2007年2月定例会 補正予算案 議案質疑 さとう典生

サイエンスパークテクノヒル名古屋用地の取得について

さとう議員

買い戻しによる損失はいくらか

【さとう議員】
本件は名古屋市土地開発公社に先行取得を依頼し、確保してあった用地を買い戻すものであります。この土地開発公社保有の土地についてはいわゆる「塩付け土地」として問題点が指摘されていたところであります。

サイエンスパーク・テクノヒル事業は用地買収がスタートしたのがおよそ18年前、実際に現地が使えるようになり、企業が進出し始めたのは2002年からです。2006年度末の予定では、これまでに開発公社からの買戻しに70億円の事業費が使われ、土地の取得面積は全体の39%です。この間、事業進捗の見通しが厳しく、我が会派は事業そのものの見直しを求めてきました。

そして今度の補正予算によって、49億8000万円を追加して買い戻せば、面積割合では68%まで一気に到達します。

提案理由では「企業誘致が好調」と言うことですが、市民経済局が1月に発表した2006年下半期の景況調査では「中小企業の景況感は、消費関連の業種を中心に改善の動きが後退した」と報告されています。

サイエンスパーク事業は、これまで予定通り進んできませんでした。今回、買い戻したとしてもその後の事業進捗について、危惧を抱かざるを得ません。

今回の補正予算49億8000万円で買い戻す土地の実勢価格はいくらですか。

49億円で買い戻す分の分譲価格は約20億円(局長)

【市民経済局長】
今回の買戻区画は昨年末の公募時点での分譲予定価格として約20億円を見込んだ。

資料A

「テクノヒル名古屋」への立地資格

次の全ての条件に該当する企業 (名古屋市HPより)

  1. 今後成長が見込まれる次に掲げる先端的産業分野の研究開発に意欲のある企業であること。
    ア 医療・福祉関連
    イ 生活文化関連
    ウ 情報通信関連
    エ 新製造技術関連
    オ 環境関連
    カ バイオテクノロジー関連
    キ 航空・宇宙関連
    ク 住宅関連
    ケ 新エネルギー・省エネルギー関連
    コ その他本市産業の高度化に資するものとして市長が特に認めるもの
  2. テクノヒル名古屋の分譲・賃貸区画において、研究開発施設、試作等を行う工場、研修施設を自ら建設し、運営しようとする企業であること。
  3. 施設建設及び運営に必要な資力及び信用を有する企業であること。
  4. 環境保全に積極的で、周辺住民等に誠意をもって対応できる企業であること。
平成18年度募集ブロック・価格
区画 面積(m2 分譲価格(円) 賃貸月額
H-3区画 969.00 71,706,000 203,167円
H-5区画 853.88 64,467,940 182,660円
H-6区画 555.74 39,902,132 113,057円
H-8区画 775.92 54,004,032 153,012円
I-1区画 1,529.03 109,784,354 311,056円
I-2区画 1,281.89 97,680,018 276,761円
I-7区画 1,144.03 82,942,175 235,003円
I-8区画 1,075.01 79,550,740 225,394円

テクノヒル用地の買い戻し
・〜06年度  70億円
・06年度補正 49億円
・07年度当初 64億円

テクノヒル名古屋 買戻し予定価額
(単位:百万円)
区画 価額 内訳
取得価額 利息 事務費等
T−1、2、7、8 1,071 765 277 29
B 532 410 94 28
C 334 248 69 17
G−1、2、3、4 3,043 2,216 669 158
4,980 3,639 1,109 232

進出予定企業への補助金額概算
対象企業数 補助金額(概算) 投資予定額
5社 約2億円 約40億円
注1 補助金額は、対象企業が中小企業者のため、補助率10%で試算
2 補助限度額は、1億円

買い戻しをして、企業進出の見通しがあるか

【さとう議員】
今回の補正予算で買い戻す土地への企業の進出ついての見通しはどうなっているのか。また、本来の事業目的にそった地元中小企業の活性化に役立つものになっているのか。

今回買い戻す分は立地が予定されている(局長)

【市民経済局長】
昨年夏以降、テクノヒル名古屋への立地を希望する企業や問い合わせが増えている。今回の応募状況は、区画数を上回る申し込みがあり、補正予算の買戻区画は、すべて立地が予定されることになった。

応募企業の内容としては、例えば環境に負荷を与えない塗装システムの開発などの新製造技術関連を中心とした研究開発に意欲のある中小企業で、地元企業に新たなビジネスの機会を提供するものと考えている。

名古屋城本丸御殿積立基金への積立てについて

環境万博の理念継承と本丸御殿復元事業はどうかかわるのか

【さとう議員】
今回の補正は「2005年日本国際博覧会協会などからの寄付金の増加による繰出金の増額」というものです。質問はそのうち万博協会から10億円の寄附を受け入れることについてです。

今回の寄附は万博の運営経費の余剰金の配分を受けるいれるものです。

余剰金の配分については万博協会の検討委員会から「『愛.地球博』の基本理念の継承と発展に向けて」という答申が出されております。それを見ますと、配分金の趣旨は「『自然の叡智』というテーマで開かれた万博の成果を継承発展させる」というものであり、「環境保全に関する活動や自然を体験する活動などに対して積極的に支援すべき」ものとされています。

これをすなおに読めば、本市に寄附される10億円についても「環境保全」や「自然体験」に関連した事業に使うのが本来の姿であろうと思います。たとえば藤前干潟での、野外体験学習などのことを私は思い浮かべます。

ところが、この寄附を名古屋城本丸御殿積立基金へ積み立てると言うのですから、片や「自然の叡智・環境」、片や「歴史建造物の再建」という二つの事柄の間で落差が生じ、話がつながらないのであります。

そこで、質問します。

「本丸御殿の再建」が「万博の『自然の叡智』『環境」という理念」とどのように関わると考えているのか。また、名古屋市の側から本丸御殿を対象にするよう、万博協会に求めたのではないのか。という点について市長に答弁を求めます。

天然の木を使うことを通じ、自然のサイクルや環境について考える(市長)

【市長】
「2005年日本国際博覧会基本理念継承発展検討委員会」で博覧会の理念継承が検討され、名古屋城本丸御殿の復元の意義を説明した。検討委員会の答申で、本丸御殿の復元事業が基本理念を継承発展させる事業であると認められ、10億円の交付となった。

名古屋城本丸御殿の復元には、千年の命をもつ木曽ヒノキにより、400年前の姿そのままに復元したいと考え、天然の木を使うことを通じ、木を生む山に思いを馳せ、森、川、水といった自然のサイクルや環境について、考えるきっかけにしたい。「環境首都なごや」にふさわしい、持続可能な循環型社会のシンボルになる。

 

名古屋城本丸御殿積立基金の寄附の状況
(単位:千円)
年度 件数 金額 うち1件100万円
以上の寄附
件数 金額
平成14年度 名古屋城整備
積立基金より
69994
2624 61654 15 30252
平成15年度 817 28457 5 14000
平成16年度 362 24173 4 14000
平成17年度 830 381615 14 360250
平成18年度 2341 117890 32 70102
6974 683783 70 488604
注 平成18年度は、平成19年1月未現在

復元基金の大半が公金だ

【さとう市議】
本丸御殿基金の積立額は今年の1月末で6億8300万円余です。2005年度には新世紀名古屋城博開催委員会からの寄附3億3555万円がありました。これも運営の余剰金と言うことでしたが、当初に本市が2億円、他の構成団体が4300万円を負担金として提供しています。したがって、寄付金のうち2億円は税金が還流したといえます。

万博には本市も負担金、補助金、パビリオンなど多くの予算をつぎ込んでました。そうした支出の上に立っての運営の余剰金であることを考えれば、今回の万博協会からの寄付金もいわば公のお金であります。

本丸御殿基金は50億円を民間から寄付を募るということですすめられています。今回の補正を含めた年度末の積み立て額はおよそ17億円になります。そのうち13億円の出所がいわば公金・税金からと、大半を占めることになっています。

そこで市民経済局長にお聞きします。

いま述べたように、民間の寄附と言っても、公のお金が基金に積み立てられている現状を見れば、150億円と言われる再建費用のほとんどを税金・公金でまかなうことになるのではないのかと危惧をします。この点についてどのように考えるのか、答弁を求めます。

PRに努め、市民や企業・団体からの協力に取組みたい(局長)

【市民経済局長】
平成18年度には柿募金を開始し、「斧入れ」や「木曳き」を開催した。徐々に本丸御殿への関心が高まり、復元に対する理解が拡がりつつある。NC400のピンバッチに1万2千件の協賛があるなど、1月末までに約1億2千万円の寄附があり、万博運営収支残も交付され、基金へ積立てる。

今後とも、PRに努め、幅広い協力をえられるよう取組む。

環境保護と本丸御殿建設はこじつけ。税金投入が増えるばかりだ(意見)

【さとう市議】
木曽の木を切り出すことが自然への思いやりになるということだが、それなら木造建築は皆同じだ。こんな本丸御殿の説明は全く理解できません。

基金への積み立てに、際限なく、公金がつぎ込まれるのではないかという疑問も払拭できません。あたえられた時間がもうありませんので、後の議論は委員会に託しまして、質問を終わります。

 

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