2010年度決算反対討論

※山口議員の討論は、1時間15分頃からです。

2011年10月12日
山口清明 議員

私は日本共産党市議団を代表して、2010年度一般会計決算の認定に反対する立場から討論します。

理由は三点。第一に、庶民減税とは名ばかりの金持ち大企業減税が行われたこと。

第二に、減税の財源づくりとも減税の目的ともされた「行財政改革」の名で、市民のための施策が削減されたこと。

第三に、その一方で税金のムダ使いである大型開発が推進されたことです。

決算審議では、市民と中小企業の深刻な実態が浮き彫りになりました。

人口は増えたのに、個人市民税の納税義務者は2万人以上減りました。市内の納税企業数も約5百社減りましたが、欠損を抱える赤字法人は逆に約1千社増えて、初めて全法人の7割を超える6万4千社となりました。

倒産は398件、市の支援で新規立地・創業した企業数の2倍以上です。

その結果、市民税収入は予算より12億円以上も少なくなりました。個人の所得も企業収益も当初見込みより悪化したのです。

緊急雇用創出事業の補助金も消化しきれず残しました。人件費を低く抑えたところが入札で仕事をとった結果です。ここでも賃金が低く抑えられました。

市営住宅使用料も保育料も予算どおりに集まりません。滞納が増えたのではなく、市営住宅の入居者も保育園の利用者も、その所得が市の見込みを大きく下回ったのです。本丸御殿への法人からの寄付も不況により減少しました。

これだけ市民生活や中小企業の経営が脅かされてきたのですから、市長があちこちで吹聴したように「一人に一万五千円ずつの減税」だったなら市民は大歓迎したでしょう。

ところが実際は、庶民減税とは名ばかり、貴重な税金を大金持ちと大企業に手厚くばらまく減税でした。

市民税10%減税は、その審議の過程で、議会各会派から金持ち優遇になるとの強い懸念が示されました。しかし市長は議会の意見には全く耳を貸さず一律減税を強行し、その結果は私たちが危惧したとおりになりました。

個人市民税。納税者の56%が減税額1万円未満なのに、高額所得者には最高で1千万円を超える減税です。所得格差をいっそう広げてしまいました。

法人市民税。減税がわずか5千円の中小企業が納税企業の6割を占めます。ところが減税額上位10社で約12億円の減税です。

法人市民税の減税額は全体で約68億円ですから、納税企業のわずか0.01%の大企業が減税額の約2割を占める、一握りの大企業に恩恵が集中した減税だったのです。

「行財政改革」の実態はどうか。

保育料の値上げや自動車図書館の廃止は議会が認めませんでした。大気汚染常時監視測定局を11カ所も削減しましたが、これで浮いた予算約2千万円は個人市民税の上位二人分の減税に消えた計算です。社会的に弱い立場の子どもたちがくらす児童養護施設への海水浴の助成まで削られました。

生活保護世帯が増えているのに、ケースワーカーの配置が追いつきません。待機児童も増えているのに、公立保育園の廃止・民営化を見直そうともしません。行革の名で、公務員の削減そのものが自己目的化し、法律が自治体の責務としている業務すら十分に遂行できない状態です。

なかでも市税事務の集約化は問題です。職員を108人減らしながら、市税事務所が入居した大企業のオフィスビルなどには年間4億8千万円もの賃料を払う。どうして市役所や区役所じゃだめなのか、理解できません。

税金の差押え件数は8,828件から16,610件に倍増です。ところが市民税の減免も徴収の猶予も前年より減らし、分割納付は、前年比で半減の1012件しか認めませんでした。

減税の恩恵を受けた年でなく、税金の過酷な取立てが行われた年だったのです。 

一方で、大型開発は、行財政改革の対象とすらせず、聖域扱いです。

市民は一滴の水も使わない、長良川河口堰や徳山ダムへの出資を続け、さらに木曽川水系導水路事業へも出資するのは税金のムダ使いそのものです。

ささしまライブ24地区など名駅周辺公共空間整備事業は、大企業の高層ビル建設などを支援するものですが、立派な地下通路をつくるより、地下街が水没しないよう津波への備えこそ優先です。

モノづくり文化交流拠点の基盤整備は、減税で億単位の恩恵を受けた巨大企業の博物館建設への支援にほかならず、税金を支出する必要はまったくありません。

この年には、ワンコイン検診や任意予防接種への補助、別会計では水道料金の引き下げも行われました。

これで「減税」がなかったら、今年度に保育園や特養ホームの建設が進んだように、高すぎる国保料の引き下げなど、市債の発行を抑制しながらでも、必要な施策をもっと充実できたはずです。

加えて、3月の東日本大震災を経て、民意はいま「減税」よりも「防災と福祉のまちづくり」へと大きく変わりました。

時々の市政運営は、災害の発生や景気動向をにらみながら、優先施策を選びつつ行うものです。しかし市長の減税は、財政を硬直化させ、柔軟な市政運営を妨げるものでしかありません。

貴重な税金は、大企業と高額所得者にばらまくのではなく、景気回復と市民生活の支援にこそ有効に使うべきです。

河村市長の減税は、庶民減税とは名ばかりで、格差と貧困の広がりをくい止めることも、中小企業の経営を支えることもできなかった。

このような減税を含む2010年度決算は到底、認定するわけにはいきません。

以上、討論を終わります。

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