2006年度予算案に対する反対討論(3月22日) わしの恵子議員

小泉内閣いいなりの増税路線をおしつけ

【わしの議員】
わしの恵子議員私は、日本共産党市会議員団を代表して、2006年度一般会計予算に反対する立場から討論を行います。

この間の小泉内閣の構造改革路線により、名古屋市民の暮らし、福祉が深刻になるばかりです。とくに確定申告を終えた年金生活者には、老年者控除の廃止などによる重税感がずっしりと身に応えたことでしょう。また、障害をかかえた方にとっても自立支援の名による福祉切り捨てや、医療費の増大など、多くの人たちが、生活不安を感じていることと思います。

ところが、松原市長が提出した予算は、国いいなりで、「三位一体改革」による国庫負担の削減や、庶民大増税をそのまま、市民に押し付けるもので、高齢者を始め、市民には一層重い負担となっています。

庶民大増税の影響は所得税の値上げのみならず、個人市民税の増税、それに伴い、国保料や介護保険料、敬老パス負担金や保育料など、雪だるま式に増えます。

この問題については、昨年の予算議会で、わが党は代表質問で対策を求めましたが、市長はなんの対応もしてきませんでした。だから今、このような大きな矛盾となっているのです。

いまこそ、市長は、国の悪政から市民の暮らしを守る防波堤の役割をはたすべきです。

しかし、市長は、「これ以上の市民負担を増やすな」というわが党の代表質問や委員会での質疑にたいしても、全く聴く耳をもたず、国のいいなりで、市が独自に実施できる介護保険料や、敬老パス負担金の軽減措置を考えようともしていません。

これでは、市民の暮らしはますます悪くなるばかりではありませんか。

以下、具体的に予算案に反対する理由を申し上げます。

貧困と社会的格差に拍車をかける予算

反対する理由の第1は、国の悪政に追随し、市民を守る独自施策を更に後退させ、市民負担増と市民犠牲を強めるなど、貧困と社会的格差に拍車をかけるものになっていることです。

新年度予算には、介護保険料の大幅値上げをはじめ、障害者福祉サービス利用料の原則1割負担、国民健康保険の精神通院医療の有料化、生活保護の市独自施策のカット、就学援助の対象者を1500人カット、さらに、生涯学習センターなど公の施設の使用料の値上げ、敬老パス負担金の値上げ等々が、盛り込まれています。

敬老パスは無料でこそ税制改悪の影響を受けない

敬老パスについての原案は、庶民大増税による、介護保険料段階の変更にともなうものですが、高齢者の非課税措置の廃止などで、約5万8千人の高齢者の負担金が、1000円から5000円へと5倍もの大幅値上げになるというものでした。

また、民主党・公明党による修正は、敬老パスの値上げが強いられる5万8千人のうち、1人暮らし世帯など4万1千人は5000円に値上げされるもので、負担増に変わりはありません。1万7千人については、2年間だけ3000円にするといいますが、「激変緩和」という点ではきわめて不十分です。また、「本人が市民税非課税で世帯課税」の人は3000円という新しい区分についても、暫定的とはいえ余りにも安易な対応としかいえません。

わが党は、代表質問や委員会質疑で、「税制改悪にともなう負担金値上げを避けるためには、無料に戻すことが根本的な解決になるが、少なくとも激変緩和措置を講じるべきではないか」「負担増の凍結を」と求めてきました。

敬老パスは、税制改悪などの影響を避けるための根本的な解決は、無料に戻すしかありません。

子ども青少年局の名にふさわしい子育て支援策を

反対する理由の第二は、「子ども青少年局」の設置をするといいますが、少子化対策とは名ばかりで、子育て環境を後退させるものになってしまうからです。

父母の声も聞かないで則武保育園を廃園

まず、市立則武保育園の廃園・民営化問題です。「地方行革」による職員削減を背景にして、市は昨年末、突然、保育園の廃園・民営化について、一方的に父母に示しました。民間による新設保育園の建設が予算化されましたが、父母が安心して子どもをあずけてきた公立保育園を廃園することは、子育て環境を充実する少子化対策にも逆行するものです。

父母が納得していないままの強行は許されません。父母の怒りは広がるばかりです。

市長は、則武保育園の父母のみなさんが呼びかけた、5万人を超える「廃園反対」の要望署名さえ、直接受け取らず、父母との面会をも拒絶されました。

これでどうして、市民の代表としての役割が果たせるのでしょうか。あまりにも市民無視で、傲慢な態度ではないでしょうか。市長は父母の声を直接聞いて、信頼回復を図るべきです。子ども青少年局の発足にあたり、最初の仕事がこれでは余りにもひどい話ではありませんか。

トワイライトスク−ルの時間延長は学童保育に任せよ

次に、トワイライトスクールの時間延長モデル事業についてです。新年度予算では、トワイライトスクールを、午後7時まで時間延長して、おやつも出すというモデル事業を提案しています。しかし、親が働いている子どもを遅くまで預かるのは、トワイライトスクールでやることではありません。本来、学童保育でおこなうべきです。全児童対策のトワイライトスクールを午後7時まで延長する予算を出すのなら、学童保育にたいして午後7時まで助成を行うことが必要です。

学童保育所は働く父母にとって大きな役割を果たしてきました。しかし市の助成はトワイライトスクールに比べ半分ないし3分の1といわれています。市は学童保育を制度化して手厚い予算措置をとるべきです。

大型開発優先の予算

反対理由の第3は、産業技術未来博物館構想や名古屋城本丸御殿の復元、「都市再生」の名による超高層ビル建設への補助金など、相変わらず大型開発優先の予算となっていることです。

財界主導の産業技術未来博物館構想

まず、産業技術未来博物館構想についてです。

本市と周辺には「ノリタケの森」などいくつもの産業観光の施設があり、民間が力を入れています。民間でできる分野に市がかかわるというのは、市長が、日頃から口にしている「官から民へ」の流れとは反対ではないでしょうか。財界からいわれるまま市が新たな箱物を作る必要性は全くありません。産業技術未来博物館構想は、「2010計画」では明示されていないにもかかわらず、なぜ突然出てきたのかが、委員会の審議で明らかになりました。

2004年10月に商工会議所から最重点要望として出され、その直後に調査費がつけられたことがはっきりしました。財界のいうがままという点では、「覚え書き」を破ってまで大赤字の名古屋ボストン美術館の基金を取り崩ずそうとしていることと同じではありませんか。

次に、名古屋城本丸御殿の復元についてです。

名古屋城本丸御殿は、書院造りの建物として、焼失するまでは国宝に指定されていました。名古屋城全体が特別史跡に指定されているなかで、名勝といわれた二の丸庭園など他の史跡と本丸御殿の位置づけなど検討課題も多くあるところです。最大の問題は、97年当時の試算で、約150億円もかかることです。そのうち3分の1の50億円を市民の寄付でまかなうというものですが、本市の財政にとって重い負担となることは間違いありません。

また、市長は「名古屋城開府400年」の2010年に復元過程を公開するとこだわっていますが、市民の盛り上がりも少なく、文化的価値の議論もふくめ、幅広く市民の意見を求めることが必要であり、現時点では時期尚早であるといわざるをえません。

さらには、「都市再生」事業ですが、大企業が進めている名古屋駅前の3つの超高層ビル建設に多額の補助金が支出されています。

補助金の額は、新年度予算は16億円、累計で60億円を超えます。大企業のための大型開発を支援し、いっそう推進しようとしているもので問題です。

反対理由の第4は、食肉市場をめぐって不明朗といわざるをえないような税金の支出がされていることです。

これまで市は、「名食」が59億円で「愛食」から営業権を買った際、3億円ずつ5年間補助を出してきましたが、新年度から2年間、2億5千万円ずつ補助することが明らかになりました。59億円の根拠さえ明らかにしないまま、市が7年間で20億円もの補助金を支出するということになります。

しかも、委員会の審議のなかでは、「名食」が59億円を10年間で返済する予定であるものの、「名食」が南部市場に移転してからの営業状況によっては、返済資金が捻出できない可能性があり、その際に、「名古屋市が何らかの支援を行う方針だ」ということまで答弁されました。これでは「愛食と名食」の関係は不明朗のまま、本市が多額の税金を投入していくということであり、納得できません。

反対理由の第5は、国民を戦争に巻き込む「国民保護計画」を策定しようとしていることです。

いま、求められているのは、国民保護計画の策定という有事法制の具体化ではなく、「有事」を起こさせない、憲法9条の精神に立った平和外交の努力をすることです。委員会でも明らかになったように、国民保護協議会条例を制定する期限も、国民保護計画を策定する期限も法では設定されていません。また、計画を策定しなくても国からの関与は想定されないということですので、国民を戦争にまきこむ「国民保護計画」の策定はやめるべきです。

このような2006年度予算案に対して、私たちは、20日、市長に「日本共産党の予算組み替え案」を提出しました。

その基本的な考え方は、市が国の悪政から市民を守る防波堤になり、「ポスト万博」の名による大型プロジェクトや大企業の開発支援事業など、多くの市民の理解と納得が得られないものについては、メスを入れ、中止あるいは凍結して、市民の暮らしを支援する市政に切り替えることです。

このように予算のあり方を大もとから切り替えてこそ、敬老パス負担金など新たな市民負担の押し付けをやめ、「子育てするなら名古屋」の実現など、市民の切実な要求をかなえるものにすることが出来ると考えます。

市長が提案された予算案を、市民本位に組み替えることこそ、市民が切実に求めているものであることを強調して、討論を終わります。