岡田ゆき子議員の個人質問② 外部評価対象事業の今後の方向性について(敬老パス)

2011年11月25日
岡田ゆき子

■敬老パスの果たしている役割はどういうものだ

【岡田議員】次に、外部評価でも多くの市民が固唾をのんで、行方を見守っていたのが、この敬老パスです。敬老パスについての市民意見は全部で979件。廃止すべきという意見はたった3件、料金引き上げや交付年齢の引き上げなど改悪するもの18件と合わせても、たった2%です。

一方、現行のまま継続や拡充を求める意見や健康面や経済的効果があるんだとする意見は98%にものぼります。

天白区にお住まいの女性からお電話がありました。「年金が月13万円。お金を切り詰めて生活している。敬老パスを使って栄や名駅に行くことがささやかな楽しみとなっている。街中に出て行くことは目の保養になっている。金持ち、富裕層には減税があり、減税には何の恩恵もないわたしらから、敬老パスを奪うのですか。」

また、65才を前にした男性からもお電話で、「あと数年で敬老パスが貰えることを楽しみにしていた。しかし、減税のために私たちにしわ寄せが来るとは思っても見なかった。団塊の世代を悪者のように言うけれど、戦後の日本を立て直して一生懸命働いてきた、それを団塊の世代が65歳になるから敬老パスを見直せとはおかしい。敬老パスを使って皆が出歩くようにしようとなぜ言えないのでしょうか。」

名古屋市の高齢者に対する施策の中でもこの敬老パスは、他都市と比べても優れており、市民からも高く評価されています。この制度の存続はどうしても必要です。敬老パスについての外部評価ではコスト論が多く取り上げられ、本来の福祉として実施されていることの意義や効果が十分の議論されていなかったことに問題があります。

そこで、健康福祉局長にお聞きします。敬老パスの設立趣旨は、「高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図ること」とあります。高齢者がいかに要介護状態にならないか、予防していく観点は重要です。生きがいと健康つくりおよび社会参加という点から敬老パスの果たしている役割はどういうものだと認識されますか?

■日常生活だけでなく生きがいづくりや社会参加のために有効(局長)

【局長】敬老パス条例で、「多年にわたり社会の進展に寄与してきた高齢者に対して敬老パスを交付することにより、高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図ること」を目的とすると書いてある。

高齢者の方には、家事や買物、通院といった日常生活に必要な利用日的だけでなく、趣味や学習、ボランティア活動など、生きがいづくりや社会参加のために有効に活用していただいている。

また、敬老パスを活用することにより、高齢者が気軽に外出できる環境を整えることは、閉じこもりの防止や健康づくりにも役立っているものと認識している。

■制度の効果を多面的に評価することが必要

【岡田議員】事業の評価をするのであれば、交付率や財政負担のみの議論でなく、敬老パスによる効果について、多面的にとらえる必要があります。外部評価では、お金の話が中心で、敬老パスのメリットが十分議論されないまま判定が出されてしまったとおもいます。こうした点を取り上げてみたいと思います。

第1に、「65%の交付率は低い」という指摘です。現在、65才以上は人口47万人です。要介護等の認定受けられている方は7万6千人。その人数を引いて分母にすれば、8割近い方が敬老パスを使って外出をされていることになります。決して低い数字ではありません。

また、一部負担金の引上げや交付年齢の引き上げという議論がありました。しかし、高齢者の経済的側面を考えれば、昨年度末の時点でみても、65才以上の、7割近い方が年収125万円以下です。国保料は年金の大きな部分を占め、介護保険料はまた上がるといわれている。こうした高齢者の暮らし向きについて議論はされてはいません。つまり、一部負担金を上げることが、敬老パスの利用制限へとつながることは否めません。一方で交付率の低さを問題にしながら、高齢者の一部負担金を増やすというのでは、一体交付率を上げたいのか、下げたいのかわかりません。

第2に、敬老パスに対しては市の財政負担が大きいという点についてです。利用目的で多いのは、買い物などです。街の中心街やまたは近くの商店街へバスに乗って出かけて消費するという経済の波及効果についても十分考慮すべきです。

外部評価の質疑の中で学識経験者の方が紹介されていましたが、札幌市で敬老パスの波及効果についての調査があります。

「都心に月1〜2回、近くの商店街に週1〜2回で折々の支出は、年間14〜15万円という結果で、決して無視できない経済波及効果がある」としています。これを単純に名古屋に置き換えてみると、30万人の利用者だとして、同程度の頻度では420億円の経済効果があることになります。敬老パスの事業費は130億円余。この3倍4倍の経済効果があると言えるのではないですか?ここはしっかりと検証してみる価値があります。

第3に、65歳以上の方の運転免許保有者数は10年前に比べ、倍以上に増えています。現在の団塊の世代であれば、普通に自家用車を保有し、日常的な移動に自動車を使うことが当たりまえになっていることを考えると、今後は、いかに敬老パスを使い、自動車から公共交通機関の利用へ切り替えていくか課題です。敬老パスの積極的な利用で、CO2の排出量を抑えて、事故防止ができるその有効な手段といえるのではないですか。

市民意見の中には、敬老パスが健康の維持に役立っているであるとか、そのために医療費を使わなくてすんでいる、買い物して街にお金を落とすことで経済が潤うと思うといった、率直な意見・感想が非常に多くありました。

健康福祉局長にお聞きします。敬老パスを高齢者福祉という視点だけでとらえるのではなく、制度の効果を多面的に評価することが必要だと考えますが、この点をお聞きして第1回の質問を終わります。

■データの集積や分析が難しく、数値で示すことは困難だが議論は必要(局長)

【局長】敬老パスの効果について、高齢者福祉という視点だけでとらえるのではなく、経済への波及効果、公共交通の促進、環境への影響など、多面的に評価することが必要ではないかとのお尋ねをいただいた。

こうした効果等については、データの集積や分析が難しく、具体的に数値で示すことはなかなか困難と考えるが、今後は、様々な意義や効果という観点からの議論も必要ではないかと考えている。

■制度を守ってほしいという市民意見が大多数(意見)

【岡田議員】それぞれご答弁いただきました。まず、敬老パスについてです。

多面的に効果をみるということは、今まで十分されていなかったわけです。健康増進だけでなく、名古屋が進める経済の活性化や,CO2削減の効果が期待できるわけですから、議論を前に進めていただきたいと思います。そして何よりも利用している当事者の声を大事にしていただきたい。制度を守ってほしいという市民意見が大多数です。市民にこれほど評価され、支持されている事業はありません。敬老パスは現行制度を存続すべきです。

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