名古屋港管理組合議会 6月定例会 一般質問(2008年6月11日)
山口きよあき議員

名古屋港イタリア村の破産をめぐる諸問題について


山口議員

「条例違反の事実をなぜ隠したのか

【山口議員】
会議の冒頭で管理者も触れられましたが、イタリア村の破産、閉鎖という事態を受けて数点、質問します。事態がここまできたことと最近の人事異動も踏まえて、答弁は専任副管理者に求めたいと思います。

イタリア村が営業停止になった大きな要因のひとつが市の建築条例違反、違法建築問題です。先の3月定例会で、わが党のさとう典生議員が、「管理組合も条例違反を黙認していたのではないか?」との質問に対し、「今年2月までは気づかなかった」と答え、また「万博の開業時期に間に合わせるために違法と知りつつ、建築したのではないか」との問いには「事業者のコンプライアンス(法令遵守)の意識の問題」と答弁しています。

ところが名古屋港管理組合は5月7日、記者会見を開き、イタリア村オープン前、まさに条例違反の建物を建築中の2005(平成17)年1月段階で、条例違反を認識していたが適切な措置を取らなかったことがわかったと発表しました。コンプライアンス意識が欠如していたには管理組合の方だと指摘せざるをえません。港で仕事をしていながら臨港地区に関する条例についての認識が甘かったのではありませんか。

答弁内容に誤りがあったと言われました。調査してみたら新たな事実が判明したというような言い方でしたが、関係者が急に名乗り出たわけでもありません。わかっていたのに、議会に対し、都合の悪い事実を隠していたのではありませんか。

閉鎖されたイタリア村

私たちの質問に対し、誠実に答えていただきたい。議会答弁をふくむ管理組合の一連の対応によって、少なくない市民県民が「セラヴィもひどい会社だったが、管理組合の言うことも信用できない、」と感じています。残念ながら、私もそういう構えで質問に臨んでいます。「だまされるな!ごまかされるな!」という視線を強く感じながらの質問にならざるを得ないのです。

市議会でも「不適正な会計処理」いわゆる「裏金問題」をめぐって結果的に事実に反する議会答弁をしてきたこともふくめ、市長をはじめ管理者の責任が重く問われ、処分がなされました。

あらためて、この条例違反問題での事実経過はどうなっていたのか、お答えください。問題がここまでくると、一部署の担当者にだけ責任があったでは済まされません。組織全体の問題です。専任管理者として、議会であやまった答弁があったこと、また管理組合への不信感を広げてしまった責任をとる必要があると私は考えます。はっきりした答弁を求めます。

改めて調査して、違反を認識していたことを確認(副管理者)

【副管理者】
3月定例会では、「本年2月まで違法建築であることに気がつかなかった」と答弁をした。その後、イタリア村PFI事業の開始時点まで遡って、関係書類の確認や当時本事業に係わった職員等に対するヒアリング調査等を実施した結果、「事業者は、平成16年の事業開始当初から条例違反の木造での戸建建設を決定し、名古屋市が条例違反と伝えた以後も、引き続き木造で進め、民間確認検査機関には鉄骨造又は鉄骨造一部木造で建築確認を受けていること」及び「平塔17年1月に本組合の担当部署が、事業者が条例違反の木造で事業が進行していくことを認識したが、適切な措置を執らなかったこと」が新たに判明した。これは、本年5月7日に記者会見にて詳細に公表したが、議員には、本定例会にて訂正して、報告します。

本組合に建築許可の権限はないが、木造で建築が進められていることを一部の職員が知っていたにもかかわらず、条例違反の解消を事業者に強く注意喚起できなかったことは、極めて不適切であった。このことは、一部署だけの問題ではなく、組織として内部統制がしっかりと機能しなかったことが大きな要因であったと痛感している。

全職員に法令遵守を改めて徹底させるとともに、内部統制の確率や倫理の高揚などに向けた研修の強化等を実施することが信頼回復への責務と考える。

いずれにしましても、本PFI事業が破綻した諸問題を精査し、事業再開に向けた検証を行ったうえで、新事業者による早期再開を図ることが、県民・市民の信頼を得るための最善の方策と考えております。そのため、破産管財人と協議を進め、さる6月9日に本組合と破産管財人とで基本的考え方について合意をし、7月中を目途に、今後の方針・条件を決定し、提示していくことを公表した。

固定資産税の滞納をどうするのか

【山口議員】
私は3月定例会で、イタリア村=セラヴィリゾートによる数々の不法無法行為を指摘しました。建築偽装問題、強引なリゾート開発と経営破綻、労働者の不払い残業や未払い賃金、建築や燃料関係の業者へも数々の未払い、伊勢湾の航路中止問題などあきれるばかりです。企業としての社会的責任についての認識がまったくといってよいほどなく、どうして管理組合があんな会社をパートナーに選んだのか、管理組合の見識が厳しく問われます。

3月議会後、新たに判明してきたのが、大きく報道された税金滞納問題です。名古屋港イタリア村が、名古屋市への固定資産税約8千万円の滞納問題です。当時の田中イタリア村社長が自分で認めており、コンピューターの設定ミスと言い訳しながら、「開業した2005年度からずっと滞納してきた、滞納分を市と話し合いながら少しずつ納めている」と報道されています。市の担当者は「個別の案件には答えられない」としていますが、いったいどれだけ税金を滞納したまま破産したのでしょうか。

この税金滞納問題でも、管理組合は「コメントする立場にない」と報道されていますが、それですむ問題ではありません。公共用地を提供して行われた事業で、稼ぐだけ稼いでおきながら税金もきちんと納めていなかった。

管理組合は、滞納の実態をどう把握していたのか。経営状態のモニタリングは機能していなかったのでしょうか、名古屋市から「どうなっているのか」という相談はなかったのですか。答えてください。

関連事業で税金を滞納したままで、名古屋市からの分担金(約44億円)を当たり前のように受け取ってもらっては困ります。名古屋市に対して負い目をおったままでは、事業遂行にも支障が出るのではありませんか。今後どう対処するおつもりか、うかがいます。

納税指導をしてきた(担当部長)

【総合開発担当部長】
平成19年11月に名古屋港イタリア村株式会社から滞納の事実があることの報告があり、納税するよう指導してきた。滞納の事実は大変遺憾だが、名古屋港イタリア村株式会社は、破産手続き中であり、固定資産税滞納の問題は破産手続きの中で処理される。

外国人労働者の雇用確保を

【山口議員】
深刻なのは雇用問題です。5月7日の破産宣告、イタリア村の閉鎖と同時に、従業員360人が解雇されました。360人もの一斉解雇は、愛知県下ではここ十年来で最大規模の解雇事件です。労働債権は約1億5千万円にものぼります。関連する数十店のテナントショップのことも考えると、とんでもない規模の事件です。そういう認識をまずしっかり持っていただきたい。

今日は外国人労働者の雇用問題にどう対処するのかにしぼってうかがいます。解雇された従業員の中にはイタリア人をはじめ約20名の外国人がふくまれています。この件では大阪にあるイタリア領事館も大変心配していると聞きました。ほっておけば愛知県・名古屋市そして名古屋港の国際的な信用失墜、イメージダウンに直結する事態です。

イタリアから働きに来たある調理士は「名古屋港管理組合が関係した職場だから安心だと誘われた」また別の方は「役所と15年間の契約がある安定した職場だから大丈夫と誘われた」そうです。多くの労働者をイタリアで集めてきた方は「会社からは、とにかく人を集めろ、就労ビザでなくても観光ビザでも何でもいい。あとで何とかなる」と言われたそうです。一企業の解雇問題として片付けてもらっては困ります。

いま労働組合はじめ支援者と当事者がいっしょうけんめい破産管財人とも交渉を重ねています。しかし解雇予告手当の支払い、未払い賃金の交渉、離職票の発行すらスムーズにいかない、社会保険労務士や弁護士を交えた相談交渉には通訳も必要です。イタリア語が話せる管理組合の職員はいませんか?名古屋市国際センターで依頼した通訳費用は1時間6万円です。社宅から追い出される事態に対しても、何ら公的な支援はありません。心ある民間企業から保有している賃貸マンションを数ヶ月間、無償提供していただき、何とかしのいでいるのが実態です。PFIでは解雇された外国人労働者の生活支援まで民間まかせですか。会社や管財人まかせでなく、管理組合としても住宅の確保や通訳支援など、せめて側面的な支援策を構ずる道義的な責任があると考えますが、いかがですか。

彼らへの支援を要求するには理由があります。それは神田知事や松原市長も「イタリア村というコンセプトは良かった」と繰り返し発言し、今議会や先の議員総会でも管理組合自身が「年間100万人を超える来場者のある名古屋港の憩いの場・賑わいの場であるため、本組合としても事業の再建に向けて全力で取り組んでいく」と説明してきました。イタリア村というコンセプトを大事にして事業を再開するのなら、村の魅力を支えてきたイタリア人従業員の力を借りることが必要かつ合理的です。彼らに業務再開への道筋を示し、雇用の確保を約束すべきです。答えてください。

新事業者による雇用に期待する(担当部長)

【総合開発担当部長】
公共事業としてのPFI事業という立場から道義的な責任は感じるが、外国人労働者の雇用問題は、本組合が直接関与できる立場ではない。7月中を目途に、事業のあり方も含めた今後の方針や条件を決定した後、安定した事業として早期再開を図るよう手続きを進める。新事業者による倉庫を活用した賑わいづくりというコンセプトのもとに、事業が再開される中で、新たな雇用環境が整えられる。

新事業者の信用力をどう確保する

閉鎖されたイタリア村

【山口議員】
先日、管理組合は破産管財人と、名古屋港イタリア村の早期再開についての基本的な考え方で合意したと伝えられましたが、そのことに関してうかがいます。

基本的な考え方では、新事業者に対し「財務体質が健全で、信用力のある企業であること」を求めていますが、それだけでは足りません。セラビィでは労働基準法違反が常態化し、残業代の未払い問題などが多発し、雇用保険の加入すらいい加減だったようです。管理組合が契約を結ぶ新事業者には、労働法制の順守、労働者の権利をしっかり守れる企業であることも、あわせて明記すべきです。答えてください。

法令順守を求めていく(担当部長)

【総合開発担当部長】
新事業者に、労働法制をはじめとする法令遵守を求めることは当然であり、6月9日に公表した事業再開に向けた基本的な考え方における「信用力のある企業」という記述の中に含まれている。今後の事業者選定、事業運営においても、強く法令遵守を求めていきたい。

新事業でコンセプトがかわるのか

【山口議員】
事業のコンセプトについて、基本的な考え方からはイタリア村という文言が消えました。そして「倉庫を活用した賑わいづくりというコンセプトを承継し、現状の施設を生かした再建を目指すこと」となっています。これはどういうことでしょうか。

イタリア村の開発コンセプトは「イタリアの古き良き時代の街並みを、倉庫を活用して再現」とありましたが、倉庫さえ活用すれば何でもいいということなのですか。再就職の誘いを受けながらも業務再開を希望してがんばっているイタリア人など元従業員のみなさんやにぎわいを支えてきたテナント業者のみなさんにも、ここがはっきりしないと、今後の見通しが持てないではありませんか。コンセプトを変えるのかどうか、答えてください。

もともとコンセプトに「イタリア」はない(担当部長)

【総合開発担当部長】
「名古屋港ガーデンふ頭東地区臨港緑地整備等事業」募集時のコンセプトは「倉庫を活用した賑わいづくり」であり、当初からコンセプトは変わってない。したがって、このコンセプトのもと現状の施設を活かした事業内容であれば、「イタリア」に特定するものではない。

保証金の活用で違法建築物撤去を

【山口議員】
業務の再開への道筋をどうつけるか、管理組合の能力が試されています。早期再開に向けて「違法建築物を早期に撤去することとし、その方法については、名古屋港管理組合と破産管財人とが協議を行う」としていますが、具体的にはどうするのでしょうか。

違法建築物の撤去費用は約5千万円かかると想定されており、これが新たなスポンサー、運営企業探しにとってネックと言われてきました。一刻も早く違法状態を解消することは行政の責任ですが費用はどうするのか。管理組合と株式会社イタリア村との間で結ばれたPFI契約にもとづいて、いま管理組合には公共用地を借り受ける保証金が8千万円あります。この保証金を活用して、管理組合の責任で速やかに違法建築物を撤去することが、新たな公金の投入なしに問題を解決する有効な方法と考えますがいかがでしょうか。

破産管財人と協議して解決したい(担当部長)

【総合開発担当部長】
違法建築物は、新しい事業者が進出しやすい環境づくりのためにも、戸建建築物において営業していたテナントの協力を得つつ、早期に撤去されることが必要です。保証金の活用も1つの方法だが、現在、破産管財人と協議しているので、その中で問題解決にあたる。

イタリア村の事業スキーム(BTO、BOT、ROTによる独立採算型PFI事業)

事業の再開にあたってはPFIにこだわるな

【山口議員】
7月中に今後の方針・条件を提示していくとのことですが、ガーデン埠頭に多くのお客さんが来場する港まつり(7月21日)までには、解決のめどを立てる必要があります。

ある新聞は「再出発『年度内は困難』」と報道しました。PFIという事業手法にこだわるならば、問題解決の長期化は避けられません。PFIには自治体と企業、双方の責任の所在があいまいになるという構造的問題があることもはっきりしました。イタリア村が使ってきた倉庫は、もともと管理組合の所有する財産です。

事業の再開にあたっては、PFIにこだわることなく上屋を貸し付ける単純な事業手法も検討すべきではありませんか。答えてください。

(株)クレールがイタリア村PFI事業を引き受ける意向を表明(担当部長)

【総合開発担当部長】
破産管財人と新しい事業者が進出しやすい環境づくりのため協議を進め、違法建築物の早期撤去や現状の施設を活かした再建などについて基本合意に達し、6月9日に事業再開に向けた基本的考え方を公表した。

この中で、7月中を目途に事業手法を含めた今後の方針や条件を決定し、提示していく。なお、さる6月6日に、株式会社クレールコーポレーションがイタリア村PFI事業を引き受ける意向を表明しているが、事業の再開に向けた方針や条件が決定するのに合わせ、事業計画を提出していただき判断していく。

PFIという事業形態、事業手法を見直せ

【山口議員】
今回の問題への管理組合の対応は、PFIの問題点とともに、自治体としての統治能力が問われる事態となっています。よく民間の力を借りて開発すると言いますが、そうした手法なら、なおさら管理組合自身のプロデュース能力、企画構想力、総合調整力が重要なのです。ガーデンふ頭でも金城ふ頭でも、名古屋港の開発は民間企業の能力やノウハウを活用すると言いながら、結果的に企業の思惑に振り回され続けてきました。ガーデンふ頭や金城ふ頭での「親しまれる港づくり」は、民間の力を借りることばかり強調するまえに、管理組合自身のコンセプトをしっかり持つべきです。管理組合の作成する開発計画がもう信用されない状態になっているのではありませんか。

そこでこの問題の最後に、PFIという事業形態、事業手法への評価はいまでも変わりないのか。またこの問題で失われた管理組合への信用をどう取り戻すのか、お答えください。

PFIそのものに問題はない(担当部長)

【総合開発担当部長】
PFI事業は、民間の資金や経営能力、技術能力を活用することにより、低廉で良好な行政サービスを提供できるという、大きなメリットがあり、PFI事業という制度そのものに問題があるとは考えていない。しかし、事業開始後3年でイタリア村が破綻したことは重く受け止め、本PFI事業が破綻した原因を分析し、効果的かつ安定的な事業手法のあり方を再度検証したうえで、事業の早期再開を図っていくことが重要である。

イタリア村で働いていた労働者の雇用を最優先で行え(再質問)

【山口議員】
違法建築物の問題は、保証金という財源があるんですから、これはすぐにでも撤去できます。まずこれで事業再開への障害をクリアしていただきたい。

2点目、固定資産税の滞納については、昨年11月には把握していた、こう認める答弁でした。ここでも管理組合の対応が後手に回っています。遺憾に思っているだけでは済まないんです。

3点目、PFIへの評価はかたくなな評価でした。皆さんがすばらしいとおっしゃる制度が、なぜたった3年間で破綻したのか。会社の問題はもううんざりするほど明らかになりました。問題は皆さんの対応なんです。何であんな会社を選んだのか、外部からの働きかけの有無を含めて真剣に総括していただくとともに、やはりPFIという制度が持つ構造上の問題もあわせて検証していただきたい。

そして、3月議会の答弁について、私は専任副管理者の責任を間いました。議会答弁は、訂正して済むような軽い問題ではありません。答弁前の調査が不十分だったなら、まそういう姿勢が問題です。そして、知っていたのにあんな答弁をしたんだったら、なおさら問題です。今、管理組合は組織ぐるみで実態を隠しているのではないか、こういう厳しい批判が出ている。このことを本当に正面から受けとめていただきたいんです。

当時の担当者の処分が検討されていると報道がありましたが、担当者だけの問題ではない。あなたの責任が問われている、これを重ねて指摘したいと思います。違法建築物と知っていながら放置してきたことが、今度の破綻の直接の引き金になった。その責任をどうとるのかが問題なんです。

雇用問題についても、管理組合には権限がない、民間企業の問題だといって、まるで当事者でないかのような答弁でしたが、そのような責任逃れの姿勢が解決をおくらせ、不信を広げているんです。

2月にこの違法建築の問題が明らかになって、3月議会であれだけ議論された後に、私たちには、『名古屋港開港100年史』という分厚い冊子が配られました。そこには、その時点でイタリア村が華々しく紹介されています。

本物は重たいので持ってきませんでしたが、「同年4月2日、名古屋港イタリア村が華々しくオープンした。さらに、建物内には、名古屋市と姉妹提携を結んだトリノ市を始め、ピエモンテ州を紹介するコーナーや、日伊商工会議所、イタリア貿易振興会の展示コーナーも設けられ、伝統的なヴェネチアンガラスを100点以上展示した美術館」―どこへ行ったんでしょうか―「イタリア人による演奏とともに食事を楽しめるレストランなどが設置され、イタリアの芸術や音楽に親しむ場を提供している」と、管理組合が一生懸命やったように、この時点でも書かれています。よく恥ずかしげもなく3月議会の後にこんな記述をそのまま配るもんだと、私は本当にあきれました。

イタリア村のPFI事業は、民間の資金とノウハウを活用はしますが、あくまでも管理組合が行う公共事業で、先ほどの皆さんの答弁でいえば、管理組合が行う民間の資金とかノウハウを活用した行政サービス、それがPFIだと言いました。そこで発生した360人にも上る解雇問題をどう受けとめているのか、専任副管理者の認識をもう一度伺いたいと思います。

下請の会社で賃金未払いや倒産があれば、元請の会社が責任を持って解決に当たるのが私は世間のルールだと思います。管理組合にはイタリア村からの保証金8,000万円がある。この8,000万円は1年間の賃料の相当分です。そう考えると、3年間営業したわけですから、イタリア村からは、皆さんに少なくとも2億4,000万円が賃料収入として入ってきたことになります。管理組合は、3年間でイタリア村からどれだけの収入を得たのか、はっきり答えていただきたい。

皆さんがこれで得られた収入は、不払い残業など数々の違法状態のもとで得られた収入です。せめてこの金額の一定の部分は、イタリア村の再開と解雇された労働者を支援するために使うのが当然ではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

コンセプトについては、倉庫を活用したにぎわいづくりで変わっていないというお話でした。現状の施設を生かした再建と言うんだったら、せっかく集まった外国人労働者の皆さんの存在は、異国情緒あふれる港のにぎわいづくりに、とって、私は欠かせないと考えますが、いかがですか。

事業の再開に向けて、イタリア村で働いていた労働者の雇用を最優先で行うべきです。そのことを新事業者を選定する際の皆さんの基本方針の一つに加えるべきと考えますが、この点もはっきり答えてください。そして、7月中をめどに今後の方針・条件を決定すると言われましたが、そうすると、クレールからの提案は8月になる。事業再開はいつになるんでしょうか。

7月21日のみなと祭までには、雇用問題を含む一定の見通しが立つと考えていいのかどうか、ここをはっきり答えていただきたいと思います。数十万人の県民・市民が名古屋港に来るみなと祭で、みんながイタリア村を指差すんですよ、あれか、あれかと。耐えられますか。祭りが楽しめますか。みなと祭までに、いつまでにどうするのか、はっきりした見通しを専任副管理者に再度求めます。

事業の早期再開で、新たな労働環境を生み出すことが最も重要(副管理者)

【副管理者】
名古屋港イタリア村の破綻に伴い、多くの労働者が解雇されたことは、まことに遺憾に感じている。事業の再開に向けた基本方針の中に優先的な雇用を盛り込むことはできないが、信用力の高い新しい事業者による事業の早期再開を図ることによって、新たな労働環境を生み出すことが最も重要です。去る6月9日に、事業再開に向けた基本的な考え方を公表したが、今後は 7月中に方針・条件を決定し、早期に事業再開できるよう全力で取り組む。

なお、3年間の収入は、約2億7,000万円であり、一般会計において処理した。

イタリア村の破綻、労働者の大量解雇は管理組合も共同の責任がある(再々質問)

【山口議員】
多くの労働者が解雇されたことについて、「まことに遺憾に感じている」と答えていただきましたが、人ごとではありません。先ほどの『名古屋港百年史』では、イタリア村のにぎわいを自分たちの実績のように誇っている。ところが、その一方では、破綻の直接の要因につながった条例違反の違法建築への皆様方の関与を認めた。これが3月と違うところなんです。これはつまり、イタリア村の破綻、労働者の大量解雇に、管理組合もイタリア村株式会社とともに共同の責任がある、こういうことではないんですか。この点の認識はどうなのか、まず伺います。

基本的には事業者と労働者の問題(副管理者)

【副管理者】
労働者に対する責任の問題は、基本的には事業者と労働者の問題だというふうに考えている。我々としてできることは限られているが、できる範囲の中で対応できるものがあれば、対応したい。

3億5,000万円を活用して雇用問題解決を

【山口議員】
イタリア村から、今答弁がありましたが、賃料以外に水域使用料等々あると思いますので、3年間に2億7,000万円の収入を得たという話でした。プラス保証金が8,000万円で、合計3億5,000万円が皆さんの手元にあります。解雇された360人の労働者へ本来支払われるべき労働債権は1億5,000万円ですよ。名古屋市の税金滞納は、報道によれば、8,000万円とも1億円とも言われています。そういう未払い、滞納が残っている中で、あなた方管理組合だけは、ちゃっかりもらうものをもらっているんです。あとは権限も責任もありませんという態度で、本当に済むと思っているんですか。

この事業で管理組合に入ってきた3億5,000万円を、私はすべて使えとは言いません。それで労働者に直接給料を払いなさい、直接雇いなさいと、そんなことを言うつもりはありません。しかし、せめてその一部を使って、社宅や通訳の問題を言いましたが、労働者の救済を初めとした緊急に解決を要する問題を処理するために、この3億5,000万円を活用すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

専任副管理者、この点で、あなたは自分の処分、責任を、給料を下げるとかいう方向ではなくて、速やかな事業再開に向けて頑張ることが責任のとり方だとおっしゃいました。本当にそこで責任感と問題解決へのリーダーシップを発揮しようとするんだったら、今の2点、解雇の問題での皆さんの共同の責任を認めていただきたい。そして、皆さんだけが丸々得ている3億5,000万円というお金。ここをこの問題解決のために。そこで入れれば、公金を使わなくて済むわけです。しっかりリーダーシップをとって、問題を処理するために活用していただきたい。

特別委員会も設置されて、この問題は引き続き議論の場ができる。これ以上の質疑はその場にゆだねたいと思いますが、あなたのリーダーシップが本当に問われている問題として答弁を求めます。

親しまれる港づくりなどに、すでに使っている(副管理者)

【副管理者】
3億5,000万円は既に、いろんな名古屋港の港づくり、あるいは親しまれる港づくりの一部として活用している。

名古屋港における公害対策、環境問題と生物多様性条約締約国会議について

臨港地区における公害・環境問題の現状を認識しているのか

【山口議員】
さてイタリア村問題で傷ついた名古屋港のイメージを回復するひとつの機会が、2010年の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の愛知県名古屋市での開催です。

名古屋港水族館と藤前干潟をかかえる名古屋港エリアは生物多様性、環境問題を考える格好の舞台です。COP10に向けて国内外から大勢のみなさんがみえることでしょう。

私は先日、名古屋港水族館でウミガメの産卵監察会に娘といっしょに参加しました。一晩泊まったのですが、残念ながら、その時は産卵の瞬間には立ち会えませんでした。自然界は筋書きのないドラマ、人間の都合で動くわけではありません。でも内田館長からたっぷり2時間以上ウミガメのレクチャーを受け、いろいろと考えさせられました。

しおりには、「日本列島の海岸に、暗くて、静かで、きれいな浜辺を残すことは、ウミガメばかりでなく、われわれ日本人の生存をも保証することになるのではないでしょうか」というメッセージが書かれていました。

海岸線の埋め立て、開発が仕事だった名古屋港管理組合ですが、これからは、同じ名古屋港から、環境や生態系を守るメッセージを発信する時代が来たのです。

そこで、2010年に向けて名古屋港の環境問題を、会議開催地の海の玄関にふさわしく改善するために、この3年間、集中した取り組みを強化することを提案します。

ところが名古屋港内の水質はどうか、緑はどうか、空気はどうでしょうか。臨港地区には名古屋南部公害訴訟の被告企業が集中的に立地し、道路公害もふくめて、大気汚染はまだまだ改善されたとは言えません。二酸化炭素排出量が多い企業が集中立地しています。コンテナ扱い個数が増えるたびに大型のトレーラーが増え、大気汚染物質と地球温暖化ガスを増やし続けています。

ところが臨港地区は国の定める環境基準の目標達成除外地域とされており、管理組合も緑地管理や水質管理はするが、大気汚染の環境管理は業務外、県の責任だというのが基本姿勢です。

私はこれまで06年3月、07年3月にも名古屋港の環境問題について質問しましたが積極的な答弁はほとんど聞かれませんでした。しかし時代は環境問題への強力な取り組みを求めています。世界中から環境問題のNGOが集まってきたときに、胸をはって案内できる名古屋港になるために、県や市との連携を深めつつ名古屋港管理組合としても環境対策を抜本的に強化しようではありませんか。

そこでうかがいます。臨港地区における公害・環境問題についてどのような現状認識を持っているのか。流入するデーゼルの大型トレーラーの台数や臨港地区でのCO2排出量もはっきり数値として答えてください。

大気環境はほぼ横ばい状況、CO2排出量はわからない(室長)

【企画調整室長】
大気環境の状況は、名古屋港周辺地域において、ほぼ横ばい状況にあり、二酸化窒素(NO2)については概ね環境基準を満たしている。二酸化炭素(CO2)は、愛知県の最新の公表データによると、県全体の排出量は、平成16年度現在、約8,240万トンであり、これは基準年度の平成2年に比べ12.7%増加している。

一方、名古屋港内を走行する物流車両のうち、愛知県トラック協会海上コンテナ輸送分科会の報告によると、平成20年3月時点においてコンテナターミナルに出入する大型トレーラーの台数は、月間延べ15万台です。

なお、港内からのCO2排出量は、排出源の特定が困難であり把握していない。

2010年までの明確な削減目標・数値をもて

【山口議員】
大気汚染の改善については名古屋市の環境目標値(NO2=0.04ppm)のクリアや、CO2の明確な削減目標を持ち、2010年までにどうするのか、期限と数値を明確にした計画を立てるべきと考えますがいかがでしょうか。

愛知県、名古屋市と連携して取り組む(室長)

【企画調整室長】
組合としては、2010年に10%削減を目指した「第2次名古屋市地球温暖化防止実行計画」を始めとする関連諸施策に沿って、愛知県、名古屋市と連携して取り組む。

名古屋港にある豊かで貴重な環境資源の保存と活用を

【山口議員】
生物多様性条約締約国会議に向けて、港から地球環境を守る新たなメッセージを発信しようではありませんか。そのために藤前干潟や水族館をどう活用していくのか、市民県民からのアイデアも出しあい議論する場を設けることを提案します。

名古屋港にある豊かで貴重な環境資源をどう守り活用していくのか、ぜひ聞かせてください。

県や市及び経済界等との連携を密にし、協力したい(室長)

【企画調整室長】
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年愛知県、名古屋市で開催されることが決定し、歓迎すべきことです。今後、COP10の内容等の詳細が明らかになってくるので、愛知県や名古屋市及び経済界等との連携を密にし、協力したい。

臨港地区からのCO2排出量を明らかにせよ(再質問)

【山口議員】
大気汚染の状況はほぼ横ばいだと言われました。環境基準をクリアされているという答えがありましたが、名古屋市は環境基準よりももう一つ厳しい環境目標値を持っていますが、残念ながら一つもクリアできていないんです。そういう厳しい認識を持っていただきたい。

地球温暖化の防止に愛知県や名古屋市と連携して取り組むと言いましたが、港内、臨港地区でのCO2排出量は特定が困難で把握していない、こういう答弁でした。連携して取り組むんだったら、まず正確な現状認識が必要だと思います。しかも、県下のCO2排出量は基準年より12パーセントもふえている。10パーセント削減までは大変です。

生物の多様性を脅かす大きな要素がこの地球温暖化という問題です。先ほど紹介したウミガメの観察会では、ある中学生から、ウミガメの性別は卵の周囲の砂の温度で決まる。28.8度よりも砂の温度が高いと雌が生まれて、それより低いと雄になる、こういうふうに習ったんですが、地球が温暖化すると、みんな雌ばかり生まれてくるんじゃないんですか、こういう質問が館長さんにありました。

名古屋港管理組合として、この種の問題は、期限と目標を明確にして取り組んでいくべき課題だと思います。そこで、環境の問題では1点伺います。

県全体のCO2排出量は、約8,240万トンということでしたが、そのおよそ何割がこの臨港地区から排出されているのか。産業の比重や交通量の比重などからでも、私は推計は可能だと思いますが、この点で再度答弁を求めます。

情報収集に努めたい(副管理者)

【副管理者】
臨港地区からのCO2の排出量は、港湾活動及び港湾背後圏との貨物輸送に起因する排出構造というのが把握されていないため、現時点では有効な数値の算出は困難である。しかし今年度から国土交通省で、港湾からの温室効果ガス削減に向けた検討が始まったと聞いており、組合としても、情報収集に努めたい。

 

▲このページの先頭へ戻る