2011年度一般会計予算案にたいする反対討論

※田口議員の討論は1時間12分経過頃から

2011年4月27日 田口一登議員

【田口議員】私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、一般会計予算に対し、原案及び修正案に反対する立場から討論を行います。

今議会は、戦後最大の大災害となった東日本大震災の被害の拡大に、市民のみなさんが心を痛め、本市としても被災地への支援に全力をあげている中で開かれてきました。国難ともいうべき大災害をのりこえて、新しい日本社会をつくっていく一翼を、本市も、本市会も、担っていかなければなりません。同時に、本市としても市民の命と暮らしを守るために、地域防災計画を抜本的に見直し、災害に強い、市民に優しいまちづくりを進めることが求められています。

以上のことを申し上げたうえで、原案に反対する理由を具体的に申し上げます。

反対する大きな理由の第1は、大企業・大金持ち優遇の市民税減税を恒久化することを前提にした予算となっており、「減税」によって意図的に税収不足をつくり出し、「行財政改革」の名のもとに市民サービスの削減を進める、いわゆる「構造改革」路線が継続されているからであります。

河村市長の「減税」は、大企業と大資産家に手厚い減税となったことに加えて、福祉・市民サービスの削減とセットで行なわれたという大問題があります。昨年度は、「減税」の財源づくりと称して、私立高校・幼稚園への授業料補助、学童保育への助成金、児童養護施設への補助金などがばっさり削られ、市立城西病院の民間売却、公立保育園の民営化などが進められました。

今年度は「減税」が見送りになり、159億円の財源ができました。この財源の一部を活用して、中学卒業までの通院医療費無料化や待機児童解消のための保育所の整備などの予算が計上されました。「減税否決で福祉充実」、「減税せず福祉拡充」、「減税中止で政策原資 子育て、景気対策に」――予算案について報道した新聞各紙の見出しであります。「減税」したら福祉が削られ、「減税」をやめたら福祉が伸びた。これが、河村「減税」の正体であります。

ところが、今年度の予算では、「減税」の恒久化をもくろんで、「減税」の中止で浮いた財源のうち62億円が留保されました。そもそもこのような予算編成は、地方自治法上の会計処理原則である総額計上主義に反するものといわなければなりません。

しかも、「減税」恒久化を前提にしたために、福祉と市民サービスがまたもや削減されようとしています。

 その一つが、保育料の値上げです。最高では年額10800円もの値上げとなり、所得税非課税世帯でも年額3600円の値上げになる世帯もあります。保護者のみなさんからは、「本当に生活に困って働いています。少しでも負担にならないようにしてください」、「減税するよりも、市民税を市民のため、将来のある子どもたちのために使ってほしい」という切実な声が私たちのもとに届いており、おそらく河村市長のもとにも届いていることでしょう。それでも市長は、「お母ちゃん励まし型予算」といって胸を張れますか。

当局は、保育料値上げの理由について、待機児童対策に取り組んできたことによる市の保育料軽減措置額の増加をあげていますが、保育所を増やし、働く保護者の就労を保障することは、市の税収を増やすことにもなります。それにもかかわらず、待機児童対策を口実に、保護者に過大な負担を押し付ける保育料値上げは、到底認めるわけにはまいりません。

 福祉・市民サービス削減の二つ目は、福祉施設の民営化です。名古屋市直営の特別養護老人ホーム「黒石荘」、および知的障害者援護施設「若杉作業所」「昭和橋作業所」「鳩岡作業所」を民間に移管するとしています。名古屋市が福祉の現場からどんどん手を引いたらどうなるか。要介護者や障害者の状況を市が直接把握することが困難になり、福祉行政にたいする公的責任が大きく後退します。

 三つ目は、昨年度から進められている税務事務の集約化です。市税事務所の開設にともない、市税の分割納付件数が4割も減少しました。このことは、一律的機械的な税金徴収が強化されたことを示しています。そのうえ、税務事務の集約化にともなう職員削減がさらに進められ、市民に寄りそった納税相談に支障をもたらしかねません。

市職員は、一般会計だけでも251名削減されますが、こうした大幅な職員削減が繰り返されれば、いざ災害という時に、市民の命を守るという自治体の責務を十分に果たせなくなるということも、合わせて警告しておきます。

 四つ目は、新たな行政評価の実施です。これは、いわゆる「事業仕分け」ですが、国の「事業仕分け」は、財源ねん出のみを追い求め、短時間で廃止だ、見直しだと乱暴に結論を出し、国民生活に必要なものまで削っていきました。市長は、「減税」の財源は「行財政改革」で賄うと言いますが、「福祉は民間で、地域委員会で」が持論の河村市長のもとで行なわれる「事業仕分け」は、「金持ち減税」の財源づくりのために、福祉と市民サービスをいっそう削減していくテコになりかねません。

 反対する大きな理由の第2は、前市政が進めてきた不要不急の大型事業を継続し、さらに輪をかけて推進しようとしているからであります。

河村市長は、先の市長選挙で名古屋城天守閣の木造復元を公約し、本定例会における予算の提案説明の中でも、「天守閣の木造復元など名古屋城の整備に関する課題調査を実施する」と明言されました。ところが、委員会の審査の中で当局は、「名古屋城整備課題調査の中には、天守閣の木造復元の調査は入っていません」と答弁したというのです。市長の説明と当局の説明が食い違う。こんないいかげんな予算提案の仕方はありません。東日本大震災からの復興と東海地震などに備えた地震対策の抜本的な強化が最優先とされている時だけに、本丸御殿の復元さえ急ぐ必要はなく、ましてやさらなる巨費を投じることになる天守閣の木造復元は、玉虫色でやり過ごすのではなく、きっぱりと断念すべきであります。

本予算で初めて盛り込まれた名古屋大都市圏戦略は、日本経団連が昨年3月に発表した『わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む』という提言を受けて、国土審議会の国土政策検討委員会が取りまとめた最終報告を踏まえて検討調査を行なおうとするものです。それは、国際競争力の強化をめざす財界の意向にそって、リニア中央新幹線の開通を見据えて、空港、港湾、高速道路など名古屋大都市圏の巨大インフラの整備などを促進しようとするものにほかなりません。

すでに本予算では、中部国際空港の2本目滑走路の建設促進のために、期成同盟会への負担金の支出が継続されていますが、中部国際空港は、旅客数も貨物取扱量も開港以来、減少し続けている現状を踏まえれば、2本目滑走路の必要性はありません。

名古屋駅周辺公共空間整備と称して、ささしまライブ24地区などの開発と一体に、笹島交差点からささしま地区方面へ約300メートルの地下通路の整備が計画されています。事業費の規模は30億円から45億円と推計される新たな大型公共事業であります。名古屋駅周辺で整備されたルーセントアベニューなどの巨大地下通路はガラガラであり、その二の舞になりかねません。

また、徳山ダム導水路事業への出資金については、工業用水道は水が余っていて、徳山ダムから取水する必要はまったくなく、河村市長もこの導水路事業からの撤退を表明しているにもかかわらず、一般会計からの出資が継続されていることも問題であります。

以上、原案にたいする反対理由を申し上げてきましたが、加えて自民・公明・民主3党の修正案にたいしても反対する理由を申し上げます。保育料値上げの中止は、わが党も大賛成でありますが、修正案は、原案に盛り込まれた福祉の民間化や不要不急の大型事業にはメスが入らないなど、原案の根本問題をただすものとはなっていません。

一方で、地域委員会制度の創設準備の予算が削除されていますが、この予算を削除しますと、地域委員会も含めた住民自治のあり方についての市民的な議論を深める場がなくなってしまいます。地域委員会というような新しい住民自治の仕組みをつくり、住民自治を発展させるためには、なによりも住民の合意と民主的手続きが不可欠であり、市民と議会、行政の検証と議論をつうじて新しい住民自治の仕組みを築いていくプロセス自体が、名古屋市の住民自治を発展させる契機となるでしょう。こうした市民的な議論の場となるパブリックヒヤリングや地域懇談会の開催経費を削除することは、容認できません。

 わが党は、部分的な修正にとどまらず、予算の抜本的な組み替えを求めます。不要不急の大型事業を中止・見直して財源を確保するとともに、留保されている62億円の資金も活用して、保育料の値上げをやめることはもちろん、国民健康保険料の引き下げや介護保険の利用料減免制度の創設など、福祉をさらに充実させるとともに、民間木造住宅の耐震改修助成の助成上限額および助成件数の思い切った引き上げをはじめとする地震対策を前進させ、市民の命と暮らしを守る予算に組み替えるよう要求するものです。

最後に、大震災を踏まえて、この名古屋で「福祉と防災のまちづくり」を大きく前進させるために力を尽くす決意を表明して、討論を終わります。

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