2003年6月議会 議案質疑
住民基本台帳ネットワークシステムについて
住基ネットの接続状況について
【黒田議員】
住基ネットは、昨年8月からの第1次稼動でもネットからの離脱を表明する自治体があいつぎ、住基コード番号の通知文書を返却する住民が現れるなど、少なからぬ批判と混乱のなかでスタートしました。昨年12月には、福島県岩代町の全住民の住基データを運んでいた民間業者が盗難に遭うという事件も発生しました。
今年4月には、防衛庁が自衛官募集などのためとして、自治体に適齢者情報を住民基本台帳から提供させていたことが明らかになりました。18歳前後の「適齢者」を自治体が選び出して、その情報を外部に提供するのは閲覧に限った住基法に違反するとして、個人情報保護法案を審議した国会で大問題となりました。こうした問題について何等の解決策が見出されないまま成立させられた法律の制定をもって、住基ネットを本格稼動させることは許されません。
今年5月には、長野県の本人確認情報保護審議会が、「セキュリティー対策に問題がある上、コストをかけても万全な対策にはなりにくい」と、県民の個人情報を守るため住基ネットからの離脱を求める中間報告を行ないました。今月に入って札幌市が、選択性の導入について検討していると伝えられています。
ところで、先に紹介した長野県の審議会は、「長野県内の27の自治体で、住基ネットと庁内LAN(構内情報通信網)がつながっており、個人情報が漏れる恐れのあることが判明した。」と指摘しましたが、これに対して総務省は、「全国の市町村のうち、1割強の団体においては、住基ネットと接続している庁内LANがインターネットと接続」していることを認めています。
そこでお尋ねしますが、名古屋市では、長野県で指摘されたような危険性のあるネットワーク接続事例が存在するかどうか、すなわち住基ネットの回線とインターネットの回線が物理的につながっているのか、いないのか、お答えください。
【市民経済局長】
住基ネットの回線とインターネットの回線は物理的にはつながっているが、インターネットからの通信をファイアーウォールにより厳しく制限し、不審な通信については侵入検知装置により監視している。また、ウィルスチェックを行うなど厳格なセキュリティ対策を行っている。
長野と同じ接続方式は危険だ
【黒田議員】
いまの答弁で、名古屋市の住基ネットも長野県と同様、インターネットとつながれていることが明らかになり、きわめて重大な問題です。回線がつながれている以上、個人情報が漏れる危険性を否定できないからです。だからこそ「セキュリティ対策を行なっている」と言わざるを得ないのではありませんか。しかし、コンピューターの世界では、「絶対、安全」はありえないのが常識です。いったん、破られて進入されれば、全住民の情報が第三者に漏れることになります。
少なくとも、住基ネットとインターネットは分離されなければならないことを指摘しておきます。
住基カードのメリットと住民票の広域交付について
【黒田議員】
今回発行しようとしている住基カードのメリットとして、全国どこの市町村役場からでも住民票の写しをとることができるというが、住基カードがなければとることができないのか。
【市民経済局長】
住基カードがなくても運転免許証等で本人確認ができれば、住民票の写しの広域交付ができるようになるが、住基カードによる本人確認で、より確実かつ速やかな交付が可能になる。
住基カードの多目的利用はやめよ
【黒田議員】
個人情報の漏えいという危険性を最小限にするためには、戸籍や家族に関すること、財産に関すること、健康・医療に関すること、などの個人情報は、できるだけ集中しにくい方法で分散管理すべきです。現在は、その状態にあるわけですが、今後においてもそのような観点から、住基カードの独自利用はすすめるべきでないと思います。
【市民経済局長】
住基カードの多目的利用は、まず個人情報の漏えいなどの安全面の課題への対応を最優先としたうえで、次に市民ニーズにあった多目的利用の提供ができるよう努めたい。
メリットの無いカードで危険を犯すのか
【黒田議員】
住基カードは、現時点ではさしたるメリットはないことが分かりました。そこで、問題なのが住基カードの多目的利用です。いまの答弁で、「市民ニーズにあった多目的利用の提供ができるよう努めてまいりたい」とのことでしたが、便利になればなるほど個人情報が第三者に漏れる危険性が広がります。そのことを承知しているからこそ、名古屋市のホームページでは「今後個人情報が正しく保護されることを前提として慎重に検討を進めています」と書いているのではありませんか。
多目的利用による利便性と、個人情報の漏洩という危険性について、どう認識しておられるのか、お聞きします。
【市民経済局長】
充分認識しているので、安全面の課題への対応を最優先としたうえで、市民のニーズにあった多目的利用を検討したい。
住基カードの経費支出のむだづかい
【黒田議員】
発行枚数は4万枚すなわち219万市民のうち1.8%しか交付を受けないと想定していることになるが、市民のなかに現時点ではそれほどのニーズがあるわけでもないと見ているということではないか。一方で、財政難を理由に市政全般にわたって予算の削減を徹底しているなかで、市民ニーズも認められない事業に財政支出をすすめることは矛盾していると言わなければなりません。
【市民経済局長】
住民基本台帳法で、市町村長は住民基本台帳に記載されている者からの申請があった場合、住基カードを交付しなければならないと定められており、今回は、そのカード交付に要する経費を補正予算に計上した。
【黒田議員】
利便が広がれば広がるほど危険が広がるということについては否定できません。
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