侵略戦争を美化する育鵬社・自由社の教科書について(見解)
2011年 7月 11日
日本共産党名古屋市会議員団
団 長 わしの 恵子
2012年度の教科書選定のための一般展示が終了し、市教育委員会で採択される教科書について、日本共産党名古屋市会議員団の見解を明らかにします。
今回、検定合格した教科書のうち、育鵬社・自由社の歴史教科書および公民教科書には、子どもたちの人権を尊重する立場に立てば、重大な問題があると考えます。
第一に指摘しなければならないのは、歴史叙述のゆがみです。育鵬社版も自由社版も、もとをただせば「新しい歴史教科書をつくる会」の理念を原点につくられており、歴史教科書の中では、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼び、「自存自衛」「アジア解放の戦争」と記述、植民地支配を正当化し、侵略戦争に貢献した国民を大いにたたえる内容となっている点で共通しています。民衆やアジアを軽視し、国家中心の歴史を描き、日本帝国主義がアジア諸国民に与えた侵略行為については、ほとんど記述されていません。
このように、侵略戦争を賛美し「戦争は正しかった」と教えようとしている点に、この教科書の最大の特徴があります。
第二に、二つの会社の公民教科書は、憲法認識に極端なゆがみが見られます。いずれの教科書も、天皇主権の大日本帝国憲法を高く評価し、国民主権を明確にしている現日本国憲法を「世界最古の憲法」と位置付け条文の粗略な紹介にとどめ、アメリカの押しつけということを強調し、日本人自身が戦争の悲惨さを自覚し様々な憲法草案を作成して、国民的な議論で憲法制定に望んだことなどの歴史的事実は評価しません。ここには憲法改悪に誘導するという極めて政治的な意図が含まれており、ふさわしくありません。
第三に、歴史教育にとっても公民教育にとっても、大切なことは、民主的に意見を交換し、何が真実で、何が大切かを考え、過去から学び、よりよい未来をめざす子どもたちを育成することです。そのためには、基本的人権の尊重に裏付けられた人権意識の育成が必要とされます。ところが、これらの教科書は「公につくす」「国への忠誠」を求め、国策に従順な国民の育成を求めるという内容になっています。
以上の理由から、日本共産党名古屋市会議員団は、子どもたちが世界に向かって堂々と胸をはって生きていくために、特定の意図をもってつくられた育鵬社・自由社の歴史教科書、公民教科書は採択すべきでないと考えます。また、専門職であり、実際に教科書を使用する、現場の教職員の意見を最大限尊重すべきと考えます。
以上
キーワード:子どもと教育、平和と人権、市民生活