2006年度予算案に対する反対討論(3月16日)大企業優先市政をやめ、福祉の心をとりもどす市政を村瀬たつじ議員は、2007年度予算案について反対の立場から討論をおこないました。 【村瀬議員】 予算案には、市民要望の反映として、小学校2年生の30人学級全校実施と常勤講師の配置をはじめ、病児・病後児保育の実施、保育所の耐震改修、障害者福祉サービスの利用者負担軽減、マンションなどの耐震診断と耐震工事助成などが盛り込まれました。 これらの点は評価できるものの、全体の性格や基本方向には、いくつもの問題があり、反対せざるを得ません。以下その理由を述べます。 市民に一層の負担増を押しつけ理由の第1は、この予算案が、国の悪政の下で苦しい生活を余儀なくされている市民に対して、あたたかい手を差し伸べるどころか、いっそうの負担増と生活苦を押し付けていることです。 自民・公明の安倍内閣は、国民の間に貧困と格差をいっそう広げながら、庶民には定率減税の廃止などの大増税、大もうけを続ける大企業や、一部の大金持ちには、さらに大幅減税という、逆立ちした政治を強行しています。 このような時にこそ、本市は、地方自治法で規定している「住民の福祉の増進を図る機関」として、国の悪政から市民生活を守る防波堤の役割を果たさなければなりません。しかし、新年度予算案の大きな問題点は、市民生活を守るどころか、国の悪政の後押しをして、逆に市民に対し、いっそうの負担増と福祉の切捨てを続行していることです。 具体的にみますと、老年者控除や定率減税の廃止による大増税とその影響による負担増が雪だるま式に押し寄せて市民の暮らしを直撃しています。 そこへ追い討ちをかけるように、低所得の高齢者などを対象とした市民税の50%減税について、減税率を半分の25%に切り下げた上、名古屋市立の高校や幼稚園の授業料や地域スポーツセンター使用料、市営住宅家賃を値上げします。生活保護世帯に対する公衆浴場の入浴券も廃止です。 市民にいっそうの負担を強いる、このような予算案には到底同意するわけには参りません。 切実な市民の願いに応えていない2番目の反対理由は、この予算案が、切実な市民の願いにこたえるものになっていないことです。 子育て支援の重要な柱である「子ども医療費無料制度」の拡充は、多くのお父さん、お母さんの願いであり、市政においても最重要の課題です。市民から請願もたびたび提出され、わが党も質問などで取り上げてきました。しかし、新年度予算案では、なんらの拡充もおこなわれていません。 わが党議員団は一昨日、松原市長に対し、予算案に対する組み替え案を提出しました。 この中で、子どもの医療費無料化について、中学卒業まで無料化することを展望しつつ、当面、新年度は所得制限を撤廃し、小学校卒業まで、すべての子どもの医療費を入院・通院ともに無料にすることを提案しました。 これに要する予算額は35億7千万円であり、大型プロジェクト見直しなどで十分可能なものです。切実な子どもの医療費無料化の拡充にこたえないのは理解できません。 不要・不急の大型プロジェクトに莫大な予算3番目の反対理由は、不要・不急の大型プロジェクトに莫大な予算を注ぎ込もうとしていることです。 予算案では、市民の暮らしがこんなに苦しいのに、財界からの要請にこたえ、引き続き名古屋駅前や葵一丁目の超高層ビル建設へ多額な補助金を計上しています。 とくに葵1丁目の超高層ビル建設に当たっては、いまある立体駐車場と建築物の撤去費用にまで税金を投入するというのですから、まさに至れり尽くせりです。 「ポスト万博」としてすすめられている「モノづくり文化交流拠点構想」は、「産業技術未来博物館」というネーミングがハコモノを連想して評判が悪いので、名前を変えたものです。 当局が示している構想では、約200億円の巨額の費用をかけて、金城ふ頭の約19ヘクタールという広大な土地に、建築面積が3万平方メートルに及ぶ4つの施設を建設するとしています。 名前を変えたら、ハコモノが1つから4つに増えたのです。当局は、日本一の産業観光・産業技術の施設を造ると意気込んでいますが、こうした分野では、企業や経済団体などがすでに事業を展開しています。「財政が厳しい」という一方で、民間でできることに名古屋市が深く関与して、巨大な施設を造る必要はありません。 名古屋城本丸御殿の復元は、市民の機運が盛り上がらない」として、すでに今年度、5200万円の盛り上げ予算が組まれ、推進してきました。それでも盛り上がらず、新年度さらに8600万円もの推進イベントの予算を計上していますが、それほど盛り上がらないのであれば、ここはいったん退くべきです。本丸御殿の復元は大方の市民の切実な要求とはいえず、現時点では時期尚早であり、凍結すべきであります。 そのほか、環境を悪化させる名古屋都市高速道路の延伸、名古屋駅周辺の再開発を支援するための、ささしまライブ24地区開発などにかかわる予算が計上されているのも問題です。 さらに、四大プロジェクトをはじめ、巨大資金を必要とする大型公共事業が目白押しです。今後4年間で総額1600億円もの事業費のうち1200億円を新たな借金によってまかなうとしていますが、借金を減らすべきところを逆に増やそうというのですから問題です。その上、今後10年間では4800億円もの巨額な資金が必要となるというのですが、雪だるま式の負担増が重くのしかかっている市民には到底理解が得られません。不要・不急の大型事業は見直しが必要です。 フジチクの中核団体に補助金4番目の反対理由は、名古屋食肉市場(株)の卸売り業務営業権取得にかかわる補助金支出問題です。 私はこの問題について、本会議や委員会でたびたびとりあげてきました。中央卸売市場高畑市場の卸売り会社で名古屋市の外郭団体である名古屋食肉市場(株)が、巨額の脱税事件を起こした「フジチクグループの中核団体」といわれている愛知食肉卸売市場(協)に営業権として払った59億2千万円は、その価格の根拠が不明のままです。 それなのに、名古屋市は「経営支援だ」として補助金支出を重ねてきました。新年度予算案では、さらに2億5千万円を予定しています。結局、累計20億円もの補助金支出となるのですが、このような根拠のない譲り受け価格を前提とした支出は認めることはできません。 「談合」「天下り」をただせ5番目の反対理由は、「談合」や「天下り」をただす問題です。 昨年来、名古屋市の発注する下水道工事や地下鉄工事が談合の温床になっていたことが明らかとなり、一部マスコミは市幹部職員が関係企業へ「天下り」して「情報屋」の役割を果たしていた、と報道しています。 昨年発注した地下鉄6号線工事の入札に当たって、談合情報が寄せられていたにもかかわらず、入札を実施して談合がおこなわれていた事実が発覚しました。 この工事で、入札をおこなった5つの工区のうち4つの工区では4社に部長級以上の市幹部職員が再就職していることが、わが党の調査で判明しています。 こうした市から受注する企業へのいわゆる「天下り」はやめるとともに、「談合」を見逃さない姿勢と対策こそ必要です。 国民保護計画の業務は中止するべき6番目の反対理由は国民保護計画にもとづく業務です。国民保護計画による業務は中止するべきです。 日本国憲法は第9条で戦争を禁止し、実効性を担保するために、世界に先駆けて、「戦力を保持しない」ことを決めています。 この憲法の下で、戦争を前提として「国民保護」という名で、国民を戦時体制に動員する計画を法律でつくること自体が憲法違反です。 さらに、地方自治制度そのものが、戦争を抑止する機能を持つものとして導入されました。戦前の日本が戦争へと突き進んだ反省から、もし、国家・中央政府が戦争へとすすみ始めたとしても地方自治体に「戦争に協力しない」という自由を認め、戦争への道を抑えていく役割を果たすことが期待されたものです。 現職の首相が「任期中に憲法を変える」と宣言し、日本を戦争する国に変えようとしているときに、国民保護計画に基づく業務はおこなうべきではありません。 以上私は、2007年度名古屋市一般会計予算案に反対する理由を述べてまいりました。 冒頭にも申し上げましたように、市民の暮らしは大変苦しくなっています。 わが党が昨年秋に実施した、5千人近くの市民から回答を得たアンケート調査では、6割以上の人が1年前に比べて生活が苦しくなった、と回答しています。 こういう時、与野党を問わず、切実な市民の願いを実現するために市政に働きかけるのは政党・議員の責務です。 予算は政治の基本方向示すもの一部に、わが党に対し「予算に反対したから実績はない」などといわれる方がおられますが、この論法は、議会における野党の存在を頭から否定するものです。 すでに指摘したように、新年度予算案の中にも市民要望の反映されたものも、いくつかあります。 しかし、予算案への態度は政治の基本方向を示すものです。市議会での採決にあたっては、私ども日本共産党は、反対する項目について、その理由も示しています。 市民要望が部分的に反映されていても、基本方向が市民の利益に反する評価であれば政党として反対するのが当然ではないでしょうか。 名古屋市が文字通り、市民の暮らしを守る最後のよりどころとなることを願い、今期限りで引退させていただく私の、最後の討論とさせていただきます。
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