田口一登議員の個人質問① 行政評価「事業仕分け」と市民税減税について
2011年11月25日
田口一登
■「予算削減ありき」の粗雑なやりかただった
【田口議員】最初に、行政評価と市民税減税について質問します。
名古屋市で初めて実施された市民参加・公開型の外部評価、いわゆる「事業仕分け」の実施方法にたいして、市民はもとより、市民判定員や市の幹部職員からも疑問や批判の声が噴出しています。
ある新聞に「名古屋市の『仕分け』に異議」と題する投書が載っていました。「アドバイス役をされた有識者という方々は、本当にこれらの事業の内容について知識のある人だったのだろうか。今の世の中で、女性会館、男女平等参画推進センターまで『廃止』にしてしまう今回の仕分けには、とうていものを考える市民の支持は得られないであろう」という厳しい意見でした。
事業仕分け当日に実施された傍聴者にたいするアンケートでは、無作為抽出の市民判定員による外部評価に「意義がない」と答えた人が過半数にのぼっています。市民判定員にたいするアンケートでも、「廃止」「見直し」「継続」という3区分での判定について、「適切だった」は4割余りにとどまりました。
この間、市議会の各常任委員会で外部評価結果についての報告が行われてきましたが、ある常任委員会では局長が、「17人の市民判定員の意見だけで廃止を決めるというやり方に疑問がある」、副局長も「費用負担ばかりが議論されたが、事業の意義や効果についての議論も必要」と答弁され、別の常任委員会でも局長から、「判定結果がひとり歩きするのはまずい」という意見が出されていました。
総務局長にお尋ねします。「廃止」「見直し」「継続」の3区分で判定を下すというやり方は、あまりにも機械的だったのではありませんか。対象となった事業の利用者や受益者は少数であることが多いかもしれませんが、利用者・受益者の意見を反映する機会がまったくないというやり方は、少数者・社会的弱者を排除する仕組みになるのではありませんか。仕分け議論は、財政負担の観点が優先され、事業の意義や効果についての議論が後景へ追いやられたことも問題だったのではありませんか。総じて今回の事業仕分けは、「予算削減ありき」の粗雑なやり方だったと考えますが、いかがでしょうか。
■市民の率直な評価をいただくことができ、有意義であった(局長)
【局長】外部評価における判定区分については、できるだけ簡素でわかりやすいものにすべきと考え、「廃止」「見直し」「継続」の3つの区分としたところでございます。
こうした、簡素な判定区分としたことを補うため、コメント欄を設け、判定の理由などを記入していただくとともに、判定の内訳やコメントについても公表し、評価結果を適切に浩用できるように配慮したところでございます。
今回の外部評価の特徴の一つは無作為抽出により選ばれた市民判定員の率直な評価をいただくことです。
市民判定員につきましては、住民基本台帳から無作為抽出で選出した方のうち、是非、市民判定員として評価に参加したいという意欲のある方の中から、性別・年代別に名古屋市の人口構成の縮図となるように選定したところでございます。
こうした工夫により特定の意見に偏ることなく、適切に市民感覚を反映できると考えたところでございます。
ご指摘いただきました利用者や受益者の意見の反映につきましては、今後、各所管局において、評価結果を踏まえた検討をしていく中で、対象事業に応じて議論されていくべきものと考えております。
今回の行政評価では、施策への貢献度、事業の有効性、目標に対する達成度・事業の効率性、持続可能性や市の事業としての必要性という視点から、行政内部による点検・評価を実施したところでございます。
外部評価につきましては、評価票、論点シート、事業局による説明をもとに、財政負担だけでなく、さまざまな観点から学識経験者による議論がなされたものと認識しておリます。
予算削減ありきというご指摘でございますが、今回の行政評価については、施策の観点から事業を点検する必要性、市民への説明責任のさちなる向上と市民参加の促進といった、従来の行政評価の課題を踏まえ、市長始め各局長で構成する経営会議において決定し、実施したところでございます。
今回の施策重視・公開・市民参加の外部評価につきましては、市民の率直な評価をいただくことができたという面で有意義であったと考えておりますが、今後、改善を図りながら、よりよいものにしていきたいと考えております。
■判定結果は「参考意見」にすぎない
【田口議員】「廃止」と判定された高年大学鯱城学園の学生会やOB会のみなさんが、学園の存続を求めて全会派と市長に要請され、女性会館や野外学習センターについても存続を求める請願署名運動が始まっています。「見直し」と判定された敬老パスについても、現行制度の継続を求める請願が提出されようとしています。
廃止、見直しとされた事業にたいして、判定結果に「異議あり」という声が沸き起り、仕分けの実施方法も、多方面から数々の厳しい指摘が寄せられていることをみれば、判定結果を正当化できるものではありません。判定結果の取り扱いについては、先日の教育子ども委員会で住田副市長が、「予算に直結するものではなく、市の意思決定においては『参考意見』である」と答弁されたように、せいぜい「参考意見」にすぎないと思います。
市長にお尋ねします。市長も、事業仕分けの判定結果は「参考意見」という認識でいいですか。
■どこまでいっても市民の意見が重要だ(市長)
【市長】事業仕分けの判定結果は単なる参考意見なのかということですが、市長は政治的な発言もできますが、住田さんは役所の人なので忠実に言われたんだと思う。今回の外部評価では、20人の年代別、男女別の無作為抽出による市民判定方式で、現技術では市民の意見を一番客観的に見れるものだとなっており、あんだけの方があつまっていただいて、事前に資料も提供して考えていただいてという状況でございますので、どこまでいっても市民の意見が重要だということは当たり前のこと。そういうつもりで接している。
■敬老パスの見直しは公約違反。見直さないと断言を
【田口議員】具体的に敬老パスの判定結果について伺いたい。事業仕分けでは、自己負担金の引き上げ、利用限度額の上限の設定、交付年齢の引き上げという意見が出され、「見直し」と判定されました。市長は、記者会見の場で、「維持する」と言う一方で、「そのままの形態がいいかどうか」とか、「裕福な方は(負担金を)もうちょっと出していただいて、庶民はもっと値下げするとか、というのもある」などと述べておられます。裕福な方であっても、負担金を引き上げるならば、それは現行制度の見直しになります。市長選マニフェストに掲げた「敬老パスを守る」という市長の公約に反することになるでしょう。
市長、敬老パスについては、負担金の引き上げや利用限度額の上限の設定、交付年齢の引き上げは行わないと断言できますか。明解な答弁を求めます。
■いろんな改良を含めて守る(市長)
【市長】敬老パスについては、守ると言いまして、守山や港区なんかは地下鉄がないから利用度が低いとか、価格帯とか、負担割合とか、いろいろ問題はある。そういういろんな改良を含めて守るということですよ。年とってからいんなところに出かけたり、活動するのは応援したいと思っているので、敬老パスは、是非名古屋の宝として守るという気持ちにいささかの揺らぎはありません。区によって違いがあり、そういうこともくみながら議論していくと。10年くらいのところで見直すということになってたようで、当局から2年くらい前に、そろそろ時期なのでそろそろ議論をきちっとしたらどうだということではじまった訳です。
■市民税減税の財源づくりだ
【田口議員】日本共産党は、今年度予算に対する反対討論で、「『事業仕分け』は、『金持ち減税』の財源づくりのために、福祉と市民サービスをいっそう削減していくテコになりかねない」と指摘しましたが、事業仕分けの実施状況を目の当たりにして、その懸念がますます深まりました。
市長は、来年度からの市民税減税の恒久化に固執しておられます。しかし、減税を実施する財源がありません。財政局の収支見通しでは、市民税減税を実施した場合、来年度予算は363億円の財源不足が生じ、その穴埋めのために、人件費の削減や扶助費の3%カット、維持補修費の10%カットなどさらなる「行革」を実施し、財政調整基金を取り崩すなどあらゆる手立てを講じても、なお76億円も不足し、その財源のメドはたっていないのであります。
市長は、「減税の財源は全額を行財政改革によって確保している」と強弁されています。しかし、市長が「行革」によって確保したという財源は、来年度の減税実施のために全額残されているわけではありません。今年度、減税を実施しなかったことによる増収分159億円のうち、63億円は景気・雇用対策や中学卒業までの通院医療費無料化などの子育て・福祉・教育分野の充実、さらには被災地支援などに支出されています。実質的な留保財源の残額は96億円ですが、これは財政調整基金の取り崩しとして収支見通しに織り込み済みであります。
市長、363億円の財源不足という財政状況のもとで、無理やり「減税」をやろうとするとどうなるか。事業仕分けで廃止、見直しと判定された事業に切りこんでいかざるをえなくなるのではありませんか。「大企業・金持ち減税」の財源づくりために、事業仕分けの判定結果をお墨付きにして、高年大学や女性会館などを廃止する、敬老パスを見直す――こんなことはあってはなりません。市長の見解を求めます。
■減税の金は恒久財源として確保されている(市長)
【市長】市民税10%減税の財源につきましては、これはあくまでお金がないということではない。減税の金は196億円、恒久財源として確保されていて、そうでないと総務大臣が許可しませんから。許可証は民主党の大臣からいただいてます。残念なことに、円高や震災等で日本中税収が落ち込んでおり、そういう場合にどうやってやっていくかは現実的に12月20日頃に地財計画の枠を示すということです。そうでないと、落ち込んだままそのままでやらねばいけない。税収が落ち込んだままで地方自治体がやらなければならないとなったら、全国の自治体は大変。市バスや地下鉄が止まったり、病院の点滴が止まる。あり得ない。はっきりするのが12月20日ころ、1月頃には予算に向けてはっきりださせてもらうということで、地方自治体もしっかり行革に取り組んで、まあ、そういうお金でございまして、全国的のそうであって、お金がないわけではない。
マクロのお金がなくなったら、交付税と臨財債でやって、法人税が減ったら減収補てん債でやる。なおなかったら折半ルールでやる。毎年やっている。日本中でやっている。
いまの税収だとこうなるということを出しただけだ。
■見直しはしないということでいいですか(再質問)
【田口議員】事業仕分けの手法についての総務局長の答弁は、言い訳のオンパレードだった。問題点は素直に認めた方がいいですよ。
事業仕分けと市民税減税について市長に再質問します。
最近、わが党の議員控室に次のようなファックスが届きました。
「名古屋市長の減税論にはまったく賛成できません。……我々が慣れ親しんできた施設がなくなるとか。それが減税のためであれば、庶民の味方どころか、我が身を売り込むための施策としか考えられません。敬老パスの『見直し』などとんでもないことです」。
83歳の女性の方のご意見です。大企業や大金持ちにどっさりという減税の財源づくりために、市民にとって大事な施設がなくなったり、敬老パスが改悪されたりしたらたまらない、という不安を募らせている市民は少なくないのです。
市長は、敬老パスは守るとおっしゃいました。わたしがお尋ねしたのは負担金の引き上げや年齢の引き上げなどの見直しは行わないと断言できるのかと伺った。見直しはしないということでいいですか。お答えください。
■具体的にどうするかはまだこれからのこと(市長)
【市長】市民の意見を虚心坦懐に聞くというのは大事なんでしょ。無作為抽出で出てきた意見を含め納税者全体の気持ちを考えてみるのは必要なことだと私は思う。それをやっちゃいかんというのかね。具体的にどうするかは、まだこれからのことで、今の段階でどうこう言えるのか、共産党だでそうかもしれないが、えらい拘束させるような話だと思いますが。
■「公的福祉解体」減税だ(再々質問)
【田口議員】結局敬老パスについては見直しはしない、と市長は断言されませんでした。
「減税財源は行革によって確保している」というのは詭弁です。国の地財計画がはっきりしないということだった。歳入と歳出が、22年度とまったく同じ財政規模であれば、そう言えなくはないですが、歳入は減り、歳出が増えているのですから、収支不足が毎年発生するのです。
減税を実施した場合、来年度から350億円前後の収支不足が続く見通しです。こんな財政状況で無理やり減税をやれば、敬老パスが改悪されかねない、福祉が後退しかねない、という市民の不安はぬぐえないのであります。
そこで原点に立ち返って、河村市長の市民税10%減税の目的について伺いたい。河村「減税」の目的は、庶民の生活支援や税の不公平の是正ではありません。目的の一つは、減税で意図的に税収不足をつくり出し、市民の自己責任を重視する「小さな政府」づくり、「福祉の構造改革」を進めるところにあるのではないですか。「減税」による税収減をテコに福祉・暮らしの予算を削減し、福祉は地域委員会や民間企業に任せるという「公的福祉解体」減税ではありませんか。
■行革を直すために減税するが制度が出来た主旨(市長)
【市長】全く違っておりまして、根本的な主義が違うのかどうかわかりませんけど、共産主義の立場から言われると根本的に困る。今度の減税は法務省が行革減税だときちっと限定的にしたほうが良かったですね。減税財源が行革でないと許可されないんですよ。生活支援だとか納税者に対する感謝とか、減税の一部を寄付して大きな公共サービスをつくるとかいろいろあるが、制度としてそうなっているので、行革を促すために減税するというのが制度が出来た主旨ですよ。慶応の島田先生が、総務省の会合で、行革をして市民に還元するのはいいことだと喋っておられます。引き金は、そういう意味の減税だということであります。
■「民意」の一言で公約を押し付けるのは、独裁政治になりかねない(意見)
【田口議員】私の指摘は減税日本のホームページのQ&Aにも出てるんです。3つあり、1つは市長がおっしゃった行革推進。3つめに小さな政府論。市場の政府の介入を最小限にし、個人の自己責任を重視する、と。つまり民間に渡す、地域委員会だと言ってるわけです。こういう減税だと言っている。党首ですからちゃんと理解といて下さいね。
最後に一言申し上げたい。市長は「市長選挙で勝ったから減税は民意だ」と言いますが、市民は、減税の中身まで、大企業・大金持ち優遇という中身まで、白紙委任したわけではありません。ましてや減税のために福祉の削減を認めたわけではありません。
公約の実現のために誠実に力をつくすことは、一般論としては当然のことですが、一つ一つの政策を実行するさいには、市民の世論に耳を傾け、理解と合意を得る努力をつくすこと、議会での十分な審議をつくすことが大前提となります。これは、欠くことのできない民主主義のプロセスであります。市民の意識が変化しようと、財政に収支不足がおきようと、「民意」の一言で公約を押し付けるやり方は、「民意」を騙った独裁政治になりかねない、ということを忠告させていただいて、私の質問を終わります。
キーワード:税、地方自治体と住民参加、田口かずと