2008年11月定例会 議案外質問 田口かずと議員(11月29日)
地球温暖化対策について
田口議員
一刻の猶予も許されない問題だ
【田口議員】
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による「第4次評価報告書」は、産業革命による工業化以前に比べて世界の平均気温が2度以上上昇すると、激しい気候変動や生物種の絶滅など大きな変化が起き、もしこのまま手を打たなければ、今世紀末には最大で6.4度上昇し、取り返しのつかない事態を招くと警告しています。まさに、地球温暖化抑止は、一刻の猶予も許されない人類的課題となっています。この大問題に、本市がどのように立ち向かっていくべきか。具体的な提案も行いながら、お尋ねしたいと思います。
2020年までに30%削減の中期目標の明確化を
【田口議員】 第1は、2020年までのCO2削減目標、いわゆる中期目標の明確化、および地球温暖化対策条例の制定についてであります。
IPCC報告書は、2度以内の気温上昇に抑えるために、中長期の削減に関する試算を明らかにし、先進国にたいしては、2050年までに温室効果ガスの90年比80%以上削減という長期目標、2020年までに25%から40%削減という中期目標を示しました。
本市は、「環境モデル都市」の提案書の中で、2050年までにCO2を80%削減するという目標を掲げました。これは、意欲的な目標だと思いますが、この提案書の中では、2020年までの中期目標は明確にされていません。日本政府も、中期目標の設定を先送りしつづけており、世界から遅れをとっています。
私は、市長にたいして、地球温暖化対策を抜本的に強化するために、CO2削減の2020年までの中期目標をただちに明確にすることを求めます。また、その目標は1990年比で30%削減とすることを提案します。30%削減は、昨年2月に開催された「気候変動に関する世界市長・首長協議会」京都会議においても各国政府に呼びかけられた目標であることからも、本市がめざすべき目標としてふさわしいと考えます。市長の見解を伺います。
地球温暖化対策条例の制定で推進を
【田口議員】 京都市は、全国の自治体の中で先駆けて地球温暖化対策に特化した条例を制定しています。京都市の条例の特徴は、CO2削減の目標を明記していること、市の責務を明確に定めていること、温暖化対策の進捗状況についての年次報告書の作成・公表などの進行管理や推進体制など総合的な枠組みについても一定の整備がなされていることにあると考えます。
本市の場合は、環境保全条例の中に地球温暖化対策に関する規定も盛り込まれていますが、CO2削減目標や総合的な枠組みなどは条例に明記されていません。
そこで市長にお尋ねします。本市でも、CO2削減目標や推進体制など総合的な枠組みを定めた地球温暖化対策条例を制定する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
温暖化ガス排出量 ワースト10(2006年度)
順位 |
工場等の名称 |
2006年度総排出量
(万トン-CO2) |
2003年度からの
増減(%) |
自主目標
○:達成
×:未達成 |
1 |
中電 新名古屋火力発電所 |
355.8 |
+ 9.7 |
○原単位
現状維持 |
2 |
住友軽金属工業 名古屋製造所 |
39.2 |
△ 1.4 |
○ |
3 |
中部鋼鈑 |
24.6 |
+12.7 |
× |
4 |
東レ 名古屋事業場 |
23.5 |
△64.1 |
○ |
5 |
名古屋鉄道 |
21.0 |
△ 1.9 |
○ |
6 |
三井化学 名古屋工場 |
19.3 |
△ 9.1 |
○ |
7 |
大同特殊鋼 星崎工場 |
16.0 |
△ 1.1 |
× |
8 |
フジ トランスコーポレーション |
15.2 |
△ 4.2 |
× |
9 |
東亞合成 名古屋工場 |
15.1 |
+11.8 |
× |
10 |
ニチハ 名古屋工場 |
14.7 |
△ 8.7 |
○ |
中期目標の時期は2020年とすべき(要望)
【田口議員】 CO2削減の中期目標について、市長は、「脱温暖化2050なごや戦略」の策定議論の中で、適切に設定していくと答弁されましたが、まず市長が、明確な中期目標を設定してこそ、戦略の策定議論も目標の達成に責任をもったものになると思います。ですから、中期目標は、ただちに明確にすべきです。そして、その目標の時期については、2020年が、IPCC報告書でも示されている国際基準ですし、本市の基本計画も10年のスパーンですから、2020年とすべきであります。この点を要望しておきます。
「地球温暖化対策計画書制度」の抜本的強化を
ワースト1は、中電新名古屋火力発電所
【田口議員】 本市域の排出量の5割近くを占めている工場、オフィス・店舗等からのCO2削減を促進するためにも「地球温暖化対策計画書制度」を抜本的に強化することが必要です。計画書制度の実績について、当局は、「電気・ガス事業所を除いた対象事業所の温室効果ガスの総排出量は、2003年度の440万トンから2006年度には398万トンへと9.6%減少した」といっています。これだけ聞くと、この計画書制度はすごく効果があるように思えます。
本当にそうなのか。わが党市議団は、情報公開制度を使って、事業所が市に届け出た結果報告書を取り寄せて調べてみました。そうしましたら、東レ名古屋事業場1社だけで300余りの対象事業所全体の減少分に匹敵する42万トンの温室効果ガスが減少していることがわかりました。それでは、なぜ、東レ名古屋事業場の排出量が激減したのか。同社の結果報告書では、その要因は「生産効率化による設備集約」とされています。つまり、生産規模の大幅縮小です。生産規模を縮小すれば、CO2排出量が減少するのは当たり前ですから、ここは例外的に扱うべきです。したがって、計画書制度の実績は横ばいというのが正しい評価だと思います。
結果報告書をもとに、電気・ガス事業所も含めた市内の温室効果ガス排出量ワースト10を一覧表にしてきましたので、ご覧ください。これは、排出量の多い事業所上位10社ですが、このうち、4つの事業所が目標未達成です。2003年度と比べて排出量を増やした事業所も、中部電力新名古屋火力発電所、中部鋼鈑、東亞合成名古屋工場の3社あります。この3社は、いずれも原単位あたりの削減目標しか持っておらず、総量での削減目標は持っていません。
ワースト1は、中電新名古屋火力発電所です。同社の報告書では、原単位あたりの削減率0%、つまり現状維持という目標を達成することができたと報告しています。しかし、温室効果ガスの排出量は9.7%、31万4千トンも増加させています。原単位あたりの目標では、目標を達成しても排出量の増加を招くことがあるのです。
以上のことから、地球温暖化対策計画書制度は、現行の運用のままではCO2削減の実効性が乏しいと考えますが、環境局長の認識を伺います。
実効性を高めるための改善を提案
【田口議員】 計画書制度の実効性が乏しいのは、企業の自主努力まかせにしているからです。他都市では、この限界を改善するための努力が図られています。京都市では、事業所から提出される計画書および結果報告書を市のホームページで公表しています。東京都では、計画書の内容を5ランクに評価した結果も公表し、ランクの低い事業所には都が指導・助言を行って、計画を改善させています。さらに、今年の6月、都の環境確保条例を改正し、対象事業所にたいして温室効果ガスの総量削減を義務化するとともに、排出量取引制度の仕組みを導入するとしています。
そこで環境局長にお尋ねします。地球温暖化対策計画書制度を実効あるものへと抜本的に強化するために
一、計画書および結果報告書を市のホームページで公表する
二、計画書における目標については、総量での削減目標を持たせるよう指導する
三、対象事業所にたいして総量削減を義務づける
の3つをおこなうべきだと考えますが、答弁を求めます。
計画書および結果報告書を市のホームページで公表せよ(再質問)
【田口議員】 環境局長は、データがようやく見えてきたと答弁されました。私たちも、情報公開制度を活用して、データを見ることができました。
私たちの調査では、対象事業所のうち、温室効果ガスの排出量を増加させた事業所が4割余りもありました。なかには、最初から排出量を増やす計画書を提出している事業所が18もありましたが、これでは、せっかくの削減計画書が増加計画書になってしまうと思うのです。
この計画書制度の実効性を高めるために、情報提供、先進事例の普及が有効であるとお考えなら、事業所から市に提出されたすべてのデータを容易に見られるようにすることが必要ではないでしょうか。
計画書および結果報告書を市のホームページで公表することも、計画書制度の強化の中で検討していかれるのか、はっきりした答弁を環境局長に求めます。
公表はすぐに実施し、総量削減の義務化も(意見)
【田口議員】
はっきりした答弁はいただけませんでしたが、計画書制度については、環境局長も実効性を高める必要性を認め、制度の強化を検討するとおっしゃったわけですから、事業所の提出したデータを市みずから公表することは、条例を改正して、ぜひとも実施していただきたい。さらに、事業者にたいしては、自主努力まかせにしないで、総量削減を義務化するなど規制的な措置が求められているということを申し上げておきます。
自然エネルギーの利用拡大を
【田口議員】 自然エネルギーの利用拡大についておききします。
CO2の排出量の9割がエネルギーに由来することからも、化石燃料偏重から自然エネルギー重視に転換することが、温暖化対策の要の一つとなっています。世界では、EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定しています。国内では、東京都が、2020年までにエネルギー消費に占める自然エネルギーの割合を20%程度に高めることをめざして、「東京都再生可能エネルギー戦略」を策定しています。
そこで、環境局長にお尋ねします。本市でも、自然エネルギーの導入目標や、普及・利用拡大の戦略を持つ必要があるのではないでしょうか。
そのうえで、太陽光発電の普及について伺いたい。国が住宅向け太陽光発電設備の設置補助金を復活させたことを踏まえて、どのような方策を講じられますか。本市が国に上乗せして補助することも考えられるでしょう。あるいは、太陽光によって発電された電力の環境付加価値を証書の形にして、個人や企業などが省エネルギーや環境対策の一環として取り引きできるようにするグリーン電力証書の手法を取り入れることも考えられます。
私は、これらの方策とともに、より根本的には固定価格買い取り制度の導入が必要だと考えています。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、長期間保障する方式です。この制度を導入したドイツなどでは自然エネルギーの普及が急速に進んでいます。
本市としても、国および電力会社に対して、固定価格買い取り制度を導入するよう強く働きかけるべきではないでしょうか。
環境局長の答弁を求めます。
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「脱温暖化2050なごや戦略」の策定議論の中で適切に設定したい(市長)
【市長】
平成20年5月に公表した「環境モデル都市」提案書において、2030年までにCO2排出量の4割削減を提案した。現在、この「環境モデル都市」提案書をたたき台として、「脱温暖化2050なごや戦略」の策定を進めている。この戦略の策定に向けて、専門家や、市民、事業者と幅広く議論をする中で、中期目標の時期、削減割合等についても適切に設定したい。