2011年3月定例会
暫定予算等についての質疑(2011年3月28日) 山口清明 議員
暫定予算の編成について
廃止・縮小事業を前提とした暫定予算でいいのか
【山口議員】質問に先立ち、3月11日に発生した東日本大震災で被災されたみなさまに心からのお見舞いを申し上げます。また亡くなられた方々とそのご家族のみなさまに深く哀悼の意を表します。あわせて被災地の救援と復興に全力で取り組む決意を表明いたします。
通告に従い、暫定予算の編成と職員定数条例の一部改正について、総括的にうかがいます。この二つをとりあげるのは、今議会が変則的な審議日程となったことにより、議会の審議権、行政チェック機能が軽んじられることにならないか、若干の危惧があるからです。
まず、暫定予算計上の基本的考え方について、おたずねします。
暫定予算計上の基本的な考え方は、政策的な判断を必要とする事業などについては、特定の事業を除き、原則計上しない、というものです。
ところが「廃止・縮小事業については、廃止・縮小を前提とし、当初予算どおりとする」とあります。廃止や縮小など業務の見直しを行う項目は、予算案の参考資料に掲載されている13事業だけとのことですが、そのなかには既に別の議案で廃止が議決されているものがいくつかあります。
しかしなかには、今回、初めて議論されるものも少なくありません。「民間保育所3歳未満児受け入れ補助の削減」「民間保育所保育士確保対策補給金の削減」この二つは、民間保育園での乳児や三歳未満児の受け入れを促進し、保育士の体制を充実するための制度です。削減が市民にとってプラスかマイナスか、慎重に審議する必要があります。
また「緑化用苗木育成事業の廃止」は、事業の縮減、収束が既定方針とされていますが、「苗木を育成していた農地の保全が課題」となっています。本市の緑被率が減少傾向を脱していないまま、農地や緑地の減少をもたらすような事業廃止は問題です。ていねいな審議が必要です。
暫定予算の審議では、政策的な判断を必要とする事業は原則計上しない、としながら、廃止・縮小される事業については、この三日間で政策的判断をしなさい、ということなのですか?それでは暫定予算の性格から逸脱するのではありませんか?
暫定予算編成の任にあった財政局長に、あらためて暫定予算の位置づけ、本予算の審議との関係をうかがいます。お答えください。
見直しによる市民サービスの低下はない(局長)
【財政局長】これらの見直しによる市民サービスの低下はない。
予算審議と定数条例との関係について
予算審議の前に336人減らすことを先に決めてしまうのか
【山口議員】今議会にはまた、年度内に議決しなければ、市民生活や行政運営に支障が生じるものとして、24件の議案が上程されています。
これらは議案に賛成か反対かは別として、年度内に議決する必要があるとされたものばかりということですが、暫定予算の考え方とはちがって政策的な判断を必要とするものがいくつもふくまれています。
そこで、名古屋市職員定数条例の一部改正について総務局長にうかがいます。
この議案は端的に言えば、職員定数を336人減らすことを認めよ、という議案です。どこの局でどんな事業を行うのか、そのために必要な職員数は何人か、というような審議を経て、職員定数を定めるのが通常です。どこの局で、どんな事業が増えるのか減るのか、それが市民にとってプラスかマイナスか、よく審議して、定数が適当かどうか議決するのが議会の役割です。
しかし今回は、4月1日時点で、職員定数がきまっていないと業務に支障をきたすということで、定数条例の審議が先行されるわけです。先に定数を定めることにより、後日行われる予算の審議が束縛されることはないのでしょうか?
たとえば市長部局の職員定数は差し引き248人のマイナスです。なかでも税務事務集約化による定員削減は、昨年度108人、新年度は93人、この2年間で200人を超える大幅な削減となっています。
16区役所にあった税務課が3カ所の市税事務所に集約されました。この結果、どうなったのか、私の所には、税金の取り立てをめぐる苦情がぐんと増えました。区役所の時は、滞納分の分割払いでコツコツ頑張ってきたのに、市税事務所になったら急に、一括返済を迫られた。区役所の時は国保料と市民税の滞納をどうするか、親切に相談に乗ってくれたのに、市税事務所では、とにかくまず税金を払え、あとは知りません、という態度です。職員を減らした影響がないとは言わせません。税務事務集約化に伴う市民サービスへの影響をしっかり議論すること抜きに、定数条例の意味ある審議はできません。
上下水道局では、営業所2か所の集約化で12名の定数削減です。市民サービス上、また災害時の対応を考えた時、営業所の集約路線も見直すべきだと私は考えていますが、定数問題だけを先に審議され、予算審議のときにはもう結論先にありきでは困ります。
予算審議のなかで、この事業についての職員数はもっと増やすべき、とか、この事業はいらないから職員数も減らすべき、となったら、この条例はどうなるのでしょうか?
まさかもう定数は議決したのだから、何も修正には応じられません、ということではないですよね?
この定数条例と予算審議とはどのような関係にあるのか、予算審議前に議決することが予算審議のあり方に影響を与えるのか否か、総務局長の答弁を求めて、第一回の質問を終わります。
条例定数の中で対応できるので、今後の予算審議に影響を及ぼさない(局長)
【総務局長】政策的な判断を必要とする事業は、直接、定数に関わることはなく、今回の定数で対応できるので、今後の予算審議に影響を及ぼすことはない。
政策的な判断がしっかり暫定予算にも組み込まれ問題だ(意見)
【山口議員】暫定予算は、できるだけ価値判断抜きに、誰もが賛同できるものとして編成すべきです。しかし、なかなかそうはいきません。財政局長は、「事業の見直しによる市民サービス低下はない」とおっしゃいましたが、ほんとうに市民サービスの低下がないかどうかを審議するのがこの議会であり、予算の審議です。
答弁をきくと、政策的な判断がしっかり暫定予算にも組み込まれているじゃありませんか。具体的な見直しの是非については委員会での審議に委ねますが、暫定予算の編成について「問題あり」とだけ、まずは指摘しておきます。
総務局長からは、職員定数について、この条例で定めても「今後の予算審議に影響を及ばすことはない」との答弁でした。今日明日の限られた短い審議日程では、職員定数にかかわる十分な審議はできません。
予算審議全体をとおして、必要な職員数の確保について、しっかりと議論していきたいと思います。
私がとりあげたのは二つの議案ですが、この窮屈な審議日程で急いで議決するすべての議案も同様です。
暫定予算をはじめとする議案を年度内に採決することは理解しますが、その中に政策的判断を要する事業がまだいくつも見受けられます。本予算の審議の中で、3月にもう採決されています、と言ってもらっては困るのです。
今日明日の短い審議日程ですが、委員会の場でもできるかぎりていねいに審議を行い、そして4月になってからの予算審議の場で、あらためてじっくりとこの続きを審議していくことを表明して、質問を終わります。
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