名古屋港管理組合議会11月定例会 一般質問 山口きよあき議員 (11月10日)

コンテナバース整備と取扱貨物量の見通しについて


山口議員

コンテナ輸送の伸びと今後の見通しは

【山口議員】
名古屋港のコンテナ貨物の推移に対応したターミナル整備についてうかがいます。

私はこの議場でも何回か、コンテナターミナル整備の優先順位について、欧州・北米航路中心の飛島ふ頭南側バースよりも、中国・韓国航路に対応する鍋田ふ頭のバース整備こそ急ぐべきだ、と管理組合の姿勢をただしてきました。先の6月定例会では、鍋田ふ頭の整備を事実上優先しようという「名古屋港の整備促進についての意見書」が全会一致で可決され、8月には国土交通省の概算要求における新規事業として、耐震強化機能を有する鍋田ふ頭コンテナターミナル第3バース整備事業が盛り込まれました。

しかしこの事業は、岸壁の水深こそ港湾計画にあった−14メートルから−12メートルに変更されたようですが、着工から完成まで7年を要し、全体事業費も264億円という大型の公共事業です。まだ政府の新年度予算案に盛り込まれるかどうかは不明朗ではありますが、この機会にあらためて二つうかがいます。

ひとつは、鍋田ふ頭の整備を急ぐ必要性についてです。

中国・アジア物流、すなわち近海航路を中心としたコンテナ輸送需要は、欧州・北米の基幹航路に比べて、その需要がどのような伸びを示し、また今後の見通しはどうでしょうか。

コンテナ船の沖待ちもあると聞きますが、鍋田ふ頭だけが極端に混雑しているのですか。また中国・韓国航路を、金城でも飛島でもなく、鍋田に集中させる理由は何か、聞かせてください。

過去5年間で1.75倍。増勢が続くと見込む

【企画調整室長】
名古屋港における中国・韓国航路の貨物取扱いは、過去5年間で1.75倍の伸びで急増し、全体に占める割合は平成19年実績で35%となり、基幹航路の割合34%を超える取扱量となっています。

厳しい経済情勢の中、今年の上半期は前年並みの取扱貨物量で、中長期的には貨物量の増勢が続くと見込んでいます。

名古屋港のコンテナターミナルは全体的に混雑しています。コンテナターミナルは利用船社と航路別に集約したほうが効率的であり、特に鍋田ふ頭では港運8社で構成する名古屋ユナイテッドコンテナターミナル(株)が逼営し、中国・韓国航路を集約した効率的な取組を進めています。

名古屋港の外国貿易コンテナ貨物取扱量の推移

TCBと鍋田ふ頭を一緒に整備するのを転換したのか

【山口議員】
もうひとつは、国がこの新規事業に取り組むに際し、クリアすべき前提条件は何もないのか、ということです。

管理組合はスーパー中枢港湾構想にこだわり、飛島ふ頭南側(TCB)の整備と一緒に鍋田ふ頭を整備したい、と要望していたのですが、それを現場の実情にあわせて方針転換したわけですが、スーパー中枢港湾構想を推進してきた国土交通省からは鍋田ふ頭の整備にあたって何も注文はなかったのですか。お答えください。

当面、増大する中国・韓国航路の鍋田ふ頭を優先する

【企画調整室長】
昨年、本組合及び地元関係者により施設整備の当面の方針として「名古屋港コンテナ機能拡充に係るロードマップ」をまとめ、増大する中国・韓国航路を優先して、鍋田ふ頭コンテナターミナル第3バースを先行整備することに合意しました。

このターミナル整備は、本港のコンテナターミナル機能強化に向けたスーパー中枢港湾構想の推進に寄与するものであり、方針転換している訳ではありません。

国からは、飛島ふ頭南側コンテナターミナルの利用促進が求められています。

飛島ふ頭南側のコンテナバースの取扱い量は


飛島ふ頭南側の大水深バース計画

【山口議員】
さて、そのTCBですが、もうすぐ二つめの−16メートル大水深バースが稼動します。日本共産党名古屋市議団は、大水深バースは二つも必要ない、過剰な公共事業だと二つめのバース建設を批判してきました。名港議会の港内視察で「世界最大のコンテナ船です」と紹介されたマースクの船は、−15メートルの飛島ふ頭に接岸しており−16メートルのTCBは使われていません。大型船のためにつくった大水深バースなのにいったいどういうことなのでしょうか。

そこで飛島ふ頭南側のコンテナバースの取り扱いコンテナ数について、当初の目標と現状、今後の目標達成の見通しはどうなっているのか。うかがいます。

先日配られた「法人の経営状況を説明する書類」にある名古屋コンテナ埠頭株式会社の事業計画概要には「名古屋港のコンテナ貨物取扱量が着実な伸びを示す中、NCBターミナルの取扱量は他のターミナルへの移行により減少傾向が続いている。さらに、本年12月に予定されている飛島頭南側の2バース目の供用開始により、より一層厳しい状況が予想される」とあります。既存のバースから飛島ふ頭南側の大水深バースに無理やりコンテナを寄せ集めないといけないような見通しでは困ると思いますが、いかがでしょうか。お答えください。

昨年は32万TEU、2バースで70万TEUを目指す

【企画調整室長】
飛島ふ頭南側コンテナターミナル第1バースは、平成17年12月に供用開始し、昨年は32万TEUを扱いました。第2バース供用後は、2バース合計で70万TEUの取扱いを目指しています。NCBコンテナターミナル始め他ターミナルからのシフトは、コンテナ船の大型化に合わせ、係船能力や効率性を求め、船社が主体的に判断してシフトを行うものです。

現在の港湾計画と港湾整備の状況はどうか

【山口議員】
さて、ここまで順調に取扱い貨物量を伸ばしてきた名古屋港ですが、アメリカ発の金融不況と円高、景気悪化の影響は、北米向けの輸出に大きなウエイトを置いてきたこの地域のものづくり産業に相当のダメージを与えています。おそらく今後数年間は、不安定な経済状況が続くものと思われますし、過度に輸出に依存した体質となっている日本経済を、外需依存から内需中心へ、輸出大企業支援からの経済政策から個人消費=国民の家計を直接支援する経済政策へと、改めて「構造改革」することがどうしても必要になってきます。

そうしたなかで、名古屋港の取扱貨物量の今後の推移と目標をどう考えていくかが重要になってきます。経済状況の変化をしっかり見据えた貨物量推計とそれに見合う適正規模の港湾整備計画が必要です。そこで数点おたずねします。

2000年(平成12年)に立てられ、2004年(平成16年)7月に改定された現在の港湾計画(港湾整備のマスタープラン)では、平成20年代前半の取扱貨物量を約1億6270万トン、コンテナを253万TEUと見込んでいましたが、すでに昨年時点で、取扱貨物量は2億1560万トン、コンテナも264万TEUと港湾計画の想定を超えています。いまはマスタープランもないまま港湾整備を進めている状態なのでしょうか。港湾計画の改訂作業はいつ行うのか。港湾計画における貨物量、コンテナ数の推計はどのような手法で行っているのか。お答えください。

現行計画で整備を進め、平成21年度末に改訂予定

【企画調整室長答弁】
現在の取扱貨物量は、港湾計画の推計値を超えていますが、港湾整備は、マスタープランである現在の港湾計画に基づき、優先性を考慮しながら、順次、事業化を進めています。現在、喫緊の課題である鍋田ふ頭、飛島ふ頭、金城ふ頭のコンテナ関連施設に係る港湾計画の一部変更に取り組んでいますが、港湾計画の改訂は、平成21年度末を目途に作業を進めています。

貨物量、コンテナ数の推計は、国内外のマクロ的な経済指標や県内総生産、製造品出荷額などの地域経済指標、また、過去の取扱貨物量の推移や、背後圏の主要企業へのアンケート及びヒアリング調査を用いて行っています。

ロードマップの推計は過大ではないのか

【山口議員】
鍋田ふ頭の整備を国に要望する際に関係団体のみなさんがまとめた「名古屋港コンテナ機能拡充に係るロードマップ」では、2013年(平成25年)のコンテナ数を、いまより50万以上も増えて320万TEU以上になる、と推計しています。基幹航路=飛島ふ頭南側で年率3%、中国・韓国航路=鍋田ふ頭で年率5%という伸びが今後5年は続くという推計です。この推計、今度は過大すぎないでしょうか。

すでにアジア〜欧米間でコンテナ航路が減便という記事がいくつか新聞に載り始めています。名古屋税関管内(東海三県+長野・静岡)では9月の輸出額は2ヶ月連続で減り、全体の4分の1を占める米国向けの輸出は前年同月比19.2%の落ち込み、欧米向け輸出も同じく18.1%の落ち込みです。

こうした経済情勢の変化を、どう受け止めているのか。今後の名古屋港における取扱貨物量を現時点ではどのように推計しているのか聞かせてください。

港湾計画の改訂に合わせ、推計を見直す

【企画調整室長】
昨年取りまとめた「名古屋港コンテナ機能拡充に係るロードマップ」は、平成18年を基準年として、近年の経済情勢や過去10年間の実績を踏まえて推計を行ったものです。名古屋港における今後の取扱貨物量の推計は、港湾計画の改訂に合わせて、最新の状況を踏まえ、推計の見直しを行います。

港湾計画改訂に臨む姿勢は(再質問)


質問する山口きよあき議員。左が神田知事(管理者)

【山口議員】
中国・韓国航路の比重が北米・欧州の基幹航路よりも高くなっているとの答弁でした。今後の経済動向は予断を許しませんが、世界経済におけるアジアの比重が高まることはまちがいないとおもいます。この変化を踏まえた港湾計画が必要です。

現行の港湾計画の想定よりもコンテナ貨物は4.3%も増えました。港湾計画で予定した飛島ふ頭南側などバースの整備はまだ途中段階ですが、予測よりも増大した大量のコンテナ貨物に、金城ふ頭の活用など現状の設備でそれなりに対応できているのです。TCBに貨物を集約した結果、他のバースの稼働率を下げたのでは、過剰な設備投資だ、との批判は免れません。

取扱貨物量とコンテナバース整備の整合性がきびしく問われる時代です。港湾計画の一部変更で予定されている、飛島ふ頭南側第3バースの水深を−16メートルへの変更はまったく必要ありません。

取扱貨物量の推計方法も、過去の実績から今後の伸びを推計する手法ではうまくいかない経済情勢です。大型公共事業にどんどん税金をつぎ込める時代でもありません。

そこでまず、来年度に迫った港湾計画の改訂に臨む姿勢をうかがいたい。

港湾計画の改訂を前にして、経済情勢が激変しています。上半期の港勢は史上最高を記録しましたが、今後、名古屋港に深刻な影響が出てくるなかでの計画改定作業が始まります。

港湾計画の改訂にあたって、これからの貨物量をどう推計していくかが、取扱貨物量にみあう港湾整備計画を立てるうえで大事なポイントになります。いまの経済情勢と名古屋港への影響をどう受け止めているのか、専任副管理者としての認識をうかがいたい。

あわせて、私は、名古屋港の安定的な発展のためには、北米向けの輸出に依存しない、輸出型大企業に過度に依存しない、バランスのとれた港湾計画にすることが重要だと考えますが、この点はどう考えているのか、答弁を求めます。

経済状況を見ながら、長期構想を具体化

【副管理者】
国において、港湾行政の指針及び個別の港湾計画を策定する際の基準となる「港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針」を年内に改訂する予定と聞いています。その中で、今後の港湾の進むべき方向として、「産業の国際競争力と国民生活を支える物流体系の構築」、「国民の安全・安心の確保への貢献」、「良好な港湾環境の形成」などの5つの施策を重点的に取り組むとしています。また、港湾における取扱貨物量は、全体としては微増、コンテナ貨物については、我が国の貿易構造がコンテナ輸送に適する高付加価値の製品が多いことから、増加すると見込まれています。

しかし、昨年の米国のサブプライムローン問題に端を発する世界金融危機は、中部地域の主要産業である自動車産業に深刻な影響を与え、先日の新聞報道では、地元自動車産業の収益の下方修正が発表されたところです。

輸送機械等の国内外の市場規模の縮小は現在のところ大きな影響として現れてはいないが、今後、物流分野への影響が徐々に出てくるものと考えています。本港としても、この状況を重く受け止め、港湾計画の改訂に際しては、このような状況と国の方針を踏まえながら、昨年3月に策定した長期構想「名古屋港の針路」にある「グローバルロジスティクスの港」、「ものづくりの港」、「環境にやさしい港」などの分野別将来イメージの具体化に向けて、取り組みます。

過大な需要予測と港湾間競争にあおられた計画はやめよ

【山口議員】
北米向けの輸出に過度に依存しないように、とたずねました。副管からは、国レベルの認識として、何度か「アジア地域」の経済発展という言葉が出てきましたが、欧州・北米という地名は出てきませんでした。そういう時代です。

港湾計画は、港湾法に基づき定められる港湾整備のマスタープランです。港湾管理者が原案をつくりますが、国がその指針を示し、国による審査もあり、場合によっては、国から計画変更を求められることもあるなど、国が強く関与する計画でもあります。

国の誘導の結果、全国の港湾整備はどうなったか、先日、行政視察で北九州市のひびきコンテナターミナルを見せてもらいましたが、コンテナヤードは空っぽ、すがるように期待したトヨタの北九州工場もいまや深刻な事態です。

過大な需要予測と港湾間競争をあおられた結果、巨大な釣り堀と化した港湾が各地に生まれましたがその典型です。この愚を繰り返してはなりません。

経済環境の悪化の影響は、名古屋港の物流現場でも深刻です。円高で輸入が増やした原材料も、メーカーはつくっても売れないから、といって引き取らず、倉庫に滞留してきている。荷主からは、港湾作業の料金を、過去にさかのぼって引き下げろと、協力要請という形で、圧力が強まっている。

景気悪化のしわ寄せが、港湾の中小業者や労働者へ押しつけられてきています。管理組合として、このような状況と真剣に向き合っていくことを強く求めておきます。

国による二つの災害予測を踏まえた防災対策について

国の災害被害予測と見直しの考えは

【山口議員】
次に国による二つの災害予測を踏まえた防災対策についてうかがいます。

国土交通省は、スーパー伊勢湾台風による被害想定を今年3月に発表しました。国土交通省中部地方整備局が中心となり、管理組合も加わっている「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会」がまとめたものです。

最悪の条件下で過去最大規模の台風が伊勢湾を直撃した場合の被害想定がセンセーショナルに報道されました。高潮の高さや浸水地域の予測などは、名古屋港の防災計画上の想定水準をはるかに越えています。名古屋港では、高潮が堤防の高さである6.5mを越え、一部では堤防が決壊する、そして港区では6万人以上が広域避難を必要とするだろうと予測しています。

また内閣府の中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門調査会」は今年5月に「中部圏・近畿圏の内陸地震に係る被害想定結果の概要」を発表しました。海洋型地震だけでなく直下型地震の被害も想定する必要があるとして、中部圏では、猿投=高浜断層帯で大規模地震が発生した場合の被害想定を、まとめたものです。そこでは伊勢湾にある613の岸壁中140の岸壁が被害を受ける、という予測数字が公表されています。

さらに9月には、国土交通省四日市港湾事務所が、東海・東南海・南海3地震が同時発生した場合の四日市港の被害シミュレーションを行いました。そこでは防潮施設の沈下と津波により、岸壁上の蔵置貨物やコンテナの流出、係留された小型船舶の流出などによる大きな被害が想定されています。

国が行ったこれらの災害被害予測を、管理組合としてどう受け止めたのか。管理組合の防災計画の想定を見直す必要はないのか。まずうかがいます。

情報収集に努める

【防災・危機管理担当部長】
名古屋港は、伊勢湾台風を想定して防災対策をとっています。「スーパー伊勢湾台風」は、学識経験者、関係行政機関で構成された「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会」の調査・研究に与る被害予測です。今後の動向も踏まえ、より詳細な内容の情報収集を行っていきます。

「直下型地震」では、岸壁での被害予測が公表されていますが、名古屋港は、耐震強化岸壁を港内の東西に分け配置し、内陸部への緊急物資の輸送ルート確保に努めています。

本組合の防災対策は、災害対策基本法に基づき、防災計画、東海地震対策実施計画、大規模地震対策基本計画及び東南海・南海地震対策実施計画により対処しています。

今後、「スーパー伊勢湾台風」に関しては同協議会の調査・研究の進捗状況、また、「直下型地震」に関しては国の動向を見極めるため、情報収集に努めます。

高潮防波堤など、耐震診断、補強・改修を国に迫れ

【山口議員】
そのうえで、私は、この国による被害想定を、名古屋港の防災対策を台風と地震による複合型災害にも耐えられるよう強化するチャンスとして、積極的に捉えるべきだと考えます。

来年は伊勢湾台風からちょうど50年です。日本最大のゼロメートル地帯を背後にもつ伊勢湾・名古屋港は、伊勢湾台風後に緊急的に整備された海岸堤防が多く、伊勢湾の海岸堤防46キロのうち61%が築後40年以上経過しています。

なかでも名古屋港の高潮防波堤は、やはり築後40年を経過して老朽化が進んでいます。すでに1989年(平成1年)には、地盤沈下や防波堤そのものの重みなどで沈み込んだ高潮防波堤の鍋田側2,450mで平均70cmの嵩上げ工事が行われています。大規模な地震による液状化などで防波堤が沈下する可能性があります。耐震性に大きな不安をかかえている施設なのです。

私はこれまで何度も、早急な耐震診断と補強工事の必要性を訴えてきましたが、管理組合からは「高潮防波堤は国が設置者だ。いま耐震診断が必要かどうか検討中とのことなので、国の対応を見守りたい」との答弁が、何年も繰り返されてきました。

しかし今回、国が自らこういう予測を立てて、災害対策の強化を言い出したのです。この機会をとらえて、国が設置した高潮防波堤について大至急、耐震診断と必要な補強・改修を行うように国に強く迫るべきではありませんか。答弁を求めます。

中部地整で調査しているので早期取りまとめを要望

【企画調整室長】
国が整備した高潮防波堤は、現在、国土交通省中部地方整備局において調査を進めていると聞いており、まだ時間を要しているようです。本組合としては引き続き調査が早期に取りまとめられるよう国に働きかけます。

高潮防波堤の診断・改修を国交省に要望せよ(再質問)

【山口議員】
国からいろいろな災害予測が出ていますが、シミュレーションもいいけれど、そんなに心配なら、まず国に責任がある高潮防波堤の耐震対策、老朽化対策こそ急ぐべきだ、と私は言いたい。いったい、いつまで調査をしているのか。

来年度予算編成に向けて、コンテナバースの整備を求めた以上の構えで、高潮防波堤の診断と改修をもっと本気で、国土交通省に要望していただきたい。これも、国土交通省出身でもある、専任副管理者に答弁を求めます。

早期の調査取りまとめを引き続き要望

【専任副管理者】
高潮防波堤における防災上の重要性は、本組合としても十分認識していますので、早期の調査の取りまとめを国土交通省中部地方整備局に引き続き要望します。

しっかりやれ(要望)

【山口議員】
高潮防波堤、「早期のとりまとめ」と答えてもらいました。おそくとも伊勢湾台風50年の来年度には、一定の前進があるものと、理解しておきます。しっかりやってください。

ガーデンふ頭(イタリア村)と金城ふ頭の開発について

未払い賃金等の労働者への支給見通しは

【山口議員】
イタリア村(ガーデンふ頭)と金城ふ頭についてうかがいます。

ガーデンふ頭東地区のイタリア村問題では今議会に、「権利の放棄と和解」が議案として提案されました。一定の債権を放棄することで、労働債権の確保に貢献したいという点や、私も6月議会で提案しましたが8千万円の保証金を活用して早期に違法建築物を撤去する、という管理組合の姿勢を、私はまず評価したいと思います。

しかし、まだはっきりさせなければいけない課題がいくつか残っています。

ひとつは雇用問題です。9月の債権者集会では、財団債権では該当者が385人にのぼるとされました。未払い賃金、未払い残業代、そして解雇予告手当が財団債権での労働債権です。その総額は約1億3千万円と報告されています。労働債権がどれだけ回収され、支給される見通しなのか。うかがいます。

労働債権のうち財団債権は按分。破産債権の見込みはない

【総合開発担当部長】
9月の財産状況報告集会の報告によると破産財団の資産は、約2億3千万円で、これに対し、財団債権の請求額が、約5億6千万円あり、労働債権のうち財団債権にあたるものは、按分による弁済になると破産管財人から聞いています。

また、労働債権のうち破産債権に当たるものは、配当の見込みはないと聞いています。

破産したイタリア村の資産と負債
(2008年9月29日の財産状況報告集会より)
項目 金額 備考
資産 231,437,576円  
負債 22,090,800,085円
及び
9,759.44ユーロ
破産債権 21,534,318,311円
及び
9,759.44ユーロ
労働債権者
57件
38,027,548円
その他債権者
194件
21,496,290,763円
及び
9,759.44ユーロ
財団債権 556,481,774円
租税債権
34件
285,059,334円
労働債権者
385件
129,994,181円
その他債権者
18件
141,428,259円
管理組合放棄分
46,399,945円
組合が有するイタリア村の債権(2008年10月)
項目 内容 金額(円) 備考
破産債権
(破産前の債権)
未納賃料等 11,995,716 届出額
配当見込みなし
違約金 79,632,000
財団債権
(破産以後の債権)
原状回復費用 約80,000,000 概算額
保証金を充当
未納賃料等 46,399,945 放棄

社会保険料の未払いはどうなる

【山口議員】
債権者からの質問に対する管財人の回答で、従業員給与から天引きしていた社会保険料(約4500万円)も社会保険事務所に未払い(ちなみに租税債権はこの滞納分をふくめ約2億8千万円とのことです)になっていることが明らかになりました。消えた年金問題が私たちの目前で発生したのです。新たな問題だと思いますので、どう対処するのか。うかがいます。

破産処理の中で対処される

【総合開発担当部長】
未払いになっていた社会保険料は詳細を把握してないが、未払い賃金等の問題は現在進められている破産処理の中で対処されると破産管財人から聞いています。

労働者の再就職の見通しと雇用確保に向けた取組は

【山口議員】
そして解雇された労働者、とりわけ外国人労働者の再就職の見通しはどうか、雇用確保に向けて管理組合はどんな努力をしてきたのか、答えてください。

直接関与できる立場にはないが、外郭団体からの委託業務に1名従事

【総合開発担当部長】
破産した名古屋港イタリア村腕の外国人労働者の再就職には、本組合が直接関与できる立場にはないが、現在、本組合外郭団体からの委託業務に1名従事している。

テナントの営業再開と補償への対応について

【山口議員】
二つ目にテナントとの関係です。違法建築物の撤去に向けて、管理組合として11社でつくるテナント会と協議していくことになります。円満、迅速な解決のためにも誠意をもって協議していくことが必要です。

イ タリア村の破綻に直接的な責任は何もないテナントのみなさんの状況をどのように認識しているのか、営業再開と十分な補償を求める声に対して、管理組合としてどう対処するつもりか、うかがいます。

新事業者への条件付けは困難

【総合開発担当部長】
現在、事業再開へ向け検討を進めている。テナント会からは、次の事業者への営業権承継について要望が出されていますが、新事業者への条件付けは困難と考えています。

銀行の債権額と融資銀行団の役割について

【山口議員】
三つ目に、東京三菱UFJ銀行など6行で構成された融銀行団の責任についてです。

PFI事業は単なる民間業者への委託ではありません。長期間に渡り公の施設の建設と管理運営をまかせるのですから、各企業がつくる特別会社と、委託元の自治体と、そして融資銀行団と、この三者が相互に責任を持ってPFI事業に深く関わることで、事業の安定性を確保することが想定されています。

しかし今回の一連の経過のなかで、銀行の姿はほとんど見えてきません。

銀行には、債権(破産債権、財団債権)がいくらあり、そのなかで権利を放棄する債権、回収不能な債権はいくらなのか。明らかにしてください。そのうえで、今回、融資銀行団はPFIで求められる役割を十分に果たしたと言えるのでしょうか。期待した役割と、実際の行動に対する評価を聞かせてください。

財団債権の中に銀行の債権はほとんど無い

【総合開発担当部長】
財産状況報告集会の報告では、債権者ごとの内訳金額は明らかにされていない。財団債権の中に銀行の債権はほとんど無く、破産債権の中には、銀行の債権が含まれると思われるが、これについては、配当の見込みは無いと聞いています。

本組合と、融資銀行団とは直接契約を結んでおり、名古屋港イタリア村(株)が事業遂行に支障をきたす状況にあると融資銀行団が判断した場合には、本組合へ通知することや事業の円滑な遂行のため協議を行うこととなっていた。平成19年3月に融資銀行団より、返済が滞っている旨の通知を受け、その後、融資銀行団と協議を行った。

事業再生の取組について

【山口議員】
先日発表された職員の処分は、違法建築物問題に限定した処分であって、イタリア村問題の総括的な責任はいまだ誰もとっていません。問題のそもそもの発端や破綻の経緯をめぐる問題については、イタリア村・セラヴィの元経営者や、関与が取りざたされた政治家をふくめ、引き続き調査を続けて全容を解明していくことが必要です。

全面的な総括はまだこれから、ということを前提にして、ガーデンふ頭東地区の再生に向けたいくつかの提案をしたいと思います。

ひとつは事業の原点に立ち戻ろうということです。もともと名古屋市が、倉庫を活用したアートポート=市民芸術村構想を展開していた場所です。ガランとした倉庫を活用した市民芸術村、アトリエとして若い芸術家に空間を提供する、また残念ながら港湾会館のホールは廃止する計画のようですが、倉庫を演劇や演奏のためのホールとして甦らせることはできないのでしょうか。

またせっかく水路や温泉施設も残っているのですから、例えば水族館の別館として再生し、ガーデンふ頭全体を自然との共生を考える空間として一体的に整備することも考えられると思います。

以上のようなプランもふくめて、いろんな構想を市民県民から募ってみてはいかがでしょうか。イタリア村を新たなにぎわい空間として再生する過程そのものを市民県民の参加で、楽しもうじゃないですか。

イタリア村のマイナスイメージがつきまとうなか、事業用地はいままでより狭く、かつ倉庫の活用という条件は残したまま、しかも景気は深刻な後退局面です。新たな民間事業者の進出を期待するだけでは、考えが甘すぎます。

事業再生の取り組みは、対象を民間事業者だけに限定せず、もっと幅広くアイデアを募っていくことを求めます。いかがでしょうか。

年内には事業手法・内容について示すことを目指す

【総合開発担当部長】
再生に向けたいくつかのご提案をいただきましたが、本年7月に公表したとおり、年内には事業手法・内容について示すことを目指しています。

金城ふ頭の開発計画の姿勢について

【山口議員】
管理組合が、ガーデンふ頭のにぎわいを取り戻すことに成功しないならば、金城ふ頭での「ものづくり文化交流拠点構想」への危惧がいっそう高まることを最後に指摘しておきたいと思います。

私たちは、名古屋市が進める「ものづくり文化交流拠点構想」そのものが、民間で十分できる企業博物館づくりに多額の税金をつぎ込むもので問題だと考えています。それ以外でも問題点は多々ありますが、今回は、土地交換にも関係することですが、開発主体がバラバラな点を指摘しておきたいと思います。

博物館をつくるJR東海は、自分たちの創業20周年にあわせて自分たちのペースで博物館をつくります。行政のペースではやってられないようです。

名古屋市はその博物館のために基盤整備をするというのですが、駅から博物館までのアクセス道路は、管理組合の所有地のままです。どうして名古屋市の所有にしないのでしょうか。

破綻したアウトレットモールが計画されていた所は「にぎわいゾーン」の予定地ですが、そこも名古屋市ではなく管理組合が土地を所有したまま、開発を担当します。

しかも博物館のまわりの岸壁では、自動車の積み込みなど港湾荷役がそのまま行われ、完成自動車がずらっと並ぶ光景はそのままなのです。交流厚生用地なのか、港湾用地なのかも中途半端です。

アウトレットモールなど金城ふ頭のにぎわいづくりがうまくいかず、イタリア村も破綻。このまま管理組合に、にぎわいづくりをまかせて大丈夫か?という声まで聞こえてきました。私も心配です。経済情勢が厳しさを増すなか、民間企業の提案にひきずられる開発、営利企業の進出にすべてを委ねるような開発では、うまくいかないと思います。

そして金城ふ頭が、幸いに賑わったとしても、こんどはガーデンふ頭からは賑わいがなくなる。コンテナ貨物ではありませんが、にぎわう場所がシフトするだけで、全体の需要を過大に見積もる開発計画になるおそれが強いのです。

開発主体がバラバラでは、チグハグな事業展開になるのではありませんか。

金城ふ頭の開発計画に、管理組合はいったいどのような姿勢で臨もうとしているのか、うかがいます。

金城ふ頭に計画中のモノづくり文化交流拠点構想

メッセ機能の向上、あおなみ線の利用促進等を図る観点で

【企画調整室長】
金城ふ頭の開発は、港湾計画において、ふ頭中央部の約55haを交流厚生用地と位置づけ、民間活力を取り入れながら、賑わいづくりを進めるとしています。

今後の展開に当たっては、メッセ機能の向上、あおなみ線の利用促進等を図る観点から、名古屋市とも連携して、金城ふ頭の開発を進めていきます。

問題は解決していない。引き続き追及したい(意見)

【山口議員】
イタリア村と金城ふ頭も、他人事のような答弁では困ります。特に未払い賃金などの労働債権は、按分による弁済では約4割しか配当されないのが現状です。まだ、問題は解決していません。イタリア村と金城ふ頭については、委員会審議の場などで、引き続き追及していきたいとおもいます。

 

▲このページの先頭へ戻る