2006年度6月議会 議案外質問 山口きよあき議員

消防体制の充実について

消防職員の人員まで削減するのか

【山口議員】
先日、中村区で発生した火災事故で、残念なことに消火活動中の殉職者を出してしまいました。27歳という若さで亡くなられた太田英伸消防士長のご冥福を心からお祈りすると共に、ご遺族の方へもこの場を借りてお悔やみを申し上げます。また怪我をされた方々の一刻も早い回復を心から願うものです。

今回の事故についての直接的な原因究明と再発防止策は、いま作業の最中だと思います。今日は、消防の職員体制の問題などについて、市長ならびに消防長に何点かうかがいたいと思います。

本市では23年前、栄で起きた地下鉄変電所火災で消防職員が2名亡くなっています。その事故も教訓にして、本市の消防体制は多くの方々の努力で、年々充実がはかられてきました。

また11年前の阪神淡路大震災直後1995年2月定例会では、全会一致で「5年を目途として消防職員の充足率を満たすよう格段の努力をすること」との要望が採択され、その後も救急隊の増設などで消防職員は1998年には2291名となりました。

ところがその後、松原市長は「行革」リストラの名で、職員を削り続け、消防局の職員数は、昨年度には2257人とピーク時よりも34人も減らされました。昨年度はついに、本市創立いらい初めて、事務方ではなく現場に出動する警防要員の職員定数までもが削られました。ひとつひとつの火災現場に出動する体制は、減らしていないと言うかも知れませんが、人を減らした影響は、いざというときに現れるのではないでしょうか。

いま警防要員を減らせるほど、本市の消防力には余裕がありますか。警防要員の充足率は、6年前に国の「消防力の基準」が大幅に緩和された下でも約90%、実数では200人近くも不足しています。そこでまず市長にうかがいます。

なぜ消防職員を、しかも警防要員を減らしたのですか。これでは安心安全なまちづくりにも逆行するのではありませんか、消防管理者としての市長の見解をうかがいます。

必要性・重要性の高い救急隊などは確保したい(市長)

【市長】
行財政集中改革計画にもとづき、計画的な定員の見直しを進めていかなければならない。一方、必要度、重要度の高い現場の警防要員、とりわけ救急隊の増隊など、必要な施設及び人員については、確保するよう努めていく必要がある。

今の出動態勢では不十分

【山口議員】
消防の現場体制をもう少し細かくみてみましょう。

消防活動の基本単位は、国基準で1小隊5人です。タンク車1台に5人が搭乗して出動するのが基準です。ところが、現実には休暇対応などにより1小隊当たり5人を切ることが少なくないと聞いています。これでいいのでしょうか。

消防長は、今回の事故を受けて、「現場の士気が低下することがないようにしたい」と言われていますが、いろいろ訓示するよりも、現場が必要とする体制を全市あげて確保することこそ、隊員の士気を高める一番の方法ではありませんか。そこで消防長に質問します。

あなたはいまの人員体制で十分だと考えているのでしょうか? 少なくとも1小隊5人体制を、実際の出動レベルで確保することは譲れないと私は考えますがいかがですか、現場の出動体制についての認識をおたずねます。

部署で調整して必要人数を確保したい

【消防長】
小隊の編成基準は、国の「消防力の整備指針」の1小隊あたり5人を確保するために必要な人員を配置している。しかし休暇や研修が重なった場合は、やむを得ず4人にすることがある。

休暇や研修が重ならないよう、各所属において調整し、場合によっては日勤者を活用して要員の確保に努めたい。

指揮隊の人員削減は安全軽視だ

【山口議員】
本市のような大都市では、密集市街地での延焼をくいとめるためにも、多数の消防署から集中的に、火災現場に隊員が投入されます。日常の担当地域とちがう現場で様々な組み合わせのメンバーが業務に当たります。ですから現場を指揮する指揮官・指揮隊の役割が重要なのです。

また指揮官は隊員の安全確保面でも大きな責任を負います。その業務を組織的に、より的確に行うために本市でも、23年前の事故を踏まえて専任の指揮隊が創設され、充実させてきたのです。ところが昨年度、12人も削られたのはまさにこの指揮隊の要員なのです。

市民の安全と安心、生命と財産を守るために、消防の体制は拡充こそ必要であって減員などとんでもありません。

消防長、指揮隊の人員を削ったのは問題ではありませんか、お答え下さい。

人員削減はしたが、現場では変更していない

【消防長】
昨年度、災害救急活動に影響のない範囲内で、12人の警防要員を削減した。指揮官の週休にあわせて、指揮官車の運転要員を削減したもの。災害現場では、指揮官1人、部隊運用担当官1人、指揮隊員3人の5人編成を維持し、災害現状での人員に変更は無い。

指揮隊員は、講習や部隊指揮訓練を通じて、情報収集能力や分析能力のさらなる向上をはかる。

木造建築物火災への対応を基本に

【山口議員】
警防要員は減らされましたが、逆に増やされた部署があります。戦争に備えた国民保護計画の作成にたずさわる部署です。いま国は「消防力の基準」を「整備指針」に変えるなかで、大規模な自然災害とあわせてテロ災害や、武力攻撃災害への対応を自治体消防に求めてきています。

戦争やテロの備えには力を入れるが、毎日の市民生活での不安をなくす、安全を確保するための課題が結果的におろそかになってはいないでしょうか。

今回の火災は、旧い木造住宅でおきました。市内には、まだたくさんの古い木造住宅があり、とくにそういう所には多くの高齢者が暮らしています。銭湯もなくなり、介護保険も値上がりし、火事は心配だけど、一人で風呂を沸かしたり火を使う高齢者が少なくありません。また最近では、親の留守中に幼い子どもが犠牲となった火災のニュースも目につきます。

高齢者や子どもたちの生命をどう守るか、いってみれば、通常の火災にどう対処するのかが、あらためて問われているのです。

とりわけ今回のケースは、3年前に神戸で同様な事故があったばかりです。高齢化が進み、木造家屋の密集地域がたくさんある本市にとっても他人事ではなく、この事故を受けて、木造家屋の火災での安全管理も現場に注意喚起されていたはずです。

戦争やテロ対策よりも、市民の身近な不安である火災への備えこそ大切です。多くの高齢者が暮らす一般の木造建築物での火災対応にあらためて光をあてるべきです。消防局としてどう考えているのか、消防長にうかがいます。

あらゆる災害に対処できるようにする

【消防長】
一般的な木造住宅火災が消防活動の基本であり、従来から重点を置いて消防訓練等に努めている。今後とも、火災、救助、救急、防災、国民保護対策など、あらゆる災害に対応できるように努めていく。

今後は絶対に殉職者を出さない強い決意で積極的な指針を(要望)

【山口議員】
消防については要望にとどめます。

市長も、現場の警防要員は、確保に努める必要があると言いましたね。だったらなぜその大切な要員を削ったのですか、しっかり反省していただきたい。

最近の構造別建物火災件数を見ると、この3年間で、木造建築物の割合が、3割から4割にあがっています。また火災による死者の5割以上は65歳以上の高齢者です。あらゆる災害へ備えるとの答弁でしたが、通常災害への備えに油断は禁物です。

消防庁、いま新しい「消防力の整備指針」を策定中ですね。今回の事故の教訓を受け止め、市民の安全確保を第一に、そして今後は絶対に殉職者を出さない強い決意で、現場の士気も高まる積極的な指針をたてることを強く要望しておきます。

精神医療の本市独自助成について

名古屋市だけが有料化した

【山口議員】
障害者自立支援法が4月から施行されました。利用料の1割+食事代の負担は、障害者にはほんとに重い負担です。私は何度も、本市の独自減免を求めてきましたが、「国の制度の枠内で」との答弁ばかりでした。ここにきてやっと障害児についてはそれなりの独自減免を行うと決断したようです。自立支援法に伴う負担増について、独自に減免する自治体が広がっています。

今日は、昨年11月議会で取り上げた精神医療費の独自助成にしぼってうかがいます。11月には「国の制度の枠組みでやるしかない」との冷たい答弁でしたが、その後、県下の自治体を調べてみて驚きました。

精神の通院医療費を有料化したのは名古屋市だけです。甚目寺町と大口町の2町ではもともと制度が無く有料でした。愛西市など5市町は半額負担があります。しかしそれ以外の県下63市町村中、55市町村が、それぞれの努力で、何らかの形で、精神の通院医療費無料制度を維持しているのです。

自立支援法を理由に有料化したところは本市をのぞき皆無です。これで名古屋は元気だ!と胸を張れますか? 私は恥ずかしくてよう言いません。

健康福祉局長にうかがいます。愛知県下で本市だけが有料化とは、あまりに情けないとは思いませんか。

3月まで、国保の付加金制度でカバーし無料だった精神通院患者は約6600人、この人たちの負担はどうなり、治療は中断してはいないのか、市としてどう状況を把握しているのでしょうか。

ひきこもり問題でも、市の対応のおくれが指摘されました。心の病に真剣に向き合うことは時代の要請です。その第一歩として、名古屋市でも、せめて県下の他都市並みに精神の通院医療費を助成すべきです。局長、お答えください。

国の制度の中でやるものだ

【健康福祉局長】
所得の低い方や障害の程度が重度でかつ継続的に医療費が生じる方については、負担軽減策が講じられている。平成18年4月現在、自立支援医療を申請された方は市内で17,677名、そのうち9割以上の方は生活保護を含む負担軽減策の対象となっている。

自立支援医療制度における医療費の自己負担額の軽減制度は、基本的に国の制度の中で考慮されるべきものだ。

精神医療への助成を県下の自治体並みにせよ(再質問)

【山口議員】
精神医療については、局長の答弁では全然納得できません。市長に聞きます。

精神の医療費助成がこのままで、県下の市長さんとお会いするとき、はずかしくないですか。

局長は、負担軽減策の対象が9割と言いましたが、正しくは負担の上限がある方が9割です。ところが通院患者の負担は推計で、月額約3500円、上限までいかない患者が圧倒的、負担の軽減になっていないのです。そして毎月3500円でも、患者の精神的な負担は私たちの想像以上に大きいのです。

市長、よく実態を調査して、患者と家族の声もよく聞いて、せめて県下の主要都市並みの助成はやりましょうよ。3月まで行っていた助成です。市長の政治決断を強く求めます。お答えください。

国の制度の中で考慮を(市長)

【市長】
国の制度の中で考慮されるものだ。

改定介護保険法下での福祉用具の貸与について

市独自に貸与を

【山口議員】
国基準どおりとしか答弁が返ってこないもうひとつの分野が介護保険です。保険料が大幅に値上げされた下で「介護難民」という言葉まで流行しています。予防介護などでケアプランがつくってもらえない!借りていた福祉用具は返せと言われる!施設には入れないし、負担しきれず追い出される! 高い保険料は天引きされるのに、サービスからは排除するという、この国の仕打ちに対し、名古屋市は住民を守る姿勢を毅然と示すべきです。3分野それぞれで対策が必要ですが、今日は福祉用具の貸し出し問題にしぼって質問します。

改定された介護保険では4月から、要支援(予防介護)と要介護1の方への車イスや特殊寝台(ギャッジベッド)など福祉用具の貸し出しが原則的に出来なくなりました。9月までの猶予期間中に、業者に返すか、10割払って借り続けるか、または多額の費用で購入するか、選択が迫られています。この人たちはまだ介護レベルが低いから、ベッドや車イスは必要ないという理屈なのでしょうが、これは介護の現場を見ていない机上の空論です。

いま返却を迫られている利用者は市内に、車イスで約2500人、特殊寝台(ベッド)で5500人以上にのぼります。みなさんは、車イスやベッドがあるからこそ、外出もでき、部屋の中でもできるだけ起き上がり、寝たきりにならないようにがんばっているのです。

誰も好きこのんで介護度を悪化させようとは思っていません。寝たきりになってから貸し出されても、遅いのです。福祉用具の積極的な貸与こそが、介護度の悪化を防いできたのではありませんか。

今回の改訂により、ヘルパーが支援できる時間も大幅に制限されました。車イスやベッドは貸せないけれど、その代わりヘルパーがしっかり介助します、日常生活動作の訓練をしますというのならまだ話がわからなくもないですが、そうではありません。

こんな状態で、福祉用具を取り上げては、介護予防のかけ声とは裏腹にますます、起き上がらない、歩かない、外出しない高齢者が増え、介護の重度化が進むのではないでしょうか。

ベッドや車イスなどの福祉用具は、介護度が軽い段階から積極的に貸し出し活用してこそ、有効な介護予防になるのです。

本市はこれまでも高齢者福祉施策で、いくつかの生活支援サービスを行ってきました。介護保険だけでは老後を支えられないからこそ「はつらつ長寿プラン」も介護保険の事業計画と保健福祉計画のセットで作られています。ところができたばかりの新プランでは、国が福祉用具をばっさり削ることは想定されておらず、いままでどおりの前提で、福祉用具の貸出し目標が計画に記載されているのです。そこで提案します。

まず10月1日までに返却を迫るのはあまりに過酷です。

せめて市として、まず今年度いっぱいは猶予期間を延長するべきです。そしてその間に、国に制度変更を強く迫るべきです。それでも国が態度を改めないのなら、介護保険ではなく、市の福祉施策として、これまでどおり福祉用具の貸与を続けていただきたい。健康福祉局長に答弁を求めます。

全国一律の仕組みであり、市独自には考えない

【健康福祉局長】
一定の条件に該当する場合を除き、車いすや特殊寝台等8種目の福祉用具は保険給付の対象から除かれた。これは、本人の状態からその必要性が想定しにくい福祉用具が給付されることで、かえって本人の自立の妨げとなる事例が見られることによる。

介護保険制度は、全国一律の仕組みであり、福祉用具の貸与といった保険給付では、経過措置期間の延長や本市独自による制度の創設は考えていない。

実態を知っているのか(再質問)

【山口議員】
最後に介護の問題について、局長に再度うかがいます。

あなたは在宅介護の現場をみたことありますか、必要性がないのにベッド使っていると本気で思っているのですか、ケアマネは怒りますよ!高齢者も怒りますよ!自立を妨げている事例を具体的に教えて下さいよ。

先ほども言いましたが、本市の介護保険事業計画には、福祉用具の貸与について、今回の給付制限に関して何も触れておらず、従来通りの制度の下での計画数値が盛り込まれています。原則、貸し出せないはずの予防給付の方にも今年度で7500人、3年後には9400人も福祉用具を貸し出す計画です。

値上げされた介護保険料は、この計画に基づき、算定したのですよね。保険料をあげた根拠のひとつが崩れるじゃありませんか。

保険料は払っても給付は受けられないのでは、市民は到底納得できません。

局長、あなたが選ぶ道は二つしかありません。

計画を修正して、給付は制限するが、その分だけ保険料を下げるか。

それとも計画どおりの給付目標を達成するために、猶予期間の延長や市の施策として福祉用具の貸与を継続するか、どちらかです。

「介護保険事業計画=はつらつ長寿プラン」の担当責任者として、もういちどはっきり答えてください。

はつらつプランの策定時には知らなかったことだ

【健康福祉局長】
福祉用具貸与の品目制限は、3月下旬に厚生労働省から告示されたので、はつらつ長寿プランなごや2006の計画内容に反映することが困難だった。介護保険は全国一律の制度であり、福祉用具の貸与は制度の枠組みの中で対応すべきものだ。

もっと市民の実態を知り、苦悩に心を寄せよ(意見)

【山口議員】
市民の、生命と、くらしと、そして心を、どう支えるのか、お聞きしました。消防も医療や介護も予防が大事な分野です。しかし、市の姿勢はどうか、高齢者や障害者を守る姿勢がここまで後退し国の言うままとは、ほんとうに情けない。市民の苦悩にもっと心を寄せて市政を運営していただきたい。

わが党は、今日取り上げた課題をこれからも徹底的に追求していくことを宣言して、質問を終わります。