2008年2月定例会 2008年度名古屋市予算案にたいする組み替え案

2008年度予算案にたいする日本共産党の組み替え案

2008年3月17日
日本共産党名古屋市会議員団

はじめに

市民の暮らしと営業は、増税や社会保障の負担増、雇用破壊に加え、原油高騰や生活必需品の値上げなどによって、「家計の底が抜ける」不安と危機にみまわれています。ところが、名古屋市の2008年度予算案は、自公政権の「構造改革」路線に追随し、市民への負担増と福祉・暮らしの切り捨てを続ける一方で、不要不急の大型プロジェクトを加速させるものとなっています。

貧困と格差拡大がすすんでいるときだからこそ、名古屋市政が「住民の福祉の増進」という地方自治体の本来の立場に立ち返るべきです。日本共産党名古屋市議団は、この見地から2008年度一般会計予算案について、下記のように組み替えることを要求します。

1.市民への負担増は中止し、子どもも高齢者も応援します

(1)保育料など公共料金の値上げは中止します

予算案には、保育料や食品営業許可申請手数料などの値上げが盛り込まれています。1年おきに繰り返される保育料の値上げは、子育て支援に逆行します。食品営業許可手数料の値上げは、原材料費の高騰などで営業が圧迫されている飲食店などに負担増の追いうちをかけるものです。

保育料、食品営業許可申請手数料のほか、建築確認等申請手数料、心身障害者扶養共済掛金の値上げは中止します。

(2)子どもの医療費は通院も中学3年生まで拡大するなど子育て支援をさらにすすめます

子どもの医療費無料制度は、入院は中学3年生まで、通院は小学6年生まで拡大されますが、さらに通院についても中学3年生まで拡大します。予算案では、学童保育にたいする助成金は拡充されていません。学童保育所の減少を食い止めるために、土曜日の午前も助成対象とし、対象学年を6年生まで広げます。

ゆきとどいた教育をすすめるために、小学2年生まで実施されている30人学級は、3年生まで拡大します。市立高校のすべての普通教室にクーラーを設置します(リース契約)。

(3)後期高齢者医療制度の中止・撤回を国に求めるとともに、保険料軽減のための新たな福祉制度をつくります

後期高齢者医療制度は、過酷な保険料取り立てや差別医療をもちこむものであり、実施が近づくにつれて怒りが広がっています。名古屋市の場合はとくに、国民健康保険料の「75歳減免」がなくなり、国保加入者だった75歳以上の高齢者約5万5千人が、新たに保険料を負担しなければならなくなります。後期高齢者医療制度の実施を中止・撤回するよう国に求めるとともに、実施する場合には新たな保険料負担が生じないよう、75歳以上の高齢者を対象にした新たな福祉制度をつくります。

満80歳の敬老祝品(2000円分の医薬品券)が廃止されますが、これは敬老の精神を投げ捨てるものであり、撤回します。

65歳以上を対象とする市民税の減免制度が、来年4月から廃止されようとしています。高齢者を狙い撃ちにした増税をやめさせます。

2.不要不急の大型プロジェクトのむだを削ります

(1)「ポスト万博」大型プロジェクトを中止・見直します

企業の産業博物館づくりを行政が肩代わりする「モノづくり文化交流拠点」、急ぐ必要のない名古屋城本丸御殿の復元など、松原市長の「ポスト万博」巨大プロジェクトが、「名古屋城開府400年」の2010年にこだわって本格的に推進されようとしています。名古屋城本丸御殿の復元工事費(129億1300万円)や「クオリティライフ21城北」における陽子線がん治療施設の整備・運営費(270億円)が、債務負担行為として計上されていますが、これは財政負担の重いツケを将来に残すものです。

「モノづくり文化交流拠点」の基本計画策定調査は中止し、名古屋城本丸御殿の復元工事の着手は見送ります。陽子線がん治療施設については、保険のきかない高額な治療費のため一部の市民しか利用できず、採算性も危惧され、市民合意もないことから、その整備は凍結します。

(2)大型開発や道路特定財源による道路建設のむだにメスをいれます

水需要がない徳山ダムの導水路建設から撤退し、一般会計からの出資は取りやめます。中部国際空港の2本目滑走路は、低迷する航空需要からも必要性はなく、建設促進期成同盟会への参加と負担金支出をやめます。

大企業の高層ビル建設を支援する葵1丁目19番地区(ヤマザキマザック)など優良建築物等整備事業や、住民を追い出す大井町1番南地区など民間再開発事業にかかる補助金支出は行いません。

道路特定財源による都市高速道路や池内猪高線など不要不急の道路建設が進められています。環境悪化につながる都市高速道路の延伸は中止し、その関連道路の建設を凍結するなど、道路建設のむだにメスを入れます。国にたいして道路特定財源の一般財源化と暫定税率の廃止を求めます。

3.不明朗な補助金支出をやめ、議会経費を見直します

予算案では、市の外郭団体である名古屋食肉公社が部分肉の冷蔵庫を借り上げるための賃借料助成(食肉流通システム強化事業助成)が創設されますが、これは、牛肉偽装事件や輸入豚肉脱税事件を起こしたフジチクグループの中核である愛知食肉卸売市場協同組合(愛食)に巨額の公的資金を投入するものにほかなりません。きわめて不明朗な支出である部分肉冷蔵庫の借り上げ助成は取りやめます。

ボートピア設置にともなう環境整備協力費は、その対象を港区内の事業に限定する必要はないことから、港まち活性化事業費は減額します。

「国民保護計画」にもとづく業務は、平時から戦争を想定した避難訓練などに市民を動員するものであり、その啓発・普及活動は取りやめます。

議会経費については、政務調査費の領収書の全面公開を求めるとともに、会派に支払われる(1議員当たり)月額55万円を50万円に削減します。また、わが党市議団が受け取りを拒否している「1日1万円の議員手当」(費用弁償)は廃止します。任期中1回の海外視察は中止します。政令指定都市で最高ランクとなっている議員報酬については10%カットを行い、現行99万円を89万円に引き下げます。

組み替え案のフレーム(一般会計)

  1. 浪費とムダを削って一般財源33億円を生み出し、公共料金の値上げを中止し、市民生活の充実をはかる施策の財源にあてました。
  2. 福祉・暮らしの財源を確保しながら財政再建をすすめるために、大型公共事業を中心にした投資的経費の削減で、市債を227億円削減しました。また、将来にツケを残す大型プロジェクトにかかわる債務負担行為を取りやめました。
歳出の減額 歳出の増額 差し引き
削減額 増加額 予算の増減額
△ 295億3千万円 30億9千万円 △ 264億3千万円
捻出される一般財源 必要となる一般財源 一般財源の増減額
△ 33億6千万円 30億9千万円 2億7千万円
市債の削減額 市債の発行額 市債の増減額
△ 227億1千万円 0円 △ 227億1千万円
国県補助金等の減額 国県補助金等の増額 国県補助金等の増減額
△ 27億8千万円 0円 △ 27億8千万円
その他 その他 その他
△ 6億6千万円 0円 △ 6億6千万円
歳入の削減
(使用料及び手数料の削減)
2億7千万円
歳入の増額
(増収となる一般財源)
0円
差し引き △2億7千万円

◎全体の一般会計予算規模
予算案 9,838億3千万円
増減額 △259億3千万円
組み替え後の予算規模 9,579億円

一般会計予算組み替え案の具体的内容 (款:項)

1、 歳出で削減すべき項目――29項目、295億3千万円

○議会のムダづかいをあらため、不要・不急の大型公共事業や大企業優遇の施策などを削減する

(単位 千円)
事項 予定額 財源内訳
一般財源 市債 国・県支出金 その他
議会費 議会費 議員報酬(10%カット) 89,487 89,487 - - -
政務調査費(月額55万円を50万円に削減) 45,000 45,000 - - -
費用弁償(廃止する) 60,000 60,000 - - -
海外視察(廃止する) 30,000 30,000 - - -
総務費 総務管理費 中部国際空港二本目滑走路建設促進期成同盟会(仮称)負担金 2,000 2,000 - - -
モノづくり文化交流拠点の基本計画策定調査 20,000 20,000 - - -
健康福祉費 公衆衛生費 クオリティライフ21城北の推進(陽子線がん治療施設の整備をやめる) 15,000 15,000 - - -
環境費 環境保全費 工業用水道会計への地盤沈下対策出資金(木曽川水系連絡導水路への支出) 13,230 13,230 - - -
環境事業費 PFI手法による鳴海工場の改築 3,811,000 216,000 3,595,000 - -
市民経済費 区役所費 住民基本台帳ネットワークシステムの運用 115,498 115,498 - - -
港まち活性化事業(昨年並みに削減) 100,000 100,000 - - -
産業費 市場及びと畜場会計支出金(食肉流通システム強化事業助成) 73,046 73,046 - - -
観光費 名古屋城本丸御殿復元工事 77,000 50,334 - 16,000 10,666
名古屋城本丸御殿復元推進イベントの実施 96,605 81,605 - - 15,000
緑政土木費 道路橋りょう費 国直轄道路事業負担金 10,000,000 - 10,000,000 - -
有料自転車駐車場整備 705,634 393,184 80,000 232,450 -
街路費 池内猪高線の道路改良 538,454 34,254 252,000 252,200 -
江川線はじめ有料道路支援関連事業 3,625,870 1,400,967 - 1,586,000 638,903
住宅都市費 都市計画費 都市高速道路建設 8,750,000 - 8,750,000 - -
住宅費 納屋橋東地区市街地再開発事業 150,000 37,500 - 112,500 -
大井町1番南地区市街地再開発事業 199,800 49,950 - 149,850 -
葵1丁目19番地区優良建築物等整備事業 249,600 63,275 - 186,325 -
名駅4丁目4番南地区優良建築物等整備事業 112,000 28,000 - 84,000 -
都心共同住宅供給事業(助成額半減) 343,700 182,025 - 161,675 -
消防費 消防費 国民保護業務 7,076 7,076 - - -
教育費 小学校費・中学校費費等 運営サポーターの配置 74,005 74,005 - - -
生涯学習費 トワイライトスクール時間延長モデル事業 17,088 17,088 - - -
体育費 PFI手法による守山スポーツセンター整備のための経費 65,686 26,686 39,000 - -
諸支出金 公営企業会計支出金 水道事業会計支出金(徳山ダム及び木曽川水系連絡導水路建設負担金の出資金) 144,000 144,000 - - -
削減額の合計 29,530,779 3,369,210 22,716,000 2,781,000 664,569

2、歳出の増額――6項目、30億9千万円

○市民のくらし・福祉・教育の切り捨てをやめ切実な市民要求を実現する

(単位 千円)
編成替えの内容 予定額 財源内訳
一般財源 市債 国・県支出金 その他
健康福祉費 老人福祉費 敬老金等の支給(満80歳の廃止をやめる) 28,000 28,000 - - -
後期高齢者医療の保険料軽減のための新たな福祉制度の創設(前年の国保料減免を維持) 660,000 660,000 - - -
子ども青少年費 子ども青少年費 子ども医療費助成制度の拡大(中3まで通院無料に) 990,000 990,000 - - -
学童保育の土曜日午前や対象学年を6年まで拡大する運営費助成 530,982 530,982 - - -
教育費 小学校費 小学3年生まで30人学級を拡大(当面常勤講師で対応) 795,000 795,000 - - -
高等学校費 市立高等学校の普通教室にすべてクーラー設置(リース) 97,000 97,000 - - -
増額の合計 3,097,472 3,097,472 - - -
(1)−(2)差し引き増減 26,433,307 271,738 22,716,000 2,781,000 664,569

3、歳入の減収――4項目、2億7千万円

○市民の負担を増やす手数料などの値上げをやめる

(単位:千円)
削減する内容 予定額
使用料及び手数料 手数料 食品営業許可申請手数料の値上げをやめる 17,257
建築確認等申請手数料の値上げをやめる 30,578
諸収入 雑入 保育所徴収金の値上げをやめる 205,872
心身障害者扶養共済の掛金の値上げをやめる 23,709
増額の合計 277,416

資料 2008年度名古屋市一般会計予算案 歳出

2008年度
予算額
前年度比較 2008年度予算額の財源内訳
特定財源 一般財源
国・県支出金 地方債 その他
1 議会費
2,521,814 △ 8,927 32 2,521,782
2 総務費
57,280,572 △ 3,938,621 5,417,713 1,451,000 710,795 49,701,064
3 健康福祉費
206,411,626 2,538,409 68,357,666 4,011,000 9,517,269 128,135,691
4 子ども青少年費
91,764,247 3,348,365 26,557,773 656,000 8,117,522 56,432,952
5 環境費
45,558,237 743,887 149,736 3,913,000 10,702,911 30,792,590
6 市民経済費
106,117,149 △ 6,498,213 346,201 589,000 65,811,544 39,870,404
7 緑政土木費
79,914,284 △ 370,394 10,699,217 23,043,000 12,207,613 33,964,454
8 住宅都市費
63,855,303 10,000,756 8,048,826 14,034,000 16,132,440 25,640,037
9 消防費
32,620,493 282,583 209,379 1,918,000 330,270 30,162,844
10 教育費
82,492,371 △ 4,898 2,533,926 4,173,000 4,248,322 71,537,123
11 公債費
147,771,466 1,434,417 4,307,000 26,528,560 116,935,906
12 諸支出金
66,925,438 184,470 10,009,000 56,916,438
13 予備費
100,000 100,000
歳出合計 983,833,000 4,843,000 122,320,437 64,494,000 154,307,278 642,711,285

 

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