2008年6月定例会 議案質疑 さとう典生議員(6月19日)録画中継を名古屋市会サイトにて配信しております。 南陽工場事件での弁護士報酬等請求事件でこれ以上争うのはやめなさい
市の考え方は、地裁でも高裁でも否定された【さとう議員】 そこで、まず、弁護士費用の支払いを巡る争いの前提について、確認をしておきたいと思います。 新南陽工場の建設に当たり、水銀汚染があったとして、それを補填するために工事費に9億円を上乗せしたことで当時の建築局次長が、競売入札妨害罪で摘発され、また、公明党元市議が斡旋収賄罪で摘発されました。 その事件を受けて、名古屋市に損害を与えたというので、住民が本市に代わって損害賠償を求め、最高裁まで争った結果、勝訴した、という経過です。 そして、受注業者等が9億円の損害賠償と利息合計12億4700万円余を本市に支払ったわけです。 住民側からは、「そのお金は『環境のための施策』に使って欲しい』という要望がだされました。また我が党も同様の趣旨の申し入れを行いました。ところが、その後これを財源に環境の事業が行われた形跡もありません。 決算では環境雑収入として処理され、一般財源のなかにはいり、どの事業に使われたかは特定できません。 いずれにせよ、12億円余のお金が本市に入ったことは間違いありません。 そしてこのような場合、地方自治法の規定によって、住民訴訟が勝訴した場合に弁護士報酬の請求ができる規定があり、今回の請求になったわけです。 住民側は本市に賠償された12億円余の金額を元に、一審では1億2300万円余を主張、2審では6000万円を主張しました。 ところが、本市はこの金額、経済的利益を無視して、「住民訴訟の結果は抽象的な利益だ」という理由で、わずか196万円という弁護士報酬を主張しましたが、一審、二審とも本市の主張が退けられた、というのがいまの状況です。 裁判所には市の主張は受け入れられなかった、ということです。 第二審の判決では、住民側の主張も退けられており、住民側からみても不服な部分があるとは思いますが、裁判所は「経済的な利益を加味するべき」と判断をしました。妥当な判断だと思います。 しかるに、本市がその結果を受け入れられず、控訴審と同じ理由で上告受理の申請をしようとしているのはとうてい理解できません。 そこで、おたずねします。なぜ、2度も裁判所で否定された考えにこだわるのでしょうか。住宅都市局長の答弁を求めます。 住民側のがんばりで12億円余の損害賠償を得たことに負い目があるのか【さとう議員】 本来なら、本市が損害賠償の訴えを起こすべきであったと考えます。 新南陽工場事件が摘発された時点で、なぜ本市自身が損害賠償の訴えを出さなかったのでしょうか。市の幹部や市会議員が絡んだ事件ということで、ふれたくなかったのではないか、という疑問を持つのは私だけではないと思います。 しかも、損害賠償の裁判では本市は「損害はなかった」と主張して、住民側でなく、ゼネコン側を擁護するような立場を取ったのであります。 そのように名古屋市の協力がないまま、住民側ががんばって裁判に勝利して、損害賠償させたわけです。 この様な経過をみると、そうしたことに、「負い目」を感じているから、裁判所の判断である「経済的利益」に着目した、弁護士費用の算定を受け入れたくないのではないのか。すなわち住民の働きを認めようとしていないのではないのか、と思います。 そこでお聞きします。政治的な「負い目」があるから、なんとしても最高裁まで、という方針で上告をしようとしているのではないのでしょうか。市長の考えをおたずねします。 市が得た経済的利益の額は算定不能として行うべきだ(市長)【市長】 住民訴訟の制度を否定するものではありません。 最後までゼネコン側の肩を持ったことへの負い目がある(意見)【さとう議員】 特に、政治的負い目があるのではないかという指摘には、答えていただけませんでした。 損害賠償請求事件では、住民側が元市長の責任も追及していたので、市側がそのことをいやがっていたのではないかと思います。 弁護士さんからのお話では途中から名古屋市も参加していっしょに損害賠償の請求をすることも出来たそうです。ところが、最後までゼネコン側の肩を持った形になって、残念だった、ということでした。 やはり、負い目があるので弁護士費用は認めたくない、という気持ちなのでしょうか。委員会に後はお任せして、私の質問を終わります。
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最高裁判所の法的判断を仰ぎたい(局長)
【住宅都市局長】
今回の判決は、第1審に続き、本市の主張が受け入れられず、相当高額な報酬の支払を命ずる判決となった。弁護士報酬額は、日本弁護士連合会の「報酬規程」による「経済的利益の額が算定不能な場合」に基づいて算定すべきと主張してきたが、今回の判決も、認められなかった。
住民訴訟における市が得た利益と弁護士報酬額の考え方について、他の高等裁判所の判例では市と同様の考え方を採用しているが、まだ最高裁判所の判断は出ていない。
住民訴訟は、住民全体の利益のために地方公共団体の財務会計上の行為を正すものとして、住民に認められた制度であると認識しており、住民訴訟制度の趣旨を踏まえ、最高裁判所の法的判断を仰ぐ必要があると考え、上告受理の申立てをするものです。