2008年6月定例会 議案外質問 江上博之議員(6月25日)
市街地におけるCO2排出削減の取り組みを
質問する江上議員
温暖化を促進する高層ビル建設の抑制を
【江上議員】 地球環境を守る名古屋市のまちづくりについて質問します。2010年10月、生物多様性条約第10回締約国会議、COP10が、名古屋市を主会場に開催されることが決定されました。多様な生物の生存が危機的である現在、その大きな原因となっている地球温暖化防止と一体に考え、防止策を進める絶好の機会です。特に名古屋市は220万都市です。ヒートアイランドといわれて大都市の温暖化は以前から指摘されています。温暖化防止といえば、既成の市街地、特に中心市街地のあり方が問われています。また、一方で、市街地から郊外に居住が広がり、農地など緑の減少です。その転換なくして、生物の一員である市民が安心、安全に住み続けられる町の持続的維持発展はないと思います。そこで、今回は、市街地におけるCO2排出削減と郊外における農業振興による緑を守る緑被率向上について質問します。
まず、私は、今、現時点で地球環境が危機的であるということをあらためて認識しました。
5月25日のNHKテレビでホッキョクグマの生態が放映され、生存が危機的であると報じられています。2007年9月には、27年前の1980年に比較し、北極海の氷の面積が4割も少なくなったというのです。原因は、人間が排出したCO2による温暖化と放映していました。えさとなる動物も減り、循環社会が維持できなくなったことが問題です。これは、ホッキョクグマだけでなく、地球全体に対する警鐘です。今、CO2削減はどうしても必要です。1990年比10%削減が松原市長の宣言でした。2004年には、増加傾向でした。あと2年で、目標をやり遂げなければなりません。2050年の目標は、2010年目標をやり遂げてこそ現実に説得力をもつ目標です。
環境アセスメントの活用で超高層ビル建設を抑制せよ
【江上議員】 名古屋市の市街地におけるCO2排出削減の取り組みについて聞きます。名古屋市のCO2排出の一番多い部分は、工場などによるものです。そして、1990年から増加が大きいのが、オフィス・店舗等、続いて、家庭生活、マイカーです。そこで、まず、オフィスにかかわるCO2の総排出量が多い超高層ビル建設を抑制することを求めます。
6年前の2002年9月議会で、私は、CO2排出削減の立場から質問しています。その際、トヨタ・毎日ビルの建替えで、CO2排出の総量が1.58倍になることを示し、市長にこのような建設がCO2削減に逆行するのではないか、と質問しました。市長は、エネルギー効率や地域冷暖房導入から効率が良くなることは重要だ、と述べ、建設抑制とは言いませんでした。環境アセスメントを見ると、たしかに、単位面積当たりの排出量は減っています。しかし、建物の延べ面積が大変増えるわけですから、総量が増えていることを否定はできませんでした。問題は、総量ではありませんか。これから建設する建物は、以前と比較して、CO2排出量を減らすことを条件にすることが必要ではありませんか。東京のヒートアイランド現象で、夏の最高気温が異常に高くなった原因に超高層ビルの林立が問題となっています。窓も事実上開けられませんから、冷暖房の使用が1年中となりCO2排出を大きくします。
また、地震対策でも超高層ビルは問題です。地震に強い建物が残っても、建物の中の電気、ガス、水道、下水道が機能するかどうか疑問です。地上に降りることさえ大変です。人の能力、身の丈にあった建物ではありません。
そこで、環境アセスメントによって、超高層ビル建設を抑制することを求めます。
現在、建設前に行う温室効果ガスにかかわる環境アセスメント提出の建物は、「100m以上、かつ5万平方メートル」の建物だけです。最近の建物では、納屋橋西のアクアタウン納屋橋、スパイラルタワーズ、葵一丁目のビル、大井町のビルは、100m以上あっても延べ面積が5万平方メートルないことから対象でないんです。建設されてから、地球温暖化対策計画書を届け出るだけです。市独自に、環境アセスメントの建築物に対する条件を変更し、少なくとも、高さ100m以上、「あるいは」、延べ面積5万平方メートルの建物とすべきではないでしょうか。環境局長に見解を求めます。
超高層建築物建設には補助するな
【江上議員】 名古屋市では、超高層ビル建設にかかわって多額の税金を補助しています。CO2排出を抑える市の姿勢を示すためにこのような補助を行うべきではありません。
そこで、市街地再開発や優良建築物等整備事業によって、超高層建築物建設に関連して出している補助金について、少なくとも、高さ100m以上、あるいは、延べ面積5万平方メートル以上の場合、補助しないようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。住宅都市局長に見解を求めます。
都心部へのマイカーなどの自動車流入をくいとめよ
中川区の水田
広小路の車
【江上議員】 都心部におけるマイカーや事業用車両の自動車流入をいかにとめ、都心の空洞化を止めるか、という問題でおききします。広小路ルネサンスを名古屋市が提案しています。片側2車線を1車線にする社会実験を行いたいと市長は言っていました。私は、そもそも都心部に自動車を流入させてきたことが問題であり、その抑制を求めるのであれば、思い切った施策でなければCO2削減につながらないと考えます。広小路が名古屋市にとって象徴的な街路であれば、一般の自動車の乗り入れを禁止し、歩行者と、自転車、公共交通機関、具体的には、バス、検討課題としては、世界でも始まっているLRTという速度が速い低床な市内電車だけ通行できるトランジットモールにすることが必要ではありませんか。自転車は、歩行者と分離して、環境にやさしい乗り物として利用促進すべきものです。このくらいの構えがなければ、地球温暖化防止のまちとはいえません。
そこで、カーフリデーについてです。昨年9月に行われたこの催しは、一日中、マイカーを使わない日を設けて都市環境を体験し、その変化を実感しようと始まったものです。昨年は、都心の道路を300mにわたって利用して行ったということですが、今年は、もっと大規模に、たとえば、広小路も対象に考えて行ったらどうでしょうか。総務局長に見解を求めます。
市街地にこそ環境に配慮した住宅建設を
【江上議員】 自動車の流入を抑制し、公共交通利用を増やすとなると、乗客となる町中に住む人口増が求められます。また、既成市街地の空洞化と郊外への居住地の拡大によって緑がどんどん削られています。これ以上削らないようにするためにも、町中で住めるようにすることです。市街地の例として、中区をみると最近人口は増えているようですが、やはり、小学生数は減っています。子どもさんから高齢者まで住み続けられるまち、コミュニティが大切です。
そこで、環境に配慮した住宅の整備ついて質問します。環境、コミュニティ、子育てにこだわった1棟当たり20戸から30戸単位で、3〜4階建ての住宅である循環型社会対応住宅の中心市街地での建設を求めます。名古屋市は、今年度、守山区の志段味でこの住宅を建設する予算をつけています。自然とのふれあいを楽しむ、地球にやさしい住宅地をコンセプトにしているのです。中心市街地、あるいのそのまわりで、建設することが環境に意義があるのではないでしょうか。住宅都市局長の見解を求めます。
郊外の農業振興による緑被率向上について
緑被率30%目標の実現を
【江上議員】 郊外の農業振興による緑被率向上について、まず緑被率30%目標の実現をいかに行うかという点について質問します。名古屋市は、「緑の基本計画」で、市域面積の30%を緑にするといっています。しかし、1990年に29.8%であったものが、15年たった2005年には24.8%と減り続けています。減り方が大きいのが農地です。2006年からの1年間だけみても、59ha減っています。そのうちの28haは中川区です。区画整理による宅地化の影響が大きいのではないでしょうか。一方、市の施策で増やす緑で見ると、公園用地の公有地化で、同時期で2ha増やし21億円余で買っています。しかし、緑被率に貢献している緑は、2haのうちの2割ということです。
5月に名古屋市は、国が募集した「環境モデル都市」に応募するために、「提案書」を提出しています。その中で、5年間で、緑被の減少に歯止めをかけ、25%を維持すると書いています。ところが、農地には全く触れていません。
緑被率目標を実現するには、農地をいかに残すかということではないでしょうか。特に市街化区域内の農地が減っています。緑政土木局長に見解を求めます。
農産物の価格保障と、農家の所得補償を
【江上議員】 輸入ギョーザ問題を機に、いかに、日本の食料自給率が低いか、今の世界の食料不足を考えたら、自前で農産物をつくらなければどうしようもなくなるということが市民に改めて明らかになっています。ところが、名古屋市のカロリーベースでの食料自給率は1%で、減るばかりです。
6月26日 中日新聞 朝刊
しかし、名古屋にも、コメどころがあり、みつばなど誇るべき生産地もあります。学校給食への利用をふやすなりして供給先を安定させ、農業振興費を思い切ってふやし、農産物の価格保障と、農家の所得補償を行うことを市の独自の施策として求めます。これは温暖化防止とともに、市民の食の安全、さらには、水害対策にもかかわることですから市長に見解を求めます。
今残された1600ha、市域の5%の農地をどう残すのか(再質問)
【江上議員】 CO2排出削減と緑被率の向上によって、温暖化防止への抜本的な市政転換を求めましたが、地球環境の危機を踏まえた回答とはいえません。冒頭に、北極海での氷が、27年間で、40%減少している危機を述べました。もう一つ、1990年から2005年までの15年間で、名古屋市の農地が40%減少している危機があります。ここに持ってきた「名古屋市のみどり」緑の現況調査報告書でも明らかです。緑被率の向上のためにも、食料自給率を高めるためにも、今残された1600ha、市域の5%の農地をどうしたら維持し、増やすことができるのか。あらためて市長に質問します。1600haの農地を必ず残すという決意お聞かせください。
地球環境を守る市政に
【江上議員】 中心市街地においても、郊外においても、徹底した地球環境を守る市政の実現を求めて質問を終わります。
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環境アセスの変更は考えていない(局長)
【環境局長】
大規模建築物の計画段階でのCO2排出削減は、「環境影響評価制度」のほか、「CASBEE名古屋」を活用した「建築物環境配慮制度」がある。これは、床面積2000平方メートル以上の建築物を対象とし、設備システムの高効率化、自然エネルギーの利用など省エネルギーに配慮した環境効率のよい建築物の設計を促すよう指導している。
建築後の使用段階では、「地球温暖化対策計画書」の届け出制度で、CO2の削減を進め、この制度を導入した平成16年度からの3年間で、対象となる事業所全体として約10%の温室効果ガスが削減された。対象とならない中小事業所も、業態別の「省エネ対策虎の巻」を作成し、今年度からアドバイザーによる個別訪問を行い、具体的に省エネ対策を促進している。オフィス、事務所のCO2削減は、こうした個別・具体的な草の根の取り組みを進める。
環境影響評価制度の変更は考えない。