名古屋港管理組合議会 一般質問(6月9日)
ハイ中・国際戦略港湾の選定は名古屋港にふさわしいか
新庁舎建設運営事業の金利負担や事業展開への不安

山口きよあき議員

国際戦略港湾の選定をめぐる諸問題について


山口議員

国際戦略港湾の選定はだれがどのような基準できめるのか

【山口議員】
国は、国際競争力を強化するためとして、コンテナ貨物の集約を図るコンテナ国際戦略港湾を1ないし2港へと絞り込むとしています。今、伊勢湾初め4地域が応募し、6月中の選定目指した作業の真最中です。ところが、民主党政権は国民の期待を裏切り、厳しい批判を浴びて首相を交代せざるを得ない状況になりました。国土交通大臣は留任するようですが、港湾政策はどうなるのでしょうか。

戦略港湾の選定は、10人の選定委員が幾つかの項目について採点評価し、国交省の政務三役が最終的に決定すると言われています。この選考レース最終盤でジャッジするメンバーが変わる可能性について、ある新聞では、関係者の声として、「これまで時間をかけて選定に向けた話し合いを国としてきた。内閣の顔ぶれが変わるのに、すぐに結論を出せるのか」「現在の国交省の政務三役には関西出身者が多く、関西びいきの選定が行われるのではと心配していたが、三役が交代すれば、選定に絡む力のバランスが変わると期待する声もあった」、こう報道されました。政治主導は民主党政権の売りの一つだそうですが、政治的な思惑で選定がゆがめられるのは問題です。

国際戦略港湾の選定はだれが行い、どうやって決まるのでしょうか。選定委員の採点結果は公表され、その得点で決定するんですか。それとも、それはあくまで参考で、政務三役の政治判断で選ぶんでしょうか。もし政務三役の政治判断だったら、メンバーはまだわかりません。6月中の選定は無理だと思いますが、一体どういうルールでいつ選定されるのか、改めて現時点で管理組合としての見通しと現状認識をまず伺っておきたいと思います。

検討委員会が評価を行い、国土交通省が成長戦略会議の意見を踏まえ決定

【企画調整室長】
国際コンテナ戦略港湾検討委員会が、港湾管理者等の計画の内容に基づき、選定基準との適合性を、優位性、具体性、実現性等の観点から評価を行い、国土交通省が国土交通省成長戦略会議の意見を踏まえて決定され、選定時期は、平成22年6月ごろ、となっている。


名古屋港管理組合議会で質問する山口議員と管理者の河村市長

スーパー中枢港湾構想の総括が大前提。コンテナ取扱いのコストダウンはどうか

【山口議員】
コンテナ国際戦略港湾への絞り込み、この新たな政策を進める前提は、スーパー中枢港湾政策の総括です。3月定例会で、私の質問に対し、山田専任副管理者からは、「2月に出された国の総括によると、スパ中のコスト3割削減の目標については2割弱の低減、リードタイムは目標の1日を達成した。名古屋港では、リードタイムは約1日を達成したが、コストについては、民間事業者間の取引費用が把握しづらいが、国の試算の考え方を踏まえて検討していきたい」、こういう答弁がありました。

私が国土交通省からもう少し聞き取りをしたところ、国がいうコストの2割減の根拠として、京浜港のデータが示されました。京浜港のコストを100とすると、釜山港は79、釜山新港では59、こういう数値も示されました。コストの比較というのは、端的に言って、40フィートコンテナ1個当たりの取扱料金の比較、こういうことでした。ところが、不思議なことに、スーパー中枢港湾の阪神港や伊勢湾港のコストについても、またそれ以外の港湾のコストについても、国土交通省ははっきり答えません。

一方で、輸入貨物のリードタイムについては、財務省関税局による輸入手続の所用時間調査結果によるとして、スーパー中枢港湾以外の港湾も含み、全国の港でリードタイムがほぼ1日に短縮できた、こう国交省は言うんです。スーパー中枢の港湾だからリードタイムが短縮したわけでもありません。こんな総括しか出てこないスーパー中枢港湾とは一体何だったのか。そこで伺います。

副管理者が検討したいと答えた名古屋港のコンテナ取り扱いに係るコストの試算結果はどうなりましたか。釜山港に伍する港を目指す戦略を立てたんだったら、当然名古屋港と釜山港とのコスト比較をしたと思いますが、名古屋港のコンテナ取り扱いのコストについて、はっきり数値で示していただきたい。

スパ中港湾全体で2割弱のコスト低減だが、個別港湾ごとには不明

【企画調整室長】
スーパー中枢港湾の総括における港湾コストの試算の考え方は、京浜港のみならず、伊勢湾を含めたスーパー中枢港湾全体のもの。それによると、平成20年時点におけるコストは2割弱の低減となっており、個別港湾ごとのコストは、現在のところいまだ明らかにされていない。国の試算の考え方が明らかになった段階で、その考え方を踏まえ、検討する。

スーパー中枢港湾構想による名古屋港への貨物集約の進展はどうか

【山口議員】
コスト削減には、コンテナ取り扱いの絶対量をふやして、だから1個当たりのコストを削減する、こういうことも重要です。しかし、もうそもそもスーパー中枢港湾の指定を受けなくとも、国内では、京阪、伊勢湾、阪神、この3港湾で既に圧倒的なコンテナ取り扱いのシェアを占めています。スーパー中枢港湾構想によって、この3港湾への貨物の集約がどれだけ進んだのか。また、名古屋港への貨物の集約がどれだけ進んだのか。産業の発展に伴う貨物の増加ではなくて、スパ中政策により貨物をどう集めたのか、この実績をそれぞれの数値でしっかり示していただきたいと思います。

産業の発展に伴う増加分を別にして貨物の集荷実績をはかることは困難

【企画調整室長】
産業の発展に伴う増加分を別にして貨物の集荷実績をはかることは困難。一つの目安として、日本の実質GDPと本港の基幹航路のコンテナ貨物量の伸びを比較すると、日本の実質GDPは平成15年から平成20年で8.1%増加、これに対し本港の基幹航路のコンテナ貨物量の伸びは14.2%と増加しており、経済成長率を上回る貨物量の伸びが見られます。

ハイパー中枢港湾戦略での国際競争力強化とは何か

【山口議員】
国の重点投資先をスーパー中枢港湾の3港湾に絞ったものの、この間の圧倒的なアジアの経済発展の中で、日本の港湾の地位は相対的に低下してきました。危機感を持った国は、さらなる国策として国際戦略港湾、ハイパー中枢港湾へと重要港湾の絞り込みを進め、港湾の国際競争力を維持強化しようとしています。次に、この国策と名古屋港との関係について、幾つか伺います。

まず、港湾でいうところの国際競争力の強化とは、一体何のことなんでしょうか。具体的な目標は、日本での基幹航路の維持と聞いています。港湾コストを下げて、釜山港へ流れたフィーダー貨物を奪還し、特定のハブ港、トランシップ港にその貨物を集約させることで基幹航路を維持する、これが国際競争力の強化だ、まずこういう理解でよろしいですか、伺います。

コスト低減、効率性・利便性の向上

【企画調整室長】
コスト低減、効率性・利便性の向上を図ることで、地域産業の国際競争力強化とともに、県民・市民生活を支えていくことと考える。

選定にはずれたら他港に貨物を集中するのか

【山口議員】
港湾の国際競争力を強化するためには、このように1〜2カ所の特定港湾に貨物を集中させることが国策として必要だ、このことを仮に認めるとしても、問題は地域の産業経済との関係です。端的に伺いますが、名古屋港が選定から外れた場合でも、この国策に従って名古屋港、つまり中部経済圏からの貨物を国が選んだハイパー港湾に集中させるおつもりですか。

また、逆に選ばれたとき、選に漏れた京阪、阪神、北九、ほかの地域から名古屋港に貨物を集中させることができるんですか。国はそういう誘導をするんでしょうか、あわせて答えていただきたい。

外れても港湾の国際競争力強化に取組む

【企画調整室長】
選定されなかった場合でも、引き続き、背後のものづくり産業を物流で支えるため、港湾の国際競争力強化に資する施策に取り組んでいく。

計画書の概要(平成22年5月7日)

1.目指すべき位置づけ
輸出力でモノの流れを倍増させる「国際産業ハブ港」
【「官」から「民」へ そして、「伊勢湾」から「世界」へ】

  1. 輸出の価格競争力を伊勢湾の総合力で支える。
  2. 特区制度の導入等(1国2制度、免税等)により、釜山と渡り合える国際産業ハブ港を目指す。
  3. 日本の真ん中と産業物流ネットワークを活かし、国内外の広域からの貨物集約を強力に推進する。
  4. 「官」から「民」を加速させた一元的管理経営体制、IT自働化ターミナルなどの先駆的な取組をさらに進化させ、アジア主要港に対抗しうる国際競争力のある港を目指す。
  5. 名古屋港と四日市港は、一港化を視野に入れて、両港の連携施策を進める。

2.目標貨物量

  現状(2008年) 2015年  →  潜在能力
外貿コンテナ貨物取扱量 280万TEU 365万TEU 1100万TEU
内、北米航路貨物取扱量 40万TEU 62万TEU

3.実現のための主な方策
基幹航路維持・強化のためのコスト低減

  • 公設民営化の推進による施設使用料の低減
  • 世界展開を視野に入れたIT自働化ターミナルの拡大

基幹航路維持・強化のための広域からの貨物集約

  • 内航定期船ネットワークの活用
  • 高速道路ネットワークの活用
  • 敦賀港との連携
  • 国内配送拠点の立地促進

戦略的な港湾経営

  • コンテナターミナルの一元的管理経営体制の構築
  • 戦略的なポートセールスの実施

4.実現のための体制

  1. 一元的管理経営体制
    (財)名古屋港埠頭公社を株式会社化し、各ターミナル経営体による一元的管理経営体制を検討する。
  2. 四日市港との連携
    名古屋港と四日市港の一開港化の早期実現。一港化を視野に入れた、連携施策の推進を図るための協議会の設立。

基幹航路及びトランシップ機能は必要か

【山口議員】
国がどんなに港湾の絞り込みを図ろうとしても、背後地の産業にとっては、近くの港を利用するのが一番便利です。貨物がある限り船はやってきます。国策上の重要港湾の絞り込み結果にかかわらず、名乗りを上げた4港湾の存在価値は変わらず、それぞれの地域の産業に見合う貨物の需要はあります。戦略港湾に選定されるかどうかではなく、後背地の産業に見合う港づくりこそが必要ではないでしょうか。

ハブ港として中継貨物の取り扱いをふやすことが地域産業の発展に本当につながるのか、私にはよくわかりません。基幹航路の維持やハブ港、トランシップ港が、本当に今日本や名古屋に必要なのかが問われていると思います。そもそも基幹航路とは何を指すんでしょうか。

基幹航路が名古屋港の貨物需要に占める位置は、アジア経済の発展の中でどう変化してきたのか、これを答えていただきたい。ハブ港が釜山ではなぜいけないのか。背後地の産業構造とは直接関係のない貨物の積みかえ、トランシップ機能がなぜ名古屋港に必要なのか、答えていただきたいと思います。

基幹航路は大変重要、トランシップ機能も必要

【企画調整室長】
欧州・北米の基幹航路における本港の貨物需要に占める変化は、最近10年間では中国を初めとするアジアの荷動きは急拡大していますが、基幹航路も75万TEUから88万TEUに増加している。基幹航路の維持は、ものづくり産業を守るためには大変重要であり、トランシップ機能も貨物集荷のために必要と考えています。

コスト、環境面で問題が多い高速道路網による自動車輸送の計画でいいのか

【山口議員】
国際戦略港湾の新方針に、私は余り右往左往する必要はないと考えます。そのことを前提にしながら、名古屋港の計画書、計画書といっても私たちには概要しか見せられていませんが、この計画書を見ると、首をかしげざるを得ない点が幾つもあります。以下、問題点を指摘し、当局の見解を求めたいと思います。

第1に、国の方針とのずれです。まず、モーダルシフトに関する点です。港湾政策というからには、当然ながら内航フィーダーの重視が一つのポイントになってきます。ハブ港というのなら、全国各地から船で貨物を集めてくることが選定上も大きな比重を占めるポイントになっています。自動車輸送から鉄道や船舶の輸送へと切りかえていくことは、環境負荷を減らすためにも有効な施策です。

ところが、名古屋港の集荷戦略は、ほかの3港の計画に比べても極端に高速道路網による自動車輸送に頼っているのではありませんか。日本海側からの集荷も敦賀で一たん高速道路の自動車輸送に切りかえ、名古屋に運ぶ。この計画は、コストはもちろん、環境面でも問題です。しかも、高速道路の無料化推進が名古屋港の計画の前提ではないんですか。自動車輸送の比率を幾ら減らすかが欠如した計画は、環境重視の時代にはふさわしくないと考えますが、この点はいかがでしょうか。

特定区間、特定車両の高速料金無料化を要望

【企画調整室長】
広域からの新たな貨物集荷としては、内航船による集荷及び自動車輸送による集荷を考えており、このうち8割ほどは内航船による集荷を考えています。また、自動車輸送による貨物集荷の促進を図るため、特定区間、特定車両の高速道路の料金の無料化を国に要望している。

国の絞り込み戦略こそ無意味ではないか

【山口議員】
二つ目に、産業、貿易の総合力で、管理者がよくおっしゃいますが、総合力で名古屋港を売り込む姿勢についてです。

名古屋港は確かにこの地域の産業を総合的に支える港であり、それを誇りに思うことは何ら問題はありません。ところが、国の今回の選定方針は、あくまでコンテナはコンテナ、バルクはバルク、しかも、バルクは穀物や石炭、鉄鉱石など品目ごとに戦略港湾を選定する、こういう可能性が高まっています。残念ながら、総合力は全く評価の対象になっていないのではありませんか。

とりわけ、河村管理者が先ほどもお話しされ、「広報なごや」6月号にもわざわざ書かれていらっしゃる、マイナス18メートルバースのコンテナ・バルク共用構想は、全く評価の対象とはならない。私は国交省の担当者からそう聞きました。本気で選定されるおつもりだったら、国のねらいに沿った計画を提案すべきですが、そうなっていないと私は思います。

伊勢湾は中部の産業経済の力と一体でこそ価値がある、そういう総合港湾だと言うんだったら、国の絞り込み戦略こそ無意味だとはっきり主張すべきです。国の方針と名古屋港の計画書はずれているとは感じませんか。

総合港湾としての重要性を国に訴え

【企画調整室長】
以前から、総合港湾としての重要性を国に訴えてきた。今回の選定基準に総合力は定量評価の対象にはなってないが、総合的な評価を行う場合の考慮事項となっており、伊勢湾の強みであるバルク貨物を含めた総合力を訴えています。また、5月17日に国土交通大臣に面会した際、航路をコンテナ・バルクで共用することについては、「大事なことであり、検討委員会委員の前できちんと説明してほしい」との発言がありました。

貨物の伸びと開発計画が過大ではないか

【山口議員】
第2に、貨物の伸びと開発計画が過大なことです。選定のポイントの一つが、港が発展する余地、いわゆる伸び代だと言われたからといっても、余りにも極端。釜山港のコンテナ取扱量は名古屋港の4.7倍です。将来構想とはいえ、コンテナ貨物で釜山港並みを目指す、1,100万TEUと言いますが、それだけふえる根拠が本当にありますか。はっきり示してください。

国は貨物の集約については経済成長を見込まず、貨物の全国からの集約能力を比較するのが、経済発展でふえるのではなくて全国からどれだけ集めて貨物をふやすかが、今回の選定方針のポイントではないんでしょうか。

あわせて、ポートアイランドを「平成の楽市楽座」と位置づけているようですが、まだどこの自治体に帰属するのかも定かでない土地の開発計画を一部事務組合の提案として国に出してよいものでしょうか。関係自治体の合意形成もないままの提案には同意できません。これは国も戸惑うんじゃありませんか。伊勢湾の真ん中に新たな産業拠点を形成することは、環境面でも大きな影響があり、単純に「夢があってええじゃないか」、これでは済みません。結果的に公害をまき散らしてしまった一時代前の臨海部の大型開発とどう違うのか、この点もきちんと説明をいただきたいと思います。

伊勢湾の将来的な開発空間の潜在能力を算定

【企画調整室長】
計画書は、貨物の集荷については経済変動による影響は見込まないこととしており、計画書に記載している1,100万TEUは、伊勢湾における将来的な開発空間の潜在能力を算定したものです。ポートアイランドは、将来の構想として、1国2制度や免税等を活用した経済特区による大規模な開発空間としての利用の可能性を提案したものです。

コストを下げる戦略を具体的に示せ

【山口議員】
第3に、コストを下げる戦略についてです。初めにスーパー中枢港湾の名古屋港での港湾コストについて質問しましたが、釜山港並みのコスト低減を目指すとするならば、名古屋港のコストの構造を分析し、どこに問題があり、どこをどう下げるのか、これを具体的に示していただきたい。

例えば、港湾で働く労働者の労働コストが高いのか、入港料や岸壁使用料などの公共料金が高いのか、具体的な分析は聞いたことがありません。この現状分析もあいまいなままで「コスト、コスト」と言って民営化と規制緩和ばかり言われても、的外れな戦略になるのではありませんか。京浜港の計画書では、国がこれだけ支援してくれたらこれだけコストが下げられる、国策でコストダウンせよと言うんだったら、その分国がしっかり支援しなさい、と書いてあります。本港はこの点でも、国に支援を求める点で余りに消極的ではないでしょうか。

民間事業者間の取引費用は把握しづらい

【企画調整室長】
港湾コストについては、公共、民間にわたるさまざまな構成要素があり、特に民間事業者間の取引に係る費用は把握しづらいところがある。伊勢湾の計画書では、飛島ふ頭南側コンテナターミナルや鍋田ふ頭第3バースで採用している岸壁などの下物は公共側、荷役機械や舗装などの上物は民間側とする公設民営化を他の既存ターミナルへも展開し、さらに施設の最大活用を図ることにより、コストの低減を目指すことを提案している。この施策を実現するために必要な国の支援は計画書の中でしっかり記載し、要請している。

民主的な合意形成への努力が足りない

【山口議員】
第4に、この計画書、言いかえれば名古屋港の将来構想を国に提案するというのに、議会への説明も、そして港湾労働者や中小の事業者との協議も、管理組合内部の職員との協議も不十分で、民主的な合意形成への努力が余りにも足りないんじゃありませんか。

国際競争力の強化だ、選択と集中だと脅かされて、際限のない大型開発と規制緩和の悪循環にはまり込むのは問題です。国とも対等に議論して、選定方針そのものに問題があれば、遠慮なくこれは指摘する。そういう強い構えを関係者の合意のもとに確立することこそ大切だと私は考えます。

国策に振り回されることなく、名古屋港の将来発展の方向は、すべての関係者と落ちついて協議を重ね、丁寧に民主的につくり上げることを強く求めるものです。

関係機関との十分な議論の上、進める

【企画調整室長】
計画書は、愛知県、名古屋市、地元経済界、荷主企業、港湾関係者等による検討会で取りまとめられた。具体化に当たっては、本組合議会を初め、関係機関との十分な議論の上、進めていく必要がある。国から提示されたスケジュールの中、どうすることが将来の名古屋港、中部地域の発展のためになるのかを第一に考え、選定に向けて、政府等への積極的な働きかけも含め、全力で取り組んでいる。

この地域と経済を支える役割を果たしていけるのか(再質問)

【山口議員】
国際戦略港湾の選定をめぐる問題ですけれども、冒頭に答えられましたが、選定方法も、結局専門家による採点結果は公表するともしないとも言われなかった。参考にするだけで、政治的に決定するわけです。だから、私はこの点で公平性への疑問が消えません。選定作業そのものが信頼できない。こういうときですから、国のオウム返しで、国際競争力のための選択と集中が必要だと呪文のように繰り返すのは、もうやめたらいいんじゃないか。山田専任副管理者に、以下3点伺います。

室長の答弁は、結局のところ、この戦略港湾に選定されてもされなくても、国の政策だからといって無理やり特定の港湾に貨物が集約されることはあり得ないし、名古屋港ももちろん他港へ貨物を回すつもりはない、どこまでもこの地域の経済と産業を支える、それが名古屋港の役割だ、こういう答弁だったと思いますが、そういう理解でよろしいか、これは1点、まず確認をしたいと思います。

選定されるよう最大限の努力をしていく

【専任副管理者】
仮に伊勢湾が選定に漏れた場合、これからの新たな施設整備に支障が生じたり、あるいは選定された港湾に一層基幹航路の集約が促進されることによって、背後産業の国際競争力が低下することが非常に懸念される。

今回の国際コンテナ戦略港湾に選定されるよう最大限の努力をしていく必要があり、ぜひ議員の皆様方にも力強い御支援をいただきたい。

現状分析もないままでは科学的な根拠をもった港湾政策ではない

【山口議員】
2つ目、残念ながら、国際競争力の中身を幾ら尋ねても、明快な答弁は出てきません。答弁では、背後地の産業の競争力が問題なんであって、港湾独自の競争力については、貨物をどれだけ集める力があるかとか、コストをどれだけ安く下げることができるか、こういう肝心の指標を聞いても、明確な答弁は出てこない。この総括なしに新たな方針は立てられない。釜山港とのコストの比較もできないまま、現状分析もないままで、ひたすらコストの低減を図ってまいりますと、こういう答弁を続けられても、これは科学的な根拠を持った港湾政策にはならないと思うんですが、副管理者、この点はどうお考えなのか、答えていただきたい。

港までの輸送費と港湾のターミナルコストの低減について検討

【専任副管理者】
日本発着貨物の中で、釜山港を経由してフィーダーされている貨物をどうやって日本に奪還するかということが求められ、港までの輸送費と港湾のターミナルコストの低減について検討を行った。港までの輸送費は、地方港から釜山港までのフィーダー輸送費と地方港からこの伊勢湾まで持ってくる内航輸送費あるいは内陸輸送費について、これは民間からのヒアリングも行ってコストの比較分析を行って、具体的にコスト低減のための手法についても検討を行った。

また、ターミナルコストの低減には、公設民営化を推進するなど、施設使用料の低減策というものを打ち出しています。これらのコスト低減策の実現に向けて必要となる支援も、国にしっかりと訴えたい。

アジア各港との新たな強調、共存共栄を真剣に考えるべき時ではないか

【山口議員】
3点目に、アジア航路の成長、アジアの各港湾の発展という状況を踏まえたときに、日本の港湾政策はどうあるべきか。この10年間ですけれども、港湾におけるコンテナ取扱貨物量は、全世界で3倍にふえました。ところが、アジアの伸びは3.6倍。世界じゅうで扱うコンテナ貨物の約5割を今アジアで担っています。その中で、アジアの伸びは3.6倍ですが、日本のコンテナの伸びは1.8倍どまりです。アジアの各港と北米・欧州への基幹航路の地位を競争し合うよりも、この成長著しいアジア各港との新たな協調、共存共栄ということを真剣に考えるべきときが来ていると私は考えますが、この点はどうお考えなのか。

急成長するアジア諸港との物流も重要

【専任副管理者】
欧州・北米向けの基幹航路の維持拡充は非常に重要なことだが、急成長するアジア諸港との物流も重要と考えています。現在、この貨物の伸びに対応するために、鍋田ふ頭コンテナターミナル第3バースの整備を推進し、今回の提案書の中でも、成長著しいアジアの成長を積極的にこの地域の発展に取り込んでいく、そういった施策を提案している。

中部経済圏の身の丈に合った名古屋港の運営を(要望)

【山口議員】
コスト低減とまた言われたんだけど、本港のコストが一体幾らなのか、幾つなのか。高いのか、低いのか。どこが他港と比べて問題があるのか。やっぱりこの数字が具体的に出てこない。分析がまだできていないんじゃないかなというふうに、残念ながらこの点は指摘せざるを得ません。これは私は、是か否かはともかく、競争をするとしても大前提の問題だと思います。

その上で、今もお話がありましたが、名古屋港はどこまでいっても背後地の産業を支えるのが仕事であって、このポジションが国の特定の政策で左右されることがあったら困るんです。国の政策によって、名古屋港が外れたとしたらここが、名古屋港が選定されたとしたらほかの地域が、要するに特定地域の産業の競争力が国の政策によって大きなマイナスの影響を受ける、こういうことがあっていいのか。こういう国策自体がやっぱりおかしいんじゃないのと。

河村管理者が言うとおり、私も名古屋港は総合力で勝負する港だと思っていますので、国のこういう選定方針がおかしい。国策として基幹航路の日本寄港を維持するための戦略だったならば、自治体が管理する港湾に必要以上の競争を強いることはおかしいんだ。

これも国交省の担当者と話をしていたときに出ましたが、基幹航路が日本で一つでもあれば、釜山の料金は今のまま抑えられる。日本が全然飛ばされちゃったら、釜山もきっと上げちゃうんで、そっちに幾ら貨物を持っていっても、日本の外航のフィーダーも貨物料金が上がる。だから日本では基幹航路が必要なんだと、この理屈は私もよくわかります。ただ、特定の地域の産業の競争力をそぐようなやり方で特定の港湾に支援を集中する、これはおかしい。

もしも国策でそういうことをやるんだったら、国の責任と負担を明確にして選定をするべきだし、国がしっかり負担をして、国の責任で基幹航路を維持する戦略港湾をつくるべきだと思います。それぞれ後背地の産業を背負っている各港湾のポジションを無理やり変えるような国の戦略には賛同しない方がいいのではないか。あくまでも名古屋港は中部の経済圏の身の丈に合った、そういう名古屋港の運営に努めることを強く要望いたします。

PFI方式による新庁舎建設運営事業について

埋立事業会計からの資金借入による一括払いで利払い節約を

【山口議員】
PFI方式による新庁舎建設運営事業について伺います。

さきの議員総会で説明されたとおり、新庁舎の整備費用は約65億2,000万円、維持管理費用は約27億3,000万円、合計約92億5,000万円を名管本庁舎PFI株式会社に25年にわたって支払う予定となっています。この支払い金額には、確定した額だと2.463パーセントの利息も含まれており、その金利負担は約8億3,000万円となります。公債も発行せず、支払いも平準化でき、PFIは財政的にも有効だと説明されてきました。

ところが、予算審議の中で明らかになったのが、本港の埋立事業会計にある資金約170億円から180億円の存在です。私は、幾らならこのうち一般会計に貸し付けが可能なのかと尋ねましたら、この資金の半額程度、つまり85億円から90億円程度なら貸し付け可能だと、予算の委員会では答えていただきました。

一般会計では、既にこの埋立事業会計から約19億円を借りて、この新庁舎の建設費用の支払いの一部に充当しています。こちらの金利は1パーセントです。この金利差は大きい。PFI事業者へ高い金利を支払い続けるよりも、埋立事業会計から思い切って資金を調達して一括現金払いにすれば、少なくとも金利の差額分、約4億7,000万円が節約できると思うのですが、いかがでしょうか。

財政が苦しいんだったら、どうして高い利息を支払い続けるのか、理解に苦しみます。今さらPFI契約を解除せよとは、私は今は言いませんが、管理運営はきちんとやっていただくとしても、支払いは一括でも問題ないんじゃありませんか、答弁を求めます。

金融機関の監視が機能しなくなる

【総合開発担当部長】
一括発注、性能発注によりコストを削減できること、かつ、割賦払いにより財政支出が平準化できること等より、議会の議決を得てPFI方式を採用している。PFI事業は、PFI事業者が金融機関から資金調達をすることが基本で、金融機関が事業期間にわたってPFI事業者の財務状況を監視するスキームとなっている。埋立事業会計から資金を調達して一括払いすることは、金融機関の監視が機能しなくなる。

現本庁舎の跡地利用の見通しは

【山口議員】
当初の計画にあったホテル事業はいまだに頓挫したままですが、経済情勢が大きく変わってきた中で、ほかの計画も心配です。とりわけ、現庁舎跡地を利用した複合施設に関して、当初の計画どおり、有料老人ホーム、商業施設、賃貸マンションの入居が見込めているのか、この点で現状と見通しを示していただきたいと思います。

有料老人ホームと商業施設を秋ごろをめどに事業計画確定したい

【総合開発担当部長】
住友林業株式会社が、当初の計画どおり、複合施設の開発に向けて、愛知県に有料老人ホームの申請を行い、商業施設においてはテナント事業者と調整を行っている。今後は、平成23年3月の敷地貸付本契約締結に向けて、本年秋ごろをめどに事業計画を確定できるよう協議を行っていく。

PFI事業は、結局のところ、こういう金融機関に新たなもうけ口を提供するための仕掛けにすぎない(要望)

【山口議員】
新庁舎の建設と管理運営について、金融機関から資金を調達した営利企業にゆだねますが、そのPFIの会社がちゃんと仕事をするかどうか、金融機関に監視させるために、結果的に相対的に高い金利を支払う、こういうお答えだったと思います。

イタリア村のときに十分監視ができなかった、こういう反省があるかと思うんですが、イタリア村じゃありません。本庁舎です。直接役所が管理運営すれば、こんな金融機関に監視させる手間と費用はかかりません。これだけ見ても、PFI事業は、結局のところ、こういう金融機関に新たなもうけ口を提供するための仕掛けにすぎないと言わざるを得ないと思います。埋立事業会計の資金を有効に活用することを強く要望しておきます。

 

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