後期高齢者医療広域連合議会7月定例会 一般質問(7月9日)
わしの恵子議員

新制度を周知徹底し、減免制度を充実させ、安心して医療が受けられる高齢者医療制度にせよ

平成19年第1回愛知県後期高齢者医療広域連合議会が平成19年7月9日(月)午後2時から午後5時59分まで、メルパルク名古屋2階「羽衣」で行われました。日本共産党からはわしの恵子議員(名古屋市選出)と木全昭子議員(岡崎市選出)が広域連合議員に選ばれ、それぞれ質問しました。概要を紹介します。

抗議の集会
メルパルクを借りて開かれた広域連合議会。賃借料は4時間ほどで20万円。

新しい制度への不安がいっぱい

【わしの議員】
名古屋市会のわしの恵子でございます。通告に従い一般質問を行います。

第一に、後期高齢者医療制度についての県民への周知についてです。

いよいよ来年4月から老人保健法が廃止され、75歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度が始まるわけですが、名古屋市では65歳以上の障害者と、75歳以上の市民合わせて、約20万8,000人が該当となります。そのうち社会保険加入者は、27,000人ですが、大半の方が、現在、扶養家族になっており、保険料の負担はありません。また、名古屋市の国保の75歳の独自減免により、保険料負担がない人は5万人ですので、この制度の発足によって77,000人近くもの方々が新たに保険料を取り立てられることになり、大変深刻な問題となります。ところが現在のところ、重要なことは、ほとんど知らされておりません。

そんななかで、いま高齢者のみなさんから保険料はどのくらいになるのか、年金から天引きというが、これ以上年金受給額が減ったら生活できなくなる、これまでの医療制度とどこが変わるのか、等々、様々な疑問や不安が出されています。このままでは、制度が発足する来年4月になって、年金から医療保険が天引きされてびっくりされる方も出てくるのではと懸念するものです。

そこでお聞きします。これまでの老人保健制度と後期高齢者医療制度との大きな変更について、どのように周知徹底を図られるのでしょうか。

市町村と連携してPRする(連合長)

【広域連合長(名古屋市長)】
市町村と連携を取りながら、医療機関へのポスターの掲示、あるいは被保険者に対する個別のリーフレットの送付、各市町村での説明会の実施など、制度の周知徹底をきめ細かにやりたい。

周知徹底を(要望)

【わしの議員】
後期高齢者医療制度広域連合として、県下での対象者は約62万人と聞いています。お答えもありました。今、多くの人、特にこれまで保険料を払わなくてもよかった人が、自分の保険料はどうなるのかと心配されています。生活設計を立てる必要があります。確かに保険料の決定は11月議会となっていますが、制度の変更や平均保険料など、現在もっている情報について、早急に知らせるべきだと思います。ポスターや個別へのリーフレット、市町村での説明会などとお答えをされましたが、これは直ちにやるべきと考えます。さらに、それぞれの自治体にも後期高齢者医療についての身近な相談窓口を設置するなど、十分な対応が図られるように要望します。

保険料滞納者から保険証を取り上げるな

【わしの議員】
第2に保険料についてです。保険料が決まるのは、11月議会と伺っていますが、後期高齢者医療制度では75歳以上の総医療費から患者負担分を除いた保険給付費のうち1割分を高齢者本人が保険料として支払うことになります。厚生労働省の推計では平均して月額6,200円とされていますが、介護保険料との合計で約1万円が天引きされることになります。

柳沢厚生労働大臣は、天引き額が年金額の2分の1を超えないように配慮する、と言っていますが、結局、2分の1まではむしりとる、という冷酷なものではないのか、しかも、保険料を払えない場合に無慈悲な仕打ちもあるのではないかと心配するものです。

従来、75歳以上の高齢者は、障害者や被爆者と同じく、保険料を滞納しても保険証をとりあげてはならない、とされてきました。ところが、後期高齢者医療制度では、保険料を滞納すれば高齢者でも容赦なしに保険証をとりあげ、短期保険証、資格証明書を発行すると聞いています。現在、国保では、高すぎる保険料が払えず保険証が取り上げられ必要な医療が受けられないという深刻な事態が出ており、それをやめさせることが緊急に求められています。にもかかわらず、高齢者医療にまで保険証の取り上げを拡大することは絶対許されないものと考えるものです。

地方自治体というのは、なによりも住民の健康、福祉を守るのが最大の仕事ではないでしょうか。高齢者の人権を守り、最高で最善の医療を提供すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

広域連合として、高すぎる保険料について、そして、払えない高齢者から保険証を取り上げることに対して、どのような認識をもっているのかお尋ねいたします。

公平の観点からやむを得ず行う措置だ(連合長)

【広域連合長】
資格証明書の交付要件等の詳細は、広域連合の保険では、まだはっきりしていないが、運用は今後の課題と考えている。この制度の趣旨は、保険料を納付する資力が十分ありながら、特段の事情もなく長期間保険料を滞納している方につきまして、被保険者間の負担の公平の観点からやむを得ず行う措置である。

年金15,000円の人から保険証を取り上げるのか(再質問)

【わしの議員】
これまで、老人保健法のもとで、少なくとも老後における健康の保持と適切な医療の確保が保障されていたはずです。被爆者医療、障害者医療、結核に対する医療等々は、資格証の対象からはずしていますが、なぜかといえば、いくらなんでもそういう人たちから保険証を取り上げてはいけないということから、保険証の取り上げの対象からはずしていたのです。老人保健医療もこれらの医療と同じ考え方をしていたからこそ、保険証の取り上げはされなかったのです。ところが、後期高齢者医療制度の創設によって、75歳以上の方からは保険証を取り上げる、これは重大な方針の変更といわざるを得ません。しかも、答弁では、保険料を納付する資力が十分ありながら、特段の事情もなく、長期間滞納している方に行う措置と言われましたけども、そもそも、月額15,000円未満の年金者に、保険料を納付する資力が十分あるとは、とても考えられません。

資格証明書の交付は、国の法律によるものだからとお答えされましたけども、資格証明書の交付要件等の運用については今後の課題だとも言われました。そうであるなら、愛知県の広域連合としては、運用で資格証明書の発行はできる限りしないように努めると答弁していただきたいと思います。再度お答えください。

運用については検討する(連合長)

【広域連合長】
資格証明書の発行については、この制度の趣旨を踏まえながら運用について検討してまいりたい。

命にかかわるものだ。発行するな(要望)

【わしの議員】
資格証明書の発行については、検討されるということなんですけども、私は、後期高齢者医療制度のもとで、先ほども言いましたように、短期保険証や資格証を発行する、保険証を取り上げることは断じて許されないものであると思っています。75歳まで、がんばって税金も、社会保険料もきちんと納めてきて、社会のために貢献してきた高齢者に保険料を納められないからといって、被保険者間の負担の公平の観点を持ち出して、保険証を取り上げることは、どうしても納得できません。保険証を取り上げられたら、結局、お医者さんにかかれなくなって、命が奪われることになる、そんなことも出てまいります。命の尊厳にかかわる問題です。ですから、資格証明書の発行については、本当に行わないようにしていただきたいと思います。

名古屋市なみの保険料減免を行え

【わしの議員】
第三に、保険料減免についてです。年金が年額18万円未満の方は普通徴収となりますが、先ほども述べましたように、保険料の滞納者には保険証を発行せず、国保のように資格証明書を発行する厳しい仕組みになっています。65歳からの介護保険では、名古屋市では現在1万人が保険料滞納者となっています。保険料を払えない人には、減免制度の活用など迅速かつ、親身な対応が求められています。

そこでお伺いします。名古屋市の国保が、独自で行っている低所得者への方への75歳減免で10割減免の人は約5万人、3割減免の人は3万3千人いらっしゃいます。その方々が後期高齢者保険になっても、これまでどおりの減免を続けることが必要と考えるものです。市の負担額は約11億円ですが、それを後期高齢者医療制度に引き継ぐことができないものかと思いますがいかがでしょうか。

さらに、名古屋市の国保が行っている75歳の減免制度について、愛知県広域連合としても、新たな減免制度として、設けることを求めるものです。63市町村に責任を持つ広域連合が進んだ自治体の施策を学びあい、取り入れることが必要ではないでしょうか。そうすることによって広域連合としての本来の役割が果たせると思います。

できない。制度になじまない(連合長)

【広域連合長】
後期高齢者医療制度は法律で原則として県内均一の保険料とすることとされている。国保は、市町村が保険者であり、保険者ごとの減免制度を定めているが、後期高齢者医療制度は、広域連合が県下統一の減免制度としなければなりません。

特定の市だけ減免制度を採用するということは、県下の被保険者間の公平を欠くこととなり実施できません。

また、75歳以上を要件とする減免は、後期高齢者医療制度自体が75歳以上を対象に運営される中で、一律に同じ年齢を要件とした減免は、制度になじまない。

市民の喜ぶ制度は広めて当然

【わしの議員】
名古屋市の75歳以上の減免制度の引継、他の自治体での新設についてですけども、答弁の中で一律に同じ年齢を要件とした減免は、制度になじまないと言われました。

しかし、この後期高齢者医療制度そのものが、75歳以上と一律に年齢で区切っているのではないでしょうか。私は、名古屋市の国保について75歳以上の独自の減免制度を紹介させていただきました。この制度で10割減免を受けている人は約5万人です。75歳以上の国保の加入者は16万6千人ですので、約30パーセントもの方が助かっているのです。そのような優れた制度を後期高齢者医療制度でも実施をすべきだと考えます。後期高齢者医療制度の中で、県下統一の減免制度を作れるわけですので、名古屋市の国保の優れた独自の減免制度に学ぶべきと申し上げているのです。たとえば、7割、5割の法定減額制度に、広域連合独自の減免で、低所得者への減免や所得激減に対する減免を行うなど、広域連合独自の減免制度を具体的に創設すべきと提案をさせていただきます。お答えいただきたいと思います。

県下一律で行うもの(連合長)

【広域連合長】
名古屋市が現在行っている75歳以上の医療保険制度の問題を他の自治体にも広めることは、75歳以上を要件として県下一律で行われるので、そのようなのを他の自治体に及ぼすことについては考えていない。

独自減免の具体化を急げ(要望)

【わしの議員】
広域連合独自の減免制度について、早急に具体化していただきたいと思います。そのためにも、国の財政負担割合、引き上げていただきますように、国にしっかりと求めていただきたいと強く要望します。いずれにしても、愛知県広域連合が後期高齢者の命と健康を守って、充実した医療制度を確保するために、力を尽くしていただきますように、強く要望しまして、私の質問を終わります。

≪参考≫木全昭子(岡崎市)の質問要旨

広域連合のあり方について

【木全議員】
議員定数を34名と決めたのはどの機関か。

【連合】
全市町村の議会である。

【木全議員】
議員定数を63名としなかった理由は何か。

【連合】
市町村の大部分が、できるだけ効率的な規模にすべきとの意見であった。

【木全議員】
全国で全自治体から議員選出を行っているところはないか

【連合】
47都道府県のうち議員定数が市町村数に満たないのは25である。

【木全議員】
議員選出に当たり、各市町村議会において各議員に立候補できる保障が確保されていたのか。議員選出に疑義が有る場合に広域連合は指導をするのか。

【連合】
各市町村議会議長あてに選挙の執行依頼をし、選出されたものであり、適正に執行されていると考えている。

 

被保険者の声の集約について

【木全議員】
各市町村での制度の周知などをどの程度把握しているか。

【連合】
制度説明会や出前講座の実施、広報誌でのPR、リーフレットやポスターでの啓発が予定されている。

【木全議員】
75歳以上の人の声をどのように集約するのか。

【連合】
被保険者の意見・要望などは市町村の窓口へ寄せられることが多いため、市町村から、寄せられた意見の集約を図りたい。

後期高齢者の実態に合った保険料設定にしていく上での広域連合としての準備等について

【木全議員】
具体的にどれだけの保険料になるのか。試算の段階で公表すべきと考えるがどうか。

【連合】
現時点では政令等がまだ明らかになっておらず、具体的な保険料は見込めない。

【木全議員】
資格証明書、短期保険者証の発行状況、一般会計から国保特会への繰入状況、介護保険の保険料滞納者の状況などの資料を議会に提出して欲しいがどうか。

【連合】
議会からの要望がある場合にはできる限り提供する。

【木全議員】
国保で65歳以上で資格証明書が発行されている人がいるか。

【連合】
老健対象者には発行の制度はない。

【木全議員】
資格証明書の発行についての考え方はどうか。

【連合】
被保険者への丁寧な対応に心がける。

【木全議員】
保険料について所得ランクが設けられるか。

【連合】
設けられない。

国に対する国庫負担金の増額を求める意見書提出について

【木全議員】
国に対して国庫負担割合の増額を求める意見書を提出すべきと考えるがどうか。

【連合】
6月4日に東海4県が合同で国に対し要望を行った。今後も他県と連携を取りながら必要に応じ要望をしていきたい。

 

【老人保健制度と後期高齢者医療制度との比較】
項目 現行 老人保健法 後期高齢者医療制度(H20.4.1から)高齢者の医療の確保に関する法律
対象者 75歳以上(65歳以上の一定障害者含む) 同左
財源構成 ・公費5割(国4:県1:市町村1)
・国保、社保等の保険者からの拠出金5割(保険者の75歳以上の老人加入者数に応じて拠出)
・公費5割(国4:県1:市町村1)
・国保、社保等の保険者からの支援金4割(0歳〜74歳の全加入者数に応じて拠出)
保険料1割(対象者から徴収)
患者負担 1割負担(現役並み所得者は3割) 同左
運営主体 市町村 広域連合(都道府県単位で全市町村が加入)
保険料の負担 老人保健制度自体での保険料の負担はない。(国民健康保険や社保等、それぞれの保険者へ保険料を納付する。) 被保険者は、広域連合が条例で定めた保険料率により算定した保険料を納付する。(上記「財源構成」の1割分に相当)
保険者機能 保険料の賦課主体(社保等)と医療給付の主体(市町村)が異なる(ただし、市町村国保に限り同じ)。⇒運営責任が不明確 広域連合が保険料の賦課及び医療給付を行う。 ⇒運営責任が明確化
資格管理 市町村 広域連合(資格取得等の届出の受付は市町村)
医療費の給付 市町村 広域連合(償還払や第三者行為の受付は市町村)
レセプトの
審査・点検
市町村(一部を国保連合会へ委託) 広域連合(国保連合会等への委託が可能)
保険料の徴収 なし 市町村
※現行では、国民健康保険又は社会保険等に加入したまま老人保健制度の対象となるが、後期高齢者医療制度の場合は、独立した医療制度であるため、それまで加入していた保険を脱退して加入することになります。

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