名古屋港管理組合議会 一般質問(3月26日)
山口清明議員
高潮防波堤の改修補強など防災対策について
山口議員
改修補強に必要な予算や負担、工期はどうなる
【山口議員】
伊勢湾台風から50年の昨年6月に本会議で、私が問題提起をした高潮防波堤の耐震診断・耐震改修について検討を進めてきた伊勢湾高潮災害低減方策検討委員会は、3月11日の委員会で「最大4.1mの沈下が予想される知多堤と同じく2.9mの沈下が予想される鍋田堤、どちらにも抜本的な対応策が必要」と結論づけました。妥当な結論だと思います。問題は対策の具体化です。
検討会では国が「再来年の予算化をめざす」と表明されたようですが、検討会の結論にそった改修補強に必要な予算はいくらになるのか。それは全額国庫負担なのか。本組合の負担は発生するのか。また工期はどのくらい必要なのか。現時点での見通しを答えてください。
津波警報の際の避難誘導の問題と対策はどうか
【山口議員】
先日のチリ大地震では津波警報が発令され、港区野跡学区の一部には避難勧告も出されました。また防潮扉も閉められ、水族館も臨時休業になりました。しかし日曜日のガーデンふ頭では、防潮扉が閉まったあとも観光客の姿が見られたとも聞いています。なかには防潮扉って何、という人もいたようです。津波の予報は難しい、でも油断大敵です。
津波警報にあたって、ガーデンふ頭での避難誘導でどんな問題が生じたのか、今後の対策はどうするのか、お聞きします。
防災問題でのシュミレーションを(意見)
【山口議員】
津波警報への対応は、新しい課題です。防潮堤の海側は、いざというときには大変に危険な地域との認識が重要です。今回は地震から津波の到達までにかなりの時間がありましたが、いつもこうとは限りません。結婚式場でもし式の最中だったらどうするのか、金城ふ頭につくっているJR博物館の避難誘導はどうするのか、しっかりシュミレーションしていただくよう要望しておきます。
臨港地区の大気汚染対策について
大気汚染対策と測定局の設置について
【山口議員】
今年はCOP10開催の年でもあり、環境問題への取り組みが注目されます。水族館や藤前干潟の活用も大切ですが、その前に解決すべき課題が大気汚染問題です。
臨港地区は人がいない地域とされ、大気汚染などの環境基準は適用除外されています。ですから管理組合の環境保全センターは水質保全が中心で、大気汚染対策は皆無です。一方、県や市の大気汚染対策でも臨港地区は事実上対象外です。
しかし臨港地区には、工場が林立し、コンテナトレーラーが行き交う、排気ガスの一大発生源です。そこでは多くの労働者が働いており、またすぐ近くに市営県営住宅もあり、多くの住民が暮らしています。
そこで管理者にうかがいます。臨港地区およびその隣接地域についても大気汚染対策が必要との認識をお持ちでしょうか。この地域でも大気汚染の常時測定が必要と思いますが、測定局を設置する考えはないか、うかがいます。
臨港地区の大気汚染の実態をまずは一度きちんと測定してもらいたい(再質問)
【山口議員】 結局、管理組合としては大気汚染を測定する気は全然ない、との答弁です。大気汚染の観測は愛知県や名古屋市の仕事というだけです。でも県や市は、環境基準が適用されない臨港地区には測定局は設けない。このままでは港区の住民は救われません。管理者、臨港地区の大気汚染を測定するのは日本初の仕事ですよ。今日は港の管理者として答弁していただいておりますが、名古屋市とも協議もしていただきたい。この臨港地区の大気汚染の実態をまずは一度きちんと測定していただきたい。再度、答弁を求めます。
環境基準の適用から臨港地区を除外するな(意見)
【山口議員】 大気汚染問題は、ぜひ国に対しても環境基準の適用から臨港地区を除外することは現実に合わない、改善せよと、と管理者からも働きかけていただきたい。これは強く要望しておきます。そのためにもぜひ県市としっかり相談して、名古屋港臨港地区での大気汚染の測定と対策に取り組んでいただきたい。
核密約問題とアメリカ艦船への対応について
管理者による非核証明を
【山口議員】 日米間の核密約で、アメリカの軍艦が日本の港に寄港する際に核兵器が事前通告なしに持ち込まれていたことが明らかになりました。外務省の有識者会議は、密約の根拠となる討論記録の存在を認めながら、密約の存在をはっきりと認めない、むしろ核持ち込みを今後とも事実上容認するに等しい、非常に不十分な報告書でお茶を濁そうとしています。
それでも日本政府がアメリカ軍の核兵器持ち込みを事実上、容認していたことはほぼ間違いのない事実です。
先の11月議会では、「米軍艦の入港に際しては非核の証明が必要だ」との質問に対し、当局は「外務省からは、米国からの事前通告がないので核は積んでいない、と聞いている」と答弁しました。アメリカの軍艦が入港するたびに、同じ答弁が繰り返されてきましたが、少なくともこの答弁には何の根拠もなかったことが、今回の核密約調査でも明らかになったと思います。
そこで以下、数点を管理者にうかがいます。
今回の核密約の調査結果を踏まえて、これまでの答弁と今後の対応について見直す考えはありませんか? 国の「事前通告がないから核兵器は積んでいない」という論理はもう通用しないことは、あなたも認めますね、この点での認識はいかがですか。まずうかがいます。
また管理者は、同じく質問に対して「わしが勉強したところ、核は積んでないと思います」と答えました。あなたのこの答弁の根拠は何か、聞かせてください。
1991年にブッシュ大統領は「水上艦艇からの核兵器を撤去する方針への転換」を宣言しました。でもアメリカは、艦艇からは撤去したとしながら、一方では、いまでも「核兵器の存在を否定も肯定もしない」いわゆるNCND政策を堅持しています。
しかも94年にはクリントン大統領が91年宣言を修正し、攻撃型潜水艦への核搭載を復活し、また有事には再び核の搭載があるとの姿勢を堅持しています。日本政府の対応はこの宣言があっても何も変わっていないのです。
核密約が廃棄されない現状では、政府・外務省の言い分は信用できません。ですから、あなたが港湾管理者=自治体の長として、名古屋港に入港を求めるアメリカ軍艦に対して、核兵器を積んでいない非核証明の提出を求めるべきではありませんか?お答えください。
アメリカ軍に証明を出させるのは恐れ多いのならば、あなたの責任で「核兵器は積んどらん」と宣言する。つまりアメリカ軍は、核の有無を明らかにしない方針をとっているが、その方針は名古屋港には通用しないと管理者がアメリカ領事館に通告するぐらいしませんか。
非核三原則それ自体を否定し、アメリカ軍による名古屋港への核兵器持ち込みを容認するというのなら話は別ですが、あなたが非核三原則は守る、核持込みは認めないとの立場に立つのなら、国まかせでなく責任ある姿勢を示すべきです。以上、はっきりとお答えください。
*文書回答は間違いだった、と後日、陳謝と削除がありました。
核密約と米艦船への対応で国言いなりとは驚き
【山口議員】 管理者がここまで国言いなりの態度とは驚きました。管理組合のこれまでの答弁はいったい何だったのか、何の反省も聞かれません。
核密約の存在を外務省の調査委員会は、はっきりと認めませんでした。あいまいなまま「暗黙の合意」があったというだけです。だから、いろいろ言いながらも、自民党政権下では「アメリカから事前協議がないから核持ち込みはない」だったのが、民主党政権では「アメリカが91年以降は積んでいないと言うのだから積んでいない」と変わっただけです。日本の主体性はどこにもない。アメリカが日本との核密約にしたがって核兵器を自由に持ち込める状況には何の変化もありません。「核兵器搭載の有無を明らかにしない」政策をアメリカは変更していません。核密約問題は過去の話ではありません。
再度、うかがいます。
あなたは、アメリカが核兵器の存在を否定も肯定もしない政策をいまでも継続していることを認めますか。この政策と日本の非核三原則、そして「91年以降は核を積んでいないというから積んでいないんだ」という政府の姿勢は矛盾すると思いませんか。
核密約の存在をあなたは認めますか。認めたうえで、核密約の廃棄を国に迫るべきではありませんか。
国が核兵器の有無を確かめないのなら、自治体として、入港する艦船に「非核証明書」の提出を求めるしかないでしょう。いかがですか。以上、再度、管理者の答弁を求めます。
そんな姿勢では、港湾の安全も自主性も守れない
【山口議員】 安全保障問題については、それはそれとして論争したいのは山々ですが、いま問題にしているのは、自治体の長、港湾管理の責任者としての自主性、主体制を問題にしているのです。
問題は、日本が核兵器廃絶をめざす、非核三原則を守ります、といくら世界に叫んでも、アメリカとの核密約を清算できなければ、誰からも相手にされませんよ。
国がそういう態度だから、自治体ががんばらなければいけないのです。市民が選んだリーダーは、国の言い分をそのままオウム返しにする人だったのか、とあなたを応援した市民もがっかりしますよ。
期待を集めて政権に就いたと思ったら、やることはいままでと同じでがっかりだ、民主党もあなたも一緒ですね。そんな姿勢では、港湾の安全も自主性も守れない。
国際戦略港湾選定と港湾の民営化について
釜山港並みのハブ港を目指す方針なのか
【山口議員】 国際戦略港湾の選定が話題になっています。議員総会の説明資料では「公共事業の投資余力が狭まるなか『選択』と『集中』を行い、国際競争力のある国際戦略港湾を選定する、三つあるスーパー中枢港湾を一つか二つに絞り込む方針」とあります。しかし、スパ中も同じように「選択」と「集中」と言いながら結局、スパ中以外でも北九州や福岡港、そして清水港にも水深15m級の大水深バースが次々に作られてきました。選択にも集中にもなっていません。
国主導の大型開発競争にあおられるのではなく、名古屋港は、中部のものづくり産業を支える物流拠点として、身の丈にあった港湾整備こそ進めるべきです。そこで以下、数点うかがいます。
国際戦略港湾の目的として「釜山港等に伍する国際競争力のあるコンテナ港湾を選定する」とあります。釜山港のコンテナ取扱高は、名古屋港の4.7倍です。それだけのコンテナ取扱量を本港もめざすのですか。
ハブ機能をもった港湾でなければそんな取扱高にはなりません。名古屋港はハブ港をめざす方針はやめたのではありませんか、答えてください。
水深18mの大水深バースはどこに作るのか
【山口議員】 選定基準には、「将来のコンテナ船の大型化に対応しうる水深18m級のターミナルを確保できること」とあります。名古屋港では水深16mバースを二つ作るのに約800億円もの費用をかけました。しかしこの水深の岸壁ですら十分に活用しきれず、鍋田の新バースは水深を14mから12mに変更したばかりです。
「将来」とか18m「級」とか、表現をぼかしてはいますが、基本的に浅瀬の名古屋港に本気で水深18mもの大水深バースをいったいどこにつくるのか。目論見書にどう書くのか、答えてください。
民の視点で新しく具体化する施策とは
【山口議員】 選定基準にはまた、「コスト低減や貨物集荷を実現させる方策として、公設民営といった『民』の視点からの効率的な港湾経営等の施策が具体的であること」とありますが、民の視点で、どうしてコスト低減や貨物集荷が実現できるのか何の説明がありません。公共ターミナルをいくつも運営する名古屋港管理組合は、既に日本一の港と胸を張っているじゃありませんか。他の港よりも民の視点が強かったから日本一になったわけではありません。
株式会社のセントレアが貨物の集荷や航路維持に成功していますか。民の視点で何でも解決するというのは幻想です。名古屋港では現在でも公共と民間が力を合わせて立派に運営しているではありませんか。この選定基準にそって、民の視点で新しく具体化する施策とはいったい何か、答えてください。
名古屋港は独自の道を進むべきだ
【山口議員】 コンテナ取扱い個数では名古屋港は、東京、横浜に次いで国内3番目です。大阪と神戸が一体化するとさらに順位は下がります。名古屋港が日本一なのは取扱貨物量や貿易高であってコンテナ取扱量のことではありません。
コンテナのみに着目した国の戦略港湾の選定方針そのものが間違っているとは思いませんか、これはぜひ管理者に答弁を求めたい。名古屋は名古屋の独自の道をいくべきではありませんか。お答えください。
国の方針に異議ありと言うべきだ(再質問)
【山口議員】 釜山港並みのコンテナ取扱量をめざすのか。明確な答弁がありません。管理者もコンテナだけでなく総合力で名古屋港を選んでほしい、と答弁されました。だったら管理者、コンテナだけが選定基準になるような国の方針にこそ異議あり、と言うべきではありませんか。もういちど答えてください。
スパ中構想で、国際競争力が高まったのか
【山口議員】 国の言いなりになる必要はありません。そして、新たな絞り込みの前にスーパー中枢港湾政策の総括こそ必要です。スパ中以外でも大水深バースが次々に掘られていったと指摘しましたが、この総括なしに、新しい選択と集中が提案されても簡単に乗れる話ではありません。そこで選任副管理者にうかがいます。
スパ中構想でほんとうに選択と集中が進み、日本の港湾の国際競争力が高まったと総括しているのですか。
また名古屋港では港湾コストの3割削減と言われていましたが、それは実現できたのですか、はっきりと数字で実績を示していただきたい。
国際戦略港湾に選ばれることが本当にいいことか
【山口議員】 スーパー中枢港湾の総括もまだまだです。十分な成果があったとはとても言えない、根拠のある数値も示せないのなら、科学的な検証ができないじゃありませんか。民の力を借りたら、コストは企業秘密だから答えられない。これでどうして港湾コストの3割削減なんて言えるのですか。民間活力の導入と言えば、なんでも解決できるという発想をあらためていただきたい。
「民の視点」では、ふ頭公社の株式会社化しか具体的な答えはありませんでしたが、よく考えていただきたい。国際戦略港湾に選定されてさらに民営化の推進ということになれば、民の主役は、地元の港運業界ではなく、中央や海外の巨大資本です。地元業界が名古屋港から駆逐されかねません。国際港湾だからと港湾の管理運営権を、国と独占資本に譲り渡していいのですか。国際戦略港湾に選ばれることがいいことなのか、関係する業界や港湾労働者、職員の意見を落ち着いてよく聞き、冷静に検討していただきたい。
水族館の改修について
改修はシャチの飼育上問題があったから行うのか
【山口議員】 最後に水族館のシャチ第2プールの改修についてうかがいます。
改修の中身は、配布された資料では、いわゆる通常の防水塗装工事とのことですが、私が調べたところではFRP(繊維強化プラスチック)防水からエポキシ樹脂防水に仕様を変更する大規模な改修です。予算も6825万円です。もともと防水保証期間は10年なのにその途中で防水仕様を全面変更するのはなぜか。
以前のFRP防水ではプール壁面の表面が浮き上がってデコボコになり、それをイタズラ好きのシャチが歯で食いちぎっていたと聞きました。いまから考えるとイルカならともかくシャチのプールにふさわしい仕様だったのかとの疑問の声も聞きます。この改修はシャチの飼育上、問題があったから行うのではありませんか。
改修予算はどの予算か。なぜ議会へ説明しないのか
【山口議員】 シャチの入手が11月議会で報告されたのに、この改修予算は計上されず、気がついたら既に工事が進んでいました。議会には巨額の費用を伴う改修工事について何も説明はありませんでした。「ガーデンふ頭文化厚生施設補修費」という費目は、当初予算にも補正予算にも掲載されず、いきなり繰越明許です。
いま行われている工事の費用は、どの予算を使っているのですか、予算の流用ではありませんか?なぜ議会へも説明がなかったのか、答弁を求めます。繰越明許ですが、工事が遅れているのか、予定通りなのか、教えてください。
名古屋港水族館と北韓のプール。
(名古屋港管理組合及び名古屋港水族館のホームページより)
音に敏感なシャチ(ナミ)への花火の影響は
【山口議員】 音に敏感な鯨類への配慮のために工期が延びているとも聞きます。シャチも音には敏感な生き物です。ところで、クーが調子を悪くしたのは防音性がない第2プールにいて花火の大音響に接したため、とのうわさがあります。死亡した年だけこのプールにいて、前年までは音が聞こえにくい奥のプールにいたとも聞きますが、ほんとうですか、心配なので念のためにうかがいます。
ナミは花火の晩はどのプールで過ごし、どこで花火の音を聞くのか。普段過ごすいま改修中のプールなのか、もうひとつ奥のプールに移るのか、教えてください。
工事の遅れと工期への影響は
【山口議員】 5億円で入手する新しいシャチ、ナミには市民県民の大きな期待があります。私たちも万全の準備をして迎えたいのです。この改修がナミの搬入に合わせるために、あせって不完全な仕上がりになっては困ります。
いまの工期に無理はありませんか。
あせらず、あわてず、シャチの受け入れに万全の準備を(意見)
【山口議員】 シャチのプールの改修工事は、指定管理者としての補修業務を越えた大きな工事であり、飼育環境の大きな変化です。ところが、このことについて議会には何の説明もありません。何か隠さなくちゃいけない都合の悪いことがあるのか、と疑問を持つのは当然です。議会にも知らせず、予算を流用しました、と簡単に言ってもらっては困る。しっかりと反省していただきたい。
そのうえで、あせらず、あわてず、シャチの受け入れに万全の準備をお願いしたい。
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国で調査・設計、予算等が決まる。負担率は協議
【企画調整室長】
高潮防波堤の沈下対策は、幅広堤と嵩上げを基本に適切な対策工法の採用でまとめられた。今後、国が現地条件を踏まえた詳細な調査や設計を行い、具体的な対策工法や対策施工範囲が定められる予定。必要な予算や工期は、対策工法等の決定後に明らかになると聞いております。
愛知県及び名古屋市と連携を図りつつ、対策工法や費用負担のあり方について国と協議します。参考までに、昭和35年度より高潮防波堤を建設した伊勢湾等高潮対策事業の地方負担割合は32%、平成元年度より鍋田堤を改修補強した港湾整備事業の地方負担割合は50%でした。