2009年2月定例会

2009年度予算案にたいする日本共産党の組み替え案

2009年3月17日
日本共産党名古屋市会議員団

はじめに

経済危機を理由にした大企業による「派遣切り」などの大量解雇・雇い止めによって、名古屋市には職と住まいを失った労働者が殺到し、中小企業・業者は仕事の減少や資金繰りに苦しむなど、市民の暮らしは厳しさを増しています。

ところが、名古屋市の2009年度予算案は、雇用破壊と景気悪化から市民の命と暮らしを守る実効性のある対策は示さないまま、国のいいなりに、市民への負担増と「民営化」など市民犠牲の「行革」路線を促進するという、市民に冷たい予算案となっています。しかも、税収減などで「極めて厳しい財政状況」といいながら、名古屋城本丸御殿の復元工事、徳山ダムからの導水路建設など、不要不急の大型プロジェクトをいっそう推進するものとなっています。

一方で、妊婦健診助成の14回への拡大、介護保険料の引き下げ、精神障害者手帳1級所持者にたいするタクシー券の交付、通訳配置をはじめとしたDV対策の充実などが盛り込まれたことは、市民の運動の成果であり、一定の評価をするものです。

以上を内容とする2009年度一般会計予算案にたいして、日本共産党名古屋市議団は、雇用破壊・景気悪化から市民の命と暮らしを守り、福祉・子育ての充実を図る立場から、下記のように組み替えることを要求します。

1.雇用破壊・景気悪化から市民の命と暮らしを守ります

(1)ヘルパーの資格取得支援などで雇用を拡大し、民間木造住宅の耐震改修助成の拡充で中小企業・業者の仕事を増やします

国の緊急雇用創出等事業による新規雇用者数の見込みは600人余にすぎません。福祉・介護分野での雇用を拡大するために、「派遣切り」などで職を失った市民500人にたいし、ヘルパーの資格取得のための講座受講料を助成(一人10万円)します。また、小学校2年生までが対象となっている30人学級を3年生まで拡大し、常勤講師の雇用を増やします。

中小企業・業者の仕事起こしのために、公共事業は生活密着型に転換します。その一つとして、民間木造住宅の耐震改修助成の補助限度額を60万円から100万円に引き上げ、耐震改修を促進します。

(2)国保料の引き下げ、子どもの医療費無料制度の拡大など福祉・子育てを充実し、家計を温めます

福祉・子育て支援の充実は、家計を温め、景気対策にとっても重要です。ところが、国民健康保険料は、一人あたり平均年間5260円の値上げになり、今年度の値上げ額(5600円)と合わせて1万円を超える大幅値上げが、景気悪化でたいへんな家計を直撃することになります。高すぎる国保料を一人あたり1万円引き下げることをめざし、一般会計から財源を繰り出して、来年度は年間3000円の引き下げを行います。

親の離職など経済的理由で高校への入学が困難な生徒を支援するための高校入学準備金貸付制度については、応募者数にふさわしく貸与人数を拡大します(80人から240人に)。また、入院は中学3年生まで、通院は小学6年生までとなっている子どもの医療費無料制度は、通院についても中学3年生まで拡大し、家計の負担を軽減します。

市営住宅居住者の38%が値上げとなる家賃改定を延期します。

2.公立保育園の民営化など市民犠牲の「行革」をやめます

予算案には、千種台保育園と山田保育園の民営化準備の予算が盛り込まれています。とりわけ千種台保育園の場合は、保護者の理解をえる努力を放棄し、民間保育園への引き継ぎのための共同保育も実施しないという強引なやり方で進められようとしています。こうした公立保育園の民営化は、公務員削減が先にありきで、保育の市場化に道をひらくものであり、その準備のための予算は削減します。

トワイライトスクールと放課後児童健全育成事業を一体的に実施するという「放課後子どもプラン」のモデル事業の実施が予定されていますが、その内容は、学童保育をトワイライトスクールに吸収しようとするものであり、モデル事業の実施は見送り、計画を全面的に見直します。

各区役所の税務事務を市内3か所ずつの税務事務所と出張所に集約する税務事務の集約化は、市民サービスの低下を招くことから中止します。

3.不要不急の大型プロジェクトなどのムダを削ります

(1)名古屋城本丸御殿の復元工事の凍結など大型プロジェクトを中止・見直します

名古屋城本丸御殿の復元は、寄付で集める50億円のうち40億円は財界・大企業頼みという、「市民普請」ならぬ「財界普請」ともいうべき御殿建設であり、市民の暮らしを優先する立場から、復元工事は凍結します。また、陽子線がん治療施設の整備についても凍結します。

水需要がない徳山ダムの導水路建設から撤退し、一般会計からの出資は取りやめます。中部国際空港の2本目滑走路は、低迷する航空需要からも必要性はなく、建設促進期成同盟会への負担金支出をやめます。

大企業の高層ビル建設を支援する葵1丁目19番地区(ヤマザキマザックニュータワー)など優良建築物等整備事業や、住民を追い出す大井町1番南地区など民間市街地再開発事業にかかる補助金支出は行いません。

環境悪化につながる都市高速道路の延伸は中止し、その関連道路の建設を凍結するなど、道路建設のムダにメスを入れます。

(2)不明朗な補助金支出をやめ、議会経費を見直します

名古屋食肉公社にたいする部分肉冷蔵庫の賃借料助成(食肉流通システム強化事業助成)は、借り上げ予定先の愛知食肉卸売市場協同組合(愛食)が、巨額の負債を抱えて破たんに直面していることからも、取りやめます。

「国民保護計画」にもとづく啓発・普及などの業務は、市民にたいして有事への意識付けを促すものであり、実施しません。

議会経費については、今議会で議決した議員報酬の1割カット、政務調査費の5万円削減とともに、わが党市議団が受け取りを拒否している費用弁償(1日1万円の議員手当)は廃止し、任期中1回の海外視察は中止します。

組み替え案のフレーム(一般会計)

  1. 浪費とムダを削って一般財源40億円を生み出し、公共料金の値上げを中止し、市民生活の充実をはかる施策の財源にあてました。
  2. 福祉・暮らしの財源を確保しながら財政再建をすすめるために、大型公共事業を中心にした投資的経費の削減で、市債を205億円削減しました。
歳出の減額 歳出の増額 差し引き
削減額 増加額 予算の増減額
277億円 39億円 △ 238億円
捻出される一般財源 必要となる一般財源 一般財源の増減額
40億3千万円 39億円 △ 1億3千万円
市債の削減額 市債の発行額 市債の増減額
205億7千万円 0円 △ 205億7千万円
国県補助金等の減額 国県補助金等の増額 国県補助金等の増減額
22億8千万円 0円 △ 22億8千万円
その他 その他 その他
8億1千万円 0円 △ 8億1千万円
歳入の削減
(使用料及び手数料の削減)
1億3千万円
歳入の増額
(増収となる一般財源)
0円
差し引き △1億3千万円

◎全体の一般会計予算規模
予算案 9,908億円
増減額 △ 238億円
組み替え後の予算規模 9,670億円

一般会計予算組み替え案の具体的内容 (款:項)

1、 歳出で削減すべき項目――31項目、277億円

○議会のムダづかいをあらため、不要・不急の大型公共事業や大企業優遇の施策などを削減する

(単位 千円)
事項 予定額 財源内訳
一般
財源
市債 国・県
支出金
その他
議会費 議会費 議員報酬(10%カット) 90,000 90,000 - - -
政務調査費(月額55万円を50万円に削減) 45,000 45,000 - - -
費用弁償(廃止する) 60,000 60,000 - - -
海外視察(廃止する) 30,000 30,000 - - -
総務費 総務管理費 中部国際空港二本目滑走路建設促進期成同盟会負担金 2,000 2,000 - - -
徴税費 税務事務集約化の準備 1,648,868 1,648,868 - - -
健康福祉費 公衆衛生費 クオリティライフ21城北の推進(陽子線がん治療施設の整備をやめる) 52,510 42,510 10,000 - -
環境費 環境保全費 工業用水道会計への地盤沈下対策出資金(木曽川水系連絡導水路への支出) 17,010 17,010 - - -
環境事業費 PFI手法による鳴海工場の改築 598,593 450,593 148,000 - -
子ども青少年費 子ども青少年費 放課後子どもプランモデル事業 183,279 116,850 - 38,290 28,139
トワイライトスクール時間延長モデル事業廃止に伴う経過措置 8,908 5,653 - 2,609 646
公立保育所の民間移管準備 232,220 92,600 - 139,620 -
市民経済費 区役所費 住民基本台帳ネットワークシステムの運用 129,674 10,000 - - 119,674
産業費 市場及びと畜場会計支出金(食肉流通システム強化事業助成) 73,046 73,046 - - -
観光費 名古屋城本丸御殿復元工事 324,000 53,267 - 164,400 106,333
  復元過程の公開 15,000 15,000 - - -
復元推進イベントの実施 77,096 62,096 - - 15,000
緑政土木費 道路橋りょう費 国直轄道路事業負担金 9,000,000 - 9,000,000 - -
有料自転車駐車場整備 520,573 194,473 181,000 145,100 -
街路費 池内猪高線の道路改良 113,450 1,500 78,000 33,950 -
江川線はじめ有料道路支援関連事業 2,413,577 195,178 654,000 1,022,154 542,245
住宅都市費 都市計画費 都市高速道路建設 10,225,000 292,500 9,933,000 - -
住宅費 納屋橋東地区市街地再開発事業 350,000 87,500 - 262,500 -
大井町1番南地区市街地再開発事業 270,000 67,500 - 202,500 -
葵1丁目19番地区優良建築物等整備事業 302,100 76,400 - 225,700 -
名駅4丁目4番南地区優良建築物等整備事業 37,000 9,250 - 27,750 -
都心共同住宅供給事業(助成額半減) 45,000 24,750 - 20,250 -
消防費 消防費 国民保護業務 2,964 2,964 - - -
教育費 教育総務費 なごや教師養成塾の運営 19,863 18,590 - - 1,273
体育費 PFI手法による守山スポーツセンター整備のための経費 678,884 108,884 570,000 - -
諸支出金 公営企業会計支出金 水道事業会計支出金(徳山ダム建設負担金の出資金) 141,000 141,000 - - -
削減額の合計 27,707,115 4,034,982 20,574,000 2,284,823 813,310

2、歳出の増額――6項目、39億円

○市民のくらし・福祉・教育の切り捨てをやめ切実な市民要求を実現する

(単位 千円)
編成替えの内容 予定額 財源内訳
一般
財源
市債 国・県
支出金
その他
健康福祉費 社会福祉費 ヘルパーの資格取得支援(福祉・介護人材確保事業の拡充。講座受講料助成10万円を500人に) 50,000 50,000 - - -
国民健康保険費 保険料を引き下げるための繰出(一人3,000円の引き下げ) 1,824,000 1,824,000 - - -
子ども青少年費 子ども青少年費 子ども医療費助成制度の拡大(中3まで通院無料に) 1,030,000 1,030,000 - - -
住宅都市費 住宅費 民間木造住宅の耐震改修助成の拡充(限度額を60万円から100万円に引き上げる) 156,800 156,800 - - -
教育費 教育総務費 高等学校入学準備金の貸し付けを拡大(対象者を80人から240人にふやす) 48,000 48,000 - - -
小学校費 小学3年生まで30人学級を拡大(当面常勤講師で対応) 795,000 795,000      
増額の合計 3,903,800 3,903,800 - - -
差し引き増減額 23,803,315 131,182 20,574,000 2,284,823 813,310

3、 歳入の減収――3項目、1億3千万円

○市民の負担を増やす手数料などの値上げをやめる

(単位 千円)
削減する内容 予定額
使用料及び手数料 手数料 市営住宅家賃の値上げをやめる 101,901
諸収入 雑入 放課後子どもプランモデル事業を凍結し、利用料の徴収をしない 28,120
トワイライトスクール時間延長経過措置利用料はやめる 646
増額の合計 130,667

資料 2009年度名古屋市一般会計予算案 歳出

2009年度
予算額
前年度比較 2009年度予算額の財源内訳
特定財源 一般財源
国・県
支出金
地方債 その他
1 議会費
2,542,776 20,962 32 2,542,744
2 総務費
57,674,468 356,524 4,580,516 758,000 711,746 51,624,206
3 健康福祉費
216,389,260 10,002,488 73,664,885 1,413,000 9,888,092 131,423,283
4 子ども青少年費
98,515,039 4,466,521 28,085,032 2,123,000 8,402,265 59,904,742
5 環境費
42,736,904 △  2,821,179 147,936 1,287,000 11,461,963 29,840,005
6 市民経済費
110,168,624 3,483,588 1,491,854 1,649,000 74,803,395 32,224,375
7 緑政土木費
70,003,256 △ 9,910,724 7,962,167 22,081,000 12,177,906 27,782,183
8 住宅都市費
61,466,184 △ 2,230,719 7,758,773 15,631,000 16,030,880 22,045,531
9 消防費
32,375,994 △ 244,499 212,603 1,523,000 308,948 30,331,443
10 教育費
81,761,235 1,603,682 1,790,355 5,902,000 4,083,027 69,985,853
11 公債費
148,120,618 349,152 9,958,000 26,813,748 111,348,870
12 諸支出金
68,948,642 2,023,204 12,168,000 56,780,642
13 予備費
100,000 100,000
歳出合計 990,803,000 7,099,000 125,694,121 74,493,000 164,682,002 625,933,877

 

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