2010年11月定例会 個人質問(11月27日)
経済効果抜群の住宅リフォーム助成の導入など、
困っている中小企業・業者への支援策を
「平針の里山」の工事中止を

田口かずと議員

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困っている中小企業への支援について


田口議員

「中小企業憲章」を踏まえた「産業振興ビジョン」の策定を

【田口議員】
困っている中小企業への支援について質問します。

今年6月、「中小企業憲章」が閣議決定されました。「中小企業憲章」では、「中小企業は、経済をけん引する力であり、社会の主役である」と位置づけており、「国の総力を挙げて、……自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく」と宣言しています。この「中小企業憲章」を本市の中小企業支援施策に活かし、具体化することが求められていると思います。

本市では現在、来年度以降の産業振興施策と就労支援施策を戦略的に推進するために、「産業振興ビジョン」の策定に向けた検討が進められています。検討委員会で出された中間案では、「産業・経済と雇用において大きな比重を占める中小企業は本市の財産ともいうべき存在である」と述べています。

その「本市の財産ともいうべき」中小企業がいま、苦境にあえいでいます。わが党市議団が懇談した中小企業家の方々からは、「大企業は海外に生産拠点を移し、力のある中小企業も海外に付いていくが、それができない企業は将来どうなる。中小企業は産業の基盤だが、崩れつつある」、「仕事が少しずつ減っている。もうどうにもならない。東京で話を開くと、名古屋の厳しさが際立つ。中小企業への支援をして貰わなければ、何ともならない」など、経営環境の厳しさが語られました。

本市でも、「自立する中小企業を励まし」つつ、「困っている中小企業を支え」るために、「どんな問題も中小企業の立場で考えていく」という「中小企業憲章」の理念を貫いた支援策が求められています。ところが、「産業振興ビジョン」の中間案には、「『中小企業憲章』を踏まえて」という言葉はありますが、そこで展開されている中小企業支援施策には、自立する中小企業を励ます視点はあるものの、「困っている中小企業を支える」という視点が欠けていると言わざるをえません。

そこでお尋ねします。「産業振興ビジョン」の策定にあたっては、「中小企業憲章」を踏まえて、とくに「困っている中小企業を支える」という視点と施策を盛り込んだビジョンとすることが肝要だと考えますが、市長はどのようにお考えですか。そのようにお考えなら、ビジョンの名称に「中小企業」を加えて、「中小企業・産業振興ビジョン」としたらどうでしょうか。市長の見解を求めます。

中小企業振興を重要な柱として位置付けておりますのでご心配なく(市長)

【市長】
中小企業振興を重要な柱として位置付けておりますのでご心配なくお願いしたい。

名称は、パブリックコメント等の結果を見て調整する予定であり、意見の一つとして伺っておく。

中小企業振興条例(仮称)の制定を

【田口議員】
「中小企業憲章」を本市の中小企業支援施策に活かすために、2000年以降で50近い都県・市区町で制定されている「中小企業振興条例」を本市でも制定することを求めたいと思います。

条例の名称はさまざまですが、中小企業施策の基本理念や行動指針などを盛り込んだ条例を定めたことが、中小企業振興に大きな力を発揮していると聞いています。愛知中小企業家同友会も、「中小企業地域活性化条例」という名称で、制定をめざして活動されています。

国が中小企業振興に関する憲章を定めたのですから、本市としては中小企業振興の条例の制定について検討すべきときではありませんか。市民経済局長の答弁を求めます。

愛知県並びに他の政令市の動向も踏まえ、引続き調査する(局長)

【市民経済局長】
中小企業は、市内事業所の約99%、従業者の約77%を占めており、地域経済や地域社会の中で極めて重要な役割を担っている。これまでも、中小企業基本法などの関連法を根拠・基本理念とし、各種施策を展開してきた。産業振興に関する行政計画を策定し、その中で、時々の経済情勢や産業構造の変化を考慮しつつ、中小企業振興の方針を定め、必要となる中小企業施策を計画的に推進している。

中小企業の振興を図る条例の制定は、愛知県や政令市の動向も踏まえ、引続き調査したい。

町工場の固定費補助を

【田口議員】
借り工場の家賃やリース料など固定費の重い負担のため、廃業の危機にひんしている町工場が少なくありません。政府は今年4月、中小企業の機械設備のリース代金の支払猶予に応じるよう、リース会社に要請する通知を出しました。京都府は、対象がきわめて限定的ですが、機械設備のリース料などにたいする助成制度を導入しました。

わが党は、町工場の固定費補助の実施を求めて何度も質問してきましたが、当局は、「固定費への支援は融資制度を利用してほしい」と繰り返すのみです。しかし、家賃やリース料の支払いに困っている中小業者の中には、融資を受けても返せない、返済猶予中で新たな融資が受けられないという業者も少なくありません。

こうした困っている町工場の火を消さないためにも、家賃やリース料など固定費への補助が必要ではないでしょうか。市民経済局長の見解を伺います。

融資制度をご利用いただきたい(局長)

【市民経済局長】
これまでも中小企業振興センターや工業研究所を中心に経営相談、技術指導、情報提供、研修ならびに融資などを実施している。

中小企業者の家賃などの固定費への支援は、低利な名古屋市信用保証協会の保証付き融資制度や財団法人名古屋市小規模事業金融公社の貸付制度を実施しており、適宜、融資期間の延長など、資金繰りの円滑化の一層の促進を図っている。

日常の企業経営に係る固定費への支援は融資制度をご利用いただきたい。

緊急の景気対策としての住宅リフォーム助成を

【田口議員】
困っている中小企業を応援する緊急の景気対策として、住宅リフォーム助成を実施する自治体が全国に広がっています。愛知県下では初めて、蒲郡市が10月から始めました。蒲郡市の「住宅リフォーム促進事業助成金」は、予算総額2000万円で、市民が市内の施工業者を利用して住宅のリフォームをすると、工事代金の10%、最高で20万円が助成されます。11月8日時点で、申請件数は91件、助成額は978万3000円、全体工事額は1億5200万円になり、地域への経済効果は助成額の15倍を超えています。地元の業者からは、「沈滞したこの時代に、タイムリーないい制度だ」と評価する声があがっているそうです。

もともと地域の景気対策で肝心なのは、地域の個人消費を拡大することであり、潜在的なリフォーム需要を掘り起こして、建築関連業者の仕事確保につなげるのが、住宅リフォーム助成です。住宅リフォームでは、関連する業種、大工さんや左官屋さん、畳屋さんに電気屋さん、屋根屋さんに配管屋さんなど、実にたくさんの仕事の需要がただちに増えます。ですから、助成金の額は20万円などと少額でも、地元にお金が還元され、地域で循環しますから、地域の景気対策として即効性があるのです。

しかも、この制度は、多くの自治体では、緊急経済対策という一時的なものとして実施されています。蒲郡市でも、平成24年の2月末までの1年半というように期間を限定しています。いわば時限立法です。

わが党市議団はこの間、建築関連の団体や中小企業・業者のみなさんとの懇談を重ねてきました。その中では、「ようやく仕事があっても、今の仕事は納期が短くて単価が安い仕事ばかりで困っている。住宅リフォーム助成はぜひやってほしい」、「住宅エコポイントでは、ほとんど大手のハウスメーカーやサッシメーカーに仕事がいっている。住宅のリフォームでは可能な限り地元の業者を使ってほしい」など、期待や注文の声が寄せられています。

そこで、お尋ねします。住宅リフォーム助成は、緊急の景気対策として即効性のある制度だと考えますが、市長は、その経済効果についてどのように認識されていますか。本市でも実施するお考えはありませんか。お答えください。

蒲郡市の3月議会で、共産党縫員が住宅リフォーム助成を提案、市長は「即効性のあるよい提案だ。検討する」と即答し、10月補正で2千万円を計上しました。市内の業者に発注で、工事費の1割(限度額20万円)が助成されます。
市の広報がまだ届かないうちから問い合わせや申請が集中、1ケ月間で58件、業者との契約事業費1億587万円、市の助成金661万円。窓口相談158件、電話相談116件と市民の関心は大きく、これからも増える見込みです。
地元紙「蒲郡新聞」は10月29日号で、特別企画「住宅リフォーム特集」を掲載し、期待する市民の声、売り込む地元建築業者や畳屋さんが3面にわたって登場しています。

助成にはなんらかの政策的な要請がいる(市長)

【市長】
すでに一定の需要があるということから経済的効果をおしはかることは難しい。個人のうちの畳を替えた場合、私有財産だで、普通はいかんので、介護の目的とか一定社会性格的な目的がある場合に補助する、政策的な要請がいるのが原則ではないかと思っている。

緊急経済対策として住宅リフォーム助成を


田口議員

【田口議員】
政策的な要請がなければ、個人の財産に対する助成はむつかしいということですが、すでに名古屋市も耐震改修助成をやっています。ところが耐震改修は件数が伸びず予算が残ってしまい、今年度は予算を減らした。現状はあまり進んでいない。

住宅リフォームを時限立法といったが、1年半の蒲郡をはじめ、多くが1年限りになっている。これは発想を変えているからだ。住宅改善という住宅部局の考えでなく、中小企業が不況で苦しんでいるときに緊急に仕事を起こし、増やしていくという緊急経済対策という角度から実施している。発想を変えなければいけない。緊急経済対策。市長は、「日本一早く経済復興する街ナゴヤ」を掲げられていますが、そのためにいろいろ手立てを打たなければいけない。その一つという立場に立ってほしい。

蒲郡では助成額の15倍の工事、秋田県でも15倍に上っているように、住宅リフォーム助成は経済効果が大きい事業です。工事を依頼した人も、受注した業者も、そして自治体の担当者も、みんなが笑顔になる事業です。

もちろん、小規模な市・町のやり方をそのまま大都市・名古屋に当てはめることはできないとは思いますが、住宅リフォーム助成が、地域経済の活性化に大きな効果を及ぼすことは明らかです。

市長にお尋ねします。住宅リフォーム助成は、緊急経済対策として即効性のあるいい制度だと思いませんか。お答えください。

秋田県では今年3月、県レベルでは初めて「住宅リフォーム緊急支援事業」を実施、毎月2千件近い申し込みがあり9月末には1万戸を突破。県は、補正増額して21億円を確保しています。
秋田県八峰町では、町の上乗せ補助もあり7%の世帯が利用、町中が「建設ラッシュ」の様相です。
県は、「厳しい経済情勢のなか、新築よりもリフォームを選択する世帯が多い」と見て、来年3月末までに1万5千戸(世帯の38%)の利用を見込んでいます。
住宅建築は木材をはじめ多くの資材を使うことから、その波及効果は抜群で、県内業者への発注額は325億円、波及効果は500億円を超えると見ています。合わせて、雇用も増え、住環境も改善でき「一石3鳥」の効果です。

利用者の特徴
・屋根・外壁の張替えが最も多い。
・続いて、台所・風呂等の水回り改修も多い。
・地球環境対策として力を入れている太陽光発電・給湯機器の設置も多い。
・内部改修も多いが、サッシ交換や断熱改修などエコポイント関連も実施されている。

いい制度だと思う(市長)

【市長】
たぶんなかなかいい制度だと思います。お金は一番エンドのところの、住宅だけでなく設備投資に使うとええ、とは思うが。それからはちょっと勉強させてちょう。

ぜひ検討を(意見)

【田口議員】
いい制度なんですよ。経済復興するためのシンプルかつインパクトのある対策として、住宅リフォーム助成の実施をぜひ、検討していただきたいと思います。

「平針の里山」など民有樹林地における生物多様性の保全について

「平針の里山」での開発への対応は


田口議員

【田口議員】
次に、「平針の里山」など民有樹林地における生物多様性の保全について質問します。

本市で開かれていた生物多様性条約第10回締約国会議、COP10では、「名古屋議定書」と、生物多様性の損失を抑える2020年までの目標を採択しました。日本政府も、開催都市である本市も、生態系を破壊するような開発などに歯止めをかけ、生物多様性の保全に力を注ぐ大きな責任を負うことになりました。

ところが、COP10開催中に、天白区平針南学区の樹林地、いわゆる「平針の里山」で開発業者による伐採工事が始まりました。これが、最近の現地の写真です。相当の樹木が伐採されて、地肌がむき出しになっています。無残な姿です。

先日、周辺の住民が工事の強行に抗議しているという連絡を受けて、私は現地にかけつけました。住民の抗議にたいして業者側は、「文句は開発を許可した名古屋市に言ってくれ」と言っていました。名古屋市は、COP10で里山や多様な生物種の保存を世界に向かって強調しながら、肝心の足もとで里山的な景観が広がる樹林地の開発を許しています。これで名古屋の名を冠した議定書を採択した都市だと胸を張れるのでしょうか。

市長、COP10開催都市の市長として、自らの足もとで、生物多様性を損なう開発が始まったことにたいして、どのように感じておられますか。「平針の里山」での開発を今からでもストップさせる考えはありませんか。答弁を求めます。

誠に残念(市長)

【市長】
最近ちょっと行ってませんが、大変残念の極みということです。何とか残せんかと思ったが、残念ながら民有地でして、どうしても5億5千万円のお金がうまらなんだのでああゆうことになってしまいまして誠に残念だ。

特別緑地保全地区の指定や緑地保全地域の導入を

【田口議員】
私は3年前、「平針の里山」の保全を求めて本会議で質問しました。当時はまだ、開発業者の手に土地が渡る前でしたので、私は、土地利用に規制をかける緑地保全地域にこの「里山」を指定するよう求めました。その後、「平針の里山」も、緑地保全地域の候補地の一つとなりましたが、その中の重要な部分が、開発業者の手に渡ってしまい、工事が始まったことは、残念でなりません。

そこで縁政土木局長にお尋ねします。生物多様性の保全にとって、市内に残された大規模な民有樹林地を保全することは重要であります。そのために、緑地保全地域制度の導入や開発行為に規制をかける特別緑地保全地区の指定拡大を急ぐべきではありませんか。お答えください。

緑地保全地域制度の導入に向け、努力したい(局長)

【緑政土木局長】
厳しい規制により現状を凍結し、緑を保全していく特別緑地保全地区に加えて、一定の開発を前提としつつも、急激な緑地の消失の抑止を図る緑地保全地域を新たな制度として適用していくことが有効ですが、土地所有者の理解が容易ではない。

そのような状況の中、特別緑地保全地区につきましては、土地所有者のご理解を得て、これまでに72か所を指定しております。

新しい制度である緑地保全地域は、現在、制度設計を検討しており、候補地の選定や土地所有者の意向の把握に努めている。今後、緑地保全地域制度の導入に向け、努力したい。

平針の里山は今でも残したいか

【田口議員】
「平針の里山」は、生物多様性を考えるうえで、たいへん重要な場所です。市長も、この「里山」の重要性を認識しておられたからこそ、一旦は、巨額の資金を出してでも買い取ろうと提案されたと思います。それにもかかわらず、市長は開発を許可された。

これにたいして周辺住民のみなさんなどが、今年8月、開発許可の取り消しを求めて名古屋地裁に提訴されました。ある新聞では、提訴を受けた河村市長は、「『里山』は生物多様性条約第10回締約国会議のスローガンで、平針の里山は今でも残したいと思っている」と話したと報じられています。

市長に聞きます。平針の里山は今でも残したいと思っておられますか。

残したい(市長)

【市長】
思っております。

もう一度、この「里山」の保全について考えていただきたい(意見)

【田口議員】
思っているなら、ぜひ手立てを取ってほしいんですよ。裁判では、開発許可の取り消しを求められていて、市長は訴えられている立場ですから、なかなか大変だと思いますが、やはり生物多様性条約締約国会議が開かれたこの名古屋で開催中に大規模な伐採が始まったのですから、もう一度、この「里山」の保全について考えていただきたい、(市長を)やめるにしても、考えていただきたい、ということを申し上げて、質問を終わります。

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