名港議会 一般質問(3) 防災対策について(2011年11月14日)
①高潮防波堤の耐震補強について
どんな高潮防波堤か。費用総額や完成予定は
【山口議員】6月議会でも防災問題を伺いましたが、その後に調査した結果なども踏まえて4項目聞きます。
1点目、高潮防波堤の耐震補強についてです。
この夏、釜石港、大船渡港、八戸港と被災港湾3港を視察させていただきました。現地視察でわかったことは、第1に、大津波で破壊された防波堤には共通する構造上の弱点があったこと。第2に、破壊されたとはいえ、防波堤の存在は、その背後地の被害軽減に確かに貢献していたこと。第3に、しかしながら、防波堤だけに頼っていては、やっぱり被害が防げなかった、こういうことでした。 防波堤が破壊したメカニズムを簡単に説明すると、津波防波堤のケーソン、コンクリートの箱は、マウンドと呼ばれる土砂の小山の上に一つずつ置かれており、津波の衝撃にコンクリートのケーソンそのものが耐えたとしても、土台のマウンドが水流でえぐられて、ケーソンは横につながっていませんで、1個1個置かれているだけですから、これが個々に転がり落ちてしまった、こういうことでした。
八戸港では、残った防波堤に上陸させていただきました。名古屋港の高潮防波堤の数倍の幅と厚みがある防波堤でしたが、無残に破壊されていました。帰ってきて名古屋港の高潮防波堤を改めて見ると、本当にきゃしゃなつくりです。一層不安が募りました。補正予算にやっと高潮防波堤の予算が計上されました。
そこで伺います。津波防波堤が崩壊した被災地の教訓からは何を学んで、その教訓を踏まえて、名古屋港ではどんな高潮防波堤を目指して補強、改修をしていくのか。目指すべき強度、求められる機能、こういうものについてどう考えておられるのか。また、その費用総額、完成予定目標年次につきまして、それぞれ答えていただきたい。
最大クラスの津波と比較的発生頻度の高い津波の二つのレベルを想定した対策を検討
【企画調整室長】独立行政法人港湾空港技術研究所の調査では、岩手県釜石港において、津波防波堤があったことにより、津波の最大遡上高を約5割低減、背後地への津波高を約4割低減、防波堤を越波するまでの時間を6分遅延するなど、一定の減災効果があったことが報告されております。
中央防災会議では、今後の津波対策に当たり、最大クラスの津波と比較的発生頻度の高い津波の二つのレベルを想定することとしております。その内容は、最大クラスの津波に対しましては、被害の最小化を主眼とする減災の考え方に基づき、防波堤などによって津波による被害をできるだけ軽減するとともに、防災教育の徹底など避難することを中心とするソフト対策を重視しなければならないとしております。また、比較的発生頻度の高い津波に対しては、人命保護や住民財産の保護などの観点から、防波堤などの整備を進めていくこととしております。
設計対象の津波高を超えた場合でも、粘り強い構造の整備
中央防災会議では、防波堤などの施設整備に関しては、最大クラスの津波に備えた場合、整備費用などの観点から現実的ではないため、比較的発生頻度の高い津波に対して整備を進めていくことが求められ、設計対象の津波高を超えた場合でも、粘り強い構造の整備が必要であるとしております。
高潮防波堤の機能強化につきましては、国において中央防災会議で示された方向性を踏まえるとともに、現在進められている想定地震動などの検討と整合を図りながら対策工法などの検討を進めているところでございます。
現時点で約40億円。極力早い時期に完了したい
高潮防波堤の機能強化に係る費用につきましては、劣化したコンクリート部の老朽化対策、地震時の液状化による沈下を見込んだ防波堤のかさ上げ工事、粘り強い構造となるよう基礎部の補強などを想定して、現時点で約40億円と見込んでおりますが、現在国において最新の知見に基づく対策工法などを検討しているところでありますので、今後さらに見直されていくものと聞いております。
また、完成予定目標につきましては、国から極力早い時期に完了できるよう進めていくと聞いております。本組合といたしましても、引き続き、高潮防波堤の機能強化に向けて、国、愛知県、名古屋市などの関係機関と連携して取り組んでまいります。
②臨港地区における避難誘導
どこに逃げるのか。庁舎も避難ビルか
【山口議員】地域防災計画の策定は各市町村の役割ですが、臨港地区の避難誘導計画については、名古屋港管理組合としても、各自治体と協力して対処すると、たしか6月議会で答弁をいただきました。それから4カ月以上がたちましたので、数点伺います。
まず、どこに逃げるのか、避難先の問題です。名古屋市は津波避難ビルの指定を開始しました。9月では港区内で128カ所、この11月に入って今は154カ所が指定されましたが、なぜか津波避難ビルのリストにはこの建物、管理組合本庁舎は入っていないんです。なぜ指定されないんでしょうか。また、臨港地区内では、指定されたビルは幾つあるんでしょうか。指定が進んでいないとしたら、その理由は何か、お答えをいただきたい。
市に一時避難者の収容が可能と報告
【防災・危機管理担当部長】名古屋市が指定を進めている津波避難ビルは、本組合本庁舎も検討され、名古屋市に対し一時避難者の収容が可能と報告した。臨港地区内の津波避難ビルは、名古屋市で4カ所、弥富市で1カ所が指定され、現在飛島村においては調査を進めており、津波避難ビルの指定に向けて調整を行っていると聞いている。今後も各市村に協力しながら、必要な津波避難ビルの確保に向けて調整をしていく。
コンテナトレーラーの運転手避難や流出対策は
【山口議員】コンテナトレーラーの運転手の避難誘導はどうするのか、伺います。車を運転して逃げろとは言わないと思いますが、だったらどうするのか。運搬中のコンテナの流出防止対策はどうするのか、あわせて答弁を求めます。
徒歩による避難が原則、流出防護は検討中
【防災・危機管理担当部長】ドライバーの避難は、避難する車両の交通渋滞や事故等の二次災害発生を考慮して、中央防災会議専門調査会の報告にあるとおり、徒歩による避難を原則としている。コンテナの流出につきましては、背後地への流出防護のあり方に関する検討を行っております。
臨港地区内の企業の避難対策
【山口議員】今臨港地区近隣の企業では、独自に津波避難ビルとして使える建物をつくる、こういうところも出ていますが、企業における防災対策、従業員の避難誘導対策の進みぐあいはどうか、管理組合としてはどう把握しているのか、お答えください。
この問題は、各自治体だけでも、また企業だけでも解決しません。臨港地区における避難誘導計画の立案と具体化を、企業とそこで働く労働者、また自治体が一緒につくり上げる、そういう場が私は必要だと考えますが、いかがでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
ヒアリングやアンケートを実施し、調整する
【防災・危機管理担当部長】現在、港湾運送事業者から避難誘導計画についてヒアリングを行っている。立地企業に対しても防災対策等についてアンケートを実施する予定。今後は、こうした結果を踏まえ、必要に応じて学識者に意見を伺いながら、本年10月に本組合が設置した愛知県及び名古屋港所在市村で構成する名古屋港所在市村防災連携会議も活用して、各市村の避難誘導計画の立案に向けた調整を図っていきたい。
③石油コンビナートの防災について
危険物タンクの耐震基準の達成状況などは
【山口議員】3月11日は、東北ばかりでなく、実は東京湾でもかなり深刻な事態が発生していました。千葉港では、石油コンビナートの一角で液化石油ガスのタンクがあの3.11の地震、これは千葉では震度5弱、それと直後の余震、これは震度4、これでタンクが倒壊し、火災と爆発が発生しました。火災は、LPGガスですから、ガスが燃え尽きるまで10日間、延々炎上が続いたそうです。
川崎でも、NHKテレビでも放映されましたが、液状化による側方流動、地盤の海側へのはらみ出しという現象がコンビナート地帯で発生しました。タンク個々は大丈夫でも、埋立地の地盤が崩れてしまうんです。また、浮き屋根構造のタンクでは、スロッシング現象、浮きぶたが揺すられて中の石油が飛び出してしまう、こういう現象があちこちで発生しました。タンク内の油が漏れ出し、火災一歩手前になったところもあったようです。 ところが、石油コンビナートの防災については都道府県の管轄だということで、対応が県任せになっており、現場の市町村の消防と県との連携がうまくいかなかったり、事業所、企業の被害想定には東京湾での津波は全く欠落していたそうです。ちなみに、東京湾の津波は、あの日最大で1.5メートル程度と想定していたそうなんですが、実際には3月11日、木更津港では2.83メートル、船橋市でも2.4メートルの津波が観測されました。
また、危険物の保安管理と従業員の安全確保をどう両立させるのか、これは真剣な検討が必要です。名古屋港は、以前にも9号地でタンクの事故が起きたこともあり、近隣住民の不安は小さくありません。
そこで伺います。名古屋港における石油コンビナートの防災について、危険物タンクにおける耐震基準の達成状況、地盤の液状化の予測とその対策の進行状況、コンビナート防災への備え、県及び各市と名古屋港管理組合及び企業の対応と連携、役割分担がどうなっているのか、お聞かせください。
1,000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクの現行基準の達成率は90パーセント以上
【防災・危機管理担当部長】愛知県内には、石油コンビナート等災害防止法で定める石油コンビナート等特別防災区域として4地域が指定されており、その一地域として名古屋港臨海地区がある。特別防災区域における危険物タンクの耐震性の基準は、タンクの自重、貯蔵する危険物の重量、地域及び地盤に応じて国が定めており、設置に当たっては、各市村においてその基準適合性を審査することになっている。
耐震基準は地震により大きな被害が報告されるたびに強化され、既存タンクは順次対応することとされている。名古屋市、東海市、知多市及び飛島村に確認したところ、平成23年9月1日現在、容量1,000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクの現行基準の達成率は90パーセント以上です。
東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方は、現在、国に設置された検討会の中で検討が行われている。
地盤の液状化対策はすすめられている
県内4地域の石油コンビナート等特別防災区域に係る防災をつかさどる愛知県に確認した。県内の主な事業所について調査し、地震対策として、タンク、建物の耐震化は法令に基づき進められている。液状化対策も、地盤改良を行うこと、タンク、建物等は、くい基礎の上に設置することなど、その対策がとられている。
石油コンビナートには防災本部を設置
石油コンビナート等特別防災区域に係る防災は、愛知県知事を本部長とし、関係市村の長などを本部員とする愛知県石油コンビナート等防災本部が防災計画を作成し、その実施を推進するものとされております。この防災計画では各防災関係機関等の役割分担について定められ、本組合は、関係行政機関として港湾施設の災害応急措置を講ずるなどの役割を担う。また、本部長は、特別防災区域に係る災害が発生し、または発生するおそれがある場合には現地本部を設置することができ、その場合、各市村は現地本部を所掌することになる。
各企業では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、おのおの自衛防災組織が編成されており、災害対応に当たることになる。
災害時には、それぞれが連携して事に当たることが重要であり、本組合では、愛知県及び名古屋市の石油コンビナート防災訓練への参加を通じて、本港に隣接している地方公共団体や各事業者との連携を図り、有事の際に備えている。
浮き屋根構造タンクの改良は(再質問)
【山口議員】石油コンビナートの防災について、タンクの耐震化が進んでいるということでしたが、よく見ると弱点があります。一つは、浮き屋根構造のタンクです。さっきも言いましたが、スロッシング現象で中の油が飛び出る危険性が指摘されて、浮き屋根構造のタンクには特別の耐震基準がありますよね。大型のタンクばかりなんだけど、この浮き屋根構造のタンクできちんと耐震基準を満たしているのかどうか、この点もう少し正確に答えてください。
平成29年3月末までに新たな基準に改修
【防災・危機管理担当部長】浮き屋根式屋外タンク貯蔵所は、平成15年に発生した十勝沖地震で、長周期の地震動によりタンク内の液面が揺れ動く、いわゆるスロッシングが火災の原因となり、耐震機能の確保を図るため、浮き屋根の強度や構造について新たな基準が定められている。これに対応した既存タンクの改修期限は、平成29年3月末までとなっており、関係市村が新たな耐震基準に適合させるよう指導している。
タンク下以外の液状化が問題(再質問)
【山口議員】タンク本体は危険物に関する法令に基づいてくいを打って、タンクの真下は液状化しないんですよ。問題はその他の部分、石油コンビナートの埋立地そのものの液状化対策です。側方流動といって、さっきも言ったけど、地盤が海にずるっとはみ出してしまう。埋立地の地盤そのものが崩壊する危険性が東京湾で既に起こって、指摘されてきています。これは、企業だけの努力では対応し切れないと私は思いますし、幾ら企業が法令を守っていても、その地盤については何もないんですね。ここは何らかの対応が必要になってくると考えますが、どう対処するのか、伺いたい。
道路などは未対策。側方流動は、国の検討会などの動きを注視
【防災・危機管理担当部長】液状化対策は、タンクの基礎地盤には対策が施されることとなっていますが、構内道路など他の部分は、液状化の対策がとられていない可能性がある。また、東日本大震災以後、課題となった液状化による側方流動は、国の検討会などの動きを注視したい。
特定屋外タンク7/8が未改修。対策を(意見)
【山口議員】防災問題では石油コンビナートの問題ですが、改修が必要とされる特定屋外タンク、浮き屋根構造のものが、名古屋市消防局で、9号地ですが、市内だけで8カ所あります。このうち既に新しい基準に適合しているのはわずか1基です。残りの7基、とりわけ1万キロリットル以上の大きなものは、4基丸々まだこれからという段階なんですね。
平成29年3月までに直せばいいよということになっているんだけど、十勝沖地震の話がありましたが、平成17年に省令が改正されているんですよ。もう6年たっている。あと6年です。千葉港では27パーセント改修済み。やっぱり名古屋港はおくれている。タンクも大きいことはありますが、これは本当に何とかしていかなければいけない。
ちなみに、先ほど9割以上一般のタンクでもという話がありましたが、名古屋市消防局の持っているデータでは、特定屋外貯蔵タンク118基中98基、83パーセントの到達点です。ほかの市村が進んでいるんだと思いますが、こういう状況があります。
平成29年度までということを待っているわけにはいかない。この浮き屋根構造のタンクの改修はぜひとも急ぐように強く要請していただきたいと思いますし、知事、副知事がみえますが、石油コンビナートは県が大きな責任を持っている分野です。側方流動の話もしましたが、地盤の安全性が問われている。どこに企業が立地しているかというと、皆さんが埋め立てて売った土地なんですよ。そういう責任もぜひ感じていただいて、積極的な対応を求めたいというふうに思います。
④フェリーについて
フェリーへの公的支援を
【山口議員】震災後の救援活動に長距離フェリーが大きな力を発揮しました。名古屋港と仙台港を結ぶ航路を持つ太平洋フェリーの3隻は、震災発生からこの10月までに2万5,000名を超える人員と6,000両を超える車両を災害支援のために運び、そして6月からは、ボランティアの方と被災者の方向けには運賃を50パーセント割り引いて乗せている、そういうふうに伺いました。
災害発生時に一度に大量の物資と人員を運ぶことができ、かつクレーンが要らない。クレーンなどの荷役設備がなくとも貨物の積みおろしが可能なフェリーは、大変有効な災害支援ツールの一つです。
また、角度を変えてみると、名古屋港で定期的に目にすることができる貨物船以外の大型船としても貴重な存在です。しかし、民主党政権のもと、高速道路無料化などの影響をもろに受けたこともあって、その経営は大変厳しく、全国的に航路の減少傾向が続いています。高速道路の建設には莫大な公費が投入されてきたことを思えば、モーダルシフトが唱えられている今、長距離フェリーにも公的な支援がもっとあってもよいのではないでしょうか。全国的なサイズで災害に備えるという面でも、名古屋港管理組合として、このフェリーの位置づけをもう少し高めるべきだと考えます。
そこで、2点伺います。フェリー会社からは公的な支援要請が出されています。ことしは1月18日に支援要請が管理者あてに出ているそうですが、これにはもっと積極的にこたえるべきではありませんか。
国に内航フェリーへの支援制度の創設を要請
【港営部長】内航フェリーは、物流ネットワークとして重要な役割を果たしているだけでなく、災害時の陸路にかわる輸送手段として欠かせない存在であることは十分に認識しています。
本港は施設の使用に係る支援等をしていますが、内航フェリーの維持存続のため、港湾管理者としては限りがあり、国策による内航フェリーへの支援制度の創設を早急に講じるよう、六大港湾協議会を通じて国土交通省へ要望している。
フェリーふ頭は名古屋港の正面に変更を
【山口議員】現行のフェリーふ頭は、はっきり言って寂しい場所にあります。ガーデンふ頭や金城ふ頭など、もっと名古屋港の正面に当たる場所に変更すべきと考えますが、いかがでしょうか。ちなみに、名古屋港長からは、フェリーふ頭は庄内川の河口にあって、水深の浅さが問題だ、こういう指摘も再三なされているということもつけ加えておきたいと思います。
計画変更の手続を進めている
【企画調整室長】フェリーふ頭計画は平成12年の港湾計画の改訂で、稲永ふ頭に位置づけている。この区域は、現在の土地利用の状況、事業の進捗状況などを踏まえ、将来的な港湾施設の安全かつ効率的な利用に向けた検討を行う必要があるとし、利用形態の見直しの検討が必要な区域として計画変更の手続を進めている。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明