97年度当時の試算では約150億円といわれています。そのうち50億円は寄付などによる基金でまかなう計画のようですが、「依然として厳しい」という本市の財政にとって、重い負担となることは間違いありません。本丸御殿の復元への出費が優先されて、市民への負担増や市民サービスの切り下げが今後も繰り返されるようでは、華麗な御殿と貧しい市民生活との格差が生まれてしまうでしょう。 そこで市長にお尋ねします。一つ、市長は、「名古屋城開府400年」の2010年に復元過程を公開するという目標にこだわっていますが、この大事業の遂行に不可欠な市民挙げての熱望を欠いたまま、急いでやる必要があるのか。二つ、資金計画については、名古屋城再建のときのように「一般の市費をもってまかなうことを避ける」という立場に立って慎重に検討すべきではないのか。お答えください。
5.少子化対策について(1)市職員の新規採用の拡大市が率先して安定した雇用確保を 【田口議員】 少子化の大きな原因の一つになっているのが、労働の規制緩和による非正規雇用の増大です。いまや若者の二人に一人が、派遣や請負、パート、アルバイトという不安定で低賃金の非正規雇用です。労働政策研究・研修機構の調査によると、結婚している25歳から29歳の男性の割合は、正社員の場合は34.7%なのに、非正規雇用者は14.8%と半減。収入ランクでみると、年収1千万円以上の男性は7割以上が結婚していますが、非正規雇用者の平均年収に近い149万円以下では15%でしかありません。子どもを生み育てるどころか、経済的理由で結婚すらできない――「構造改革」の名による規制緩和で、こうした若者を増やしたことが、少子化に拍車をかけたことは言うまでもありません。 いま、この市役所の中でも、職員の定員削減などによって新規採用者数は減り続け、この5年間で4割以上も減少しています。公務員の削減は、若者がやりがいをもって安定して働ける場を奪うことにもなります。 教育、福祉、医療や防災など市民サービスの分野で、安易な臨時・嘱託化や委託化を行なわず、本市が率先して職員の新規採用を増やすことが、若者に安定した仕事を保障し、少子化対策にもなると考えますが、市長の見解を伺います。
(2)子どもの医療費無料化中学校卒業までの無料化をめざせ 【田口議員】 ただ、どうして小学校3年生までで、入院のみなのか。いま、国においては、乳幼児医療費の2割負担への軽減の年齢拡大が図られようとしています。 子どもの医療費無料化は、今後、通院の場合も対象とし、年齢も小学校卒業まで、さらには中学校卒業までへと、順次、拡大していくべきだと考えますが、市長はその必要性を認識しておられるのか、お尋ねします。
6.「国民保護計画」の策定について策定する必要も義務もない計画だ【田口議員】 本市が昨年行なった国民保護法についての市政アンケートでは、国が想定している武力攻撃などの8つの事態のうち、「特に備えが必要だと感じる」事態の第1位と第2位はテロ攻撃でした。着上陸侵攻や航空攻撃というのはわずかであり、市民は、テロの心配はしていても、他国による本格的な武力攻撃は想定していないのです。 「国民保護計画」の中心は有事の際の避難計画です。しかし、テロは、事前に予測することができません。そのため、市民が一番心配しているテロに備えた避難計画は、立てようがありません。テロはそもそも犯罪であり、それには警察が取り締まりや対処をすればいいわけです。 市政アンケートでは、弾道ミサイル攻撃に備える必要を感じるという回答が第3位でした。それでは、弾道ミサイル攻撃の場合にはどのような避難計画が立てられるのか。愛知県の「国民保護計画」や国が示している「市町村国民保護モデル計画」では、弾道ミサイルはどこに落ちるかわからない、だから「屋内に非難しなさい」となっています。家の中に避難していてミサイルが落ちてきても、運が悪かったということになるのでしょうか。どんなに頭をひねっても、この程度の避難計画しか立てられない。住民保護に値しない、こんな計画は、立てる必要がまったくないではありませんか。「国民保護計画」の策定は法定受託事務といっても、国民保護法には地方自治体が計画を策定する期限は定められていません。本市が「国民保護計画」を策定しなくても、政府が代執行などの手段で介入することは、およそできないと考えますが、市長の答弁を求めます。 大震災や大災害は、人間の力では防げませんが、戦争は、外交と政治の力で抑えることができます。戦争放棄を定めた憲法の立場とは相容れない有事法制の具体化ではなく、憲法九条の精神に立った平和外交の努力こそ重要であり、市長は、そのことを政府に求めるべきです。それこそ、市民の安全を守る道であるということを強調して、第1回目の質問を終わります。
市長自らが保護者と話し合うべきだ(再質問)【田口議員】
冷たい姿勢だ(意見)【田口議員】 市長の口からは、市民に負担増を強いることにたいして心を痛める言葉は何一つ語られませんでした。これは、本当に冷たい姿勢だと言いたい。貧富の格差に心を痛め、それを是正するのが、政治の役割です。とりわけ地方自治体が、本来の役割を発揮しなければならないときであります。わが党は、その立場で委員会などで質していくことを申し上げて、質問を終わります。
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