2008年2月定例会 新年度一般会計予算案に対する反対討論
江上博之議員(2008年3月19日)
日本共産党名古屋市会議員団を代表して、新年度予算議案一般会計に対する修正案、原案ともに反対する立場から討論を行います。
ワーキングプア、ネットカフェ難民とまで言われる若者を中心に非正規が、労働者の全体の三分の一以上に増え、年収が200万円以下という人も増えています。正規職員も賃金が下がり続け、サービス残業も増えています。また、高齢者は、年金が下がり続けているのに、所得税、住民税の値上げ、各種保険料値上げで老後不安が増しています。貧困と格差の拡大は、底が抜けたとまで言われる状態です。さらに、原油の高騰でガソリンが上がり、生活必需品の値上げも目白押しです。福田首相もメールマガジンで「大企業を中心として、バブル期を上回る、これまでで最高の利益」を挙げているにもかかわらず、「給与の平均は、ここ9年間連続で横ばい、もしくは減少」と認めています。
今、名古屋市政に求められているのは、このような市民の状態を踏まえ、国の悪政に抗して市民に寄り添い、貧困をなくし、格差を是正することではありませんか。
ところが、松原市長は、「企業部門が底堅く、家計部門は緩やかに改善し、物価は安定」している。そして、「雇用情勢の改善」で、個人市民税も史上最大を記録し、法人市民税も増収となっている。として市民感覚とはまったくかけ離れた認識を予算編成で示しています。しかし、個人市民税の増収には、定率減税の廃止など増税によるものが大きく、市民への負担増によるものということは示していません。また、法人市民税は、税率が下げられたことにより、バブル時に比べ減収であることは示していません。何より、予算案に対する市長提案説明には、「貧困」「格差」という表現がまったく出てきません。
これは、市長に、市民の暮らしに対する認識がないだけでなく、さらに、市予算が豊かであることを示さなければ、3年前の市長選に掲げた「4大プロジェクト」など大型プロジェクトをひたすら進めていくことができないからではないでしょうか。そして、その推進のために清須越えが始まって400年にあたる2010年を名目にしているのではありませんか。そのようにしか見えてこないのです。広小路ルネサンスがいい例です。しゃにむに2010年完成のために、市民合意もなく、進めようとしたところに市長の責任が問われているのではありませんか。このことを指摘しておきます。
それでは、具体的な予算案反対理由を挙げます。
第1に、貧困、格差をさらに広げる負担増をすすめていることです。75歳以上の高齢者に差別医療を持ち込む後期高齢者医療制度の中止、見直しを求める意見書が3月11日までに484件全国の3割の自治体から出ていることを厚生労働大臣が日本共産党議員の質問に回答しています。日本共産党を含む野党4党で廃止法案を国会に提出しています。あまりにひどい制度ということが明らかになってきたからです。それでも市長は、「必要な改革」とする姿勢をわが党の代表質問の回答で示し、現行の国民健康保険制度にある55000人の75歳以上の高齢者への保険料無料を事実上拒否しました。そして、80歳の敬老祝い品まで廃止します。市税減免制度の改悪で65歳以上をはずすなど高齢者いじめをいっそう進めています。戦後を苦労して生き抜いてきた方に、老後は安心してください、と声をかけそのための施策を進めるのが当たり前ではありませんか。
さらに、国民健康保険料の値上げです。市民は、収入が減っているのに国保料が上がっています。それでも収納率は上がっており、93%の収納率で、政令都市でも高い水準です。市民は、がんばっているのです。ところがその市民を応援するどころか、値上げ。国保会計への健診費や葬祭費・出産一時金、未納分などの一般会計からの繰り出しを30億円も削減するというのです。
一方、子育て支援で、医療費の無料化拡大といいながら保育料の値上げ。子育ての応援を徹底し、経済的負担を減らす少子化対策に逆行しています。また、まちのお店屋さんを応援するどころか食品営業許可申請手数料の値上げなど、負担増が目白押しです。
このように市民負担をさらに押し付けながら、必要な歳出の見直しは行っていません。
そこで、反対理由の第2は、原油高騰によるガソリンの値上げを何とかしてほしい、ムダな道路づくりはやめてほしいという市民の声にこたえず、道路特定財源の暫定税率廃止と一般財源化を拒否していることです。暫定税率廃止の声に対して答えるどころか、暫定税率がなくなれば200億円の歳入不足で、こんなに道路が出来なくなると宣伝し、国にも廃止しないようにと要望までしています。名古屋市政にまず必要なのは、市民の声にこたえてどうしたら物価を下げることができるのか、暮らしを良くすることができるのか、必要な道路について改めて検討することではありませんか。国に対して、10年間で59兆円を使う道路整備中期計画の半分は、高速道路や高規格道路などムダ、あるいは国民にとって必要性が大いに疑問な道路であり、計画の撤回を求めていくことです。二つ目に、今でも、国は、自らの事業量を増やし、自治体への配分を減らしています。国に対して自治体の必要な道路の財源を求めていくことです。こうすれば暫定税率を廃止しても必要な道路事業は可能です。たとえば、新年度予算案で、都市高速道路建設、その支援関連事業、地元住民が裁判まで起こして反対している池内猪高線、そして、自治体に負担させるべきでない国直轄道路事業負担金を削減するだけで、単純計算で230億円削減することができます。一方、暮らしに役立つ生活道路や幹線道路の維持補修費は27億円、橋や鉄道高架は37億円です。必要な仕事はできます。これからも市街地において幅員15m以上の道路が必要なのか、用地買収で住民を追い出しにならないか一本一本の道路建設の意義をいっそう考えて進めることです。財源問題もありますから簡単ではありませんが、その気になって考えることが大切ではありませんか。
反対理由の第3に、名古屋城本丸御殿の再建を急ぎ、民間に任せればよい「モノづくり文化交流拠点」づくりを進め、クオリティライフ城北において、多くの市民が使えない健康保険適用外の陽子線がん治療施設を20年で270億円も投入して建設しようとしていることです。苦しまないがん治療といいます。たしかに、がん治療対策の声は強いものがあります。しかし、運営費を入れると総額400億円になります。1年で20億円、ここから一人300万円年間700人の患者の治療費でまかなうという数字が出てくるのではないか、と思わせる金額です。需要見込みでも疑問が残ります。名古屋市が今行わなければならないのは、がん検診を無料にし、早期発見に力を入れ、市立病院の医師、看護師を確保し、市民が安心して医療を受けることができる体制の確立こそ急ぐべきです。
さらに、不要不急の大型開発を進めようとしています。水需要のない徳山ダムの建設だけでなく、ダムからの導水路を、長良河口堰まで利用して建設する。無駄に無駄を重ね、税金や水道料金などにしわ寄せさせるものです。
また、中部新空港の第2滑走路も西風問題、需要問題もはっきりしないのに進めていることです。
大企業の高層ビル建設を支援する名古屋駅前の中経ビルの建替えなどの優良建築物等整備事業、住民追い出しの大井町一番南地区の民間再開発事業に補助金支出することも問題です。これらの超高層ビル建設は、二酸化炭素排出量が増加し、ミッドランドスクゥエアの例では建設前後で、総量で、1.5倍になっています。超高層ビル建設は、地球環境保全という点からも問題です。
反対理由の第4は、市債残高を減らしたかのように示し、借金を市民から見えにくくしていることです。
鳴海清掃工場に続き、守山スポーツセンターを民間に設計、工事管理、建設、運営を長期に一括して任せるPFI事業を進めています。多年にわたり、責任があいまいになることも問題です。さらに、市の借金である市債残高の見かけを少なくする手法でもあります。建設費に市債を使う場合もありますが、民間資金も使い建設し、市としては、毎年分割で支払い、借金としての姿を少なくする仕掛けです。市債残高が減ったという口実にも使われているのではありませんか。陽子線がん治療施設の債務負担行為も同じような手法ではありませんか。
反対理由の第5は、不正の舞台となっている施設を借り上げ、不明朗な補助金を支出することです。名古屋市の外郭団体である「名古屋食肉公社」が、フジチクグループの中核である「愛知食肉卸売市場協同組合」(愛食)が所有する部分肉冷蔵庫「中部食肉部分肉流通センター」を借り上げ、名古屋市が、食肉公社にたいして7300万円の補助金を新たに支出します。委員会質疑では、いったい何のために部分肉冷蔵庫を借りるのかと質問しても、食肉をめぐる不正事件で有罪判決を受けた人物が委員を務めた検討委員会で決まった、としか答弁がありませんでした。
食肉公社が借り上げようとする冷蔵庫は、フジチクグループによるBSE対策事件で、輸入牛肉を国産牛の箱に詰め替えたり、空箱を並べて偽装した不正行為の現場です。刑事事件の舞台ともなった施設を、市の外郭団体が長期にわたって借り続け、多額の賃貸料を支払うことに、市民の理解は得られません。愛食は、この冷蔵庫がある場所に地方食肉卸売市場を開設した際に、愛知県などから約24億円もの融資を受けていますが、返済期限が10数年過ぎても、いまだに約13億円が未返済といわれています。食肉公社が、この愛食の冷蔵庫を借り上げ、それに市が助成するということは、名古屋市が、税金も使って愛食の借金の穴埋めをしてやるようなものではありませんか。こんな税金投入はキッパリやめるべきです。
以上、主な反対理由を述べてまいりました。日本共産党市議団は、予算の組み替え案を発表し、貧困と格差打開の提案を行っています。三つの柱からなっています。第1が、「市民への負担増は中止し、子どもも高齢者も応援します」第2に、「不要不急の大型プロジェクトのムダを削ります」第3に、「不明朗な補助金支出をやめ、議会経費を見直します」からなっています。これによって、敬老祝い金等の支給の継続や後期高齢者医療制度が実施されても所得が少ない高齢者の保険料無料制度の維持、また、保育料など公共料金値上げの中止、学童保育の運営費補助の増額は可能です。今、名古屋市政に求められるのは、国の悪政に対し市民の福祉増進に全力を尽くすことです。そのためにわが党市議団が提案した予算組み替えの実現を求め、一般会計議案の修正案、原案ともに反対する立場を表明して討論を終わります。
以上
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