名古屋港管理組合議会 2月定例会 一般質問(2008年3月26日)
山口きよあき議員
PFI事業による新庁舎建設について
イタリア村でセラヴィリゾートと契約したことの責任を問う
【山口議員】 PFI手法による新庁舎の建設と運営に関する約87億円、消費税などを含むと90億円を超える契約案件が、この議会に提案されています。しかしこの間、イタリア村を始めPFIをめぐる様々な問題が表面化してきました。このまま契約して良い状況ではありません。そこでPFI事業をめぐる問題点について順次おたずねします。
いまお二人からも様々な角度から質問がありましたが、イタリア村のPFIでは管理組合による事業者の公募以前に、セラヴィ側から事業の具体的な提案があったという重要な答弁がありました。初めにセラヴィありきだったわけです。そこであらためてうかがいます。
第一にPFI事業という、契約が長期に渡る公の事業について、なぜこんなに問題が多い会社と契約したのか。イタリア村でセラヴィリゾート(セラヴィホールディングス)と契約したことの責任をどう感じているのか、うかがいたいと思います。この点での総括と反省がない限り、PFIによる新たな契約は認めがたいからです。
経営破綻を見抜けなかったのか
【山口議員】 イタリア村とセラヴィをめぐってはまず、建築偽装を見抜けなかったことの責任が問われます。そして経営破綻を見抜けなかったことの責任です。工事費未払い問題の指摘もありました。契約を結ぶとき、セラヴィは成長いちじるしい企業との認識だったという答弁も先ほどありました。
そのセラヴィリゾートは、本組合との事業契約締結後ですが、イタリア村オープン前の2004年7月にはセラヴィリゾート泉郷が山梨県で「大地の園」を開園したもののわずか3ヶ月で営業停止、このリゾート開発自体が無許可だったとの報道もあります。さらにグループ企業の居酒屋チェーン「北の家族」は2005年5月に公正取引委員会から「あたかも北海度産の食材が用いられているかのような表示をしていた」と警告を受けています。イタリア村の建築偽装以外でもこうした問題があいつぎ、万博後は入場者数が激減していたにもかかわらず、管理組合には契約どおり地代と賃料が入っていたから問題ない、としていた責任は重いのです。政治家からの紹介で業者のチェックが甘くなったと言われても仕方がありません。
従業員の不払い労働を結果的に容認した
【山口議員】 従業員の不払い労働を結果的に容認していた責任も問われます。国際的に通用する労働のルールすら守れずに、異国情緒やヨーロッパの雰囲気を演出してもむなしいではありませんか。
伊勢湾岸の自治体への責任を感じないのか
【山口議員】 なかでも私が許せないのは、セラヴィ観光汽船による伊勢湾の航路中止問題です。4月20日就航予定だった伊勢市と中部空港を結ぶ航路の、突然の中止決定は2月です。そして四日市と空港との航路からの撤退も決めました。
今朝は、この航路の燃料代2260万円もセラヴィ汽船が滞納し訴えられているとの報道もありました。
旅客ターミナルの建設に伊勢市は6億4千万円、四日市市は4億円をすでに投じてきました。伊勢市の副市長は責任をとり辞職に追い込まれましたが、両市が「セラヴィという会社を信用した理由のひとつに、名古屋港とPFI契約も結んでいたことがないとは言えません。伊勢湾の航路をめちゃくちゃにしたのは許せません。
同じ伊勢湾に港をもつ自治体に大きな打撃を与えた責任は道義的にもとりわけ重いものがあると考えますがいかがでしょうか。
新庁舎建設事業に伴う付帯事業への責任を負えるのか
【山口議員】 イタリア村での建築物偽装事件は、PFIの付帯事業(PFI契約上は管理組合には直接責任がない、民間事業者が自らの責任で行う事業)で起きた事件ですが、結果的に管理組合の責任が問われる問題になっています。契約上は無関係だと言っても、当事者としての責任から逃れることはできません。
新庁舎の建設と運営にあたってこの点はどうでしょうか。付帯事業まで責任を持つ姿勢と覚悟はできているのでしょうか。建設する庁舎ばかりでなくSPCを構成する関連企業などが経営するホテルや商業施設、分譲するマンションなどで、起こりうる様々な問題まで、管理組合が責任を問われかねません。
そこで2点うかがいます。新庁舎建設をはじめとする今度の契約では、付帯事業は何でしょうか。
PFI事業では直轄事業に比べて、関連企業が行う事業などよけいなリスクまで背負い込む危険性が高いのではありませんか、お答えください。
建築物の安全性を確保できるか
【山口議員】 建築に関しては付帯事業だけでなく本体事業に関しても、安全性への不安が消えないのがPFI事業です。PFIの方が直轄事業よりコストが安い理由は何か、と質問すると、人件費の問題は別にしておくとして「性能発注で、設計から建設まで一括発注できることが大きい」という回答です。しかし、そこが大きな問題で、仙台市でのPFIによるプールの天井落下事故問題では、事故がおきるまで設計や施工の問題点を自治体がチェックできなかったのです。イタリア村の偽装でも設計と施工が一体となって偽装に関わっていたことが明らかになりました。おまけに建築確認の会社も姉歯事件など一連の建築偽装事件に登場してきた会社だったとも言われています。
新庁舎の建設に関しては、工事施工モニタリングの実施や現場立会いなどでしっかりチェックすると先日の新庁舎問題委員会では答えていますが、それでは直轄事業とあまり変わりがないではありませんか。すべてお任せしたはずのPFI事業だけど、常に不安が付きまとうからずっと立ち会う。これではコスト削減にもなりません。直轄事業の方がよほどすっきりします。
そこでうかがいます。性能発注、一括発注というPFIの長所を活かしながら、どう安全性を確保できるのか、答えてください。また建築物の安全性を確かなものにするためにも、建築確認申請は、名古屋市に行なうべきだ、と考えるがいかがでしょうか。
市民利用施設の運営にPFIはふさわしいくない。市民県民・利用者の声をどう反映させるのか
【山口議員】 また、港湾会館のような市民利用施設の運営にPFI事業はふさわしいかどうかが問われます。
長期にわたって同一企業に指定管理者を選定することをはじめ、利用者の声が反映しにくいのです。事業のスタート地点、性能発注の段階でしか利用者、住民の声が届かず、あとはあくまで事業者の提案しだいなのです。「それは問題だ、地元の要望を施設の設備や運営にもっと反映させなさい」という議論が、先の名古屋市会でも守山スポーツセンターのPFI事業による契約をめぐる質疑で、与野党問わず交わされました。
そこでまず、市民利用施設でもある港湾会館の運営に、市民県民・利用者の声をどう反映させるのか?お答えください。
25年間、何の評価もしないのか
【山口議員】 25年もの長期にわたる指定管理者の指定も問題です。私たちは指定管理者制度そのものに問題があるという立場ですが、25年間も同一業者を管理者に指定することは、指定管理者制度の導入理由であげる競争原理すら発揮できなくなり、制度導入の趣旨と矛盾するのではありませんか。25年の指定期間中、何の評価もせず、無条件にSPCを指定管理者にするのでしょうか。
運営の安定性だけなら直営か、外郭団体の方が良い
【山口議員】 長期にわたり安定して運営するのなら直営か、外郭団体の管理の方が良いとふさわしいと考えますが、いかがでしょうか。
PFIはほんとうに安いのか
【山口議員】 PFI事業の方がほんとうに安いのか、という問題です。
PFIにすると確かに発行する公債費は増えませんが、債務負担という形で隠れ借金が増えて、結局は将来に負担を先送りすることになります。財政の硬直化という点では債務負担と公債発行では大きなちがいはありません。
今年度末の組合債残高は約1335億円、そして新年度予算案に計上している損失補償を含む債務負担行為の総額は、組合債残高を上回る約1547億円です。この数字を見る限り、PFI方式で債務負担を増やすことが、組合債の発行よりも財政上、優位だとは言いがたいのではないでしょうか。
加えて、経済の見通しがますます不透明な時代に入ります。負担を将来に先送りすればするほど新たなリスクが増える時代です。
PFIと直轄事業での金利は比較するとどうですか。変動する金利をどう予測しているのか、金利上昇の不安はないのか、うかがいます。
セラヴィグループ=イタリア村は約100億円の負債を抱えています。目の前のこの経営破綻を見てもわかるとおり、PFI事業では、新庁舎は建っても、契約した民間企業の経営状態について25年間ずっと一喜一憂しなければならないのです。よけいな心配まで背負い込むことはありません。
25年間も、今回契約しようとする企業の安定経営を名古屋港管理組合は保障できるのですか。契約企業の経営問題が新たな、そして大きなリスクになるのではありませんか。
PFI契約の白紙撤回を
【山口議員】 建設、運営、コスト、リスク どこからみてもPFI事業の優位性は疑問だらけです。イタリア村の教訓を踏まえるならば、新庁舎の建設にはPFI手法は採用すべきではありません。PFI契約は白紙に戻すべきだと考えます。いかがですか。
ひき船事業の廃止について
民間業者の経営は成り立つのか
【山口議員】 提案された議案のなかに、ひき船事業の廃止があります。ひき船、いわゆるタグボートは、水先案内人とともに、港には不可欠な存在です。名古屋港管理組合がこの事業から撤退しようとするのは寂しい限りです。港湾管理上、重要な事業から撤退しても良いのか疑問です。以下、2点かうかがいます。
まず、要求した資料を見ると確かに、管理組合が運営する「ひき船事業」は昨年度で約2億円の赤字となっています。この赤字が廃止の主な理由に思えるわけですが、それならなぜ同じ料金体系で運営している民間の業者は経営が成り立っているのでしょうか?教えてください。
管理組合が事業を廃止した後の料金体系は
【山口議員】 管理組合が撤退すると、この料金体系はどうなるのか。本事業からの撤退により、港湾で確立してきたルールが崩され、とりわけ中小業者や働く人たちにしわ寄せが生じないのでしょうか。
自由競争になるとどうなるのか。ひき船業者が、どんどん料金を値上げするのか、それとも逆に、大手の船社などからのダンピング圧力が強まり、値下げ競争になるのか、私はとくに後者のケースを心配しますが、料金表は現行通り維持されるか、お答えください。
輸入食品の安全検査体制について
コンテナに入って輸入される食品のチェック体制は
【山口議員】 中国製の冷凍餃子事件を契機に、輸入食品の安全性に対する関心が高まっています。日本はいつの間にか自民党政治のもとで、食料自給率が39%にまで落ち込んでいます。その一方で輸入食品は急増し、全国では2006年度では185万9千件、1990年と比べて3倍に増えました。ところが逆に、輸入食品の検査率は90年には17.6%だったものが2006年には10.7%に下がっています。
それもそのはず、全国の空港や港湾に配置されている食品衛生監視員はわずか334人です。
名古屋港からの(コンテナによる)輸入食品は年間で約120万トン、うち約6割が中国からの輸入です。ところが名古屋港にある国の検疫所には、わずか4人の検査職員しか配置されていません。微生物検査や食品添加物の検査は行なっていますが、残留農薬の検査は、横浜か神戸に検体を送って調べてもらっているのが実情です。名古屋港が「日本一の港」だと言うのなら、食品の安全検査体制の面でも、横浜や神戸にひけをとらない検査体制が必要ではないでしょうか。
たしかに検査は国の仕事ではありますが、名古屋港からの輸入品で万が一問題がおきたら、港の管理者として「関係ない」と済ますわけにはいかなくなります。名古屋港では、かつて輸入野菜などの「野積み」が大きな社会問題となりました。いまはコンテナという密室が問題となっているのです。円滑な物流ばかりに関心が向き、水際の安全検査体制がおろそかになっています。
そこで、名古屋港での輸入食品の検査体制はどうなっているか、まずうかがいます。
名古屋港の検査機能の強化を国に対して求めよ
【山口議員】 港湾管理者として、名古屋港検疫所の機能強化を国に対して強く求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
管理者は、2つのPFI関連企葉から政指献金を受け取っていないか(再質問)
【山口議員】 庁舎建設の契約にしぼって再度質問します。
バリューフォーマネーが30%、つまりPFIの方が従来手法よりも金額では 25年間で22億8千万円安いということですが、これは25年間の収支を現在価値に換算した机上の試算に過ぎず、年間では1億円未満の差でしかありません。金利が上昇するとさらにその差はさらに縮まります。
問題はコストとリスクをどう見るかです。イタリア村問題で明らかになったように、PFIにより管理組合が背負うリスクと失いかねない信用は、軽減されるというコストよりも、はるかに大きいと私は思います。
PFIという手法で財政負担を削減するのは本末転倒です。防災上も必要な建て替えならば、堂々と直轄事業で行うべきです。
管理組合の財政が悪化した主要な原因は、大型開発に伴う交債費がかさんだためです。過大な投資となる飛島埠頭南側の第3バースの建設をやめる方が、財政的にはよっぽどプラスです。
そしてPFI事業は、入札参加業者が少なくなる問題があります。イタリア村のいまの社長がいみじくも記者会見で述べていましたが、PFIは官も民も甘えが生じやすい、言葉を変えれば癒着が生まれやすい構造的弱点を持った制度です。イタリア村の事業が、政治家の仲介があったかどうかは別にしても、民間からの提案でスタートしたのなら、なおさらです。
一方で、談合防止のために一般競争入札をはじめとした入札制度の改善をすすめながら、それとまったく逆行するような随意契約をすすめるのがPFIという手法です。だから政治家の関与も取りざたされるような事態を引き起こすのです。公の仕事で、特定の業者に、数十年も儲けを保障する、このような仕組みはあらためるべきではないでしょうか。
そこで管理者にうかがいます。あなたはイタリア村の選定時も、そして今回の新庁舎の事業者選定時も管理者で、どちらのPFI契約でも当事者です。
まず、あなた自身、あなたの資金管理団体は、この二つのPFI関連企業からは政治献金を受け取ってはいらっしゃらないですよね。念のため、確認します。
イタリア村の一連の事件をどう受け止めたか
【山口議員】 イタリア村の一連の事件をあなたはどう受け止めたのか。その教訓を踏まえるならば、私は、新庁舎の建設はPFIではだめだ、少なくとも一者しか応募がないままでの契約は行うべきではない、と考えますが、管理者としてPFIによる契約についてどう考えているのか、お答えください。
甘えの構造への反省がないまま新たなPFI契約を結ぼうとする姿勢は問題(意見)
【山口議員】 知事、施設整備と管理運営に万全の注意を払うと言いますが、民間業者の経営まで25年間、責任がもてるのか、という問題なのです。
PFI事業は、管理組合だけで自己完結する事業ではなくなるのです。民間事業者とは厳密なルールを定めますが、事業をうまく進めようと思えば、緊密な連携も不可欠です。そこに、官民相互の甘えや癒着、政治家の介入も招くというPFI 事業の構造的弱点がある、と指摘しましたが、何の答弁もありません。
イタリア村問題は、違法建築物だけの問題ではありません。そういう認識では困ります。おかげさまで名古屋港は話題にはなりましたが、今回の一連の事件で、港の魅力向上どころか、名古屋港は大幅なイメージダウンです。
私も港のにぎわいは大切にしたいですよ。ガーデンふ頭の一体的な開発について、私は何度もこの議場で取りあげてきました。
しかし今回、事件の背景にあった甘えの構造への反省がないまま、本庁舎の建設と運営に関して、新たなPFI契約を結ぼうとするあなたの姿勢は、管理者としておおいに問題があると指摘せざるをえません。
いまなら間に合います。あらためて政治家の関与を含めたイタリア村に関する疑惑の徹底解明と、新庁舎建設のPFI契約を一旦白紙に戻して、PFIという手法にこだわることなく、あらためてコストとリスクを再検討することを強く求めて、私の質問を終わります。
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訪問者に不安を与えた責任を感じる(部長)
【総合開発担当部長】
事業者である名古屋港イタリア村(株)の自主監理のもとで建築されたはいえ、結果として名古屋港イタリア村を訪れる人々、県民・市民のみなさまに不安感を与えたことには青任を感じている。ついては、事業者が名古屋市に提出した是正計画の遵守について、専業者を指導していくことが、本組合の責務と思っている。