2007年9月定例会 議案外質問 田口かずと議員(2007年9月21日)

録画中継を別サイトにて配信しております。
>> ご覧になりたい方はこちら(別ウィンドウで開きます)

ムービーライブラリへ

後期高齢者医療制度について

新たに保険料を負担しなければならない人が多い

【田口議員】
後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者を現在加入している国民健康保険や組合健保などから切り離して被保険者とする独立した医療保険制度であります。この制度は、来年4月から始まりますが、いまだに多くの人がその中身を知りません。一方で、中身を知った人からは、不安の声があがっています。そこで、後期高齢者医療制度の問題点を指摘しつつ、本市として少しでも改善ができないかという立場から、健康福祉局長に数点お尋ねします。

第1は、保険料についてであります。

保険料は、年金額が月額1万5千円以上の人は年金から天引きされます。厚生労働省の試算では、年金収入が208万円の人を基準に平均で月額6,200円とされていますが、葬祭費や保健事業なども保険料で賄わなければなりませんので、実際の保険料はもっと高くなるでしょう。愛知県後期高齢者医療広域連合は、市民団体の照会にたいして、国保並みに5万円の葬祭費を支給するとすれば、月額250円の保険料値上げになると回答しています。

問題は、75歳以上のすべての高齢者から保険料を取り立てようとするところにあります。現在、健保に加入している高齢者の大半は、扶養家族になっており、保険料を払っていません。また、本市の国民健康保険では、75歳以上の高齢者で保険料を払わなくてもよい人が少なくありません。7割ないしは5割の法定減額の対象となっている75歳以上の人にたいして、保険料の均等割を免除する独自の減免制度があるからです。7割・5割減額の対象となるのは、一人暮らしでは年金がひと月14万円以下、二人暮らしでは16万円以下の世帯です。後期高齢者医療制度は、こうした低所得者からも、容赦なく保険料を取り立てるものとなるのです。

さらに、将来の自動的な保険料値上げの仕組みが導入されたことも大きな問題です。保険料は2年ごとに改定されますが、後期高齢者の医療給付費が増えれば、保険料も値上げされます。しかも、この制度の財源割合は、後期高齢者の保険料10%、他の医療保険からの支援金40%、公費50%で始まりますが、後期高齢者の人口が増えるのに応じて、後期高齢者の保険料の財源割合も、引き上げられていくのです。

このようにこの制度は、75歳以上の高齢者から確実により多くの保険料を取り立てるという過酷な制度といわなければなりません。そこで、お尋ねします。

健保などの扶養家族になっている人、国保の75歳減免によって保険料を免除されている人など、現在は保険料負担のない人で、後期高齢者医療制度への移行にともなって、保険料を新たに負担しなければならなくなる人は、それぞれおおよそ何人か、明らかにしていただきたい。

75,000人が新たに保険料を負担(局長)

【健康福祉局長】
広域連合が保険料額等を決定し、市町村はその徴収事務を行う。愛知県広域連合に加入する人は、全県で634,000人を予定し、名古屋市民は約208,000人を予定している。

このうち、これまで被用者保険の被扶養者で、新たに保険料を負担するのは、20,000人程度と推計している。この保険料は、経過措置として2年間、均等割の2分の1をとしている。

また、本市国民健康保険のいわゆる75歳減免の対象は約55,000人で、後期高齢者医療制度へ移行しても引き続き均等割保険料の7割ないしは5割が軽減される。

広域連合に低所得者減免制度の要請を、本市独自の減免の実施を

【田口議員】
後期高齢者医療制度でも、7割・5割の法定減額の対象となる低所得の高齢者にたいしては、本市の国保のように保険料の均等割を免除するなど独自の減免制度を設けて、新たな保険料負担が生じないようにすべきです。

そこで伺いますが、広域連合にたいして、こうした独自の低所得者減免の実施を求める考えはないのか。本市としても独自に減免制度を設けるべきではないのか。そのために後期高齢者医療制度にともなって創設される「特別会計」に、一般財源を繰り入れることは制度上問題ないと考えるが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

財源の問題で困難。市独自では制度上できない(局長)

【局長】
後期高齢者医療制度では、法律により、低所得は、均等割額の7割・5割・2割が軽減される。また、その他特別の事情のある人は、広域連合が条例により保険料を減免することができる。

しかし、広域連合として県下統一の減免制度を実施すると、国民健康保険でも市町村ごとに減免制度が大きく異なっている、減免をするための財源がそれぞれの市町村の新たに負担となったり、又はそのまま保険料への上乗せとなってしまうなど、難しい課題がある。

保険料率をはじめ保険料の減免など、保険料の賦課決定に関することは、広域連合の権限に属することであり、市町村が独自に条例を制定し、減免を実施することは制度的に困難だ。

資格証明書の発行はやめよ

【田口議員】
1年以上保険料を滞納すれば、保険証を取り上げられて、資格証明書が交付されます。年金から天引きされる人は、滞納しようがありませんので、滞納が生まれるのは、月額1万5千円未満の年金受給者です。

「資格証」となった人は、医療機関の窓口で医療費の全額を支払わなければなりません。医療なしでは生きていけない高齢者から保険証を取り上げることは、行政が命綱を断ち切り、社会的弱者を見捨てるものであり、あまりにむごい仕打ちではないでしょうか。資格証明書の交付は中止することを求めるものであります。

資格証明書の交付要件は、「特別の事情」のない場合に限定されていますので、広域連合や市町村の運用によって交付を抑えることは可能です。資格証明書の交付は広域連合が行ないますが、保険料の徴収事務は市町村の事務です。「保険料を納付することができない特別の事情に関する届出」の受付も市町村が行なうことになっています。ですから市町村が、保険料の滞納者にたいしてどれだけ丁寧に相談にのるかが、資格証明書を交付するかどうかにかかってくると思います。そこで、お尋ねします。

本市としては「1人も保険証を取り上げない」「資格証明書は1枚も交付しない」という立場に立って、保険料の納付相談に丁寧に対応できる体制の構築や、「特別の事情」に関する柔軟な運用に努めるべきではないですか、お答えください。

負担の公平からやむなく行うが丁寧に対応したい(局長)

【局長】
「被保険者資格者証」は、あくまでも『保険料を納付する資力が十分ありながら、それでも特段の事情が無く長期間保険料を納付していただけない方』に対して交付するものであり、公平性の観点からやむを得ず行う。市では、保険料納付について相談をいただいた際に、一人一人の事情に合った、ていねいな対応をすることによって、保険料の確保に努めたい。

後期高齢者医療制度では差別的な診療報酬になる

【田口議員】
政府は、後期高齢者とそれ以下の世代の診療報酬を「別建て」にし、後期高齢者の診療報酬は、包括払いにすることを検討しています。「何をやっても同じ額」というのが包括払いですから、病院などは検査や手当などをやればやるほど赤字になります。包括払いになれば、高齢者は病院から敬遠されたり、治療内容を下げられたりするのではないでしょうか。75歳以上という年齢で医療内容を差別するなどということは、世界に例がありません。

こうした後期高齢者の診療報酬の「別建て」、包括払いの導入には、本市としてきっぱり反対すべきだと考えますが、健康福祉局長の見解を伺います。

後期高齢者の心身の特性などを十分に考慮した診療報酬に(局長)

【局長】
現在厚生労働省において、「後期高齢者医療制度の診療報酬体系」のあり方についての検討が進められており、骨子案がようやく今月初めに諮問機関に提示された。

骨子案の基本的な視点は、「後期高齢者の生活を重視した医療」「後期高齢者の尊厳に配慮した医療」「後期高齢者及びその家族が安心・納得できる医療」の3点と示されている。

今後、後期高齢者の心身の特性などを十分に考慮した診療報酬のあり方について検討される。

このまま実施できるような状況なのか(再質問)

【田口議員】
答弁では、この制度のもとで新たに保険料を払わなければならなくなる人が、健保などの扶養家族や国保の75歳減免の対象者など、約7万5千人にのぼることが明らかになりました。これは、後期高齢者の三人に一人以上であります。わずかな年金暮らしの高齢者からも、死ぬまで保険料を取り立てるというのは、冷たい仕打ちといわなければなりません。本市として独自の保険料減免を行うべきです。それが、制度的に困難というのなら、制度そのものの全面的な見直しを政府に求めるべきではありませんか。

そもそも後期高齢者医療制度のねらいは、医療費の抑制にあります。75歳以上の高齢者は、医療にお金がかかるから、健康保険は別枠にする。高齢者の病気は、簡単には治せないから、診療報酬も別建てにして、そこそこの医療でがまんしてもらおうというわけです。

日本共産党は、この制度の来年4月からの実施を凍結し、制度の全面的な見直しを政府にたいして要求しています。

全国各地の広域連合からも制度の改善を求める声が上がっています。首都圏の一都三県の広域連合が厚生労働大臣に提出した緊急要望では、「広域連合のみならず区市町村においても大きな不安を抱いている」と指摘し、国庫負担の増額などを要請しています。

そこで市長にお尋ねします。

後期高齢者医療制度について市長は、このまま実施してもよいとお考えでしょうか。実施にあたっての不安はありませんか。実施を凍結し、制度の全面的な見直しを政府に求める考えはありませんか、お答えください。

介護保険のときより国の説明が遅れている(市長)

【市長】
後期高齢者医療制度は、高齢者世代と現役世代の負担を明確化し、公平でわかり易い制度とすることで、「国民皆保険制度」を堅持し、将来にわたって安心して医療が受けられるようにするための必要な制度改革である。

平成20年4月の制度の開始までに時間がなく、制度周知が十分に進まないこと、国からの制度設計の提示が、介護保険制度の開始の時と比べても大幅に遅れていることなど、万全の準備ができていると言える状況ではないことは事実だ。しかし、施行まで残り半年となった現在、この制度を円滑に実施できるよう、関係機関と協力しながら、国や件への要望を行うとともに、市民への周知をはじめとして、さまざまな課題の解決に向けて、今後も最大限の努力をしたい。

なお、国や県への要望は、現在、私どものかかえる不安についてきちんと説明し要望したい。

撤回を(意見)

【田口議員】
市長は、「介護保険のときよりも遅れている」「万全の準備ができていると言える状況ではない」と言われた。不安については課題を整理して国に意見を述べるといった。いまこの制度を来年4月から実施するには課題や問題があるわけで、ここは来年4月からの実施を凍結し、全面的な見直しを政府に求めるべきです。仮にそれでも実施するというなら、市として独自の減免制度などの対策を講じるべきだ。

緑の保全について

緑地保全地域の指定を

【田口議員】
都市における緑地は、いうまでもなく身近な自然とのふれあいの場として、住民にやすらぎやうるおいをもたらすとともに、ヒートアイランドの緩和など大きな役割を果たしています。ところが、名古屋市内では、平成2年から平成17年の15年間に、中村区一つ分に相当する面積の緑が失われています。その主な原因は、民有地である農地や樹林地の宅地化などによるものです。

いかにして、民有地における緑地を保全していくのか。その有効な手法の一つが緑地保全地域制度であります。緑地保全地域制度とは、里山など都市近郊の緑地を都市計画で指定し、一定の規制のもとで緑を保全する制度です。この制度の導入にあたっては、土地所有者の理解と協力が不可欠であることなど、検討すべき課題が少なくないとは思いますが、本市の「緑のまちづくり条例」にも掲げられていますので、地域の指定に向けた具体的な検討が進められることを期待しています。

そこで、緑政土木局長に伺いますが、緑の保全のために、緑地保全地域の指定に向けた具体的な検討状況についてお聞かせください。

調査し、制度導入に関する条件整理をする(局長)

【局長】
緑地を保全する方策を平成18年2月に名古屋市緑の審議会に諮問して、同年11月に答申をえた。この答申では、「良好な景観と生物の多様性が保たれ、ヒートアイランドの緩和機能を持つ民有樹林地について、新たに都市緑地法に規定する緑地保全地域制度の導入を進めていくことが必要」とされ、この答申を受けて、市内東部に残されたまとまりのある樹林地を対象に、その現状について調査し、制度導入に関する条件整理を行っている。

天白区の緑地保全を

【田口議員】
昨年11月、名古屋市緑の審議会から緑地の保全について、答申が出されました。この答申の中では、「10〜100ha程度の比較的中規模なまとまりをもつ樹林地が市東部に散在して」おり、「これらの樹林地のうち、……自然度の高い区域を緑地保全地域の候補地として選定し、指定の是非を検討すべきである」とされています。

私が住んでおります天白区内には、比較的中規模なまとまりをもつ樹林地が散在しており、その一つとして、平針南学区内にある民間樹林地を紹介したいと思います。平針運転免許試験場の西側に10数haの樹林地が広がっています。そこは起伏に富んだ地形で、ため池もあり、樹林地に隣接して水田が残されており、里山的な景観を有しています。また、尾根伝いの獣道は、整備されるならば、自然とふれあえる散策路となるでしょう。しかし、この樹林地でも民間による宅地開発が進んでおり、緑が失われつつあります。そこでお尋ねします。

ただいま紹介したこの樹林地を緑地保全地域の候補地の一つとして選定し、指定に向けて土地所有者の理解と協力を求める考えはありませんか。また、その際には、市民緑地制度も取り入れることによって、地域の人たちも自然に親しみ、土地所有者にも税の優遇などのメリットをもたらす方策も合わせて検討すべきだと考えますが、緑政土木局長の答弁を求めます。

検討したい(局長)

【局長】
議員ご指摘の樹林地は、十数ヘクタールのまとまりがあり、緑地保全地域の候補地となる可能性があると認識しております。

緑地保全地域制度は、特定の区域の土地利用に規制をかけるものであり、土地所有者の意向を把握し、理解をえることが重要で、制度導入に当たっては、充分留意していく。

また、市が土地を借りて、地域に親しまれる良好な緑として公開する市民緑地制度の導入も、今後検討したい。

早急に選定を(要望)

【田口議員】
緑の保全については、緑地保全地域の候補地を早急に選定して、指定作業に入るよう要望しておきます。

 

▲このページの先頭へ戻る