2009年2月定例会
2009年度予算案に対する反対討論(3月19日)
江上博之議員

国・大企業言いなりで、住民負担を増大・サービス低下をすすめる、市民不在の予算を改めよ

江上博之議員は、2009年度予算案について反対の立場から討論をおこないました。


江上議員

【江上議員】
日本共産党名古屋市会議員団を代表して、反対討論を行います。

大企業にモノが言えない名古屋市政

アメリカ発の世界的な不況が外需頼みであった日本経済を直撃しています。「元気な名古屋」といわれたこの地域はとりわけ打撃が大きくなっています。私たちは、以前から元気なのはトヨタであって、市民ではない。市民生活は、不況が続いていると言ってまいりました。今、そのトヨタは、派遣切り、下請け切りの先頭に立ち、市民生活をさらに苦しめています。しかし、トヨタは、昨年末の段階で、12兆8千億円の内部留保があり、体力は十分あるのです。そのトヨタに対して名古屋市は補助金を出してきました。名古屋駅前の超高層ビルミッドランドスクエア建設に18億円。固定資産税など税金も減免しています。トヨタが社長の中部新空港建設も進めました。派遣切りの大企業にものを言うべきです。ところが、わが党の代表質問に対し、市長は、「県を通して経済団体に申し入れた」という程度です。派遣切りを進める大企業の責任を求める姿勢がありません。

また、大企業との関係では、名古屋市の民間再開発事業で市から補助金を得た関係企業を持つヤマザキマザックが、政党に企業献金を行っていることが明らかになりました。公共事業受注企業の政治献金が問題になっています。この指摘に対し、市長は、補助金は、「適正に執行している」としているとして補助金の見直しを行おうとしませんでした。税金の使い方に市民は怒っています。補助の中止を求めます。

本予算案では、市民の運動を受けて実現したものもあります。妊婦検診助成の14回への拡大、介護保険料の引き下げ、精神障害者手帳1級所持者に対するタクシー券交付などです。この点は評価しながらも、根本で、今の景気低迷にあえぐ市民生活を守る姿勢見えない予算案に対し、以下、反対理由を申しあげます。

雇用確保どころか職員削減

第1に、派遣切り、下請け切りの結果、景気がどん底であるにもかかわらず、実効性のある対策が取られていません。景気回復のためには内需拡大であり、個人消費を拡大することです。ところが、国の緊急雇用創出等事業の範囲で雇用を600人余増やすにすぎません。その一方で、市の正規職員定員をさらに431名減らすというのです。また、小中学校の本務教員が不足しているにもかかわらず正規職員を増やそうとしていません。さらに、中小企業・業者の仕事おこしのために、まず、全事業所の実態調査を行って、中小企業の直接の声を聞くことを求めても、行わないという答弁です。景気回復のために、地域を活性化する。そのためには、中小企業の実態を聞くことから始めることです。この姿勢が見られません。

市民負担増とサービス切り捨て

反対理由の第2に、市民生活がここまでひどい状態でありながら、さらに、市民負担を増やし、市民サービスを低下しようとしています。

学校給食費の値上げ

1点目に、学校給食費の値上げです。今問題になっているのは、なぜ、学校給食費が払えないのか。どう子どもにいやな思いをさせないか、子どもの貧困の解決です。そんな時、さらに、小学校で、年3300円、中学で平均5100円も値上げをするといいます。「学校給食法等」を理由にしています。しかし、どうしたら、負担を抑えることができるかを検討することこそ市の仕事ではありませんか。

国民健康保険料の値上げ

2点目に、国民健康保険料の値上げです。今年度1人平均5600円の値上げに続き、さらに5200円値上げするというのです。高い国民健康保険料を払えなくて保険証を取り上げられ、市民が医者にもいけなくて困っています。こども医療費の無料化を拡大しても事実上保険証がなく子どもが医者に行けないことが大問題となっています。派遣切り、下請け切りの人も国民健康保険に入ってくるのです。安心して医療にかかれるように保険制度を改善することが市の仕事です。値上げは認められません。

市営住宅家賃の値上げ

3点目に、市営住宅家賃の値上げです。居住者の38%が値上げになります。国の政令「改正」によるとはいえ、景気悪化になっているこの時に値上げは見送るべきです。

区役所の税務事務をなくす

4点目に、不況で、これからも税金相談の市民が増大することが予想されます。その時に、市民の身近にある区役所の税務事務をなくすことは認められません。税務事務だけ区役所から撤退し、都心部に集めるというのです。市民のワンストップサービスを実現するといいながら、なぜ、区役所から撤退するのか、市民サービス低下は明らかです。それでも強行する理由は、職員定数の削減しか考えられません。住民に身近な行政のためには区役所の充実こそ必要です。

子育て支援に逆行

反対理由の第3は、子育て支援どころか、市としての保育責任を放棄し、親や子どもたちをさらに苦しめる点です。

千種台保育園、山田保育園の廃止

1点目は、千種台保育園、山田保育園の廃止です。今、名古屋市の保育責任をどう果たすかが問われています。働く親が、安心できる保育園をどう作っていくかが課題です。ましてや保育園に預けている親に対して、建て替えをすると約束し、延期したうえに、廃園にするということは認められません。

公立保育園の建設について、名古屋市は国との関係で、民間であれば、7000万円余の補助が来る。しかし、公立であれば補助は来ない。財政危機の名古屋市としては、民間保育園で保育要求をみたす、という言い方をしています。しかし、国は、公立保育園建設に補助する代わりに、地方交付税で措置すると転換したのです。地方交付税は、税収が少ない自治体に補てんする一般財源です。ですから、国の制度では、名古屋市は税収があるのだから、税金で公立保育園を建設する、ということになります。このことに触れずに、補助が来ないことだけを言って、自らの保育行政の責任を放棄しているのが名古屋市ではありませんか。

学童保育をなくす動き

2点目に、放課後子どもプランモデル事業は、学童保育をトワイライトスクールに吸収し、学童保育をなくそうというものです。16区での予定が8区にとどまりました。保護者の理解が得られていないからと名古屋市も認めています。問題は山積みです。8区で強行する前に、市民の声をもっと聞くべきです。学童保育は、子どもたちが「ただいま」と言って帰る自宅代わりの施設です。トワイライトスクールは全児童の遊び場であって、学童保育とは別事業です。この当たり前の原則から出発すべきです。

また、モデル事業の運営指導員を「教職経験者に限定」するのも問題です。市長も「子ども好き、熱意、指導しすぎない」という条件を言っています。教職経験者に限る理由はありません。残る理由は、教職経験者の職の確保だけです。この点からも二つの事業の原点で見直しすべきであり、放課後子どもプランモデル事業は撤回すべきです。

大型事業の見直しもなし

反対理由の第4に、これだけ市民生活が厳しくなっているにもかかわらず、四大プロジェクトを始め不要不急の公共事業の見直しが行われていません。名古屋城本丸御殿復元についてマスコミの調査では、市民の4割が凍結、復元に反対中止を含めると6割にもなっているのです。今、建設する時ではない、というのが多くの市民の声ではありませんか。今、名古屋市が力を入れるのは、本丸御殿の再建ではなくて、市民の暮らしの再建ではありませんか。

陽子線がん治療施設についても、見直しが行われていません。健康保険適用外で、一部の市民しか利用できない施設を、なぜ、名古屋市が建設し、運営しなければならないのか。納得できる回答はありませんでした。

ものづくり交流拠点構想や、東山動植物園の再生については、骨格予算ということで、新たな施策はありません。しかし、ここでも中止、見直しの市民の声にこたえることです。

また、徳山ダム、および導水路関連事業も中止すべきです。水需要予測からみても母なる木曽川の水で十分足りています。そのうえ、自然環境破壊を続けます。多様な生物がどうやって持続的に生存できるのか、二酸化炭素削減をはじめ地球環境の在り方も含め考えようという国際会議を開催する都市としても、きっぱり撤退すべきです。

四大プロジェクトを始め不要不急の公共事業にメスを入れない姿勢は認められません。

そこで、日本共産党市議団は、不要不急の公共事業にメスを入れ、予算の組み替えを提案し、市民の声にこたえる予算にすることを求めます。以下、提案を行います。

3つの柱で対案を出す日本共産党

雇用の拡大、仕事おこし

第1に、ヘルパーの資格取得支援などで雇用を拡大し、民間木造住宅の耐震改修助成の拡充で中小企業・業者の仕事を増やします。派遣切りなどあった市民500人に対し、資格取得を支援します。30人学級を3年生まで拡大し、常勤講師を増やします。そして、中小企業・業者の仕事お越しのために、公共事業を生活密着型に転換します。その一つとして、耐震助成額を60万円から100万円に引き上げ、耐震改修を促進します。

市民負担増をやめる

第2に、国保料の引き下げ、子ども医療費無料化を中学まで拡大など福祉・子育てを充実し、家計を温めます。国保料を一人1万円引き下げることを目標に、新年度3000円引き下げます。子ども医療費を通院まで含めて中学卒業まで拡大します。そして、親の離職など経済的理由で高校への入学困難な生徒を支援するための高校入学準備金の貸付人数を80人から240人に拡大します。市営住宅家賃値上げは延期します。

サービス低下を中止

第3に、公立保育園の民営化など市民犠牲の「行政改革」をやめることです。千種台保育園や山田保育園の廃園の中止。放課後子どもプランモデル事業は撤回します。また、税務事務の区役所からの撤退も中止します。それらの準備予算を削減します。

不要不急の事業見直し、議会改革

第4に、これらの財源は、四大プロジェクトや不要不急の公共事業の見直し、反対理由に挙げた項目を取りやめ、そして、議会経費の見直しで行います。今議会で議決した議員報酬10万円カット、政務調査費5万円削減とともに、我が党市議団が受け取りを拒否している1日1万円の議会手当である費用弁償の廃止、任期中1回の海外視察を中止します。

国の言いなりでなく、市民の声を聞け

さらに、国の予算との関係見直しも必要です。

そこで、反対理由の第5は、国の悪政に追随した予算案である点です。国は、規制緩和を進め、軍事や外交だけを行い、社会保障や福祉、医療や教育など本来憲法で掲げられた国が行うべき仕事を、「地方分権」という名で、自治体に押し付けています。押しつけられた名古屋市は、「行財政改革」の名で、市民に犠牲を押し付けています。国の掲げる「地方分権」という名での押し付けを認めて住民のための地方自治は実現できません。強いもの勝ち、弱い者いじめの構造改革路線の転換を国に求め、住民福祉を増進するという姿勢が見られません。

抜本的な名古屋市政の変革に全力

以上、予算案の反対理由とわが党市議団の提案を申し上げました。憲法9条を守り、市民の健康で文化的な生活を実現し、市民が主人公となる抜本的な名古屋市政の変革に全力を尽くすことを申し上げて一般会計予算案への反対討論とします。

▲このページの先頭へ戻る

一般会計 前年度比較

歳入(単位:千円,%)
科目 2009年度予定額 2008年度予算額 対前年度伸率 構成比
09年度 08年度
市税 500,045,000 528,905,600 △ 5.5 50.5 53.8
地方譲与税 6,442,000 7,026,000 △ 8.3 0.7 0.7
県税交付金 48,629,000 53,932,000 △ 9.8 4.9 5.5
地方特例交付金 5,850,000 6,162,000 △ 5.1 0.6 0.6
地方交付税 500,000 1,000,000 △50.0 0.1 0.1
交通安全対策特別交付金 1,100,000 1,100,000 0.0 0.1 0.1
使用料及び手数料 50,019,741 50,717,753 △ 1.4 5.0 5.2
国庫支出金 93,949,398 92,973,538 1.0 9.5 9.4
県支出金 31,796,482 29,277,299 8.6 3.2 3.0
基金繰入金 12,385,968 2,374,776 421.6 1.3 0.2
貸付金返還 91,686,334 84,138,925 9.0 9.2 8.6
市債 102,493,000 80,494 27.3 10.3 8.2
その他 45,906,077 45,602,109 0.7 4.6 4.6
990,803,000 983,704,000 0.7 100 100
歳出(単位:千円,%)
科目 2009年度予定額 2008年度予算額 対前年度伸率 構成比
09年度 08年度
議会費 2,542,776 2,521,814 0.8 0.3 0.3
総務費 57,674,468 57,317,944 0.6 5.8 5.8
健康福祉費 216,389,260 206,386,772 4.8 21.8 21.0
子ども青少年費 98,515,039 94,048,518 4.7 9.9 9.6
環境費 42,736,904 45,558,083 △ 6.2 4.3 14.6
市民経済費 110,168,624 106,685,036 3.3 11.1 10.8
緑政土木費 70,003,256 79,913,980 △12.4 7.1 8.1
住宅都市費 61,466,184 63,696,903 △ 3.5 6.2 6.5
消防費 32,375,994 32,620,493 △ 0.7 3.3 3.3
教育費 81,761,235 80,157,553 2.0 8.3 8.2
公債費 148,120,618 147,771,466 0.2 14.9 15.0
諸支出金 68,948,642 66,925,438 3.0 7.0 6.8
予備費 100,000 100,000 0.0 0.0 0.0
990,803,000 983,704,000 0.7 100 100

市民との共同で市政を動かす

日本共産党と市民の共同でみなさんの願いが実りました。
・介護保険料…基準保険料が月4398円→4149円
・妊婦無料健診…5回から14回へ拡大、助産所も対象に
・国保の出産育児一時金…35万円→42万円
・障害者タクシー助成…精神障害者1級にも交付
・家庭系廃食油のバイオディーゼル燃料化のモデル事業実施
・上志段味地区に市バスの乗り入れ
・第二次緊急雨水整備事業を実施(おおむね10年)
・民間木造住宅、非木造住宅の耐震改修助成の対象拡大
・小児救急ネットワーク758の実施
・輸入食品の検査体制強化など食の安心・安全体制の充実

市民の暮らしより大型事業が優先

・本丸御殿の復元工事関連に10億79万円(総額150億円)
・葵一丁目19番(マザック)や名駅四丁目4番南(中経ビル)等の民間再開発に補助(新年度は9億5千万円余)
・名古屋高速に102億円
・陽子線がん治療施設5251万円(20年で245億円)
・木曽川水系連絡導水路(総額890億円)市負担は125億円、長良川河口堰利用分を含めると142億円
・中部空港2本目滑走路の建設促進の負担金

 

▲このページの先頭へ戻る