代表質問(3月3日) 田口かずと議員

代表質問

1 格差社会と貧困の広がりについて

90億円の市民負担増が格差と貧困の広がりに拍車をかけているのではないか

【田口議員】
私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して質問します。

いま、格差社会と貧困の広がりが大きな問題になっています。その根源には、小泉内閣が進めてきた弱肉強食の「構造改革」路線があります。市長は、「元気な名古屋」と繰り返されていますが、それでは名古屋市民は、格差や貧困の広がりと無縁かといえば、そうではありません。

生活保護世帯は、97年度の1万776世帯から04年度には2万60世帯に急増し、名古屋市内では、いまや50世帯に1世帯が生活保護世帯です。本市の保護率は12.1‰(パーミル)に上昇し、全国平均の11.1‰を上回っています。経済的な理由により、就学援助を受けている児童・生徒の割合も、今年2月現在では15.1%と、この10年間で2倍近く増えました。

「構造改革」と愛知万博で「元気」になったのは、空前の利益を上げている一部の大企業に過ぎません。格差と貧困が、この地域でも広がっていることは明らかです。

ところが、松原市長が提出した予算は、暮らしが大変な市民に重い負担を押しつけるものとなっています。生活保護では、高校入学支度金や夏季・歳末の見舞金など本市独自の援護措置を廃止する。高齢者にたいしては、介護保険料の4割もの大幅値上げ、税制改悪にともなう国民健康保険料や敬老パスの引き上げ、市民利用施設の高齢者料金の有料化。子育て・教育の分野では、就学援助の所得基準額の引き下げ、保育料や延長保育料の値上げ。障害者福祉の分野でも、「自立支援」の名のもとに、サービス利用料が原則1割負担となりますが、何らの減免措置も独自には講じようとしていません。さらに、水道・下水道料金の飲食店や中小企業などへの軽減措置の廃止など、新年度の市民負担増は、総額で90億円を超えます。これでは、ますます格差と貧困が広がるのではないでしょうか。

市長、「元気」といわれる名古屋でも、格差と貧困が広がっているという認識を持っていますか。また、新年度予算に盛り込まれた90億円を超える市民への負担増が、格差と貧困の広がりに拍車をかけるのではありませんか。答弁を求めます。

格差や貧困が広がっているとは断言できない(市長)

【市長】
生活保護は、高齢者世帯の増加や離婚率の上昇によるひとり親世帯の増加、また、中高年齢層の失業の増加などに伴い、全国的に生活保護を受給する世帯数か増加しており、本市も同様な状況にある。政令指定都市は、仕事を求めて地方から転入する方が多いことに加え、こうした方が雇用・景気の動向の影響を受け収入が減少することにより、生活保護を受給することとなったり、ホームレスになることを余儀なくされるという大都市特有の問題がある。

就学援助の認定率は、平成7年度実績は7.9%、平成16年度実績は14.8%。これは、厳しい経済状況による所得状況の悪化を背景としたものではないか。

 

生活保護や就学援助にも様々な要因があるように、格差社会の到来という説の背景にも、高齢化による高齢世帯や単独世帯の増加といった世帯の小規模化による影響がある、という分析もあり、格差や貧因が広がっている、と断言するには、まだまだ分析や検討を待たなければならない。

 

使用料等の改定は、「施設を利用される方とされない方の負担の公平を図る観点から施設使用料の改定」「第3期介護保険事業計画の策定にあたり、相互扶助により支える介護保険事業の円滑な実施に見合う保険料の改定」などを考えた。持続可能な制度運営のために改定し、市民に一定の負担増をお願いするが、未来を背負う子どもたちに、負担を先送りすることは、現世代として避けたい。

2.市民への負担増について

(1)就学援助の所得基準額の引き下げ中止を

子育て世帯の収入が減ったから就学援助を減らすのは本末転倒

【田口議員】
次に、市民への負担増のいくつかについて質問します。

第1に、就学援助の所得基準額の見直しについてです。

これまでは、おおむね生活保護基準額の1.3倍までだった所得基準額を、生活保護基準額並に引き下げるという見直しによって、就学援助の予算が1億2千万円削減され、就学援助を受けられなくなる小・中学生が約1500人も生まれます。給食費が払えない、修学旅行の費用が出せずに参加できない子どもが増えるでしょう。元教師だった松原市長、子どもたちにつらい思いをさせてもよいとお考えですか。わが党は、就学援助の所得基準額の引き下げを中止することを求めるものです。

見直しの理由の一つに当局は、就学援助の所得基準額が子育て世代の平均所得額を上回っていることをあげています。しかし、格差社会が広がるもとで、勤労者の所得が減り続けていることが問題なのです。それを理由に就学援助の所得基準額の方を引き下げるというのは本末転倒ではないでしょうか。市長の見解を求めます。

政令市の平均水準並みに見直す(市長)

【市長】
教育委員会は、準要保護の認定にあたり、一定額の所得基準を設定し、生活保護の対象とならない人にも援助を行っている。しかし、平成15年度、16年度の行政評価で、「比較的所得水準の高い世帯まで援助している実態がある」「政令指定都市の中で最も高い所得基準である」ため、「援助の対象範囲について見直すことが必要」との指摘を受けている。

 

慎重に検討した結果、準要保護者の認定のための所得水準を他の政令市の平均水準並みに見直すこととした。真に就学援助を必要とする方は、引き続き支援したい。

(2)介護保険料の大幅値上げ

介護保険の4割もの値上げで胸が痛まないのか

【田口議員】
第2に、介護保険料の大幅値上げについてです。

この4月からの高齢者の介護保険料の改定は、基準額を現行の月額3153円から4398円へと約4割も値上げするというものです。年間で約1万5千円の負担増になります。しかも、税制改悪によって約6万人の高齢者が、市民税非課税世帯から課税世帯となり、介護保険料の段階も上がります。たとえば、夫が年金260万円、妻が年金60万円の高齢者世帯の場合、夫の介護保険料段階は第2段階から新しい区分では第5段階に上がり、妻は第2段階から第4段階に上がります。その結果、保険料は、夫婦合わせて年間118760円へと62000円もの引き上げになるのです。夫婦で年金320万円の世帯にとっては、耐え難い負担増ではないでしょうか。

税制改悪にともなう保険料段階の上昇にたいしては、国が激変緩和措置を講じていますが、この世帯の場合では、3年間にわたって毎年2万円前後の保険料値上げが繰り返されるわけですから、きわめて不十分なものです。

市長、介護保険料の大幅値上げが、年金暮らしの高齢者にもたらす負担増についてどのようにお考えですか。負担増を押しつけることに胸が痛みませんか。お答えください。

わが党は、介護保険料の大幅値上げを撤回するとともに、低所得者にたいする保険料の減免制度を拡充することを求めるものです。

段階を細分化し、経過措置もある(市長)

【市長】
今回の保険料の改定に伴い、所得の低い方や、所得が一定以上ある方の保険料段階区分を細分化し、負担能力に応じた、きめ細やかな制度となるよう努めた。税制改正に伴う負担増も、2年間の経過期間を設け、負担の緩和を図った。

 

介護保険制度を持続可能なものにし、今回新たに創設された介護予防事業を始め、高齢者の健康づくりを一層進めたい。

(3)庶民増税の市民への影響―敬老パスの場合

庶民増税に連動し6万人が5倍の値上げは緩和措置を

【田口議員】
第3は、庶民増税の市民への影響についてです。

小泉内閣の庶民増税による負担増が、新年度から市民税の分野で本格化します。とりわけ高齢者の場合は、公的年金等控除の引き下げ、老年者控除の廃止、住民税非課税措置の廃止によって、合わせて23億円の市民税増税となります。さらに、定率減税の半減によって52億円もの負担増が名古屋市民にもたらされます。

庶民への増税は、増税にとどまらず、介護保険料、国保料、保育料などの「雪だるま式」の負担増をもたらすことは、先に介護保険料で見たとおりです。

ここでは、敬老パスの自己負担金の値上げについてお尋ねします。敬老パスの負担金は、市民税非課税世帯から新たに課税世帯となる約6万人の高齢者が、自動的に1000円から5000円へ4000円の値上げになります。介護保険料ではきわめて不十分ながらも激変緩和措置がありますが、敬老パスの場合は緩和措置がありません。税制改悪によって高齢者から吸い上げる市民税の増収分は、敬老パス負担金など高齢者の負担増を軽減するために使うべきです。

税制改悪にともなう敬老パス負担金の値上げを避けるためには、無料に戻すことが根本的な解決になると考えますが、少なくとも敬老パスについても、何らかの激変緩和措置を講じるべきではありませんか。市長の答弁を求めます。

税負担の公平を確保(市長)

【市長】
敬老パスの負担額は、月に市バス一往復分程度、年額5,000円を基本とし、住民税非課税世帯の方は年額1,000円とし、負担の軽減を図っている。

 

今回の税制改正は、現役世代と高齢者間の税負担の公平を確保するとの観点から実施され、 敬老パスの負担金は、世帯として住民税が課税されているか否かで区分するという考え方で実施したい。

(4)「受益者負担」論の破綻―トワイライトスクールの時間延長モデル事業

延長保育や高齢者使用料の値上げをやめよ

【田口議員】
市長は、受益者負担の適正化を口実にして、敬老パスや高齢者の施設使用料の有料化などを行なってきました。

ところが、トワイライトスクールの時間延長モデル事業については、当初検討されていた月4千円程度の保護者負担、すなわち有料化は、不思議なことに予算からはずされました。昨年12月22日の財政教育委員会に提出された当局資料では、有料化の理由として、「時間延長を希望する特定の児童を対象としたプログラムを実施するためのもの」だから、「受益者負担を求める」と明記されていたのに、どうしてでしょうか。

午後7時までトワイライトスクールに残る子どもというのは、両親が共働きの場合など、ごく限られた特定の子どもたちです。時間延長のために専任の地域協力員も配置し、人件費もかさむのに応分の負担を求めない。それなら、保育園の延長保育についても保育料値上げをやめるべきではないでしょうか。「多くの子どもたちが利用できるように」というのが理由なら、多くの高齢者に利用してもらうために市民利用施設の高齢者料金の有料化もやめるべきではないでしょうか。トワイライトスクールの時間延長には受益者負担を求めないことによって、市長がとなえる「受益者負担」論は、筋の通らないものになったと考えますが、市長の見解を求めます。

教育事業なので無料(市長)

【市長】
「受益者負担」とは、行政サービスを利用する人と利用しない人との負担の公平の観点から、その利用者に一定の費用負担を求めるもの。市民利用施設の使用料は、こうした考え方に基づき、施設の管理運営費に対して利用者に一定の負担をお願いするもの。子育て家庭の負担には配慮して、子ども料金を、原則無料とした。

 

トワイライトスクールは、全児童を対象とした教育事業であり、従来から参加費は無料としてきた。18年度から16校で実施予定の時間延長モデル事業は、開設時間を現在の午後6時から7時に延長することなどにより、すべての児童がより参加しやすい環境づくりを図るため、従来どおり参加無料としたい。

3.「行財政改革」について

行革を口実に営利企業へまる投げしていいのか

【田口議員】
次に、「行財政改革」についてです。

本市が策定中の「行財政集中改革計画」は、政府・総務省の「地方行革推進のための指針」にもとづくものであり、「小さな市役所」「民間でできるものは民間で」のかけ声で、職員の大幅な削減、業務の民間委託と民営化などを進めるものとなっています。しかし、公務員をどんどん減らし、営利企業に丸投げしていけば、公共サービスが切り捨てられることは、耐震強度の偽装事件などからも明らかです。

(1)市立則武保育園の廃園・民営化

保護者の声も聞くことができないのか

【田口議員】
そこで、市立則武保育園の廃園・民営化問題について質問します。

老朽化している則武保育園を廃園して、旧亀島小学校跡地に社会福祉法人の運営による保育園を開設する――このことを当局が則武保育園の保護者に明らかにしたのは昨年末。それから一か月後には社会福祉法人の募集を開始するという突然で一方的な進め方が保護者の怒りをかっています。2月10日には勤労会館小ホールを超満員にして廃園・民営化に反対する集会が開かれ、保護者の方が呼びかけた「廃園反対」の要望署名は5万人を超えたと聞いています。

則武保育園の保護者のみなさんの思いは、「現在の3歳児は転園を強いられ、保育士が変わることにより、不安定になる。子どもたちの心を大切にしてほしい」「名古屋市の保育園だったからこそ安心して預けることができた」などであります。

こうした保護者の声に応えて、公立保育園のままで建て替えればいいのではないですか。どうして公立保育園を廃園して民営化するのか。ねらいは、「行革」の名で市職員の削減を進めるためです。「コスト論」優先で子どもたちのことを考えない――だから、保護者たちは納得していないのです。

市長、則武保育園の廃園・民営化は撤回し、再検討する考えはありませんか。則武保育園の保護者たちが市長への面会を求めているに、市長は、どうして保護者の声を直接聞き、市長の考えを説明しようとしないのですか。答弁を求めます。

職員増は厳しいから民営化。個別相談はする(市長)

【市長】
則武保育園は昭和10年の建設であり老朽化に伴い建て替える必要がある。また市内唯一の3歳から5歳だけの保育園で、保育時間も午後4時半までと短く、多用な保育ニーズに対応できない。平成19年4月の開設に向けて、保育園の整備を近隣の旧亀島小学校跡地で行うこととし、多様な市民ニーズに応えたい。

 

社会福祉施設の運営は社会福祉審議会の意見具申において、公・民の役割分担、民間活力の活用の観点から検討すべきであるとされた。保育園の運営では、本市の定員管理上、職員増は非常に厳しい状況にあるので、新設する保育園は、地域の社会福祉の向上を目的とした、公共性の高い社会福祉法人で行うこととした。

 

保護者との対応は、所管局が窓口となってこれまで説明会や話し合いを重ねてきたが、今後も、保護者の方々と個別に相談を行うなど、十分理解が得られるよう努力したい。

(2)名古屋ボストン美術館への財政支援

いかなる支援も、財政支援しないとした「覚書」に反する

【田口議員】
「行財政改革」とのかかわりで、名古屋ボストン美術館への財政支援問題について質問します。

赤字つづきの名古屋ボストン美術館を運営する名古屋国際芸術文化交流財団と名古屋商工会議所が、運営資金不足を補うため、県と市が出した基金のうち10億円づつの取り崩しを要請している問題で、市長は先ほど、「本市としても支援していく」が、「覚書の存在に苦慮している」と答弁されました。基金については、96年に財団と本市との間で締結された覚書において、「基金は取り崩さない」「名古屋ボストン美術館の運営において赤字が生じても、これを補填するよう要請しない」「契約終了時には県と市に寄付する」と明記されています。

基金の取り崩しを認めれば、わざわざ覚書を取り交わした意味がありません。将来、市に戻ってくるハズの10億円も戻ってきません。一方で、基金に手をつけないで新たに10億円も支出することは、財政状況が許しません。

もともとこの名古屋ボストン美術館は、名商が企業による文化支援活動として始めた事業です。ところが、バブルが崩壊して、名商が自分のプロジェクトとしては事業を進捗できなくなり、自治体に財政援助を求めてきた。これに応えて本市などが赤字を肩代わりしたという経過があります。当時、わが党が懸念していたように、今また同じことが繰り返されようとしているのです。

財界の事業失敗の穴埋めに、基金の取り崩しであれ、新たな支援措置であれ、いずれにしても市民の税金を投入する――こうしたやり方に、市民の理解は得られません。行財政改革にも逆行するではありませんか。

市長、名古屋ボストン美術館への財政支援については、いかなる形であれ応じないという毅然とした立場に立つべきです。市長の見解を求めます。

存続に向け支援(市長)

【市長】
名古屋ボストン美術館は、文化施設であり、金山南地域の拠点施設であり、文化観光施設である。名古屋ボストン美術館については、これまで本市としても経営安定化基金への出えんをはじめ、金山南ビルに美術館施設を作るなどさまざまな面で支援を行ってきた。

 

財団法人名古屋国際芸術文化交流財団は、平成21年から10年間の新たな契約について、米国ボストン美術館と交渉し、米国ボストン美術館への寄付金を約20億円減額、企画展も名古屋側の意見を今まで以上に反映させることができるような状況となった。

 

一方、地元経済界も新たに35億円の寄付金を募集する。財団と経済界が名古屋ボストン美術館の存続に向けて積極的に取り組んでいることを踏まえ、本市としても議会で充分説明をし、支援をしていきたい。

4.市長の「ポスト万博」4大プロジェクトについて

(1)産業技術未来博物館構想―「市民と先端科学技術のふれあいの場」との整合性

2つの技術分野の箱物づくりの区別は

【田口議員】
次に、松原市長が掲げる「ポスト万博」の4大プロジェクトのうち、産業技術未来博物館構想と名古屋城本丸御殿の復元について質問します。

まず、産業技術未来博物館構想についてです。

これは市長が、昨年の市長選挙の際のマニフェストで打ち上げたものですが、本市とその周辺には、「ノリタケの森」や「でんきの科学館」など主なものでも14にのぼる産業観光施設があります。産業観光の分野は民間が力を入れており、民間でできる分野ですから、本市が関わって新たな箱物をつくる必要性はないと考えるものです。

さて、ここで問題になってくるのは、サイエンスパーク事業の一環である「市民と先端科学技術のふれあいの場」構想との整合性です。「市民と先端科学技術のふれあいの場」の整備のために、本市は98億円も出して広大な工場跡地を購入していますが、構想の具体化は10年以上も宙に浮いたままになっています。一方で、産業技術未来博物館について当局がイメージしている内容の中には、「先端的産業技術の世界的中枢」の中心都市としての展示や専門家・熟練者とのモノづくり体験など、「市民と先端科学技術のふれあいの場」でもイメージされる内容が含まれています。

そこで市長に伺います。産業技術未来博物館と「市民と先端科学技術のふれあいの場」、この類似した二つの技術分野の箱物づくりについて、市長は、どのように区別されているのでしょうか。もともと目的があいまいだった「市民と先端科学技術のふれあいの場」構想は、市長が突如として産業技術未来博物館構想を打ち上げたために、ますます見通しのないものになったのではありませんか、お答えください。

錯綜する部分もある(市長)

【市長】
「産業技術未来博物館構想」は、産業技術をテーマとして、過去から現在・未来を発信し、大きな交流を創造していくことを目指す。また、先人が築いた、モノづくりの精神・文化の継承や中小企業が支える基盤技術にも光を当てていく。過去から現在まで産業技術が人々の生活に果たしてきた歴史や、未来の技術がこれからの暮らしをどう変えていくのかを表現し、体感できるものとしていきたい。

 

「市民と先端科学技術のふれあいの場構想」は、なごやサイエンスパークでの研究成果等を活かし、ここで培われた産学連携の仕組みを活用しながら、中小企業やベンチャー企業の事業化等を支援するとともに、市民が先端科学技術にふれる施設整備を検討している。

 

それぞれの役割や目的をもって検討を行っているものが、一面、錯綜する部分もないとは言い切れないので、これについて幅広い議論をしていこうと今回の予算に計上した。

(2)名古屋城本丸御殿の復元

急いでやる必要があるのか

【田口議員】
次に、名古屋城本丸御殿の復元についてです。

名古屋城本丸御殿は、城郭内に建てられた書院造りの建物として、京都の二条城二の丸御殿と並ぶと言われ、焼失するまでは国宝にも指定されていました。本丸御殿を復元することの意義は、文化的価値や匠のワザの伝承という点から語られています。

問題は、復元に要する多大な財政負担が懸念されることです。本丸御殿の復元のための事業費は、97年度当時の試算では約150億円といわれています。そのうち50億円は寄付などによる基金でまかなう計画のようですが、「依然として厳しい」という本市の財政にとって、重い負担となることは間違いありません。本丸御殿の復元への出費が優先されて、市民への負担増や市民サービスの切り下げが今後も繰り返されるようでは、華麗な御殿と貧しい市民生活との格差が生まれてしまうでしょう。

そこで市長にお尋ねします。一つ、市長は、「名古屋城開府400年」の2010年に復元過程を公開するという目標にこだわっていますが、この大事業の遂行に不可欠な市民挙げての熱望を欠いたまま、急いでやる必要があるのか。二つ、資金計画については、名古屋城再建のときのように「一般の市費をもってまかなうことを避ける」という立場に立って慎重に検討すべきではないのか。お答えください。

世界的文化遺産として復元(市長)

【市長】
開府400年に向け、世界的な文化遺産であった本丸御殿を、熟練した匠の技を後世に引き継ぐ文化事業として往時の姿そのままに、千年の命を保つ書院造りで復元したいと考えている。勇壮な天守閣と優美な本丸御殿が並び立つことで、近世とせい文化の象徴としての市民の新たなほこりを創出すると共に、名古屋の魅力を内外に発信する交流拠点となりうるものとしたい。

 

財源は、市民に寄付をお願いするとともに補助金などについて広く関係機関と調整したい。市民的な盛り上がりがなければこのような大文化事業はなしえない。盛り上がりができるようにしたい。

5.少子化対策について

(1)市職員の新規採用の拡大

市が率先して安定した雇用確保を

【田口議員】
次に、少子化対策についてです。

少子化の大きな原因の一つになっているのが、労働の規制緩和による非正規雇用の増大です。いまや若者の二人に一人が、派遣や請負、パート、アルバイトという不安定で低賃金の非正規雇用です。労働政策研究・研修機構の調査によると、結婚している25歳から29歳の男性の割合は、正社員の場合は34.7%なのに、非正規雇用者は14.8%と半減。収入ランクでみると、年収1千万円以上の男性は7割以上が結婚していますが、非正規雇用者の平均年収に近い149万円以下では15%でしかありません。子どもを生み育てるどころか、経済的理由で結婚すらできない――「構造改革」の名による規制緩和で、こうした若者を増やしたことが、少子化に拍車をかけたことは言うまでもありません。

いま、この市役所の中でも、職員の定員削減などによって新規採用者数は減り続け、この5年間で4割以上も減少しています。公務員の削減は、若者がやりがいをもって安定して働ける場を奪うことにもなります。

教育、福祉、医療や防災など市民サービスの分野で、安易な臨時・嘱託化や委託化を行なわず、本市が率先して職員の新規採用を増やすことが、若者に安定した仕事を保障し、少子化対策にもなると考えますが、市長の見解を伺います。

就労支援は必要だが、定員管理は厳しくする(市長)

【市長】
若者の就労を支援し自立を促すことは、少子化対策という観点からも大切である。市職員の新規採用は、最少の経費で最大の効果をあげるように努め、退職者の状況や組織・定員を常に精査しながら必要な採用を行っている。財政状況が厳しい中で、今後とも、限られた人材を有効に活用し、より一層市民サービスを充実させていくため、広い視野と柔軟な思考で意欲的に行動できる人材を確保する。

(2)子どもの医療費無料化

中学校卒業までの無料化をめざせ

【田口議員】
少子化対策では、子育て世代の経済的負担を軽減することも重要な課題であり、その一つとして子どもの医療費無料化があります。新年度予算で、入院のみですが、小学校3年生まで医療費の無料化が拡大されることは喜ばしいことではあります。

ただ、どうして小学校3年生までで、入院のみなのか。いま、国においては、乳幼児医療費の2割負担への軽減の年齢拡大が図られようとしています。

子どもの医療費無料化は、今後、通院の場合も対象とし、年齢も小学校卒業まで、さらには中学校卒業までへと、順次、拡大していくべきだと考えますが、市長はその必要性を認識しておられるのか、お尋ねします。

小学1〜3年生への入院無料助成を予算化(市長)

【市長】
平成17年3月の「なごや子ども・子育てわくわくプラン」で「小学生医療費助成制度」を新規事業として掲げた。子育て家庭の経済的支援のため、本年8月から、小学1年生から3年生を対象とした入院にかかる医療費の助成について、予算を新たにお願いしている。

6.「国民保護計画」の策定について

策定する必要も義務もない計画だ

【田口議員】
最後に、国民保護法にもとづく「国民保護計画」の策定について質問します。

本市が昨年行なった国民保護法についての市政アンケートでは、国が想定している武力攻撃などの8つの事態のうち、「特に備えが必要だと感じる」事態の第1位と第2位はテロ攻撃でした。着上陸侵攻や航空攻撃というのはわずかであり、市民は、テロの心配はしていても、他国による本格的な武力攻撃は想定していないのです。

「国民保護計画」の中心は有事の際の避難計画です。しかし、テロは、事前に予測することができません。そのため、市民が一番心配しているテロに備えた避難計画は、立てようがありません。テロはそもそも犯罪であり、それには警察が取り締まりや対処をすればいいわけです。

市政アンケートでは、弾道ミサイル攻撃に備える必要を感じるという回答が第3位でした。それでは、弾道ミサイル攻撃の場合にはどのような避難計画が立てられるのか。愛知県の「国民保護計画」や国が示している「市町村国民保護モデル計画」では、弾道ミサイルはどこに落ちるかわからない、だから「屋内に非難しなさい」となっています。家の中に避難していてミサイルが落ちてきても、運が悪かったということになるのでしょうか。どんなに頭をひねっても、この程度の避難計画しか立てられない。住民保護に値しない、こんな計画は、立てる必要がまったくないではありませんか。「国民保護計画」の策定は法定受託事務といっても、国民保護法には地方自治体が計画を策定する期限は定められていません。本市が「国民保護計画」を策定しなくても、政府が代執行などの手段で介入することは、およそできないと考えますが、市長の答弁を求めます。

大震災や大災害は、人間の力では防げませんが、戦争は、外交と政治の力で抑えることができます。戦争放棄を定めた憲法の立場とは相容れない有事法制の具体化ではなく、憲法九条の精神に立った平和外交の努力こそ重要であり、市長は、そのことを政府に求めるべきです。それこそ、市民の安全を守る道であるということを強調して、第1回目の質問を終わります。

2006年度中に作成する(市長)

【市長】
国民保護法によると、市町村国民保護計画は、都道府県国民保護計画に基づき作成することとされている。愛知県の計画は、本年1月20日に国との協議を終え、2月1日に公表され、本年1月31日には、総務省消防庁から、市町村国民保護モデル計画が公表された。

 

市民の安心や安全のため、いかなる危機に対してもその対応策を準備しておくことが、本市における重要な責務である。テロや武力攻撃といった危機における市民の意識などにも考慮しながら、平成18年度中に、国民保護計画を作成する。

市長自らが保護者と話し合うべきだ(再質問)

【田口議員】
市長、私の質問にもっと正面から答えていただきたい。時間がありませんので、一点だけ、則武保育園の廃園・民営化問題で市長に再質問します。市長は、自らが則武保育園の保護者の方と面会する用意があるのですか。はっきりとお答えください。

【市長】
それぞれの保護者の個々具体の問題につきましては、それぞれ、関係のものが誠意を持って話し合いたい。

冷たい姿勢だ(意見)

【田口議員】
市長は、本日も、先日の提案説明でも、「子どもたちが健やかに育まれ、未来に大きな夢や希望を持てるまちづくりに全力で取り組んでいく」、市民のみなさんなどとの「協働による大きな力で、明るい未来に向かってまい進していく」と語られました。だったら則武保育園の保護者とも会って、則武保育園の子どもたちの未来についても語り合うべきです。

市長の口からは、市民に負担増を強いることにたいして心を痛める言葉は何一つ語られませんでした。これは、本当に冷たい姿勢だと言いたい。貧富の格差に心を痛め、それを是正するのが、政治の役割です。とりわけ地方自治体が、本来の役割を発揮しなければならないときであります。わが党は、その立場で委員会などで質していくことを申し上げて、質問を終わります。