2003年6月議会・議案外質問       

弥富相生山線について

住民合意がない現時点では計画の凍結を

【田口議員】
 5月中旬から6月上旬にかけて、相生山緑地には、毎晩100人を超える人たちが、ヒメボタルの観察に訪れました。この写真は、私の家の近所の方が撮影された相生山緑地のヒメボタルの写真です。相生山緑地は、ヒメボタルの有数の生息地となっています。

 この緑地を横断する都市計画道路・弥富相生山線の建設について、名古屋市は、「道路設計原案」をとりまとめ、設計・施工に入ろうとしています。ひと月ほど前、相生山緑地に近い私の家にも、「環境に配慮した道づくり」施工ワーキングの市民参加募集というパンフレットが配布されました。施工ワーキングとは、このパンフによると、弥富相生山線建設にあたって、「市民、専門家、名古屋市、施工者が協働のワークシステムを組み立てながら、環境に配慮した道づくりを実現することを目的」とするものです。

 市民参加で施工をすすめるというのは、これまでの道路建設にはみられなかった手法ではあります。しかし、施工ワーキングを立ち上げる前提条件が欠けているということを指摘しなければなりません。地元住民の間では、そもそも道路を建設することについて、合意が形成されていないのです。市民団体が集められた建設中止を求める請願署名が6000名余りにのぼっているように、根強い反対意見があります。

 そこで、市長にお尋ねします。

 市長は、昨年6月議会での私の質問にたいして、「地元のみなさんと十分に話し合っていく」と答弁されています。しかし、その後に一度だけ開かれた住民説明会は、私が今年の2月議会での質問の中で指摘したように、到底、住民の理解と納得を得るものとはなっていません。住民合意が形成されていない現時点では、弥冨相生山線の建設計画は、このまますすめるのではなく、いったん凍結することを求めますが、市長の見解を伺います。

 また、「地元住民と十分に話し合っていく」という姿勢に変わりがないのなら、今後も、住民説明会を開いていく必要があるのではないでしょうか。少なくとも、地元の学区や町内会などから説明会の開催の申し出があれば、それに応じるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

【市長】
 市民参加で施工をすすめる協働の新しい仕組みで、地元の方々と専門家、市職員、施工者が共に現地で十分話し合いながら進める。その活動内容は地元の学区や町内会はじめ広く市民の方々にも説明していく。

周辺地区の通過交通問題の解決はコミュニティ・ゾーン形成事業で

【田口議員】
 相生山緑地周辺地区の住民のなかには、弥富相生山線の早期開通を望む意見もあります。それは、この道路の開通によって、通勤通学時間帯における生活道路への車の進入が抑制できることを期待してのものです。通過交通問題は、道路建設いかんにかかわらず、抜本的な対策を講じなければなりません。私は、その抜本的な対策として、「コミュニティ・ゾーン形成事業」の実施を提案いたします。

 「コミュニティ・ゾーン形成事業」とは、一定のまとまりを持った地区において、車道をジグザグにしたり、狭めたり、道路表面にハンプというこぶをつけたりするコミュニティ道路などをめぐらし、速度規制や一方通行によって、通過交通や車のスピードを抑制し、歩行者の安全を確保する事業であります。

 「コミュニティ・ゾーン形成事業」の先進例として、緑区の長根台地区があげられます。長根台地区は野並交差点の南東に位置し、かつては野並交差点の渋滞を避ける通過交通や地下鉄利用者の路上駐車が多かった地区です。同地区にお住まいの元区政協力委員長の方にお話を伺ったところ、「コミュニティ道路などによって路上駐車が激減し、一方通行規制とあいまって通過車両も減り、通学路の安全が確保できた。交通事故も減った」と語っておられました。相生山緑地周辺地区でも、「コミュニティ・ゾーン形成事業」を実施すれば、歩行者の安全が確保でき、弥冨相生山線を建設する必要もなくなるではありませんか。

 緑区長根台地区では「コミュニティ・ゾーン形成事業」を実施したことにより、通過交通量や交通事故件数などがどれだけ減少したのか、具体的にお示しください。

 また、相生山緑地周辺の通過交通が多くて危険な地区において、「コミュニティ・ゾーン形成事業」を実施するお考えはありませんか。

【緑政土木局長】
 緑区長根台地区は、平成8年度から平成10年度にかけて実施をした。実施後に行った調査によると、地区内における朝の通勤時間帯の、2時間の自動車交通量は、実施前の3,063台から、実施後の1,899台へと38%の大きな減少になっている。また、交通事故件数は、平成5年から平成7年の3か年平均で、年12件発生していたが、実施後の平成11年の調査では、7件に減少するなど大きな効果が得られた。

 相生山緑地周辺におけるコミュニティ・ゾーン形成事業は、基本的に地区内の通過交通を抑制するため、地区周辺の幹線道路ネットワークが整っていることが必要となる。まず、幹線道路である弥富相生山線の整備を進めた後に、コミュニティ・ゾーン形成事業の可能性を検討することが、適切だ。

住民の理解は得られていない

【田口議員】
 相生山緑地周辺地区での「コミュニティ・ゾーン形成事業」についての答弁は、「弥冨相生山線の整備を進めた後に、コミュニティ・ゾーン形成事業の可能性を検討することが適切」というものでした。しかし、この道路を整備したうえで、さらに通過交通を抑制するために「コミュニティ・ゾーン形成事業」の可能性を検討しなければならなくなったら、この道路を建設する意味がありません。道路が開通すれば、通過交通問題が解決できるという住民の期待を裏切ることになるからです。

 「コミュニティ・ゾーン形成事業」の可能性を検討するというのであれば、今からただちに検討すべきです。そのうえで、再度お尋ねします。

 市長の答弁は、私の質問に十分かみ合っておりません。私は、地元住民の間では、弥冨相生山線の建設についての合意が形成されていないという認識に立ってお尋ねしました。しかし、市長が言われた「市民参加で施工をすすめる協働の新しい仕組み」、すなわち「施工ワーキング」というのは道路建設の推進が前提となっています。市長は、道路建設にたいする住民合意は形成されているとお考えですか。

 先日開かれた「なごや・タウンミーティング」のなかでも、弥冨相生山線建設に批判的な意見が複数の方から出されたと伺っています。市長もその発言を直接聞いておられるわけです。それでも、住民合意は形成されているとお考えなのか、それともいまだに合意が形成されていないとお考えなのか、はっきり答えてください。

【市長】
 弥富相生山線についていろいろ努力をし、大方の理解をいただいている。今後は地元の方々や、専門家などとの協働の中で行われる環境への配慮についての活動を通じて、その内容を市民に説明しながら道路づくりを行っていく。

【田口議員】
 弥冨相生山線については、地元に住んでいるものの一人として、大方の理解を得ているだととはいえません。


外郭団体への元議員の「天下り」問題について

議会と行政の癒着、行政による便宜供与

【田口議員】
 与党会派に所属し、統一地方選挙で引退や落選された名古屋市議が、市の外郭団体の役員に就任されてきた問題が、「天下り」問題としてマスコミで大きく報道されました。市民の批判が高まるなかで、与党会派は相次いで、次期統一地方選以降は外郭団体の役員就任を辞退することを決め、すでに監事の辞任を申し出られた元議員も一部におられるようです。わが党は、公社対策特別委員会において、元議員の方のいわゆる「天下り」問題をくり返し追及し、外郭団体の役員就任をやめるよう求めてきましたが、他都市にも例がない長年の慣習が、ついに絶たれようとしているのです。こうしたなかで、私が、この問題を取り上げるのは、問題の本質や名古屋市のこれまでの関わり、今後の市の方針が明確にされていないからであります。

 そこで、元議員の方のいわゆる「天下り」問題に対する市長の認識についてお尋ねします。

 当局はこれまで、「元議員の方の知識や経験を生かしていただいている」として、元議員の方の外郭団体の役員就任を肯定されてきました。しかし、最近の新聞に掲載された識者のコメントでは、「行政をチェックする立場の議員が、市の外郭団体に恒常的に天下っているとすれば、議会活動でも厳しく市を批判できなくなる恐れがある」とか、「与党議員の組織的な役員就任は、なれ合いで緊張感がない」など、問題の本質をついた指摘がなされています。4年前の公社対策特別委員会では、今回引退されたある議員が、はしなくも、引退・落選議員の「救済が目的」だと発言されています。

 私は、元議員の方のいわゆる「天下り」問題の本質は、議会と行政が癒着し、行政による便宜供与にあると考えますが、市長はどのように考えておられるのか。現時点でのこの問題にたいする市長の認識を伺います。

市の組織的な関与があるのではないか

【田口議員】
 名古屋市の関与について、市長は記者会見で、「経験や能力を生かして職責を発揮していただけるよう、各公社の判断でお願いしている」として、名古屋市の組織的な関与を認めておられません。しかし、統一地方選挙後に引退や落選した元議員がいっせいに就任し、今回でいえば就任が予定されていた元議員10人の就任先が重複なくスムーズに決まったこと、対象となっていたのは与党会派に所属していて3期12年以上の引退・落選議員に限られていたこと、就任ポストはいずれも監事・監査役であり、その報酬は、今回でいえば月額約34万8000円とほぼ同一であることなどから、名古屋市が組織的に関与していた疑いは濃厚です。ある新聞も、「公社から人選条件 局が元市議を候補に 名古屋市側“天下り”仲介」と報道しました。

 そこで、市長に伺います。元議員の方の外郭団体の役員就任に関して、名古屋市の組織的な関与はなかったと断言できますか。何らかの関与を行なってきたのではありませんか。この際、どのように関与されてきたのか、明らかにしていただきたい。

【市長】
議員OBの外郭団体の監事への就任は、本人の能力、及び長年の議会活動を通じて得られた知識と経験を生かして、公社の業務改善に適切な指摘をもらえる。本人と外郭団体との話し合いで、外郭団体からの要望で就任している。この件で、名古屋市が組織的に関わっていることはない。

市長による監事の選任・任命について―桜仁会と住宅供給公社

【田口議員】
 市長が元議員の方の監事就任に直接関与されている外郭団体があることを指摘したいと思います。元議員の方が監事に就任していた外郭団体のうち、市立大学が所管する桜仁会と住宅都市局が所管する住宅供給公社は、監事を選任、あるいは任命するのは、定款などでは市長となっているのです。そこで、市長に伺います。

 まず、桜仁会についてです。桜仁会の監事の一人は、8年前までは元議員の方でしたが、1995年度からは市職員の兼務となりました。それが4年前から、市長は、再び元議員の方を監事に選任されるようになりました。その結果、桜仁会の有給役員が1名から2名に増えたのです。一度は市職員の兼務に戻した桜仁会の監事に、有給役員数を増やしてまで、元議員の方を選任されたのは、どういう判断からだったのでしょうか。

 次に、住宅供給公社についてです。4年前、市長は、住宅供給公社の監事に元議員の方を任命されました。その年の公社対策特別委員会で当時の建築局長は、元議員の方の監事就任について、「卓越した識見をお持ちの元議員の方にお願いするのが一番妥当」と答弁されています。それなのに、今回、市長が監事に任命されたのは、元議員の方ではなく、住宅都市局の幹部職員OBでした。それは、どういう判断からだったのか、お答えください。

【市長】
 監事としてふさわしい経験、能力、知識を備えた候補者として財団法人桜仁会、および、住宅供給公社から推薦があり、設立団体の長として任命した。

外郭団体側が役員就任を要請するな

【田口議員】
 「天下り」問題にたいする名古屋市の今後の方針についてお尋ねします。

 与党会派のみなさんが、元議員の方の外郭団体の役員就任を辞退される方向に動いていることを受けて、名古屋市は、外郭団体側から元議員の方に役員の就任を要請しないよう、外郭団体にたいして指導すべきではありませんか。市の方針を明確に示してください。

【総務局長】
 それぞれの外郭団体における自主的な判断で、そのポストにふさわしい方を役員に選任していただければよい。

市幹部職員OBの外郭団体への「天下り」の規制を

【田口議員】
 さらに、外郭団体への「天下り」は元議員の方だけの問題ではありません。元議員の外郭団体の役員就任を廃止するとともに、市幹部職員OBの外郭団体への「天下り」を規制する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

【総務局長】
 市の幹部職員OBの外郭団体への再就職は、外郭団体からの要請があった場合に、本人の意向なども踏まえ、本市職員として、長年培ってきた知識や経験を有効に活用するという観点から、市で、再就職について必要な調整を行っている。

 外郭団体は、行政機能を補完・代替する役割を担い、より効率的・効果的な公共サービスが提供できるように設立されたものであり、その目的達成のため必要がある場合には、市の行政経験を有する有為な人材を今後とも活用していきたい。

なぜ引退議員数に応じてポストが増減するのか。よーいどんで決まるのか

【田口議員】
 市長は、元議員の方の外郭団体の監事への就任について、「名古屋市が関わっていることはない」と断言されましたが、到底、理解できません。

 元議員のいわゆる「天下り」は、私が調べたところでは、20年余り前から始まっています。1983年の統一地方選挙後、引退・落選された与党議員のすべての方6人が、次期は前後していますが、外郭団体の監事に就任されています。その後、1987年の選挙後には7人、91年には8人、95年には7人、99年には10人、そして、今年2003年には10人が予定されていました。

 たいへん不思議なことは、元議員の方が監事に就任された外郭団体の数が、いま申し上げたように増えたり、減ったりしていることです。

 新聞報道によると市長は記者会見で、「よーいどんで決まっていくことには、議論の余地はあるかもしれない」とコメントされたようです。引退・落選議員の数は4年ごとに変動しますが、その人数に応じて監事のポストが用意される。そして、「よーいどんで決まっていく」。この事実について、市長は、どのようにお感じになっていますか。不自然だと思いませんか。率直な感想をお聞きしたいと思います。

【市長】
 それぞれの外郭団体において、そのポストに適任な方を必要な時期に選任していただいたと理解している。

 私としては、役員に就任された方に、その能力・識見を生かして、外郭団体の業務改善に取り組んでいただくこと、役員としての職責を果たし、外郭団体の改革・改善を着実に実行していただくこと、これが何よりも大切なことなのだと思っている。が、一方で、ある時期にさっと決まっていくことについて、市民に誤解を与えることがあるので、よーいドンはいかがなものかと申し上げた。

常勤役員数については所管局の指導調整が必要

【田口議員】
 元議員の方が就任されてきた監事の職というのは、有給であり、いわば常勤役員です。名古屋市はいま、「行財政改革計画」の目標として、外郭団体の常勤役員数を10%以上削減するとしています。ところが、今回、引退された与党議員10人の方が、仮に当初の予定通りに外郭団体の監事・監査役に就任されていたら、交通開発機構が初めて元議員の方に監査役を要請される予定でしたので、有給の監事・監査役の人数が、全体では1名増えることになったのです。常勤役員を減らそうといっているときに、常勤役員が増える。こうしたことが、外郭団体だけの判断でできるのでしょうか。常勤役員数の変動については、所管局による指導調整が必要ではないでしょうか。総務局長の答弁を求めます。

【総務局長】
 外郭団体の常勤役員数は、本市の「行財政改革計画」では、外郭団体の常勤役員数を全体で10%以上削減するという目標を掲げている。それをうけた外郭団体改革実行プランに基づいて、現在、その達成に取り組んでいる。それぞれの外郭団体においては、このプランに基づいて、自ら経営改善計画を策定し、経営責任の明確化、常勤役員数の適正化といった観点を踏まえながら、さまざまな経営改善に取り組んでいる。

 所管局の指導調整については、所管局は、市全体の目標を踏まえた上で、外郭団体の自主性・自立性に配慮しつつ、必要な指導調整を行っている。

なし崩し的な幕引きは許されない

【田口議員】
 「天下り」問題については、与党会派のみなさんは、ともかくも次期選挙からは役員就任を辞退することを決められました。しかし、名古屋市は、この問題について何ら省みることなく、なし崩し的に幕を引こうとされています。こうした姿勢は、大変問題だということを指摘して、質問を終わります。