2009年9月定例会
2008年度決算に対する反対討論(10月15日)
田口かずと議員

市民生活が大変な時に、市民負担を増大、貧困と格差に追い打ちをかける一方、民営化や大型事業を推進した決算は認められない


田口かずと議員

「構造改革」路線に追随し市民の暮らしを深刻な事態に

【田口議員】
私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、一般会計決算の認定にたいして、反対する立場から討論を行います。

昨年度の一般会計決算は、自公政権が進めてきた「構造改革」路線に追随し、市民への負担増と公共サービスの民間化を続ける一方で、松原前市長の置き土産となった4大プロジェクトなどの大型事業を加速するものとなりました。それが、昨年秋以来の世界的な経済危機と相まって、「派遣切り」にあった人たちが中村区役所に殺到するなど、市民の暮らしを深刻な事態に陥れたのであります。

以下、反対する理由を具体的に申し上げます。

負担増を押し付け、貧困と格差に追い討ち

第1は、市民に負担増を押し付け、貧困と格差に追い討ちをかけたことであります。

昨年4月から後期高齢者医療制度が導入されました。それに伴って、国民健康保険では75歳減免によって保険料が無料だった約58000人の高齢者が、新たに保険料を負担しなければならなくなりました。一方、国民健康保険も、一般会計から国保会計への繰り出し金を削減したことなどによって、保険料は、決算ベースで一人あたり平均6500円の値上げになりました。値上げ幅は17政令市の中で最大であり、かつては政令市の中でも低い方だった保険料が、いまや高い方から4番目となりました。後期高齢者医療制度という“姥捨て”制度に追いやられた75歳以上の高齢者も、国民健康保険に残された人たちも、いずれも保険料の負担増を強いられたのであります。

保育料も、1年おきに値上げが繰り返され、子育て世代の負担も増えました。

後期高齢者医療制度のすみやかな廃止を国に求めるとともに、国保料を引き下げ、来年度の保育料値上げを行わないよう求めておきます。

公立保育園の民営化などをすすめる

第2は、公立保育園の民営化など「官から民へ」の流れが強まったことであります。

本市は昨年度、「公立保育所整備計画」案を公表するとともに、千種台、山田、苗代の3つの公立園で民営化計画を押し進めてきました。これにたいしてこの3つの保育園では、保育士や保護者の反対運動が広がり、全市的にも、「公立保育園を廃止・民営化することの是非を問う」住民投票条例の制定を求める直接請求署名運動が取り組まれ、約13万人もの署名が集まりました。

本市では、民間の社会福祉法人の保育園も公立保育園と同じ保育条件が保障され、公民ともに公的保育制度をささえ、保育水準を高めてきました。保育園への営利企業の参入は許していません。ところが、公立保育園がどんどん減らされていったら、名古屋でも企業参入に道を開くことになるでしょう。子どもたちを企業の儲けのための市場にゆだねることは許されません。今後8年間で20か園を民営化するという「公立保育所整備計画」は撤回すべきです。

「官から民へ」を柱の一つとする小泉内閣以来の「構造改革」路線は、先の総選挙で、国民の厳しい批判をあびたということを申し添えておきます。

大型プロジェクトの推進に拍車

第3は、大型プロジェクトの推進に拍車をかけたことであります。

4大プロジェクトのうち、名古屋城本丸御殿の復元は、いまだに市民の間で賛否が大きく分かれているというのに、工事着手が強行され、「モノづくり文化交流拠点」は、税金を投入して企業博物館を誘致するというやり方が露わになりました。この2つの大型プロジェクトは、「天守閣も木造で再建する」などと言い出した河村市長のもとで、より一層拍車がかけられつつあります。

陽子線がん治療施設については、「苦しまないがん治療」にたいする市民の期待がある一方で、保険が適用されず、誰でもかかれる施設ではないこと、施設整備に巨額の費用がかかること、整備・運営が民間会社に委ねられることなどの問題も抱えています。ですから、十分な議論と市民の理解が不可欠ですが、それが不足したまま建設に着手したことは問題です。いったん建設を凍結し、再検討すべきであります。

さらに、徳山ダムの木曽川導水路事業については、地盤沈下対策の名目で環境費から工業用水道会計に1300万円余り出資されましたが、国土交通大臣も凍結すると表明したのですから、この事業は、いよいよ撤退・中止するしかありません。

以上の反対理由を申し上げ、討論を終わります。

2008年度 歳入歳出決算総括表

(千円)

会計別 歳入 歳出 差引額
決算額 決算額
一般会計 969,322,038 965,677,833 3,644,205
特別会計 1,163,744,054 1,157,218,036 6,526,018
  交通災害共済 13,604 13,604 0
  国民健康保険 203,121,963 202,235,774 886,189
  後期高齢者医療 31,983,466 311,314,950 668,515
  老人保健 18,239,880 18,239,880 0
  介護保険 117,219,711 112,557,988 4,661,723
  母子寡婦福祉資金貸付金 1,207,431 1,101,219 106,211
  農業共済 79,234 48,087 31,155
  市場及びと畜場 7,353,751 7,353,751 0
  土地区画整理組合貸付金 409,000 409,000 0
  市街地再開発 2,835,102 2,738,743 96,359
  墓地公園整備 1,173,654 1,173,654 0
  基金 111,028,800 111,028,800 0
  用地先行取得 22,475,419 22,475,419 0
  公債 646,603,024 646,527,161 75,863
2,133,066,093 2,122,895,869 10,170,223

企業会計 2008年度 決算総括表

(千円)

区分 総収益 総費用 純損益 当年度未処分利益
剰余金
(△は欠損金)
病院事業 20,698,423 25,234,402 △4,535,979 △ 16,520,707
水道事業 49,764,582 48,823,773 940,808 940,808
工業用水道事業 841,900 835,400 6,499 55,176
下水道事業 74,473,049 73,132,855 1,340,193 1,340,193
自動車運送事業 25,010,515 24,057,556 952,958 △ 53,285,849
高速度鉄道事業 83,271,075 81,491,048 1,780,027 △ 318,592,014
総計 254,059,546 253,575,037 484,508 △ 386,062,392

性質別経費の推移(普通会計)

区分 2008年度 2007年度
決算額 構成比 決算額 構成比
百万円 百万円
義務的経費 499,907 50.5 492,747 50.4
  人件費 185,452 19.2 187,876 19.2
  扶助費 161,216 16.6 153,572 15.7
  公債費 145,238 15.0 151,299 15.5
投資的経費 :97,293 10.1 116,721 12.0
その他 379,009 39.1 367,040 37.6
  物件費 77,174 8.0 77,122 7.9
  維持補修費 27,287 2.8 26,054 2.7
  補助費等 115,152 11.9 113,591 11.6
  積立金 3,234 0.3 2,066 0.2
  投資及び出資金 16,115 1.7 12,724 1.3
  貸付金 78,486 8.0 79,188 8.1
  繰出金 61,558 6.4 56,295 5.8
合計 968,210 100 976,519 100

基金残高 2009年3月未現在

(単位:千円)

  種別 土地 動産 有価証券 現金 運用金 合計 07年度末
資金積み立て基金 教育基金 1,616.66m2
10,938
86,960 97,898 96,330
火災等損害てん補積立基金 7,656,092 7,656,092 8,719,899
住宅敷金積立基金 4,431,749 4,431,749 4,415,266
名古屋城整備積立基金 25,777 25,777 25,582
名古屋城本丸御殿積立基金 3,368,723 3,368,723 1,733,111
交通災害共済積立基金 764,162 764,162 827,202
文化振興事業積立基金 1,381,362 1,381,362 1,405,605
国際交流事業積立基金 2,270,261 2,270,261 2,270,039
大規模施設整備積立基金 1,098 1,098 1,090
高速度鉄道建設積立基金 43,467 43,467 43,138
環境保全基金 606,800 606,800 606,800
中区役所等管理基金 1,544,745 1,544,745 1,581,460
介護給付費準備基金 1,714,276 1,714,276 1,214,443
公債償還基金 25,228,472 129,684,876 154,913,348 155,600,232
財政調整基金 39,478 4,141,295 4,180,773 3,221,240
介護従事者処遇改善臨時特例 1,104,362 1,104,362  
10,938 25,267,950 158,826,010 184,104,898 181,761,443
定額資金の運用 土地基金(40億円) 8,723.24m2
1,179,372
2,820,628 4,000,000 4,000,000
市税還付金等繰替基金(1350万円) 13,433 67 13,500 13,500
美術品等取得基金(5億円) 77点421,078 78,922 500,000 500,000
小計 1,179,372 421,078 2,651,132 268 4,513,500 4,513,500
合計 10,339.90m2
1,454,003
77点421,078 55,079,614 97,022,023 32,300,268 188,618,398 186,274,943

主な財政指標の17政令指定都市比較(平成19年度普遍会計決算)

区分 経常収支比率
(%)
公債費比率
(%)
義務的経費割合
(%)
投資的経費の
割合
(%)
財政構造の
弾力度
(高いほど悪い)
財政の
硬直度
(高いほど悪い)
経常収支比率の
上昇要因
(高いほど悪い)
名古屋市 97.2(7)←(5) 19.6(10)←(11) 50.5(7)←(8) 12.0(12)←(10)
札幌市 95.3(9)←(6) 19.7(9)←(9) 49.6(8)←(8) 8.9(17)←(15)
仙台市 97.7(6)←(8) 23.2(3)←(3) 47.6(9)←(12) 15.0(8)←(5)
さいたま市 86.1(17)←(14) 13.8(17)←(15) 44.6(16)←(14) 21.4(4)←(2)
千葉市 96.5(8)←(8) 21.1(5)←(8) 46.5(12)←(7) 22.6(2)←(3)
川崎市 93.5(13)←(13) 20.1(7)←(9) 52.6(4)←(4) 13.3(10)←(8)
横浜市 94.2(10)←(11) 18.8(12)←(13) 47.1(10)←(10) 15.3(7)←(6)
新潟市 88.6(14) 16.4(15) 44.2(17) 15.7(5)
静岡市 87.4(15)←(15) 19.3(11)←(10) 45.4(15)←(11) 25.0(1)←(1)
浜松市 86.4(16) 17.9(13) 46.7(11) 22.2(3)
京都市 97.8(4)←(4) 17.9(13)←(12) 52.0(5)←(5) 11.6(13)←(9)
大阪市 99.9(1)←(1) 20.1(7)←(6) 54.5(1)←(2) 10.3(16)←(14)
堺市 93.7(12)←(10) 15.2(16)←(14) 53.9(3)←(3) 10.6(15)←(12)
神戸市 98.0(3)←(2) 26.8(1)←(2) 54.1(2)←(1) 11.6(13)←(13)
広島市 98.4(2)←(3) 21.0(6)←(4) 50.7(6)←(6) 12.2(11)←(11)
北九州市 97.7(5)←(7) 21.8(4)←(5) 45.7(14)←(15) 15.7(5)←(4)
福岡市 94.2(10)←(12) 24.9(2)←(1) 46.1(13)←(13) 13.8(9)←(7)

新潟市及び浜松市は平成19年度から政令指定都市に移行

 

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