名古屋港管理組合議会 2月定例会 一般質問(2008年3月26日)
さとう典生議員
名古屋港イタリア村を巡る諸問題〜建築基準法施行条例違反などについて
管理組合も違法行為を知っていて、黙認したのではないか
【さとう議員】 導入当時はPFI事業の成功例として華々しく取り上げられた、イタリア村ですが、いまや、経営危機に建築違反と満身創痍の状態です。
まず、臨海部防災区域建築条例違反などについて数点質問します。
イタリア村のある地区は臨海部防災区域に指定され、高潮への対策として、木造家屋は認められない地域です。ところが、イタリア村の店舗のほとんど(14棟)が木造建築であり、名古屋市の条例に違反していたことが判明しました。2月22日に、イタリア村から名古屋市の建築指導部監察課に申し出があり、市で調査したところ、条例に違反する建物であることが確認され、市は3月21日までに是正計画を提出するよう求めました。21日に提出された是正計画では来年2月下旬までに、新しい建物を建設して、順次、店舗を移設し、除去する計画です。
この事件の一連の報道を見て疑問に思うのは、名古屋港管理組合がなぜ木造家屋であることを見抜けなかったのかという点です。新聞報道では着工前の04秋に「名管から設計事務所に条例違反の指摘があった」「名管側は違反を指摘後、建築中に何度も現場にきていた。木造に気づかないはずがない。現場は『名管は黙認している大丈夫』と思っていた」と現場の声を紹介しています。また、イタリア村の親会社の幹部も「名管は実態が木造であることを十分認識していたはずだ」と話したとされています。少なくとも、抵当権確認のために入手した、登記簿謄本を見れば、3棟は鉄骨、14棟は木造2階建てと表示してあり、一目瞭然ではないかと思います。なぜ、その時点で認識できなかったのか、大いに疑問です。
違法と知りつつ建築したのは、イタリア村を万博に合わせて、開業するためだったと報道されています。管理組合も同様に考え、違反に目をつむったのではないかという疑問は払拭されません。そこで、おたずねします。管理組合も違法行為を知っていて、黙認したのではないか、という疑問にお答えください。
2月に名古屋市に相談するまでの管理組合の対応は
【さとう議員】 建築条例違反が明るみにでる中での、名古屋港管理組合の対応についておたずねします。先日あるところで、「 昨年9月にセラヴィから管理組合に相談があった」のではないかというようなことを聞きました。また、2月末に、私ども日本共産党の市議団に匿名で2件通報がありました。その時点で既に名古屋市には申し出があったことが後からわかる訳ですが、私どもから市の監察課へ通報しました。
こうした動きを見ると、しばらく前からこの問題は当事者の間で何らかの動きがあって、表面化して来たように思われます。新聞では「違反について、2月8日に管理組合が指摘した」と報道されています。そこでお聞きします。2月22日に名古屋市に相談に行くまでの間、管理組合はどのように対応したのか、お答えください。
経営状況の悪化について、なぜ見抜けなかったのか
【さとう議員】 この建築違反事件が表に出てくる契機になったもう一つの事件、イタリア村の経営危機について質問します。
正月過ぎに、新聞報道でイタリア村の経営危機が数々報道されました。そして、温泉建設業者から工事代金の支払いを求める裁判で、仮差し押さえ命令がだされました。仮差し押さえの対象になったのが、今回の違反建築とされている建物です。管理組合として、PFIの契約にもとづいて、これまでモニタリングを行っている中で、なぜ、この時点までイタリア村の経営危機をつかめなかったのか大変疑問です。そこでお聞きします。経営状態の悪化について、なぜ見抜けなかったのか、お答えください。
政治家の介入によるもみ消しの疑惑もある(意見)
【さとう議員】 条例違反の木造建築についてです。管理組合が設計の段階で条例違反を指摘しているわけで、だったら、なおのこと現場がどうなっているのか気に掛かると思います。本当に今年の2月まで気が付かなかったとしたら、「職務怠慢」というそしりは免れません。
先ほど話した、私どもへの内部告発の電話では「政治家が介入してもみ消した」ということも言われています。しかも、違反事件の渦中にある建築設計事務所も平成17年18年と自民党の支部に献金を行っています。まだまだ疑問が多く残ります。とても納得出来ないと言っておきます。
イタリア村PFI事業の導入経過について
名港管理組合の内部意志決定はどのように行われたのか
【さとう議員】 PFI事業導入の経過についての質問です。イタリア村のある場所では、倉庫を利用して5年間、名古屋市の市民経済局によって「アートポート」事業が行われていました。ところが、2003年10月半ばになって、事業中止の方針が説明され、11月はじめには「空き倉庫を商業施設に」という方針が管理組合議員総会で発表されました。突然といってもよい市の方針の変更でした。その会場を使用して、芸術活動を行っていた人たち対して、市民経済局は「耐震補強が必要だがお金がない」「万博や名古屋港100周年を控え、名古屋港管理組合からも魅力ある港づくりの推進が求められており、よりにぎわいづくりにつながる早急な活用が重要」と説明しました。
この経過を振り返ると、管理組合から市に対して、「商業施設を作りたいのでアートポート事業を中止してほしい」と働きかけたように思えます。方針の発表の前には管理組合内部での検討が行われ、「商業施設の建設」という意志決定が行われていると思います。そこでおたずねします。名港管理組合の内部意志決定はどのように行われたのか、についてお答えください。
方針変更に政治家の働きかけがあったのではないか
【さとう議員】 その意志決定の際、議員や業者からの働きかけが行われたのではないかという疑いが生じているので、その点を確かめたいと思います。
政治献金について調べてみました。セラヴィグループ会社や社長個人から、政治家に対して、ちょうど時期を同じくして、献金が始まり、4年間で多額の献金が行われています。2003年から2006年までの4年間に自民党県議が代表を務める自由民主党愛知県名古屋市港区第2支部が、セラヴィグループなどから692万円、同県議の資金管理団体が、当時の社長の吉留氏から330万円、合計1022万円の献金を受けています。もう少し詳しく述べますと、同支部に対して、セラヴィグループが最初に献金を開始したのが、2003年10月20日です。吉留社長から10万円の献金がされています。それまで、まったく献金はなかったのに、この月以降、毎月10万円づつ献金が行われることになります。
一方、アートポート事業の中止について、市から関係者に説明されたのが2003年10月16日です。献金が始まる4日前です。そして、管理組合議員総会が11月5日です。PFI事業の方針が説明され、翌日の新聞で報道されました。その後、PFI事業に応募して、吉留社長のセラヴィグループがイタリア村を開業することになりますが、「商業施設の建設」が発表される前、「アートポート事業中止」が公表された後、という時期に「なぜ、政治献金が始まるのか?」。皆さんはどうお考えでしょうか。
ちなみにこの県議はその半年前まで管理組合議会の議長を務めています。私はこのお金の流れをみていると「成功報酬」として献金が始まったのではないかと思います。そこで、当局にお聞きします。方針変更にさいして、外部からの働きかけ、とくに政治家の働きかけがあったのではないか。その結果として、PFI事業への立候補がセラヴィ1者になったのではないか、お答えください。
いつからどのような検討が行われ、いつ内部で意志決定したのか(再質問)
【さとう議員】 PFI事業導入の経過について、答弁がずれているので再質問します。
私の質問は「アートポート事業の中止」そして「PFI事業での商業施設」へと方針が変わっていく課程で、いつから、どのような検討が行われ、いつ管理組合の内部で意志決定が行われたのか、という点であるので、きちんと答えていただきたい。答弁を求めます。
「しっかりした会社と管理組合が評価した理由はなんだったのか
【さとう議員】 合わせて、セラヴィがPFI事業者に決まる中で、国交省所管の社団法人「中部開発センター」の機関誌でイタリア村の特集があり、管理組合が知名度のないセラヴィリゾートが応募してきたことに驚きつつ、「相手として不安視する向きもあったが、しっかりした会社であること、企画提案が優れていることを評価し」選定・契約したとある。そこでお聞きする。「しっかりした会社」と管理組合が評価した理由は何だったのか、お答えください。
民間の企画でPFI事業にして、その企業をPFI事業者にするやり方だ(意見)
【さとう議員】 「民間事業者からの倉庫活用の打診が寄せられる中で、具体性のある提案がセラヴィリゾート(株)からあった」なかで平成15年8月に方針を決定した、という答弁でした。ということは最初からセラヴィリゾートの提案を元にPFI事業を組み立てたということではないですか。それではPFI事業者をいくら公募しても、元々の提案者が構想や準備期間などで絶対に有利になります。初めから結果は見えている、事業者は決まっているわけです。
PFIは「民間からの発案も可能」とのことですから、そのようなものだという認識のようです。しかし、このようなことが一般の公共事業で行われたら「官製談合」そのものではないでしょうか。民間企業の持ち込んだ企画でPFI事業にして、随意契約でその企業をPFI事業者にする。そこが一番の大問題です。そうした中で、政治家とPFI事業者との不明朗なお金の関係も生まれるわけです。
断じてこのようなことは認めるわけには行きません。疑惑は深まる一方です。100条委員会を開いて、この問題を解明することを議長に求めます。
イタリア村PFI事業の今後の対応について
イタリア村事業継続時における、管理組合の雇用間題への対応策は
【さとう議員】 今後のあり方のなかで特に雇用問題について質問します。
イタリア村では外国人労働者への残業代未払い事件や派遣など非正規職員が多いことなど、労働問題についても指摘されています。
名古屋港を代表する、集客施設でのこのような労働基準法違反や労働者派遣法に抵触するような事態を管理組合としても、そのままにしておくわけにはいかない、と考えます。
今後、どのような形になるにしろ、今、働いている人たちの雇用が守られなければならないと考えます。PFI事業法人が新しくなる場合には現在働いている人々の雇用が打ち切られるのではないのかという不安も拡がっているように聞きます。管理組合の責任で雇用を守るべきではないかと思います。
そこでお聞きします。イタリア村事業継続時における、管理組合の雇用問題への対応策についてどう考えているのか、お答えください。
雇用が守られるよう、きちんと努力を(要望)
【さとう議員】 いろいろ答弁いただきましたが、納得できません。
雇用問題は管理組合のPFI事業のなかでの問題なので、「直接関与できない」といって傍観しているわけには行かないと思います。雇用が守られるよう、きちんと努力していただくよう求めておきます。
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2月まで気づかなかった(部長)
【総合開発担当部長】
PFI事業の本体事業ではなく付帯事業として、事業者である名古屋港イタリア村(株)の自主的監理のもと、建築された。組合は、「工作物設置等承諾申請書」の提出を受けたが、提出された申請書及び図面には「鉄骨造一部木造」と記載されており、名古屋市の条例に適合するものと判断した。登記簿謄本は、抵当権者の確認が目的であったため、特に構造についてのチュックの意識はなく、本年の2月に事業者に指摘するまで気づきませんでした。
開業時期を愛知万博にあわせたことが違法建築につながったのではないかといいますが、第一義的には事業者のコンプライアンス意識の問題です。