2010年6月定例会 個人質問(6月17日)
道理にかなった中期ビジョンこそ必要であり、
憲法の精神で市政運営を行え。
公営住宅にエレベーター設置をすすめよ

田口かずと議員

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中期戦略ビジョンについて


田口議員

名古屋市基本構想の基本理念を尊重するのか

【田口議員】
中期戦略ビジョンの策定について質問します。

第1は、名古屋市基本構想の基本理念と中期戦略ビジョンとの関係についてです。

中期戦略ビジョンは、「名古屋市基本構想のもと」に、「新たな総合計画」として策定されます。5月26日に開かれた総務環境委員会で当局は、基本構想が市政運営の「最高の指導理念」であり、中期戦略ビジョンも、「基本構想を指導理念とし、その実現をはかることを目的として定めるもの」であることを認めました。

それでは基本構想の理念とは何か。基本構想が定めている「まちづくりの基本理念」の冒頭の部分を読み上げます。

「わたしたちは、人間としての真の幸せを願い、憲法の精神にもとづき、ひとりひとりの基本的人権がまもられ、健康で文化的な生活のいとなめる個性豊かなまち、名古屋の建設をめざす」。

本市のまちづくりの基本理念は、ここに凝縮されています。そして、そのキーワードは、「憲法の精神」であると考えます。

そこで市長にお尋ねします。基本構想を中期戦略ビジョンの指導理念とするならば、市長は、基本構想が掲げる「憲法の精神」にもとづくまちづくりを進めていく立場にあると考えますが、それでよろしいか、お答えください。

憲法の精神にもとづくまちづくりを進める(市長)

【市長】
ほりゃ、大ありでございまして、むしろ憲法には主権在民の規定を持っております。前文と思いますけど、ここに主権が国民に存することを確定し・・・この憲法を発布する、という規定があったとおもいます。

河村市長の改憲発言は「憲法の精神」に反する

【田口議員】
市長が、「憲法の精神」にもとづくまちづくりを進めていく立場にあるとするならば、河村市長の次の発言は、この立場に反するのではないでしょうか。

昨年11月14日、私も参加しましたが、天白区役所で開かれた「中期戦略ビジョン中間案」のタウンミーティングで、市長は、「憲法九条は変えた方がええ」と公言されました。市の公式行事であるタウンミーティングでの発言ですから、市長の立場での九条改憲発言です。市長の立場で憲法九条の改定を公言するなどということは、「憲法の精神」を踏みにじる行為ではありませんか。市長の答弁を求めます。

憲法は改正規定を持つ(市長)

【市長】
憲法は改正規定を持っており、コーランではありません。ですから憲法を変えるべきという議論をするということは、憲法の精神に合致することであって、なんら問題もないし、かねがね言っておりますけど、戦争を行わないようにするためには、やっぱり憲法9条にある、とくに2項後段の交戦権否認規定ですね、国の交戦権はこれを認めない、これ世界のどこにもありませんけど、こんな恐ろしい条文を持って、実際は在日米軍が日本を守っているという矛盾した、本音と建前を切り分ける姿勢ということこそ、平和に非常に危険であると思っております。

「地域委員会」の成果目標を掲げることは時期尚早

【田口議員】
第2は、中期戦略ビジョンの中で、目玉の事業の一つとされている「地域委員会」についてです。

5月26日の総務環境委員会では、地域委員会に関する記述について議論が交わされ、本議会に提案された議案では、一定の修正がほどこされています。しかし、私が、「地域委員会の設置箇所数を成果目標に掲げることはふさわしくない」と指摘した点については、変更されていません。

私が、このような指摘をしたのは、地域のことは地域で決める住民自治の仕組みを否定しているからではありません。先日開かれた総務環境委員会とモデル実施されている8学区の地域委員会との懇談会で、地域委員のみなさんから住民参加・住民公開のもとに議論を重ねてきたというお話を伺って、住民自治を発展させる萌芽が生まれていると感じました。

しかし、現段階は、モデル実施について検証を始めたばかりです。本格実施に向けては、地域予算の使い道についての住民の合意形成、学区連絡協議会との関係、地域委員を選ぶ選挙の方法、区役所の支援体制など、検証しなければならない課題が山積しています。

こうした段階で、24年度40学区、30年度200学区という成果目標を中期戦略ビジョンに掲げることは時期尚早ではないでしょうか。市長の考えを伺います。

早く、全市に広げたい(市長)

【市長】
市長選挙でマニフェストに掲げ、絶対に実現せないかん。私は政治的責任を持っております。その1つが減税であり、その1つが地域委員会の設定ということ。地域委員会の方と話し合いをし、是非全区に早く広げてほしいという意見は全員から承りました。それからほかの区の方で、すでに準備しているが早くやってくれないと困ると言って実際に申し出に来られた方もある。早くやりたいという方も多くお見えになられ、40、200学区というのは決して遅くない、早く全市に広げて住民自治、主権在民の精神を、憲法の精神を早くいきわたらせないかんと思っております。

モデル実施のこれまでの評価をどうみるのか

【田口議員】
もう1点、モデル実施の評価にかかわって、市長にお尋ねしたいことがあります。それは、モデル学区での議論や提案された地域予算の内容を見ますと、「地域委員会」に込めた市長の意図とは逆の方向にすすんでいるのではないのかということです。

市長の意図は、市の事業と予算の「縦割り」を「横割り」に切り替え、市の予算を縮減することにあったはずです。市長は、「縦型でやってきた福祉や子育てなどを地域でやっていくことで、無駄づかいのない福祉が充実される」「公園の予算や文化、スポーツの予算など名古屋市が行なっていたものを地域委員会にどんどん切り分けていく」という趣旨の発言をこの議場でもされてきました。これは、「地域委員会」を「構造改革」の受け皿にするという考えにほかなりません。ところが、提案されている地域予算には、市が責任を持って行うべき仕事を地域で肩代わりしようとするものは見られません。それどころか、「乳がん・子宮がん検診受診率向上事業」や「防災備蓄品の充実」などのように、行政が進めてきた事業への上乗せを求める事項も盛り込まれています。「地域委員会」が、住民の要求と創意にもとづいて、地域の課題解決に意欲的に取り組めば取り組むほど、市の予算は増大せざるをえないでしょう。

市長は、「小さな政府」づくりに貢献するものとして「地域委員会」を考えておられるようですが、現実は逆で、「地域委員会」が「大きな政府」を要求しつつあるのではないでしょうか。この点について、市長の所感をお聞かせください。

「地域委員会」は、地域の自己決定や「共助の福祉」を口実に、市が責任を持つべき仕事まで地域に押し付ける「構造改革」の受け皿であってはなりません。モデル実施の検証にあたっては、この観点を堅持されるよう強く求めておきます。

検証しながらより自由度を高めていきたい(市長)

【市長】
いろんな福祉もやっていこうじゃないかということも期待しとったことも事実ですが、目的を今回書いていただきましたので、それに縛られたからまずかったという立場と、反対に目的があったためにやりやすかったという2つの立場があり、私とすればなんとか苦しみながらいい方向に行けたのでなないかと思い、検証しながらより自由度を高めていきたいと思っております。

地域委員会の願いは地域の課題がやりたい(再質問)

【田口議員】
中期戦略ビジョンの策定について、名古屋市基本構想の基本理念との関係で、市長の九条改憲発言について伺いましたが、私は、憲法9条は世界に誇れる宝だと思っています。ただここでこの問題を議論する気はない。あなた個人が、九条を変えたいという改憲志向を持っていることを問題にしているのではありません。行政の責任者である名古屋市長の立場としては、憲法99条の規定によって、憲法を尊重し擁護する義務があります。このことをしっかり認識しておられるならば、公の場での改憲発言はありえません。市長には「憲法の精神」を堅持して市政運営にとりくまれるよう求めておきます。

「地域委員会」について市長に再質問します。「地域委員会」の設置箇所を中期戦略ビジョンの成果目標に掲げることについて、一番聞きたかったことは、市長がこの間言ってきた「地域委員会」に込めたねらい、意図ですね、「縦型でやってきた福祉や子育てなどを地域でやっていく」「名古屋市が行なっている仕事を地域委員会にどんどん切り分けていく」というこういう考えでこれからもやっていくのか、それとも、モデル実施の現実をみたら、こんな考えには立たないのか、はっきり答えてください。

次に大きく広げていきたい(市長)

【市長】
憲法について擁護義務はありますけど、改正規定もあります。

地域委員会の議論の時も市は福祉をやめるのかというような言い方をされた方も見えますけど、それはまったく違っていて、市は市でちゃんとやるんです。だけど自助・共助・公助といって、共助のところが看板の掛けただけで中々魂が入らないというところで、その共助のところに魂を入れようというのが、減税から寄付への誘導と地域委員会の設定ということでございますので、次に大きく広げていきたい。

市がやるべきことは市がきちんとやったうえでの地域委員会だ(意見)

【田口議員】
先日の地域委員との懇談会でも、市がやるべきことは市がきちんとやってほしい、そのうえで行政の手が届かない身近な課題解決は一生懸命やりますという姿勢でした。やはり市長がかつておっしゃていた「ユナイテッド・スティツ・オブ・ナゴヤ」にしようとかいう考えを持たずにやっていただくことが、民主主義の"つくしんぼ"を踏みつぶさずにすむということを申し上げて、質問を終わります。

公共賃貸住宅について


田口議員

公営住宅入居基準等の自治体への委任で入居しやすくなるのか。増設が必要だ

【田口議員】
公共賃貸住宅について3点質問します。

1点目は、「地域主権改革」一括法案において、公営住宅の入居基準および整備基準を地方自治体の条例に委任するとされている問題についてです。

「市営住宅に何回も申し込んでいるけれども抽選に当たらない。なんとかならないか」という市民からの相談が少なくありません。本市の市営住宅の応募倍率は、昨年度は20倍、とくに単身者向けは36倍という高さです。

市営住宅の入居基準は、政令の改定にともなって、昨年度から、それまでの所得月額20万円以下から15万8千円以下へと引き下げられました。基準を引き下げ、入居対象者を狭めても、依然として市営住宅への入居は狭き門となっています。

こうした現状のもとで、入居基準が地方自治体に委任されたらどうなるか。応募倍率が高いことを理由に、収入基準がさらに引き下げられ、門前払いがすすむ危険性があります。一方で、収入基準を引き上げれば、ますます狭き門となります。

「地域主権改革」の名で公営住宅の入居基準を地方自治体に委任しても、「公営住宅に入りたくても入れない」という現状は何ら解決しない。むしろ、「入りたくても入れない」現状がさらにひどくなる懸念を、私は抱いていますが、住宅都市局長はどのように認識しておられるのか、お答えください。

国の住宅政策は持ち家の推進が基本であり、公営住宅については「建てない、入れない、追い出す」政策をとっています。この国の政策のもとで本市でも、1999年度以降、市営住宅の新規の建設はストップしています。むしろ、建て替えによって市営住宅の戸数は減少傾向にあります。公営住宅の大量建設に背を向けながら、「地域主権改革」の名のもとに、公営住宅の入居基準等を自治体任せにするというやり方は、国に課せられた居住権保障の責任を放棄するものだといわなければなりません。

住宅都市局長、国にたいして、自治体への積極的な支援を行うなど国の責任で公営住宅の大量建設と整備を行うよう強く求めていだだきたい。同時に、本市としても、市営住宅の新規建設を再開して管理戸数を増やすべきです。答弁を求めます。

法案が廃案になったので見守る。建て替えをすすめる(局長)

【住宅都市局長】
「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」は、第174回国会の閉会で継続審議となっており、現時点で政令等の具体的な基準は示されていない。今後、国の考え方を把握しつつ、適切に対応したい。

現在、国の住宅施策も、「きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック重視の施策に転換している。市内の市営住宅及び県営住宅の戸数は8万戸を超えており、限られた財源の中では、これらの住宅ストックを長寿命化や建て替えなどにより有効に活用していくことが重要と考えている。国に対しても、それに必要な交付金等を確保するよう、引き続き要望してまいりたい。

都市再生機構の賃貸住宅事業にたいする「事業仕分け」をうけいれるのか

【田口議員】
2点目は、都市再生機構(UR)の賃貸住宅事業、いわゆる公団住宅にたいする「事業仕分け」の評価結果についてです。

本年4月に行なわれた「事業仕分け第2弾」の中で、UR賃貸住宅については、「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行、市場家賃部門は民間に移行する方向で整理」との評価結果が示されました。高齢者や低所得者は自治体や国に移すといいますが、UR賃貸住宅には子育て世帯や中堅勤労者世帯も住んでいます。バラバラにして移すことなんかできません。UR賃貸住宅の家賃は、市場家賃が設定されていますので、「市場家賃部門は民間に移行する」とは、すべてのUR賃貸住宅を民営化することにほかなりません。

そもそも、UR賃貸住宅は、住宅セーフティネット法にもとづく国の基本方針で、「公営住宅を補完する公的賃貸住宅」として位置づけられています。私が住んでいます相生山団地も、一昨年に自治会が行なった居住者アンケートでは、公営住宅の入居基準以下という収入の世帯が約7割にのぼっています。公営住宅に入れる低所得者が、UR賃貸住宅に多く住んでいるのです。

UR賃貸住宅の民営化の実行に道を開く「事業仕分け」結果は、UR賃貸住宅の役割も、居住者の実態も無視した、乱暴極まりないものです。全国の公団住宅自治会でつくる全国公団自治協が、「強く抗議し、その内容に断固反対」する抗議声明を出しましたが、当然であります。

そこで、住宅都市局長にお尋ねします。本市の住宅政策において、UR賃貸住宅をどのように位置づけていますか。「事業仕分け」では、「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行」するとされていますが、本市は、UR賃貸住宅の管理を引き受けるつもりがあるのか、お答えください。

これまでの役割を、今後も継続して果たしていただきたい(局長)

【局長】
独立行政法大都市再生機構の賃貸住宅は、中堅所得者向けの公共賃貸住宅として市内で現在3万戸余りが管理され、市内の公共賃貸住宅の約4分の1を占める。都市再生機構の賃貸住宅にはこれまでの役割を今後も継続して果たしていただきたいと考えている。

都市再生機構の賃貸住宅のあり方に事業仕分けが行われたが、これを受けた具体的な方策等については、現段階では、国や都市再生機構から示されていない。

現在、都市再生機構のあり方検討会が設置され、検討が進められている。国や都市再生機構の動向を注視してまいりたい。

公社賃貸住宅へのエレベーター設置を

【田口議員】
3点目は、住宅供給公社の一般賃貸住宅へのエレベーター設置についてです。

公社の一般賃貸住宅には、エレベーターが設置されていない住宅が、5階建てで5棟、4階建てで2棟あります。私はこの数年間、公社対策特別委員会や都市消防委員会で、公社住宅へのエレベーターの設置を求めて質問を続けてきました。

市当局および公社は、公社住宅の居住者も高齢化が進んでいることなどから、エレベーター設置の必要性は認めています。公社は「賃貸住宅ストック活用検討会」を設置し、各団地について建て替えやリフォーム、エレベーター設置などを具体的に検討し、今年度中に結論を出すと聞いています。

そこでお尋ねします。エレベーターが設置されていない公社賃貸住宅について、ただちに建て替えを実施する予定の住宅はありますか。建て替えないならエレベーターを設置すべきですが、エレベーター設置の計画はどのようになりますか。エレベーターを設置する場合の費用は、全額を居住者の家賃負担とするのではなく、今年度までの5年間で10億円を目標に積み立てている資金を活用するなど、公社が一定の負担をすべきだと考えますが、その方向で公社を指導する考えはありますか。

住宅都市局長の答弁を求めます。

必要性は認識しているが、入居者に費用負担をお願いせざるを得ない(局長)

【局長】
名古屋市住宅供給公社の賃貸住宅は、公社において「ストック活用計画」の策定を進めているが、今年度は長期の活用を視野に入れながら、総合的に検討し、活用方法を決めていく最終年度になると聞いている。

住宅の長期的な活用を図るためには、適切な維持管理が必要である。現在、建替えや大規模修繕のための資金を積み立てているが、これは、老朽化した住宅や設備の適切な維持管理、特に生命の危機に関わる緊急性の高いものに、優先的に充てていくものと聞いている。エレベーター設置は、公社としても、入居者の高齢化が進む中で必要性を認識しているが、利便性の向上を図るものであるため、入居者に費用負担をお願いせざるを得ない。

公社の自主・自立的な経営の中で、賃貸住宅ストックの長期的な活用を図る上でストック活用計画が最大の効果があげられるよう、指導したい。

エレベーター設置は公社の「自主・自立的な経営」努力にかかっている(再質問)

【田口議員】
次に、公社賃貸住宅へのエレベーター設置について住宅都市局長に再質問します。はっきりさせていただきたいのは、公社賃貸住宅の「ストック活用計画」の中で、エレベーターの設置についても検討されている、という理解で間違いありませんね。

問題は、設置する場合の費用負担です。全額を居住者負担にしますと、これは天白区にある公社賃貸住宅「高坂センター」の場合ですが、数年前の試算では、家賃負担は一戸あたり月額6200円にもなると聞きました。こんな急激な家賃値上げは、居住者の人たちには耐えられないでしょう。

一方で、公社が5年計画で積み立てている資金は、昨年度末までに6億5千万円余りになっていると聞いています。この基金は「緊急性の高いものに、優先的に充てていく」と答弁されましたが、エレベーター設置も、高齢化が進む居住者にとって緊急の課題なのです。もちろん、居住者も一定の負担はやむをえませんが、全額居住者負担とするのは、市と公社の責任放棄だといわなければなりません。

そこでお尋ねしますが、エレベーター設置費用の一部を公社が負担するかどうかは、公社の「自主・自立的な経営」努力にかかっているという理解でいいですね。

以上、2点について端的にお答えください。

エレベーター設置は総合的に判断されるべきもの(局長)

【局長】
公社では「ストック活用計画」の中でエレベーター設置の検討もしているが、その実施においては、公社の厳しい経営状況の中で、優先順位をつけて、総合的に判断されるべきものと考えている。

 

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