2007年2月定例会 議案外質問 田中せつ子

全国一斉学力テストへの参加について


質問する田中議員

どんな議論の結果で参加することになったのか

【田中議員】
最初に「全国一斉学力テスト」への参加について質問します。

私どもは、先の9月定例会で「全国学力テストには、参加すべきではない」と申し上げてきました。そのとき市長も教育長も、学力テストに参加するとは、はっきり答弁されませんでした。ところが、11月定例会で、「07年4月に中学3年生と小学6年生で全国学力テストを実施する」と、教育長が答弁されました。そこで教育委員長にお尋ねします。

9月定例会から11月定例会の間に、どのような場で、どのような議論を経て、全国学力テストをやることに決定されたのでしょうか。答弁を求めます。

参加することが、こどもたちや学校、教育施策改善に有益かどうかで判断(教育委員長)

【教育委員長】
7月の定例会後の意見交換をはじめ、複数回の議論をへて10月の定例教育委員会で、「名古屋市としてはこの調査に参加する」と、教育委員の意見のまとまりを見た。

議論として、文部科学省の示した実施要領の内容、調査しようとしている学力、また、これまでの本市の学習状況調査等との比較、学力の調査結果と生活習慣との相関関係、他の政令市における調査結果の公表方法など、参加することが、名古屋の子どもたち、学校、あるいは教育施策改善に有益かどうかに焦点をあて、様々な観点から論議をした。

民間企業が子どもの情報を独り占め

【田中議員】
さる2月、衆議院文部科学委員会において、4月24日に実施される全国学力テストが「学校や子どもどうしを競争させ、序列化につながることや、個人情報保護の点でも大きな問題がある」ことが明らかになりました。

学力テストは、試験問題・解答用紙のほかに児童・生徒に対する「質問用紙」があり、それぞれに学校名、男女、組、出席番号、名前を記入して提出します。

テストを集計する業者
小学校 ベネッセコーポレーション(進研ゼミ)
中学校 NTTデータ(教育測定研究所・旺文社グループと提携)

これらの採点と質問の集計は、文科省が、小学校は進研ゼミで知られるベネッセコーポレーション、中学校はNTTデータに委託しました。そして、この二つの民間企業に税金が67億円も支払われるということです。

国会で明らかになったのは、昨年の全国学力テスト予備調査の問題例に、「一週間に何日塾に通っていますか」「あなたの家には本が何冊くらいありますか」など個人や家庭の状況まで聞きだすものがあったということです。

さらに、学校への質問は、不登校、生活保護世帯の児童の割合など学校情報の収集ともいえるものまであったそうです。

個人情報の書かれた回答が、そのまま梱包されて、文部省が委託した民間企業に、丸投げされることは、子どもたちの個人情報が、民間企業に一生握られてしまうことであります。その情報がいつどこで漏洩するかわからない恐れもあります。これについて市長の見解をお尋ねします。

企業と文科省との契約によって個人情報の保護は保障(市長)

【市長】
個人情報を保護することはきわめて大切なことと認識している。今回の全国学力・学習状況調査は、採点・集計等の作業を民間企業に委託されている。企業と文科省との契約で、機密の保持や個人情報保護の取り扱いで遵守すべき事項が契約書に明示さている。従って、個人情報の保護は保障されている。

競争・序列化では教育じゃない

【田中議員】
犬山市教育委員会は、「犬山の教育は人格形成と学力の保障が目標」とし、「競争原理を持ち込めば豊かな人間関係をはぐくむ土壌をなくし子どもと教師の間で格差を生じさせ、犬山の教育がなし崩しにされてしまう」だから、全国学力テストには参加しないとはっきり言っています。こうした犬山市教育委員会の方針は、約10年に及ぶ議論、実践に裏打ちされているものだと思います。

今、子どもたちに必要なのは競争ではありません。お互いに認め合い、学びあう共生の教育こそが求められているのではないでしょうか。

学校や子供どうしを競争させ、序列化するという問題点とともに、個人情報保護の点でも大きな問題が浮かび上がっている全国学力テストは参加をやめるべきと考えますが、教育長は、どのようにお考えでしょうか。お答えください。

効果が期待できるから参加(教育長)

【教育長】
効果が期待できるとの判断から参加する。なお、学校間の序列化や子どもたちの過度な競争をあおることがないように、調査結果の公表のあり方については配慮したい。

また、個人情報の保護に関しても、国において保障されていることを前提に参加する。

契約で個人情報が保護されることにはならない(再質問)

【田中議員】
契約が交わされたら学力テストの個人情報保護は、保障されるのでしょうか。伊吹文部科学相は、衆院文部科学委員会で「特定の営利企業が国民の税金をもって、自分たちに有利なデータを独占的にとることがあってはならない」と答弁しています。にもかかわらず、全国学力テストは、すべての業務を受験産業が請け負います。子どもへの百項目近い質問と教科テストで得た個人情報を文科省だけではなく、民間企業が独占します。

民間企業が請け負う学力テストをめぐっては、最近も山梨県と長野県の15の小学校約2千人分の個人名入りデータが紛失する事故が起きています。たとえ、契約があったとしても、民間企業が情報を独占するということ自体が、重大な問題であると考えますが、市長の見解をもう一度お聞きします。

国に任せる(市長)

【市長】
国が言うから保護されている。

参加をやめるべき(意見)

【田中議員】
マスコミにも全国学力テストについて「個人情報保護法にそむく恐れあり」とし、そもそも、「文科省にはこのような個人情報を収集・利用・保管する権限があるのか」と問題を提起しています。そして「仮に個人情報の収集が文科省に許されるとしても、保護者に収集目的を説明し同意を得ることなく、児童生徒を全国学力テストに参加させれば、個人情報保護法に違反となる可能性がある」と指摘しています。

このような全国学力テストは、参加をやめるべきであることを強く申し上げ質問を終わります。

本市の自転車等駐車対策について

有料化は自転車利用の促進を阻害する

【田中議員】
放置自転車とは、何日も置きっぱなしにしている自転車と止めてはいけないところにおいてある自転車のことを指しますが、まずは、後者のほうを問題にします。

本市の駐輪対策は、放置自転車をなくすことを第1の目的としています。その対策として第1に駐輪場の整備、第2に有料化の推進とあります。整備にお金がかかるので、受益者負担の観点から、有料化の促進を図る。それによって、近距離利用が自粛され、放置自転車もなくなるという構図です。要は自転車に乗る人を抑制することによって放置自転車をなくすという考え方にたっているのであります。

名東区一社駅南にある駐輪場は、4月からの有料化に向けて、2段式の機械を取り外し、新しく1段の機械を取り付けました。それによって自転車は、半分しか置けなくなりました。今までここを利用していた人の半分は、自転車に乗るのをやめたのでしょうか。

排出ガスのない自転車は「環境にやさしい」交通手段として、また手軽な運動や体力づくりにつながるということで「健康のために」多くの人に利用されています。

家から車に乗って目的地まで行くのではなく、自転車に乗って駅まで行き、公共交通を使ってもらうという観点に立つならば、自転車の抑制ではなく利用の促進をはかるべきと考えますが、市長の見解をうかがいます。

一部混雑区域では有料化せざるを得ない(市長)

【市長】
自転車は、環境にやさしい乗り物であると考え、なごや交通戦略の中でも、適正な自転車利用の促進を施策の一つとして掲げている。

これまで駐輪・走行マナーの向上に取り組んできた。「放置自転車が多く、危なくて歩けない。」と評判の悪かった黒川駅があった。その黒川駅で、地域の安心安全な街づくりを進めるとともに、地元の協力を得て、2月1日から有料化し、歩行者が安全に通行でき、自転車も走行しやすい空間を確保することができた。

すべて有料化することを是とはしていないが、一部混雑区域ではやっていかざるを得ない。

今後も引き続き、利用マナーの啓発に努め、自転車駐車対策にも地域と一体となって取り組んでいきたい。

放置自転車もないのに有料化するなんて

【田中議員】
中村区岩塚駅周辺には、6ヶ所無料駐輪場があります。駐輪場の中は、ボランティアの方のご努力にもよると思いますが、きれいに収まっていました。それにもかかわらず、この岩塚周辺の無料駐輪場を有料化にする計画があります。学校帰りに自転車を取りにきた高校生に「有料になっても、あなたは、ここに自転車を止めますか」と質問してみました。高校生は「えっ!有料化するんですか」とびっくりし、「そんなこと困ります」と言われました。放置自転車がないのになぜ有料化にするのでしょうか。

有料化される鉄道駅の
自転車駐車場(16駅)
名古屋駅 国際センター駅 星ヶ丘駅 覚王山駅
志賀本通駅 平安通駅 上小田井駅 庄内緑地公園駅
岩塚駅 いりなか駅 名鉄堀田駅 地下鉄堀田駅
伝馬町駅 神宮前駅 笠寺駅 鳴海駅

当局から示された平成17年度の「駐輪場の有料化前後の駐輪状況」の資料を見てみますと、有料化した38駅中18駅で利用率が半数に満たない状況です。有料化したことで自転車抑制に成功したという資料に見えます。しかし、有料化したことによって、今まで駐輪していた自転車が、どこに動いたかという追跡調査はされていません。名東区上社駅の駐輪場は有料化されたことによって、駐輪台数は半分以下に減りました。しかし、その多くは、本郷駅周辺の無料駐輪場まで自転車が移動しています。そのためか、本郷駅周辺の無料駐輪場は大変な状況になっています。

また、上社駅南にある高架下の有料駐輪場は、立派な機械が備え付けられているにもかかわらず、このたび廃止になりました。今、取り壊しの準備が進められておりますが、機械をつけるのにも、取り外すにもお金がかかります。取り壊す前に利用してもらう工夫はされなかったのでしょうか。

有料駐輪場が空いているところは、無料にして、もっと使ってもらうことを考えるべきではないでしょうか。緑政土木局長にお尋ねします。

秩序ある自転車利用を図るため有料化する(局長)

【緑政土木局長】
自転車利用の適正化を図るため、可能な限り無料の駐輪場を整備してきたが、放置自転車数も増え続けたので、その対策の1つとして有料化に踏み切った。

一定規模以上の自転車が集中する鉄道駅では、自転車駐車場が無料であった場合、駅に近い一定区画に自転車が集まり、無秩序な状態になる。また、有料化した駅の一部に無料自転車駐車場を設置すると、そこへ自転車が集中し、やはり混雑が生じます。

そこで平成22年度までの5年間で、名古屋駅を始めとする主要75駅について、自転車駐車場の有料化を進めたい。

全国ワースト1の名古屋駅周辺の駐輪対策

【田中議員】
現在、名古屋駅周辺は、通勤通学に加え買い物客の自転車もたくさん置かれています。駅周辺は、13箇所の駐輪場も禁止となっているところも、いっぱいの状態です。明らかに、駐輪場が足りないことは、一目瞭然であります。当局の資料によると放置自転車もいれて計8000台以上が名古屋駅周辺に駐輪されていることになります。さらに、ミッドランドスクエアなどの超高層ビルなども含めると自転車の数は、さらに増えることが予想されます。

本市は平成14年10月1日から施設を作るにあたって駐輪場を作ることを付置義務として条例化しました。それによって超高層ビルあわせて計400台駐輪場ができます。 しかし、これでは、放置自転車の解決にはなりません。ちなみにミッドランドスクエアの立体駐輪場なるものをのぞいてみましたが、ボタン装置で金額は、1回200円。「これでは、ちょっと利用しづらいな」という感じがしました。

福岡市は違法駐輪ワースト1でしたが、今は、汚名を返上しております。本市の取り組みと大きく違うところは、積極的に公共駐輪場の整備を進めていることと、それに対して市民・企業・行政が共通の意識をもって取り組んでいることです。その取り組みの一つに、3時間以内の買い物客など、短時間の駐輪の場合は、無料にするなどしていることです。

本市は、名古屋駅周辺の自転車駐輪場を有料化するにあたって、利用者のニーズを調査されたことがあるのでしょうか。「放置自転車は有料化して、あとは駐禁にして厳しく撤去すればなくなる」というのは、あまりに短絡的な考え方ではないでしょうか。

名古屋駅周辺は、自転車利用者、商業者、事業者などの協力なしには放置自転車の問題を解決できません。福岡市など他都市の取り組みを学んで、一律に有料化するのではなく、もっと工夫をしたり、市民の理解をもとめたりする努力が必要ではないでしょうか。緑政土木局長にお尋ねします

官民連携による対策で有料化もやむをえない(局長)

【住宅都市局長】
平成17年3月に自転車利用に関するアンケート調査を実施し、利用者の意向や利用状況等を調査いたところ、およそ4分の3の方が「使いやすさを前提として、有料化もやむを得ない。」と回答した。この調査結果をもとに、平成17年6月には、「中村区安心・安全で快適なまちづくり推進協議会」の中に、地元住民、企業、鉄道事業者、関係行政機関からなる分科会を設け、自転車駐車場の整備手法や地元企業等の駐車指導活動など官民連携による対策を検討してきた。平成19年度には必要な駐車場の整備を実施し、市民・企業・行政が協力して、放置自転車全国ワースト1を返上していきたい。

無料で使いやすく(要望)

【田中議員】
自転車駐輪場について、第一に「整備」というならば、まず充分なスペースを確保するべきではないでしょうか。他の駅と違って特別な状況にある名古屋駅周辺は、車の駐車場を備えている商業施設に駐車場を少なくしてでも、自転車駐輪場を確保するよう、粘り強く働きかけるべきでは、ないでしょうか。

有料駐輪場の利用率が半分以下の18駅については、そのままにしておくつもりですか。例えば、本山の地下駐輪場は、名城線開通前は、無料でスタートしたら、利用率100%でした。有料になったら500台収容のところ、多いときでも80台ぐらいしか駐輪されていません。無料にすれば、利用されるのではないですか。すぐに無料にできなければ、せめて、学生は無料。一般の人は、半額にするなどのテスト期間をもうけ、利用者のニーズを調査していくべきことを求めます。

 

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