2008年9月定例会 議案外質問 山口きよあき議員(9月19日)名古屋市の教員採用や昇任などをいまこそ、公平・公開に教員の採用、昇任問題での市長の関与と責任は【山口議員】 しかしこれは、大分だけの問題ではありません。文部科学省の調査では過半数以上の都道府県・政令市で事件後、教員の採用・昇任制度の「改善」が始まっています。現状に問題があったことは否定できず、他人事ではありません。 名古屋市でも、教員採用試験の合否結果を、議員や教員OBらに事前連絡する慣習が少なくとも20年前から続いており、松原市長もマスコミの取材に対し「そうした依頼が来ていたことは知っているが、自分が直接教えたかどうかは記憶にない。知っていて止めさせなかったのは慙愧の念に堪えない」(7.18中日)。「お礼の電話を受けたことがあった。市教委に在籍中に『合格させてくれ』と言われたことがあったが、システム上できないと断った」(7.19朝日)などと答えたことが報道されています。 そこであらためて市長にうかがいます。 「『合格させてくれ』と言われたことはあった」と報道されました。当然、あなたの周囲にも同様の働きかけがあったと考えられます。そのことを調査する考えはありませんか。 あなた自身、学校や教育委員会で勤務していた時に、採用と昇任に関して不適正な働きかけを受けたのではありませんか。だとしたら、それは具体的に、いつ、誰から、何を、どう依頼されたのか、明らかにしてください。 名古屋市の管理職への昇任制度は異常だ【山口議員】 名古屋市の「学校長任用候補者選考審査方針」によれば、校長先生になる人は「健康で高い教育的識見と経営管理の才幹を持ち、信頼と敬愛を受けるに足る教員」で原則、教頭先生に限られます。選考審査は、教育委員会教職員課だけで行い、任用者名簿を作りますが、選考結果及び名簿は公表されません。 それでは教頭先生になれるのは誰か。「教頭任用選考審査要項」によれば、年齢や教職経験などの一般的な条件の他に、「2年以上、教務主任もしくは事務局等に勤務する者、又はこれに準ずると教育長の認める者」と資格が限定されています。学校からは原則、教務主任しか推薦されません。出願は、所属長(校長)の推薦に限られており、選考審査は教職員課だけで行い、審査結果及び選考された者の名簿は公表されません。 では誰が教務主任になるのか。不思議なことに選考審査に関する方針や要綱は何もないのです。教職経験10年以上で、年齢35歳以上という資格だけです。では、誰でも教務主任になれるのか?なれません。本人は出願もできない。学校長が1校3名以内で推薦します。選考書類はその推薦書1枚、選考試験も選考基準もありません。 教頭先生になるにも、その資格条件である教務主任になるにも校長推薦が絶対条件で、自発的な出願は認めらない。実は調べてみると、このような仕組みは、名古屋市教育委員会に特有の制度のようです。教務主任が特別な地位にあるのは、全国的にほとんど例がなく、私が見つけたのは千葉市教育委員会だけです。「東の千葉、西の愛知」と言えば、ひと頃は管理教育の代名詞でした。 市の一般職では、管理職になる前に係長試験がありますが、一定の勤務年数があれば、誰でも出願できます。 教務主任が本来の役割から逸脱し、管理職登用のための特権的な地位になり、かつ校長推薦でしか任用選考も受けつけない、という本市の昇任制度は、あまりに閉鎖的かつ不透明ではありませんか。教育長。こんな仕組みが必要な教育固有の論理があるのなら聞かせて下さい。資格と意欲をもつ教員ならば誰でも、管理職への任用選考審査にチャレンジできるようにすべきです。そのために、教務主任という限定を外す、自己出願も可能にする、選考審査を形式的なものにせず、管理職にふさわしい能力を客観的に評価できる選考試験に改める、以上3点の改善を求めます。お答えください。 管理職への昇任に校長の推薦は必要で十分なもの(教育長)【教育長】 教頭任用選考審査は、審査要項に基づいて公正に行われている。審査対象者は、学校全体の教育計画の立案や、教員への指導助言・連絡調整等、教務主任の経験が重要だと考えていますが、必ずしも教務主仕のみが対象ではなく、これに準ずる者も対象としている。 また、管理職としての適性をみるために本人の仕事ぶりや実績をよく知る校長の推薦を受けることは必要であり、十分と考える。 なお、教頭任用にあたっては、教頭任用選考審査において記述と面接を行い、適性を客観的にみる資料を得るとともに、管理主事面接などを通して、ふさわしい者を選考している。 公正・公平・公開の昇任制度で信頼される学校に(意見)【山口議員】 検査や診断抜きでいくら処方箋を書いても病気は治りません。自らのことも含め、過去にさかのぼって、しっかり調べていただきたい。 とりわけ昇任制度は、まだまだ不透明です。公正・公平と言いますが、「公開」が抜けている。この点を改善するよう強く求めます。 経験豊かな臨時教員の採用で教育力の引き上げを臨時教員の処遇を改善せよ【山口議員】 今年も本市では小・中・養護学校では115人も本務(正規)教員が欠員です。教員は、昨年の市教委による調査でも、一日平均11時間21分という長時間労働が常態化しています。休職者も増加し、なかでも精神疾患による休職者数は昨年度、新たに52人、精神疾患休職者の比率は全教職員の1%をこえ、全国平均の約2倍です。多くのストレスを抱えながら、必死に働いている姿が目に浮かびます。 また学校現場では、団塊世代が退職時期を迎え、30代の中堅教員が極端に少なく、経験5年未満の若手がどっと増えた年齢構成となっており、現場を支え、若手も指導できる、経験豊かな教員が切実に求められています。 その一方で臨時教員はこの10年で倍増し、今年5月1日時点で、市立の小・中・養護学校・高校の合計で1852人、全教員数の約2割を占め、いまや臨時教員抜きには、学校現場は成り立ちません。計画性もなく、安上がりだからと、その場しのぎで、臨時教員を増やしてきた結果、どうなっているでしょうか。 例えば、臨時教員(非常勤講師)が音楽の授業を行っている小学校は105校、40%にも及びます。15の春をどう迎えるか、大切な中学3年生の担任を臨時教員(常勤講師)がまかされるケースも、複数校で生じています。でも臨時だからと、生徒会活動など子どもとふれあう教科外指導の機会は与えられず、登下校指導などの校務分掌も限られており、その分の負担は本務教員に集中します。 一口に臨時教員と言いますが、いまや少人数指導や休職補充など実に23種類、その待遇も常勤・非常勤その中でまた県費による雇用・市費による雇用とあり、同じ学校で授業を担当しているのに、給料や交通費が違います。なかでも県費と市費の差は、合理性を欠きます。例えば非常勤講師の交通費ですが、県費講師では通勤手当相当分として月額上限4万5千円なのに、市費講師は1日の上限がわずか460円、バスと地下鉄を乗り継ぐだけで赤字です。同じように週に12時間を担当する非常勤講師でも、県費では教材研究・授業準備の時間が2時間有給で保障されて授業は9時間ですが、市費では、授業準備や教材研究の保障はまったくなく、授業時間にしか報酬が払われないのです。 市費の常勤・非常勤講師の待遇について、せめて時給、交通費などは県費講師と同じ水準まで引き上げるべきではありませんか。同じ授業を担当し、同じ子どもたちと関わるのに、十分な教材研究時間も保障されない臨時教員の現状をどう認識しているのか、答弁を求めます。 いろいろな講師を配置している(教育長)【教育長】 本務教員の欠員や産休者、休職者などを補充するために常勤講師を配置し、また、目的に応じて効果的に指導を行うために非常勤講師を配置している。学校に配置された市費負担による常勤・非常勤講師の勤務条件と、県費負担の常勤・非常勤講師の勤務条件に違いがあることについては承知し、勤務条件の改善に向け努力してきた。 子どもや保護者からも、音楽専科の非常勤講師などによる指導の継続性を望む声がある一方で、毎年、いろいろな先生と出会い指導を受ける中で、人間性も含め、多くのことを学びたいという声もある。学校に必要な講師の配置は、学級数や学校の状況、教員の配置状況等に応じて年度ごとに変更するものであり、これまで配置されていた講師が、配置されないという状況もある。 1年限りの勤務では子どもとの信頼関係も築けない【山口議員】 厳しい勤務条件のなか、困難を抱えた子どもたちとようやく信頼関係を築けたと思った頃には、もう同じ学校に居られない。せめて同じ勤務校におれば、子どもたちの情報を他の先生と共有できるのに、それすら出来ません。 長期的な見通しを持った指導もできません。私の娘も小学校の6年間、毎年、音楽の先生が変わりました。年ごとに成長していく姿を見守る教員がいないのです。 すでに愛知県では認められています。いまこそ2年以上の同一校勤務、継続任用を柔軟に認めるべきです。 育児休業者の補充講師は継続任用している(教育長)【教育長】 同一校での継続勤務を(再質問)【山口議員】 「毎年いろいろな先生と出会うことで多くのことを学べる」、こんなこと言わないでほしい。なら本務教員もみんな、毎年、勤務校を変えろ、となるじゃありませんか。 子どもたちは一年ごとにリセットされるわけではありません。人事の都合で、指導の継続性を断ち切らないでください。 子どもたちとようやく信頼関係を築いた先生が、翌年の授業にその経験が活かせない、子どもたちから「先生どうせ来年は居ないでしょ」と言われる悔しさが、あなた、わかりますか。 現実に港区の小学校では、外国人児童のためにということで校長先生ががんばって、ポルトガル語が話せる教員に複数年勤務してもらったことがあります。いまや、外国人児童でなくとも、継続的な指導や特別な支援が必要な子どもたちはたくさんいます。 教育上の必要に応じて柔軟に、臨時教員の同一校勤務を認めるべきと思いますが、再度、答弁を求めます。 課題としていく(教育長)【教育長】 臨時教員の採用を促進せよ【山口議員】 この点でも既に愛知県では、常勤講師の受験年齢制限を59歳まで引き上げ、3年以上の常勤講師経験者には、一次選考試験を免除するなどの特別選考制度を導入し、2008年度では全体の採用率が20.7%なのに対し、臨時教員の採用率は40%となりました。教職経験がしっかり評価され、現場がもっとも欲しかった中堅ベテランの採用が実現しています。 そこで名古屋市でも、教職経験を正当に評価し、少なくとも一次試験の免除、受験年齢制限の撤廃など特別選考制度を拡充し、意欲と実績ある臨時教員を意識的かつ計画的に採用すべきではありませんか。 講師経験者には試験の一部免除をする「特例」を実施(教育長)【教育長】 臨時教員の待遇改善を急げ(意見)【山口議員】 採用試験の年齢制限引き上げは、県でも市でも一定の成果が出ているわけですから、特別選考制度のいっそうの改善を求めます。 教師塾による青田刈りより豊かな経験の臨時教員の正規採用を【山口議員】 養成塾の目的は、「実践的な指導力・即戦力を備えた、すぐに担任が任せられる人材の確保」とされていますが、ならば、既に即戦力の人材が、臨時教員として多数存在しています。彼らの正規採用で、塾の「目的」は一円のコストもかけずに達成できます。 教師養成塾のために、現場ではまた中堅教員の負担が増えます。そうではなく臨時教員の正規採用こそ進めるべきです。重ねて教育長に答弁を求めます。 現職教員の負担には配慮(教育長)【教育長】 教育に思い切った予算配分を(意見)【山口議員】
小中学校の本務教員数、その欠員数、および臨時教員(常勤・非常勤講師)合計人数の推移
※1 本務教員:校長・教頭・着護教諭・栄養教諭を含む。 (17) 教員一人当たりの児童・生徒(小中 全国平均と名古屋市(数))
小中学校の常勤・非常勤講師の待遇 2008年4月現在
小・中・特別支援学校の常勤・非常勤講師の種別
常勤講師と非常勤講師の職務内容
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極めて遺憾な出来事である(市長)
【市長】
大分県での教員採用等に関わる不祥事は、一連の報道で知る限りですが、児童生徒や保護者、住民などの公教育に対する信頼を著しく裏切るものであり、極めて遺憾な出来事であると思っています。
採用試験は、「公正・公平」「平等取り扱い」ということが大原則で、試験そのものの信頼性が失われるということは、あってはならないことです。
採用・昇任にかかわる不適正な働きかけの有無は、本市のシステム上、個人の恣意的な判断が入ることはあり得ない。なお、依頼を受けて、採用試験の合否結果を個別に、事前に連絡したことは、私自身、薄々知っていてこれをやめられなかったことを、大変申し訳なく、残念に思っています。 教育委員会では、採用試験の合否の結果について、郵送だけでなく、ホームページに掲載して迅速に受験者に知らせる方法を本年度より実施したと聞いています。私としては、こうした公正・公平・透明性を高める取り組みによって、採用試験に対する一層の信頼が得られることを期待して。