2007年11月定例会 議案質議 山口きよあき議員(2007年11月28日)

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名古屋市病院事業の設置等に関する条例の一部改正について


質問する山口議員

これまで地方公営企業を全部適用してこなかった理由は

【山口議員】
地方公営企業法では、公営企業の組織、財務、経営などについて規定すると共に、専任管理者を設置し独立して経営できるとしています。ところが病院事業だけは、財務規定のみの適用でも良いとされ、本市でも、管理組織及び職員の身分に関する規定は適用されていません。

なぜ病院は例外なのか。「企業」としての採算性も必要だが、病院事業は採算性が低く、また住民の福祉の増進を目的とする自治体行政との関係も深く、他の事業とは性格が異なるから、と言われてきました。病院事業のこの独自性に何か変化があったのですか。

他の公営企業では、赤字か黒字か、採算性が業績を見る上で事実上、最優先されています。病院事業の業績評価は、市民の健康や福祉の増進にどう貢献できたかではかるべきです。

そこでまず健康福祉局長にうかがいます。本市がこれまで病院事業に公営企業法を全部適用してこなかった理由は何か。今回の提案は、病院事業の独自性よりも、企業としての採算性が優先と判断したからですか、お答えください。

経営の効率化と公共の福祉の増進に努めた(局長)

【健康福祉局長】
これまで、地方公営企業法の財務規程等の一部適用により、経営の効率化と、病院事業の目的である公共の福祉の増進という二つの課題に対応してきた。

しかし、国の医療制度の改革や診療報酬制度のマイナス改定などの影響で、平成14年度から毎年度、赤字決算となり、平成18年度には12億円の赤字を計上するなど、大変厳しい病院運営を迫られ、平成19年度も、医師・看護師不足などにより、さらに厳しい経営状況が見込まれる。この経営状況から早急に脱却するため、より弾力的な運運営が可能となる地方公営企業法の全部適用で、職員が一丸となって経営改革に取り組み、経営の安定化を図りたい。

あわせて、小児救急など不採算でも市民ニーズが高い医療は、市立病院の役割を認識し、引き続き担う。

具体的な取り組みや一般会計の繰り入れ基準は

【山口議員】
提案では「経営の安定化をはかるために、規定の全部を適用する」とし、四点ほどその効果をあげています。経営責任が明確になる、機動的弾力的な経営が可能になる、自立性・自主性が拡大する、職員の意識改革がはかられる。どれも抽象的で精神的な効果ばかりで、何が変わるかはっきりしません。

具体的に、全部適用でなければできないことは何か示してください。また一般会計からの繰り入れなど財務上のルールは変わるのか、お答えください。

局長のもとで経営責任を明確にし、迅速な意思決定と弾力的な運用による経営改革を図る。繰り入れ基準は変わらない(局長)

【健康福祉局長】
新しい局長のもと、経営責任を明確にし、迅速な意思決定と弾力的な運用による経営改革を図る。市立病院が抱えている緊急の課題は、医師、看護師の確保で、法の全部適用により、まずは成果主義の導入による処遇改善や、若年層に着目した給与制度の改善などを図り、その人材の確保に努める。

一般会計の繰り入れ基準の考え方は、地方公営企業法はその公営企業の性質上、企業において負担することが困難な経費については一般会計で負担するものと規定されており、病院事業では不採算医療など一定の経費については基準に基づいて一般会計から繰り入れしている。

したがって、地方公営企業法の全部適用となっても、その経費負担の考え方が変わるものではないが、企業局としてより一層の経営努力を重ねていく必要がある。

市立病院の経営危機が解消できるのか

【山口議員】
さて、病院局をつくるといっても、局長は市長が任命します。病院管理者ではなく、市長の現状認識と市立病院へのビジョンこそまず問われます。

病院の経営危機の要因をどう見るか。中期経営プラン初年度である昨年は12億円の欠損、累積赤字も80億円を超えています。経営危機は、全部適用で解消できる性格のものでしょうか。低すぎる診療報酬、医師や看護師不足を招いた国の医療政策こそが経営危機の主な要因と私は考えます。

同時に、市民から選択され信頼される病院づくりの方向性を示していただきたい。それを抜きにしては、いくら新局をつくり経営責任を新たな管理者に押しつけても問題は解決しません。

市立病院の経営危機の要因はどこにあり、市民に選ばれる市立病院はどうあるべきか、市長の認識をうかがいます。

医師・看護師の欠員状況(平成19年度)

  医師 看護師
4月1日 11月1日 4月1日 11月1日
東市民病院 △3 △1 △24 △26
守山市民病院 △2 △2 0 △2
城西病院 △2 △2 △1 0
城北病院 0 1 0 △3
緑市民病院 △4 △5 △15 △10
△11 △9 △40 △41
 

全部適用での管理者(局長)の権限

  • 必要な分課の設置
  • 職員の任免・給与・勤務条件等の掌理
  • 予算原案の作成
  • 決算の調整
  • 資産の取得・管理・処分
  • 契約の締結
  • 料金・使用料・手数料等の徴収
  • 一時の借入れ
  • 労働協約の締結
  • 行政庁の許認可・免許・処分を受けること
  • 企業管理規定の制定

職員の給与は

  • 独自の給料表
  • 人事委員会勧告制度の対象外 など

市民の医療ニーズに的確に対応した医療を提供できる病院としたい(市長)

【市長】
市立病院の経営状況の現状は、平成18年度決算で約12億円の赤字決算となり、大変厳しい病院運営を迫られている。その大きな要因は、平成16年度の医師認証研修制度をはじめとする度重なる医療制度改革や診療報酬の改定に、市立病院が迅速に対応できていない面もあり、結果として医師、看護師の確保が大変厳しい状況となったことによるのではないかと考えている。

高度専門医療や救急医療などに取り組み、高度化かつ多様化する市民の医療ニーズに的確に答え、より質の高い医療を提供する市立病院整備基本計画の早期実現をはかることで市民に選ばれる市立病院になる。

市民のニーズにあわない整備基本計画に批判(意見)

【山口議員】
不採算であっても、ニーズが高い医療は市立病院で担う。不採算部門への繰り入れルールも変わらない、ということですね。

大切なことは、国の医療政策の転換です。そして市民のニーズにみあう医療サービスを、市民と共につくりあげることです。整備基本計画は市民のニーズにあわないから批判があるのです。

全部適用が経営改善・サービス向上に役立つのか否か、この先の質疑は、所管の委員会に委ねて、質問を終わります。

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