名古屋港管理組合議会11月定例会 一般質問(2007年11月13日)
山口きよあき議員
質問する山口議員
【山口議員】 名古屋港の開港百周年を私もお祝いしたいと思います。伊勢湾台風などの大きな災害を乗り越え、浚渫と埋め立ての繰り返しによって発展してきた名古屋港ですが、その発展の影には、いくつもの労働争議を招いた過酷な港湾労働、戦争に協力させられた歴史、そして裁判まで闘われた大気汚染、公害問題などがあった(現在もまだ未解決ですが)ことを忘れてはなりません。
歴史の節目である今年、あらためて港の歴史を、光と影の両面からしっかり学ぶ機会にしたいと思います。
以下、通告に従い順次質問します。
名古屋港の整備について
鍋田ふ頭と飛島ふ頭の整備要望を、国が拒否した理由をどう考えるのか
開港百周年記念のイベントにやってきた帆船
【山口議員】 管理組合は名古屋港の整備拡充に関する要望書を県や市と共に国に提出しています。なかでも国際競争力の強化に向けたコンテナターミナルの整備について、飛島ふ頭南側コンテナターミナルと鍋田ふ頭コンテナターミナルの双方について機能拡充を図るよう予算要望してきましたが、国は2年続けて「うん」と言わず、来年度予算の概算要求への計上も見送られました。
夏の参院選でも、大型公共事業を何よりも優先するこれまでの政治に対する厳しい国民の批判が明らかになりました。
ここは一旦立ち止まり、あらためてほんとうに必要な事業に絞り込んだ港湾整備計画をたてるべきです。
飛島ふ頭南側の大水深バース計画
ある報道では「すでに超過密状態になっている鍋田ふ頭の機能拡充が最優先なのに、飛島ふ頭南側はスーパー中枢港湾のモデル地区と指定されているために鍋田と飛島の双方を要望させざるを得なくなっており、国土交通省が拒否したのは、本港での港湾整備の優先順位が固まっていないと判断されたからではないか」とも指摘されています。
そこでまず管理組合としては、国が名古屋港の要望にイエスと言わなかった理由をどう考えているのか、うかがいます。
飛島南側の大水深バースの拡充は中止し、鍋田ふ頭の拡充に重点化すべきだ
【山口議員】 過剰な税金の投資となる大型開発は問題外ですが、必要な港湾整備は当然、行わなければなりません。
飛島南側の大水深バースのこれ以上の拡充(第3バース建設)は中止し、国に対しては、鍋田ふ頭の拡充に要望項目をしぼるべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
四日市港との一体的運用の検討を
四日市港のターミナル計画
【山口議員】 取扱い貨物の伸びは確かに好調ですが、いままでのように大型公共事業に湯水のように予算を使う時代ではありません。必要以上の大型バースは過剰な投資になるおそれが大きく、この地域の経済力や消費人口に見合う適正規模の港湾整備を効率的に進めるように発想を切り替えるべきです。
名古屋港は、スーパー中枢港湾には「伊勢湾」として指定されたのですから、四日市港との一体的運用をもっと真剣に考えるべきです。四日市港を単なる災害時の補完機能としてだけ位置づけるのではなく、ある面では、積極的に取扱い貨物をまわすことも必要ではないでしょうか。
伊勢湾としての効率性を考えるべきだと思いますが、両港に整備した複数の大水深バースをどう効率的に運用するのか、お答えください。
金城ふ頭の開発について
金城ふ頭に計画中のモノづくり文化交流拠点構想
名古屋港運協会及び名古屋海運協会からの要望への返答について
【山口議員】 港湾整備上のもうひとつの課題は、金城ふ頭の位置づけです。コンテナターミナルは補修が必要なほど活発に使われています。中部のものづくりを支える名古屋港らしい景観としてのモータープールや完成自動車の積み出しの様子は、みなさんが作成した開港百周年ビデオにも登場しました。
飛島や鍋田、弥富の西部地区への集約化だけでは貨物がさばききれない。この状況が少なくともここ10年は続くのではありませんか。新たなターミナル建設を言う前に、既存の岸壁活用を追求すべきです。
そう考えたとき、金城ふ頭は、交流拠点との位置づけでほんとうに良いのか、あらためて問い直す必要があるのではないでしょうか。
名古屋市の「モノづくり文化交流拠点構想」のために、わざわざ港湾計画を変更して、岸壁にまで交流用地を広げる余裕が物流の現場にありますか。
今年3月には、港運協会、海運協会からそれぞれ、「金城ふ頭内での完成自動車等の保管施設の確保について」のお願いの文書が山田専任副管理者あてに提出されており、そこでは、モノづくり文化交流拠点構想によって完成自動車の保管場所が西部地区へ移されることへの強い危惧が表明されています。
西部地区における港湾整備の急速な進展が望めないのならば、金城ふ頭は現状を活かして、物流機能優先でいくべきです。そこでうかがいます。
港運協会、海運協会からの要望について、管理組合として、いつ、どんな返答をしたのか、お答えください。
金城ふ頭の岸壁およびその周辺部の港湾機能整備を
【山口議員】 名古屋市のモノづくり文化交流拠点構想のイメージ図をみると、交流厚生用地を岸壁まで広げ、荷役スペースを大きく削ることまで検討されているようです。
金城ふ頭でも、少なくとも岸壁およびその周辺部は港湾機能が優先です、と名古屋市にもはっきりと言うべきではありませんか。
金城ふ頭の緑地の拡大を
【山口議員】 金城ふ頭を市民に親しまれる交流の場とするのならば、管理組合自身が立てた緑化計画に逆行して減り続けている緑地こそ拡大すべきです。
金城ふ頭を交流厚生用地と位置づけるのならフットサル場建設で失われてしまった緑地空間こそ金城ふ頭ではまず回復・拡大すべきではありませんか。
利用状況を見ても、鍋田ふ頭の整備が優先課題だ(再質問)
【山口議員】 貨物量の増大という現実、いままでのような公共事業の拡大も簡単ではない。このことを踏まえた場合、金城ふ頭をどう位置づけるのか、名古屋港の既存施設をまず120%活用すべきです。モノづくり構想については「港湾機能と調和を図りながら」という答弁がありました。それならば金城ふ頭を物流拠点として十二分に活用することをまず最優先すべきです。
そのことを前提にして、それでも新たなターミナル整備が必要だとすると、さてどこを優先すべきかが問われます。
二年続けて、飛島ふ頭南側と鍋田ふ頭の整備を求めてきましたが、国は「飛島の第2バースでなんとかしなさい」ということのようです。でも基幹航路中心に運用する飛島ふ頭南側のコンテナターミナルの整備で、中国などアジア航路中心の鍋田ふ頭の混雑がどれだけ緩和するのでしょうか。近海航路用に使いなさいというのなら、16メートルも掘り下げる必要はありません。むしろ大きすぎて使い勝手が悪いターミナルになってしまいます。
そこで再度、うかがいます。
国の言うとおり、飛島の第2バースができれば、鍋田の整備拡充はいらないと考えているのでしょうか。「それぞれの利用状況等を考慮して機能拡充をめざす」と答えていただきましたが、それはどういう意味ですか。利用状況を見れば、鍋田ふ頭の整備が優先課題だとはっきりさせるべきではありませんか、答弁を求めます。
現場の実態からよく考えよ(再要望)
質問する山口きよあき議員
【山口議員】 先ほどは「利用状況」、今度は「緊急性」と答えられましたが、はっきり言いにくいかもしれませんが、そのどちらでも鍋田が優先ということですよね。指摘したい問題は、いままでのように公共事業予算がどんどんつくという時代ではない、というきびしい認識を持つべきだ、ということです。3年間も同じような要望の仕方をズルズルやっていて良いのか、という問題なのです。
四日市との関係、金城ふ頭の活用、も含めた広い視野で問題を考え、効率的に港湾整備を進めていただきたい。スーパー中枢港湾に指定されたからというしがらみ、飛島の開発が最優先という発想から脱却し、現場の実態からよく考えていただくよう重ねて要望します。
稲永ふ頭への処分場計画について
環境影響評価を管理組合として行え
【山口議員】
名古屋市は昨年7月、稲永ふ頭の公有水面を埋め立てて、新しく廃棄物処分場をつくる計画を公表しました。埋め立て面積約1.4ヘクタール、埋め立て容量約10万立方メートル、埋め立て期間は2014年(平成26年)から概ね15年間とされています。
さて臨港地区でのこの計画に対し、名古屋港管理組合は、環境や港湾業務に及ぼす影響について主体的に調査し、また関係団体との調整機能を果たすことが求められていると思いますが、残念ながらこれまでのところ積極的な動きが見られません。そこで3点うかがいます。
この計画についての環境影響評価を、名古屋港管理組合としても独自に行うべきだと考えますがいかがですか。
稲永ふ頭のビジョンを示せ
【山口議員】 稲永ふ頭は港湾計画上や港の長期構想上では、どんなスペースとして位置づけられているのか、その中でこの処分場計画はどういう位置になるのか、ビジョンを示していただきたい。
港湾関係者への十分な説明を
【山口議員】 港湾の職域への計画ですから、地元および周辺学区だけでなく港湾事業者や労働組合など、港湾関係者への十分な説明と必要な合意を得るように名古屋市にしっかり申し入れ、あわせて積極的に調整機能を果たしていただきたい。
処分場についての説明と合意形成を十分に(意見)
【山口議員】 環境への配慮と港湾関係者への説明と合意形成を十分に行うように、しっかり名古屋市へ働きかけ、管理組合として受け身にならず、調整機能を果たしてください。
庁舎建設について
起債によるシンプルな建て替えを
【山口議員】 庁舎建て替えについて、当局の提案してきたPFI事業による建設方針、そのための債務負担行為については、先日の特別委員会での質疑を通して、いくつもの問題点が浮かび上がってきました。
結果的に予定価格の99.6%という契約、しかもたった一つの企業体からの提案しかなかった、ということでは談合が疑われても仕方がない、限りなく随意契約に近いと指摘せざるを得ません。
しかも民間事業者に設計から建設、管理まで一貫してまかせるから、起債して建設するよりも安上がりになることがPFI事業のメリットだと、説明されてきましたが、これもあやしくなってきました。むしろ公的な行政財産を、民間事業者に安く払い下げることこそ問題だと言わなければなりません。
耐震性の不安が建て替えの理由ならば、起債によるシンプルな建て替えにとどめるべきではないでしょうか。
複合施設化を見直せ
【山口議員】 当初の計画では、新庁舎はホテルや商業施設との複合施設として建設するという提案でした。私は、複合施設化は防災拠点ともなる本庁舎にはふさわしくない、と指摘してきましたが、今回の提案では、複合施設ではなく庁舎単独の建設のようです。なぜ複合施設化を見直したのか、うかがいます。
新たなポートタウン計画に沿って、あらためて検討すべきだ
【山口議員】 地元との調整という点ではどうでしょうか。
管理組合と名古屋市住宅都市局が、地元の住民や企業のみなさんの声も踏まえて、新しい「築地ポートタウン計画」を今月つくりました。その土地利用のゾーニングとの整合性はどうか。
現庁舎の跡地は、商業業務ゾーンと位置づけましたが、そこへは商業施設は予定するものの、有料老人ホームや賃貸マンションという計画です。
また港湾会館の跡地は、連けい軸ゾーンとして「東西のウオーターフロントを結ぶ軸として、イベント等ができる交流空間などとともに緑と水の憩いの空間づくりをめざします」と位置づけながら、15階建て225戸もの巨大なマンションを建設する計画です。
計画のゾーニングにも相反するようなプランを、管理組合自らが主導的に進めていくのは納得できません。
現庁舎や港湾会館の跡地利用に関しては、新たなポートタウン計画に沿って、公共的空間としてあらためて検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
名古屋港湾会館ホールの確保を
【山口議員】 建て替えが、にぎわいの創造に貢献するというのなら、会議室ではなくホールこそが必要です。港湾会館のホールは、この地域の文化とにぎわいのために大きな役割を果たしてきました。みなと祭りなどで活躍する和太鼓の演奏をはじめ、充実した音響・防音施設がついたホールの存続は、地元のみなさんをはじめ多くの市民の願いです。
港湾会館の機能をひきつぐのなら、会議室だけではなく、中規模ホールの存続こそ必要ではありませんか。
議会閉会中の議場を利用させよ
【山口議員】 規模は小さくなりますが、庁舎内の議場を、議会閉会中には多目的ホールとして市民が活用できるようにすべきではないでしょうか。
庁舎建設と周辺開発の一体化には無理がある(意見)
【山口議員】 港湾会館ホールは、ガーデンふ頭地区のにぎわいに欠かせません。先日は私のもとへ港区内のある老人会長さんから手紙が来ました。「老人クラブが38回も演芸大会をやってきたホールです。ぜひ存続させてほしい」とありました。金城ふ頭のフットサルスタジアムでは代わりにはなりません。
議場の市民開放は考えていない、との答弁でしたが、まだまだ検討の時間はあります。本会議場を私たちが使用するのは年間わずか7日ですよ。管理組合内部の行事には利用するとは思いますが、それにとどまらず、積極的に市民県民に開かれた施設として活用すべきです。ホールについては強く要望しておきます。
PFI手法による庁舎建設は、答弁を聞いても納得できません。「民間施設の誘導による港まちづくり推進」といいますが、ゾーニングとマッチしたプランとはやっぱり思えません。新庁舎とホテルも結局は別棟で建設するプランになったように、庁舎建設と周辺開発の一体化にこだわると、どこかで無理が生じます。
90億円をこえる債務負担行為には、賛成しかねます。
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飛島ふ頭南側の第2バースの利用がまず必要と判断された
【企画調整室長】
平成20年度予算要求にあたり、鍋田ふ頭コンテナターミナルの機能拡充が未採択となった。来年に完成予定の飛島ふ頭南側コンテナターミナルの第2バースを十分に利用することがまず必要であると判断されたものと認識している。