2008年11月定例会 議案外質問 くれまつ順子議員(11月25日)

安心してお産ができる市立病院について


くれまつ議員

医師不足のもとでも、安心してお産ができるように

【くれまつ議員】
お産をめぐっては、産科病院の閉鎖や病院統廃合があいつぎ、周産期医療センターにおいて妊婦の受け入れ拒否問題の報道が続いており、安心して子どもを産むことがますます困難になっています。こうした中で、国もようやく医学部の定員を増やすなどの対策をとり始めましたが、医師不足はすぐには解消されません。この現実をふまえて、5つの市立病院をどう安心してお産ができる病院にするか、伺います。

助産師の積極的な活用を

【くれまつ議員】
先ずは、助産師の積極的活用です。市立病院では城北病院と城西病院で、助産師による分娩が行われています。中でも城北病院では、助産師が病棟に24名配置され、医師と協力して、分娩件数は2006年の606件から2007年は745件へと増えています。今年はユニセフから母乳に力を入れていると評価され“赤ちゃんにやさしい病院”に認定されました。お産は、異常出産でなければ、ほとんど医療行為は必要ありません。城北病院では、7割が正常分娩です。分娩、出産の主役は妊婦です。妊婦がお産のし方を選び、助産師が妊婦を助け、医師は裏方で、医療介入が必要な時に備えて控えているという形で、お産に対応しています。私は、医師が助産師を信頼し、正常分娩はできるだけ助産師にまかせ、いざという時には、しっかりと医師が対応するというチームワークが城北病院では、うまくいっているのだと思います。

助産師の活躍がさらに城北病院の評判になり、お産がふえているのではないでしょうか。正常分娩は助産師を中心に行うという方法を広げていけば、医師の負担軽減にもつながります。国も今年度から院内助産所の整備のための予算を増やすなど医師不足に対応する一つの対策として助産師の活用を積極的にすすめようとしています。そこで、病院局長に伺います。

城北病院のような、助産師の力をフルに活用し、分娩に対応しているとりくみをどう評価していますか。この経験を、他の4つの市立病院にも広げていってはどうでしょうか。答弁をもとめます。

医師の待機の問題などもあり、他の病院に広げることは困難

【病院局長】
全国的には、産婦人科医師の不足対策として、正常分娩を助産師が対応する「院内助産所」を整備する医療機関など、助産師の活躍の場は広がりつつある。ただし、365日24時間産婦人科医師が待機していることが前提であり、産婦人科医に異常分娩が集中することなど、課題も多くなっている。

城北病院は「周産期医療」に特色を持った整備をすすめ、「助産師外来」の実施や、助産師による正常分娩の対応など、助産師の活躍の場を広げてきた。このことは、助産師の資質の向上をはじめ、城北病院の産婦人科領域の医療機能の向上に寄与してきた。

西部医療センター中央病院(城北病院)としては、助産師の活躍の場をさらに拡充したい。他の市立病院は、医師の負担軽減策と課題を十分に考慮し、慎重に検討する必要がある。

5つの市立病院はまず、一次医療をしっかり担うべきだ

【くれまつ議員】
安心してお産ができるためには、妊婦の異常、合併症に対応すること、赤ちゃんが未熟児などで生まれた場合の対応など妊婦と赤ちゃんへの医療、すなわち周産期医療が重要です。ハイリスク分娩に対応する医療センターとしては、「総合周産期母子医療センター」と「地域周産期母子医療センター」の2段階の機能があります。

総合周産期母子医療センターは、ハイリスク分娩や超低体重児に対する高度な治療ができるように、母体・胎児集中治療室と新生児集中治療室を備えており 複数の産科医と新生児科医が24時間体制で緊急患者を受け入れています。愛知県では、第一日赤病院が指定されています。

地域周産期母子医療センターは、産科及び小児科等を備え、新生児集中治療室を備えて、周産期に係る比較的高度な医療行為を行うことができる施設で、愛知県内には11の地域周産期センターがあり、名古屋市内には市立城北病院と昭和区にある名古屋第二赤十字病院がその機能をうけもっています。

通常分娩を中心とする産科の医療機関がまず底辺にあり、次にハイリスク分娩に一定対応できる地域周産期センターが二次機能としてあり、最後に総合周産期センターが最重篤な場合に備えた施設としてピラミッドをつくり、産科医療に対応しているのです。

ところで、愛知県は来年4月から“八事日赤”を県下で2つ目の総合周産期センターに指定することになりました。周産期の最後のセンター、ピラミッドの頂点が1つから2つにふえることは、大変心強いことです。しかし、その一方で、一次や二次を受け持つ市内の産科医療機関の減少が止まりません。昨年から今年にかけて、分娩可能な病院は29から26へ、診療所の数は42から33へと減ってしまいました。二次の地域周産期センターは、市内では城北病院一つになってしまいます。こうした中で、私は、市立病院は、この一次、二次のところをしっかりささえるのが当面の最大の課題だと考えます。

ところがいま、病院局では、城北病院を総合周産期医療センターにする計画と聞いております。総合周産期センターになるためには、最低でも2桁の医師の確保と母体集中治療室が必要となります。産科の医師が十分足りている状況であれば、地域周産期から総合周産期を目指すことも必要とは思いますが、今の産科医不足の中では、他の市立病院から城北病院に産科医を集中させないと総合周産期センターになることは難しいのではないでしょうか。結果的に分娩可能な病院をさらに減らすことになりませんか。

5つの市立病院の中だけで役割分担や集約化を考えるのではなく、名古屋市内全体の産科医療体制の中で、市立病院はどんな医療を担うのかを考えるべきと思います。市内に2つめの総合周産期医療センターができることを踏まえると、市立病院の担うべき役割は、地域周産期医療センターの機能を維持しつつ、5つの病院で通常分娩を中心にした一次医療をしっかりと担うべきと考えます。答弁をもとめます。

医師が不足しているので集約して高度医療を進めたい

【病院局長】
平成19年の名古屋市内の分娩件数は20,696件。これに対して24時間体制で高度な周産期医療を行える医療機関として、総合周産期母子医療センターが1箇所、地域周産期母子医療センターが市立城北病院を始め2箇所、愛知県から指定されているが、まだ体制は弱く、一層の充実・強化が望まれている。

市立病院整備基本計画では西部医療センター中央病院で周産期医療を充実することとしている。今後ハイリスク出産がより一層増加していくと考えられ、365日24時間の救急医療体制や、高度で専門的な診療体制の確立が必要不可欠となっている。西部医療センター中央病院でより医療機能を強化した「総合周産期母子医療センター」の整備が必要だ。市立病院整備基本計画における、産婦人科領域の選択と集中により、医師や医療機能の集約化を図らなければ、安心してお産していただける医療環境を整備していくことはできない。慢性的な産婦人科医師の不足や過酷な勤務条件を解消することと相まって図っていくことが重要と考えています。

市立病院から産科医を引き上げてセンターを作ることは疑問だ(意見)

【くれまつ議員】
西部医療センター中央病院で総合周産期母子医療センターをめざすという答弁でしたが、総合周産期のセンターには、常勤医師は最低でも10名は必要です。現在総合周産期をやっている名古屋第一日赤は15名ですが、市立病院5病院の合計で15名です。総合周産期センターを3つにしても、地域の産科医療機関が減少しては、総合周産期センターに正常分娩の人まで集中して、本来はたすべきハイリスク分娩に対応ができなくなるのではないでしょうか。愛知県の周産期医療協議会に参加しているのはこども青少年局であり、名古屋市内の医療機関の配置状況は、健康福祉局の管轄です。病院局も含めた3局でしっかり連携して取り組んでいただきたいと強く要望しておきます。

子どものいる世帯への国民健康保険の資格証明書の発行について

子どものいる100世帯には、すみやかに正規の保険証を

【くれまつ議員】
貧困と格差が広がり、国民健康保険料が払えずに、滞納する世帯が増え、「保険証のない子ども」の急増が社会問題になっています。厚生労働省が行った調査では、保険料の滞納世帯には保険証が交付されず、窓口で10割負担の資格証明書が発行された世帯は、全国で33万世帯、そのうち子どもは約3万3千人です。名古屋市は、今年保険料を平均7.5%も値上げを行いました。資格証明書の発行も昨年は672世帯から今年3月末で1084世帯へと増やし、9月の全国調査時では1381世帯です。そのうち100世帯が子どものいる世帯です。乳幼児が35人、小学生は71人、中学生は45人と合計151人のこどもがいます。

こうした保険証がないこどものいる世帯では、窓口で全額医療費を負担しなければならないために、受診抑制がおきているのではないかと大変心配されます。

せっかく、所得制限もなくすべての子どもに拡充された医療費助成制度が、親の保険料を負担する能力がないために、受けられないということは、子どもの医療費助成制度を作った主旨に反するものです。

こどものいる世帯には、保険料の滞納の有無にかかわらず、もれなく資格証明書ではなく、正規の保険証を発行し、医療費助成制度が受けられるようにすべきです。医療が必要な親も含めて、保険証をとりあげて、資格証明書を発行すべきではありません。

国民健康保険の資格証明書発行に関する政令市調査
11月28日:神戸市会議員団の調査
保険者名 世帯数 資格証明書
交付 内訳
子どもの
いる世帯
乳幼児 小学生 中学生
札幌市 287,274 12,105 826 331 554 399
仙台市 146,749 1,145 23 2 17 11
さいたま市 177,495 0 0 0 0 0
千葉市 152,165 9,546   110 704 469
川崎市 211,695 4,647 5 0 5 0
横浜市 553,633 29,250   0 2,266 1,426
新潟市 114,742 1,083 28 4 16 18
静岡市 116,754 2,417 186 37 145 110
浜松市 119,816 1,202 85 33 61 37
名古屋市 360,066 1,381 100 35 71 45
京都市 220,811 3,387 69 26 50 29
大阪市 500,930 10,818 463 135 359 223
堺市 139,976 4,168 345 105 259 188
神戸市 241,899 3,588 73 17 41 45
広島市 169,327 0 0 0 0 0
北九州市 162,388 3,994 209 70 134 106
福岡市 213,944 10,401 415 132 312 196

そこで、健康福祉局長にお尋ねします。これまで資格証明書を発行した子どものいる100世帯には、すみやかに正規の保険証を発行すべきです。今後も、こどものいる世帯には、正規の保険証を交付すべきと考えますが、答弁を求めます。

特別相談を実施している

【健康福祉局長】
資格証明書の交付は、子どものいる世帯を含め、滞納者に一方的に交付するのではなく、滞納対策や納付相談の中で特別の事情に該当する場合には資格証明書を交付しないなど、きめ細かい対応を行っている。それでも、納付資力に応じた保険料の納付が得られない世帯に対しては、資格証明書を交付している。

資格証明書の交付は納付相談の契機となっており、相互扶助の精神に基づき成り立っている国民健康保険制度の理念からも、重要なものです。

従前より、子どもが医療を受ける必要があり、かつ医療費の一時払いが困難の申し出があった場合には、個別の状況をお聴きしたうえで、緊急的な対応として、資格証明書にかえて、期限を短くした保険証の交付を行うなど柔軟に対応してきた。

10月30日に厚生労働省から、資格証明書の交付については機械的な運用を行うことなく、とくに子どものいる世帯にはきめ細かな対応を行う旨の通知があり、市では改めて資格証明書交付世帯のうち中学生以下の子どもがいる世帯に対して、特別相談を実施し、世帯の生活実態や今後の納付計画を詳しくお聞きし、そのうえで、子どもについて、短期の保険証を交付している。

子どもが安心して医療が受けられるようにせよ(要望)

【くれまつ議員】
名古屋市は特別相談という形で、医療を受ける必要が生じる前の段階で、納付の相談ができれば、こどもには短期保険証を発行するということでした。しかし、役所の敷居が高く、相談に行きづらい人が多いのが現実です。他の自治体では、無条件に、保険証の交付がされ始めました。札幌、静岡、京都、前橋の4市は通常の保険証を交付しました。本市の「なごやこども条例」には、こどもの権利として、健康な生活ができるとともに、適切な医療を提供されることをかかげています。こども条例を制定した本市だからこそ、すみやかにすべての子どもたちに保険証を発行し、医療費無料制度を使えるようにすべきです。このことをあらためて要望しておきます。

名成産業の産業廃棄物焼却施設に関する問題について

環境悪化をもたらす産廃施設は設置許可を取り消せ

【くれまつ議員】
春日井市松河戸に名成産業の産業廃棄物焼却施設が昨年10月から試運転を開始し、度重なる事故によって周辺住民にはダイオキシンなど環境悪化への不安が広がっています。昨年10月の1回目の試運転では11月に消石灰飛散事故、今年3月の2回目の試運転では鉄錆の飛散事故を起こし、その都度試運転は中止されています。そして4月には、試運転中に塩化水素や騒音、臭気が基準を超過したとして愛知県が改善命令を出し、10月までに改善報告書の提出を求めました。今年9月から10月までに3回目の試運転が行われ、愛知県の調査で再び、騒音と悪臭などが基準を超えたと新聞報道されたところです。市民が愛知県に調査結果の公表を求めていますが、まだ明らかにされていません。

改善命令が出されて、基準が守られなければ「産廃処理施設の設置許可の取り消し」という対応もありうるといわれています。県はデータが出そろった段階でそうした許可取り消しも含めた対応を検討している段階だと聞いております。施設周辺の春日井市、北区、守山区の市民から、度重なる事故で施設の安全性に疑問が出され、ダイオキシンなど環境悪化をもたらす産廃施設は設置許可を取り消してほしいとの強い声が上がっています。こうした市民の声を、愛知県にしっかりと伝えるべきと思います。私は、事故をくりかえし、改善命令が出されても、なお改善できないような施設には、施設の許可を取り消すべきと考えます。

そこで、市長にお尋ねします。本市は施設の許可時に、愛知県に対して、施設に関する十分な情報公開、許可後の監視など、生活環境の確保についての要望を行ってきました。今こそ、市長は、市民が度重なる事故でこの施設が環境を悪化させる構造的に欠陥がある施設で、施設の操業をやめてほしいと強く求めていることを愛知県に伝え、愛知県のデータの公開をもとめて、法律にもとづく厳格な対応をとるように申し入れをすべきです。答弁をもとめます。

生活環境への影響が懸念される場合には、厳正な措置を要請する(市長)

【市長】
名成産業(株)の産業廃棄物焼却施設には、これまで本市から愛知県に対して、生活環境保全上の意見を提出したり、許可された場合の当該施設の十分な監視を行うことなど厳正な審査等を行うよう数度にわたり要望してきた。これらの意見や要望を踏まえて、愛知県は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき設置許可が出されたものと考える。

その後、試運転中に2度の事故を起こし、今年4月正は維持管理基準超過で愛知県より改善命令が発せられている。今回、愛知県によって行われた行政検査の結果は、データが出そろっていないため、まだ公表されていないが、愛知県は、その結果に基づいて適正な対応が取られるものと考えている。

検査結果が公表され、生活環境への影響が懸念される場合には、本市としても、愛知県に対し厳正な措置を要請するなど、適切に対応したい。

一日も早く住民の不安をとりのぞけ(要望)

【くれまつ議員】
一日も早く住民の不安をとりのぞくように、市長から知事に意見をのべるように強く要望しておきます。

名成産業の産廃処理施設(焼却炉)の市運転に伴う、
愛知県による行政検査結果(超過した項目のみ)
2008年10月8日〜9日
項目 測定値 基準値
一酸化炭素(1時間平均) 106 100ppm以下
騒音 敷地境界西側 昼間(8:00〜19:00) 75 70db以下
夜間(22:00〜6:00) 69 60db以下
悪臭 敷地境界 臭気指数 15 13以下

12月5日現在市運転を停止中。

 

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