2009年11月定例会 個人質問(11月30日)
くれまつ順子議員

仕事や住まいを失った人への支援を


くれまつ議員

年末年始にかけて、相談体制や宿泊所の提供の強化を

【くれまつ議員】
仕事と住まいをなくされた方への援護施策について質問をします。

昨年来の大不況により、東京では派遣村ができ、名古屋においても、中村区役所に失業者が殺到しました。このような方たちは、減税の対象にならず、最も支援が必要な方です。

この年末にかけては、失業給付が切れた方々など、昨年にも増して相談者が増えることが予想されます。こうした事態に備えるため、私ども日本共産党は、11月4日に年末年始の援護施策について、臨時相談所の開設日数の拡大や「旧船見寮」の開設延長などを要望しました。

年末年始にかけて、相談体制や宿泊所の提供など生活困窮者への援護対策について万全を期す必要があります。市はどうするつもりなのか、健康福祉局長に伺います。

昨年度や本年1月以降の状況、国の情報に留意しながら検討(局長)

【健康福祉局長】
昨年度の年末年始援護対策は、中村区役所玄関ロビーに開設した臨時相談所に12月29日・30日の2日間で、前年比26%増の計435名の方が相談に来所し、そのうち無料宿泊所に392名、保護施設に5名など、必要な対応を行なった。

年明け以降、年越し派遣村の影響もあり、派遣切り雇い止め等により仕事と住まいをなくした方が、連日100人以上、中村区役所へ相談に来所したため、緊急に15区の協力も得ながら対応に努めた。

今年度の年末年始援護対策は、昨年度の実施結果や本年1月以降の相談状況、さらには、国の「緊急雇用対策」に関する情報にも留意しながら、検討を進めている。

貧困ビジネスへの認識はどうか

【くれまつ議員】
こうした中、生活困窮者の弱みに付け入り、生活保護が受けられるとして、宿泊所に入所させ、生活保護費から不当な利益を得ている、いわゆる貧困ビジネスが社会問題となっています。

最近マスコミ等で報道されている無料低額宿泊所は、社会福祉法にもとづき第2種社会福祉事業として「生計困難者のために、無料または低額な料金で提供される宿泊所」ですが、無届で運営されている所も少なくありません。施設基準等はなく、指導指針があるだけ、届けを出せば事業は行えます。全国の例では、実際の利用料は無料や低額でもなく、生活保護費から、様々な名目の「経費」が差し引かれ、手元に残るのは、僅か2、3万円程。アパートさがしや十分な就職活動ができず、長期入所が続きます。施設は、一人に2畳ぐらいで、床に布団を敷いただけでプライバシーもないなど、劣悪な住環境です。運営業者は、生活保護受給者に劣悪な住まいを提供しながら、安定的に利益を得られるところが問題となっています。

厚生労働省は無料低額宿泊所の実態調査を今年6月に実施しました。それによれば、名古屋市内にある12施設は、施設等の基準は満たしているが、生活保護費から差し引かれた後、手元に残る金額が、2万円以上、3万円未満が9施設あるという状況でした。

本来、無料低額宿泊所は、生活保護をうけて、住み続けるところではありません。国の運営指針には、「生活の相談に応じるなど利用者の自立支援に努める」とあるように、仕事やアパートをさがして自立していく施設です。手元に残ったお金が2・3万円では、自立のための費用としては不充分です。むしろ自立できない状態にとどめていることが貧困ビジネスといわれる由縁です。

そこで、局長に伺います。

無料低額宿泊所はどのような施設として位置付けているのか、また、無料低額宿泊所において、手元に2・3万円しかお金が残らないような状況について、どのような認識をもつのか、お答えください。

退所者149人のうち59人が自立。国の議論の動向を注視している(局長)

【健康福祉局長】
無料低額宿泊所は、社会福祉法に規定された、生計困難者のための施設ですが、一時的に入居した後、就労可能な方は、就労により自立を図っていくものと位置づけており、入居後、施設職員やケースワーカーが就労指導を行っております。

なお、入居者は、生活保護で支給される生活費約8万円の中から、食費、光熱水費等として約5万円を支払い、残りを求職活動等の費用に充てることになります。

大変厳しい雇用情勢の中ですが、ハローワーク等での求職活動の結果、現在入所されている402人のうち101人の方が就労されています。また、今年度の退所者149人のうち59人の方が就労等により自立され、施設は一定の役割を果たしている。

しかし、無料低額宿泊所の運営に関して、国は「設備・運営等に関する指針」で居室の最低面積を示していますが、居室面積に応じた使用料やサービス内容に見合った利用料などについて、具体的な基準が定められていないことなどが課題であります。

現在、国において検討チームを設置し、無料低額宿泊所や社会福祉各法に法的位置付けのない施設について、法規制のあり方や、収支の透明性確保などを検討していると聞いており、その議論の動向を注視していきたい。

就職活動とともにまずアパート探しをするように指導を

【くれまつ議員】
名古屋市は、その日に泊まるところがないと福祉事務所に相談にきた方に対しては、一時保護所を提供しており、施設不足を補うために、緊急宿泊援護施設として、名古屋駅西の旅館と契約して対応してきました。ところが今年に入ってからは、従来のホームレスのかたに加え派遣ぎりで、仕事と住まいをなくした人が殺到してきたため、従来の宿泊所では対応できず、民間の社員寮などを紹介しています。名古屋市は特例福祉アパートと呼んでいますが、要は、無料低額宿泊所に類似した法的位置づけのない無届施設です。

名古屋市が、住所のない方でも生活保護申請を受け付け、その日から泊まるところを提供してきたことは、生活保護法の趣旨を踏まえた大変先進的な取り組みです。特に、仕事とすまいを失った人たちを1人も路頭にまよわせないという姿勢で、職員の方が昼夜を分かたず奮闘されていることに、本当に敬意を表するものです。

しかし、生活保護申請をした住まいのない相談者に対して、法的位置づけのない特例福祉アパートを活用するのは、緊急避難的な措置であるはずで、アパート生活ができる人は、一刻も早くアパートをみつけて、生活保護による転宅資金で転居すべきです。

ところが、特例福祉アパートの入所期間が長期化する傾向がでています。

私が入所者から聞き取り調査をしたところ、「ケースワーカーからアパート入居より就職活動が先だといわれた」、「まだアパートをみつけるのは早いといわれ、3回目に相談してようやく許可された」などの実態があるようです。

ケースワーカーの対応がまちまちになっているのは問題です。

ここで、健康福祉局長に伺います。生活保護申請をし、特例福祉アパートに入居された方で、アパート生活が可能な人には、ケースワーカーは、求職活動とともにまずアパート探しをするように指導をし、一刻も早くアパートに移れるようにすべきと考えますが、いかがですか。

本人の状況を総合的に勘案しながら相談・指導している(局長)

【健康福祉局長】
仕事と住まいを失った方が、直ちにアパートに入ることが難しいために、一時的に元社員寮などに入居し、生活保護を受給される場合がございます。その後、ケースワーカーが、ご本人との面談を通し、就労自立やアパートへの転居に向けた指導を行うわけですが、具体的には、求職活動により早期の就職が可能かどうか、あるいは、就労先の近くでアパートの確保が可能かどうかを見極めながら進めているといった実情もあるため、ご本人の状況を総合的に勘案しながら、相談・指導を行っている。

ケースワーカーを増員を

【くれまつ議員】
また、特例福祉アパートの入所期間を長期化させないために、正規のケースワーカーを増員することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

職員体制の強化を図っていく必要はある(局長)

【健康福祉局長】
厳しい雇用情勢の影響を受け、特に本年1月以降、生活保護申請が急増している中、今年度当初には、ケースワーカー11名、嘱託職員6名を増員した。

また、6月の補正予算において、嘱託職員29名を追加して配置したところですが、今後も、保護世帯の個々の状況を適宜把握し、適切な指導を行っていくためには、職員体制の強化を図っていく必要がある。

生活保護世帯数とケースワーカーの配置数
2009.12.7財政福祉委員会資料

区分 生活保護
世帯数
ケースワーカー (参考)
嘱託職員
等数
配置人数 1人当たり
担当世帯数
国標準数 不足数
千種 1,606 14 115 20 6 6
554 5 111 7 2 5
2,021 18 112 25 7 7
西 1,586 12 132 20 8 5
中村 4,503 39 115 56 17 38
1,244 13 96 16 3 15
昭和 951 8 119 12 4 7
瑞穂 910 7 130 11 4 7
熱田 821 7 117 10 3 8
中川 2,835 23 123 35 12 7
2,117 18 118 26 12 8
3,191 25 128 40 15 8
守山 1,419 12 118 18 6 6
1,064 9 118 13 4 5
名東 1,226 10 123 15 5 6
天白 820 7 117 10 3 5
全市 26,870 227 118 336 109 143

注2:配置数は平成21年4月1日現在
注3:国標準数は被保護世帯数を80で除したもの
注4:嘱託職員等数は平成21年12月1日現在
注5:嘱託職員等数は事務軽減を目的に各区に配置している嘱託職員等の総数

市の事業として民間の社員寮などの借り上げを

【くれまつ議員】
仕事と住まいをなくした人に名古屋市は緊急宿泊援護事業をとりくんできましたが、今活用している特例福祉アパートの対応を改善しながら、抜本的に不足している一時保護所の機能をもった宿泊施設の増設が必要ではないでしょうか。

そこで、最後に局長に伺います。

市の事業として、選定基準を明確にし、民間の社員寮などを借り上げて、一時保護所の機能をもった宿泊施設を増設すべきと考えますが、いかがでしょうか。

一時保護所や名城シェルター、借り上げた民間旅館などを活用して指導援助(局長)

【健康福祉局長】
現在、住居のない方からの相談に適切に対応するために、一時保護所を活用している他、名城シェルターでも、一時保護を行なうため一定数の枠を設けている。さらに、緊急宿泊援護事業として本市が借り上げた民間旅館において、相談員が定期的に巡回して、利用者の指導援助にあたっている。

今後とも、これらの施設を有効に活用することで、相談者の支援に努める所存です。

職員体制の強化を(要望)

【くれまつ議員】
答弁をいただきました。3点要望をします。

1点目は、年末年始援護対策です。検討中ということですが、もう明日は師走です。今年1月の状況を上回ることはまちがいありません。ひとりも寒空に放りだすことのないよう、至急万全の対策を講ずるように強く要望するものです。

2点目、ケースワーカーの増員です。「職員体制の強化を図っていく必要があると」の答弁でした。来年度をまたず、増員を具体化してください。ケースワーカー数は、国標準数から大きく不足し、今年9月の被保護世帯数で計算すると119人も不足しています。ケースワーカーを増員して、特例福祉アパートの方の面接をきめこまかく行えるように要望します。

3点目は無料低額宿泊所です。課題があるとの答弁でした。今年の退所者149人のうち59人しか自立できていないという事実は、逆に90人は自立できずに退所されたということで、そこには様々な問題があるのではないかと思います。

無料低額宿泊所については、国の検討をまたず、名古屋市が積極的に、社会福祉事業として生活に困った人たちを支援できるようなガイドラインもつくって指導すべきことを要望して質問を終わります。

 

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