2010年4月臨時会  議案質疑(4月19日)
議会における議論の積み重ね、議論の到達点の
結果を尊重しないのか。どのように認識しているのか
山口きよあき議員

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名古屋市市民税に係る減税条例の一部改正について


山口議員

10カ月間、委員会等で約40日の議論を重ねた

【山口議員】
通告に従い、減税と地域委員会について、河村市長に数点うかがいます。

市長のいわゆる市民税10%減税を盛りこんだ予算案は、先の2月定例会で市民サービスの低下をもたらすとの厳しい批判を受けて、いくつかの修正がなされ、また減税そのものも今年一年に限ることに改められました。

しかし、市長は、減税の恒久化を再び提案してきました。名古屋市会は、この減税について、昨年6月以来、再議を含む五度の議会と閉会中審議をあわせて委員会審議だけで22日、本会議を入れると約40日に及ぶ議論を積み重ねてきました。これだけ議論してきたら、互いの認識も深まり、より良い施策となるように必要な修正を行い、また見直し規定を設けることも、国会ではよくある、ごく普通の政治の姿です。

わが党は、議会では徹底的に審議をし、反対すべきは反対の態度を貫きますが、たとえ議会の議決が、自分たちの意に沿わない結果となっても、審議が尽くされた結果の議決は真摯に受け止め、尊重します。

ところがあなたは、この間の議会論議の経過も結果もまったく無視して、自説にこだわり続けています。自分の提案に対して「イエスかノーか」だけを議会に迫るのは尋常とは思えません。あなたとはいくら議論をしてもまったく時間の無駄なのでしょうか。議会は市長の提案を黙って採決すれば良い、とでも考えているのでしょうか。あなたも長年、国会で議会人として活動してきた一人でしょう。

市長はこの間の、議会における議論の積み重ね、議論の到達点をいったいどのように認識しているのか。まずうかがいます。

公約なので実現させたい(市長)

【市長】
公約でございますので、何としても実現させたいということにつきます。

市民の声を反映した議論を経て導き出した結論を、市長は素直に尊重すべきだ

【山口議員】
私ども日本共産党市議団は、昨年11月議会では減税条例に対する修正案を、先の2月議会では予算に対する組み替え動議を提出しました。

減税を行うのなら庶民減税に徹すべきです。個人市民税には所得制限を設けて市長の公約通り金持ち減税はゼロにし、所得の低い均等割り世帯の減税は300円から2900円へと手厚くする。法人市民税は減税しない。こうして減税規模を70億円圧縮し、市民サービスにしわ寄せさせません。また、その実施は、景気動向や財政状況を踏まえて一年ごとに見直すという提案です。

今回、一年で見直すことになったのは、市長の減税では、市民サービスの低下が避けられないことが議会の審議で明白になったからです。

加えて、修正された予算でも、大企業と高額所得者に手厚い減税、という構造的欠陥は何ら解消されておらず、このまま減税を継続することは市民の利益に反します。

議会が、金持ち減税のツケを庶民にまわすな!という市民の声を反映した議論を経て導き出した結論を、市長は素直に尊重すべきではありませんか。答弁を求めます。

共産主義と私の思いと違う(市長)

【市長】
やっぱり共産主義とちょっと違うのではないかと思わざるを得ない。税金で全部やるという議論でなく、減税して民間の力で可処分所得を増やして公共サービスも、出来る限り補助金から寄付金に転換して、民間の力でやっていくべきだという考え方ですので、どこまで行っても話が合わんと思います。

金持ちはゼロの方向で抜本的に見直すべき

【山口議員】
あなたの減税の目的は、庶民の生活支援ではなく、形を変えた大企業支援であることもはっきりしました。一律10%の減税にこだわった結果、大企業では1社で年間2億、1億の減税になるのに、赤字に苦しむ中小企業への減税は年間わずか5千円です。こういう減税の方法は経済成長にとってもプラスにはならないと私は考えます。

リーマンショック以前の10年間で、日本は「成長が止まった国」「国民が貧しくなった国」という世界でも異常な事態に落ち込みました。新自由主義、構造改革路線の経済政策で、大企業は巨額の利益をあげましたが、それは少しも国民・市民の暮らしにまわらず、過剰な内部留保となって蓄積されました。市民のふところが冷え込み、内需が伸びないから、企業の投資先もいまや圧倒的に海外中心です。外需依存型の経済がどれだけ脆いものだったかは、輸出依存型産業のメッカである愛知・名古屋がいやというほど経験しました。

わが党は、大企業の過剰な内部留保と利益を、国民生活に還元することを主張しています。極端な輸出依存型の経済から、家計・内需主導の健全な経済成長の路線へと変える。大企業には、社会的責任として、10年間で140兆円から230兆円へと90兆円も増やした過剰な内部留保のほんの一部をとりくずして、労働者と中小企業に還元させることが、経済の成長戦略にも必須の課題となっているのです。

今回、減税の目的に「将来の地域経済の発展に資する」ことを加えるようですが、あなたの減税は、大企業の過剰な内部留保の蓄積を、市民税レベルでさらにすすめるものであり、地域経済の発展に資するものにはなりません。

あなたがいまでも庶民の味方とおっしゃるのなら、そして地域経済の発展に資するため、というのなら、減税の中身は、庶民のふところを直接温めるものに改めるべきではありませんか。 せめてあなたの公約通り、金持ちはゼロ、そして法人市民税の減税は除く、この方向で抜本的に見直すべきではありませんか。

国のやり方に合わせた(市長)

【市長】
平成19年より単一税率となっていますので、減税のほうも1割と国のやり方に合わせた。

逆進性を弱める方向での減税でなければ、庶民減税とは呼べない(再質問)

【山口議員】
市長から共産主義について教えていただかなくて結構です。さっきの議論ではこの議場の人は皆共産主義になってしまいます。そんな議論していない。

市長、あなたは結局、一年近くも議会であなたも含めて議論してきたのに、まったく認識が変わらない、進歩していないのですね。議論の到達を踏まえた修正案を出すというのならともかく、自分の当初案にこだわりすぎです。

初心を貫くといえば立派に聞こえますが、自分の案がいちばんだとうぬぼれちゃいけません。

「減税の財源は、必要な市民サービスを確保しつつ、行財政改革で生み出した」と答えていただきましたが、必要な市民サービスが削られたから、市民は怒り、議会は予算を修正したんですよ。事実と違うことを平気な顔で言ってもらっては困ります。名古屋市の信用にかかわる問題です。

「減税が最大の市民サービス」と市長は言います。この場合の市民には、非課税の低所得世帯から高額所得者、そして大中小の企業・法人もみんな含まれます。でもあなたは「庶民革命」と一方でおっしゃっています。

そこでうかがいますが、大企業には億単位、高額所得者には一千万円をこすような減税を、あなたは庶民減税と呼べますか。 庶民のための減税とは市長、いったいどんな減税だとお考えですか。私は、累進課税の原則を強化する、少なくとも低所得者ほど負担が重い逆進性を弱める方向での減税でなければ、庶民減税とは呼べないと思いますが、いかがですか。

たくさん減税される方は、たくさん所得税を払っている

【市長】
大きく企業減税される方はその分たくさんの法人税を払っている、個人もたくさん減税される方はその分たくさんの個人の所得税を払っている。税率として掲げたものをまず下げる、これが一番の最初の市民サービスだ。

庶民にこそ手厚い減税でなければ、地域経済の発展に資することにはならない

【山口議員】
お金持ちと大企業の減税を庶民減税と呼べるのかという質問には答えがなかった。フラット化の問題意識を持っているならそこをただしていく減税を提案してほしい。

継続して実施するのが庶民減税の条件ですか。それはちがうでしょ。いまの答弁にあった「厳しい経済状況の中で頑張っている家計を」素直に応援してこそ庶民減税ですよ。

先ほどの答弁でも法人税減税の効果を強調されましたが、「設備投資の増加が期待される」「減税が雇用の確保に充てられた場合には、一定の効果がある」と言われたが、これはあなたの主観的願望、片思いですよ。赤字中小企業の減税は一社で年間5千円ですよ。雇用も設備投資も増やせません。

大企業はどうでしょう。あなたは国会で何を見てきたのですか。この十数年、大企業への法人税は次々に減税されました。その減税分が、雇用にまわりましたか?国内の設備投資が増えましたか?投資といえば海外へ、雇用は不安定になる一方でした。

安定した雇用を増やす保証も担保も、あなたの減税案には何一つないじゃありませんか。応援する相手を間違えてはいけない。

景気回復のためにいま必要なのは、庶民の暮らしを直接、応援することです。低所得層から中堅所得層に手厚い減税になってこそ、消費が拡大し内需が増えるのです。

大企業や高額所得者に減税しても、貯めこまれ、海外へ投資されるだけ、市民にまわってこないじゃありませんか?あなたの減税は景気回復にも将来の地域経済の発展にもプラスになりません。

大企業や高額所得者ではなく、庶民にこそ手厚い減税でなければ、地域経済の発展に資することにはならない、とは市長、思いませんか。

共産主義の計画経済のほうがましだ(市長)

【市長】
あなたの方法では絶対経済は発展しません。共産主義をとられて計画経済やられたほうがさらにええと思います。減税というのは、まずいちばん最初に政治がやらないかんことです。

庶民・庶民というなら、なんで公務員になると急に守るんですか。そんなことで経済が発展するんですか。

旧い自民党政治の焼き直し、国民に痛みだけを押し付ける「構造改革」路線そのものだ

【山口議員】
聞かれたことに答えなさい。市長のやり方こそ経済の発展を阻害するとはっきり言わせていただきます。

私はあなたに対し、はっきりと野党の立場から質問していますが、あなたを市長に選んだ市民の選択の重みは十分に意識しているつもりです。私たちは、あなたの減税への強いこだわりと、市民の減税への期待感も踏まえたうえで、あえて減税を行うのなら、文字通りの「庶民減税」にしましょう、と提案してきたつもりです。

でも、あなたはまったく議会の意見、市民の声に耳を傾けようとしていない。いまのままの提案では「庶民減税」とはとても呼べません。この減税を続けても、庶民の暮らしも、名古屋の経済もよくなりません。

恒久減税を否定したからけしからんと言いますが、税制は、あなたがいうほど恒久的ではありません。よくも悪くも、変わっていくものです。

市民税、住民税の歴史を振りかえってみると、1987年、住民税の最高税率は18%、それが翌88年には16%、また翌年89年には15%と毎年変わりました。 最高税率が適用される、所得階層では4900万円以上、翌年は1900万円、そのまた翌年には500万円以上に大きく変わりました。

国の税制でも、1年で税率が変わる年が2年も続いたのです。同じ年に所得税も2年連続して税率が変わりました。これで日本への企業進出が大きな影響を受けましたか?そんな話は聞いたことありません。

1年ずつ見直すのは、経済運営上もごくごく当然のことではありませんか。なぜ恒久にこだわるのか、私にはまったく理解できません。

ナゴヤ弁だから一瞬、新鮮に聞こえますが、あなたの減税は、形を変えた大企業支援、国民が退場の審判を下した旧い自民党政治の焼き直し、国民に痛みだけを押し付ける「構造改革」路線そのものです。この路線はきっぱり清算しなければならない。

まちがった減税の恒久化を認めるわけにはいきません。続きの議論は、委員会の審議に委ねます。

地域委員会モデル事業について

モデル地域の取り組みをフォローし、成果と問題点の検証に集中すべき

【山口議員】
補正予算案に盛り込まれた地域委員会モデル事業についてです。地域委員会制度は、その活用と位置づけ次第では、住民自治の新たな発展につながる可能性を秘めた制度です。

しかしそのためには、第一に、名古屋市が責任をもつべき福祉の安易な受け皿としないこと。第二に、単なる行政の下請け機関にしないこと。第三に、既存の地域自治組織について十分な評価と総括を行い、それぞれの課題と役割を整理すること。第四に、委員選出をはじめ、住民合意のルールづくりを、それこそ住民合意を大切にして民主的に定めていくこと等が不可欠です。

現在、八つのモデル地域が動き出していますが、公募委員の選出ひとつとっても、いくつも問題点が噴き出しています。しかも肝心な地域予算については、これから本格的な議論が始まる段階です。このモデル事業の検証をきちんと行うことが議論の大前提です。

ところが補正予算は、検証も不十分なまま、新たにモデル地域を増やすというものです。地域委員会は行政区ではなく小学校区サイズの取り組みなのですから、すべての行政区で一律にモデルを行う必要はありません。

民主主義の新たな仕組みをつくるのに、市長のトップダウンという強権的な手法で進められては、市長の言う民主主義が泣きます。

市長、焦る必要はありません。モデル地域の拡大ではなく、既に始まっているモデル地域の取り組みをていねいにフォローし、その成果と問題点を十分に検証することに、今年度は力を集中すべきではありませんか。

264の数を考えた場合、勉強のためにも各区1つおくのは当然(市長)

【市長】
264小学校があり、何とかそこに広げていきたい、8つで止まるという議論はとてもありません。あと8つ増やして各区1個にすることは、264の数を考えた場合当然のこと、区役所の職員も非常に喜んでおられる方も多いと聞いております。横割りの議論が出てきますので。ですから区役所の職員も、全力を挙げて地域委員の皆さんをフォローしていますけど、このトレーニングというか勉強のためにも各区1つおくのは、当然のことだ。

 

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